iPhone/iPod touchゲームレビュー

モンスターが押し寄せる地獄の夜を
君は何分間生き延びられるか?

「iDracula」

  • ジャンル:サバイバルシューティング
  • 発売元:Chillingo
  • 開発元:MoreGames Entertainment
  • 価格:115円(期間限定価格)
  • プラットフォーム:iPhone/iPod touch
  • 言語:英語
  • 発売日:2月19日(配信中)

 緻密に描きこまれたグラフィックスと、細部まで作り込まれたゲーム内容で、高い人気を集めているサバイバルシューティングが「iDracula」だ。浮き沈みが激しいApp Storeランキングで、リリース以来、有料ゲームランキングのベスト25に入り続けており(3/9現在)、ユーザー評価も平均レートが5段階中で4.5をマークしている。実際にプレイしてみても、その評価に見合った内容で、多くのユーザーにお勧めできるゲームだ。

 開発元はファンタジー戦略カードゲーム「orions:legend of wizards」で高い評価を得たMoregames Entertainment。前作がポケットPC向けゲームからの移植だったのに対して、今作はiPhone/iPod touch向けのオリジナル作品だ。海外タイトルだが、シューティングゲームなので、英語がわからなくても直感的に遊べる。しかも、もともとの定価は350円だが、次回アップデートまでの期間限定で、115円に値下げされている。缶ジュース1本分弱の値段で、ここまで遊べては、他のデベロッパーは脱帽するしかないだろう。



■ モンスターを撃ちまくるだけのシンプルな内容

 ゲームシステムは全方位シューティングだ。ゲームを開始すると、画面中央にプレーヤーの分身である、拳銃を持ったバンパイアハンターが表示される。ゲームの目的は四方から押し寄せる狼男やドラキュラといったモンスターを撃退していくことだ。ステージクリアやシナリオ、決められたゴールなどはなく、ライフゲージがゼロになるとゲームオーバーとなる。あらかじめ定められた結末を前に、何分生き残ることができるか。これがサバイバルシューティングの所以だ。

 操作は、画面左右下のバーチャル・パッドを両親指でスライドさせて行なう。左側でプレーヤーキャラクターを360度移動させ、右側で武器の向きを変える。弾丸は右側のパッドに指を当てていると、向きに従って自動的に連射される。Xbox 360のXbox Live アーケードで人気を集めたカジュアルシューティング「Geometry Wars」などと同じスタイルだ。


【スクリーンショット】
左右下のバーチャル・パッドをスライドさせ、左で移動、右で武器の照準を定めてモンスターを撃退していく「Survival」モードでは、武器や弾薬、ポーションが出現し、次第に敵が強くなっていく「Rush」モードでは狼男が大群で攻めてくる。武器もマシンガンのみで、撃ちまくるのみだ


 ゲームモードには、基本となる「Survival」モードと、より短時間で遊べる「Rush」モードがある。

 「Survival」モードは、武器アイテムなどを収集して武装を強化し、次第に強力になっていくモンスターの襲撃を凌いでいく内容だ。モンスターを倒すと、ランダムで武器、弾薬、ポーションアイテムが出現する。武器は「拳銃」→「ライフル」→「クロスボウ(弓)」→「グレネード(発射装置)」→「マシンガン」→「バズーカ(BFG)」と6段階に強化される。次レベルの武器を入手すると自動的に武装が切り替わり、弾薬が尽きると下位武器での攻撃になる。画面下の武器アイコンを指でスライドして、使用武器を任意に切り替えることもできる。

 これに対して、モンスターも狼男から、触手を持ち徘徊するローパー(筆者命名)、レイスといった具合に新手が出現し、それぞれ数種類のバージョンで攻め寄せてくる(弱・中・強の3種類がいるようだ)。また一定間隔でドラキュラが出現する。他のモンスターは体当たりのように接触して攻撃してくるが、ドラキュラだけは電撃で遠距離から攻撃してくる上、ダメージも大きい。クロスボウによる攻撃が弱点で、比較的容易に倒せるが、いちいち武器を切り替えなければならない、やっかいな相手だ。


画面右側の「Perk」(特典)アイコンをタッチすると、4種類の特殊能力から1つをタッチして使用できる

 このほか一定数のモンスターを倒すと、Perkという特殊能力が使えるようになる。画面右側のPerkアイコンが緑色に光ると、アイコンをタッチすることでウインドウが開き、特殊能力を4つから選択し、実行できる。特殊能力は18個の中から4個がランダムに出現するが、ゲームの進行はストップするので、じっくり選べる。ただし、どれも選ばずにウィンドウを閉じることはできない。

 高得点を狙うには、状況に応じて最適な特殊能力を選択することが必要だ。ゲーム前半では3方向に矢を打てる「CROSSBOW MASTER」や、新しい武器が手に入る「NEW WEAPON」、後半では周囲のアイテムを引き寄せる「TELEKINESIS」や、ノックバック効果を高める「POWER STRIKER」などがオススメだ。

 「Rush」モードでは、ゲーム開始直後から大量の狼男が出現し、操作キャラクターを取り囲んでくる。武器はマシンガンのみで、とにかくバリバリと撃ちまくり、1秒でも長く生き残ることが目的だ。「Survival」モードではゲームに慣れてくれば10分程度は続けられるが、「Rush」モードでは2分の壁を乗り越えるのも大変で、そのぶん短時間でもサクッと楽しめる。


【スクリーンショット】
「Play Game」をタッチして、「Survival」、「Rush」のいずれかを選択すると、ゲームが始まる起動画面から1番下の「Instructions」ボタンをタッチすると、ゲームの操作ガイドが表示される「Options」をタッチすると、ゲームのオプション設定に加えて、SEとBGMのボリュームが調整できる

【武器一覧】
拳銃…… 初期装備で、弾数が多く事実上弾切れになることはない。複数の敵を同時に攻撃できるライフル…… 散弾銃といった趣きで、2発ずつ弾を消費する。命中した敵を後退させる効果もあるクロスボウ…… 射程上のモンスターをまとめて攻撃できるが、敵を後退させる効果はない
グレネード…… 小範囲の敵をまとめて攻撃できる。弾丸の再装填が若干遅いのが玉に瑕だマシンガン…… M60ライフルといった趣きで、360度回転させながら撃てば、周囲の敵をなぎはらえるバズーカ…… 連射が速い最強の武器。ただし気をつけなければ残弾がゼロになりやすい

【オプション設定】
DISABLE ALL SOUNDSオンにすると全サウンドがオフになる
SWAP CONTROL WHEELSバーチャル・パッドの左右を逆にする
HIDE CONTROL WHEELSバーチャル・パッドを非表示にする
DONT AUTOSWITCH WEAPONSオンにすると自動的に武器が変更されなくなる

【Perk解説】
BANDAGE体力が回復する
BLOODLUST体力が減少するほどに攻撃力が増大する
BLODD SACRIFICE残存体力の半分を消費し、画面上のモンスターを全滅させる
BONUS FINDER弾薬など、アイテムの出現率が上昇する
CROSSBOW MASTER1回の攻撃でクロスボウの矢が3本発射されるようになる
EXTRA HEALTH体力ゲージが30%増大する
FIELDRUNNER移動が速くなる
IMMORTALITY無敵状態となるが、20秒後にPCが死んでしまう
LARGE POCKET弾丸の所持数が増加する
NEW WEAPON次のレベルの武器を入手できる
NINJAモンスターの攻撃を一定の割合で無効化する
PANIC大ダメージを受けると、武器の再装填の時間が短縮される
POWER STRIKER攻撃でモンスターをより遠くにはじき飛ばせるようになる
RELOADER武器の再装填の時間が短縮する
SCORE MASTERスコアが増加する
SNIPERすべての武器の射程が伸びる
TELEKINESISアイテムがPCの方向に自動的に寄ってくる
URANIUM BULLETS弾丸がウラニウム製となり、攻撃力が増加する


■ 単純なゲームなのに、なぜハマってしまうのか

 本作はメッセージが英語ということもあり、若干とっつきが悪い。操作に慣れないうちは、すぐに倒されることも多いだろう。しかしゲームにある程度慣れて、Perkを使い分けられるようになると、すっぽりとハマってしまう。プチプチをつぶすように、ついつい何度もプレイを繰り返してしまうことになる。

 これには美麗なグラフィックスや、優れたサウンドの効果もある。細部まで描き込まれたゴシックホラー調のCGは、ハードロックのBGMと相まって終末的な世界観をうまく醸し出しており、日本人には作り出すことが難しい、洋ゲーならではの魅力に溢れている。画面上を埋め尽くすモンスターたちの迫力や、彼らを倒していく爽快感も秀逸だ。期間限定ながら115円という価格も強力で、コストパフォーマンスは抜群だろう。

 しかし何より重要なのは、優れたゲームデザインだ。前述の通り、本作の根幹は「アイテムを集めて武装を強化し、モンスターを攻撃しながら、何分間耐えられるか」という、非常にシンプルなものだ。そのため、ともすれば単調で、すぐに飽きられる可能性がある(特に「Rash」モードはその傾向が強い)。これに対して本作では、次のような工夫を凝らすことで、プレーヤーをハマらせることに成功している。


一目見て操作方法がわかる画面設計。アイテム類の色彩も地面に埋没しないように、意図して変えられている
フィールドの外側からも攻撃を受ける。中央の泉の周りを回りながら戦うのがコツだ
サウンドと武器の使い分けがゲームのリズムをうまく刻んでいる

 まず第1に、ゲームの内容と操作方法がよくマッチしており、画面を見るだけで遊び方がわかる。左右のバーチャルパッドで全方位に移動と攻撃を行なうという操作形態は、平面的な画面構成で、全方位から敵キャラクターが攻め寄せてくるという、本作の内容に最適だ。しかもバーチャルパッドでは通常のコントローラーに比べて操作ミスが多いことを考慮したのか、題材がホラーとなっており、バンパイアハンターの移動速度も比較的ゆっくりめに抑えられている。「操作のもたつき」も考慮した、巧みな題材設定と操作設計だろう。

 第2にゲームを続けていくうちに、自然に攻略法がわかってくることだ。最初のうちはフィールド全体を動き回ったり、フィールドの四隅に陣取りたくなるが、次第にフィールド中央にある泉の周囲が、最も安全だということがわかってくる。柱や泉などの障害物のおかげで、敵から全方位で囲まれる度合いが最も薄いからだ。さらにPerkを使い分けられるようになると、比較的長くプレイできるようになる。

 そして第3に、緩急のリズムがよくできていることだ。中でもBGMとSEの組み合わせが効果的に用いられている。ループ構造のBGMをベースに、武器の発射SEがリズミカルに加わり、これにアイテム獲得音が挟み込まれる。このうち発射音は武器が強くなるたびに、「パンパン」→「ダンダン」→「シュッシュ」→「ドカンドカン」→「ババババ」→「ドカドカドカ」と音が大きく、テンポが早くなっていく。その過程で敵の攻撃も熾烈になっていくため、グラフィックスとサウンドが一体となって、没入度がうまく高められていく。

 また、適度にペースが遅くなったり、また速くなったりと、変化する点もうまい。武器の自動切り替えで発射音が「ドカドカ……ババババ……ドカドカ……」と変化するのはその一例だ。敵の攻勢も一本調子ではなく、波があるように感じられる。またドラキュラはクロスボウによる攻撃が弱点となるため、登場すると武器を切り替える必要がある。ラッシュ攻撃を受けたときは、Perkアイテムを選んで一休みすることもできる。こうした指の動きによるリズムの切り替えが、いいアクセントになっている。


【スクリーンショット】
ドラキュラは電撃で攻撃してくる。クロスボウが弱点なので、武器を切り替えて攻撃しよう。倒すとアイテム「OMEN」が入手できる


■ 開発側もアップデートを明記

 その一方で、もう少し遊び込める要素があってもよかった。もっとも販売元も、ゲームの説明文で「2つの新レベルと新ゲームモード、新キャラクター、新兵器を追加したアップデート版が価格もアップで近日公開」と明記しており、メジャーアップデートを期待してよさそうだ。個人的には、それに合わせて下記の修正点を期待したい。

 まず第1に、アイテム「OMEN」の意味が不明瞭だ。本作ではドラキュラを退治すると、OMENというアイテムが出現する。繰り返しプレイしてOMENを集めると、バンパイアハンターの称号が上がっていく。しかし、これがゲーム内容に反映されているようには見えない。何かしら意味づけの強化が必要だ。

 第2にPerkの特殊能力が完全ランダムなので、戦略性に乏しい。時には同じ能力がだぶって表示されることもある。そこで特殊能力をレベル制にして、時間をかけてパワーを貯めれば、そのぶん強力な効果が得られるなど、リスクとリターンの関係性を取り入れてはどうだろうか。もちろん、これ以外のアイディアもあるだろう。

 第3にネットを用いたスコアアタックランキングの実装だ。特に「Rush」モードでは、今のままではすぐに飽きてしまう。何かしらの競争できる仕掛けが必要だ。複数ユーザーでの協力プレイなども期待したいところだ。


【スクリーンショット】
「High Score」をタッチすると、ハイスコアとランクが表示される。ネットでのスコアアタック機能が欲しいところだ「CROSSBOW MASTER」がダブっている。1度選ぶとキャンセルできないので、ちょっと損した気になる「Credits」をタッチすると開発陣がわかる。わずか3名という構成に驚かされるが、さらなる改良を期待したい


 このほかシステム全体の改良点としては、シナリオやステージクリア、武器のレベルアップやアイテム購入、エンディングの導入などがあげられる。少なくとも現状では、ステージ中央の泉の周りをぐるぐる回るのが最適な戦術となっており、1度パターンが読めてしまえば、長く遊び込む仕掛けに乏しい。さらなる動機付けが必要だ。

 もっとも、ここまで作り込むには相応の開発予算が必要になる。とはいえ筆者を含めて大型アップデートを望むユーザーも多いはずだ。そして本作が、そこまで期待させるほどに、ゲームの根幹部分がよくできていることも事実である。コンソールゲームでいうところのプロトタイプ、あるいはα版に近く、より大きな展開を期待してしまうのだ。

 それだけに、1人でも多くのユーザーに課金して遊んでいただき、アップデートの要望を寄せていただきたいところである。その一方で開発側には、App Storeのコメントに書かれている「今のうちに絶対ゲットしておこう!」という煽り文句が、空手形にならないことを祈りたい。


(C)MoreGames Entertainment

(2009年 3月 17日)

[Reported by 小野憲史]