Razerが新たに開発したゲーミングマウス「Razer Mamba」は、マウスの中でも最高水準に位置する価格と、その価格を納得させるだけの説得力を備えた空前のハイエンドモデルだ。株式会社MSYから6月に発売される予定となっている本製品は、無線マウスとしても、有線マウスとしても使うことが可能なハイブリッドマウスであるだけでなく、最大解像度5,600CPI、トラッキング速度200インチ/秒という新たな世代の高性能センサーを搭載し、全てにおいて最高級のスペックを備える。
そのほか、CPIやマクロなどの設定内容をマウス内のオンボードメモリに格納する「Razer Synapse」機能、1,000Hzのレポートレートを実現する「Ultrapolling」機能、ドライバレスでも性能を発揮できるポータビリティ、手になじみやすい流線型のボディを備え、ほぼ死角無しの内容だ。14,800円という価格はゲーミングマウスとしても非常に高い部類に属すが、本製品の完成度を見れば、その価格が正当なものであることがわかる。本稿でその中身をお伝えしよう。
■ 無線と有線を本質的な意味で切り替え可能。流麗なボディに秘められた驚くべきスペック
個性的なパッケージ。分解するのが惜しい |
内容物を展開するとこのようになる |
まずは基本スペックからご紹介していこう。クリアケースに黒いマウスが浮いているという、すこぶる個性的なパッケージを開くと、中に含まれているのはマウス本体、専用無線レシーバー兼充電ドック、リチウムイオンバッテリー、専用USBケーブル、マニュアル類という構成だ。
マウスの外形寸法は128×70×42.5mm(奥行き、幅、高さ)で、本体重量はバッテリー込みで129g、バッテリー無しで108g。形状としては、Razerの以前のハイエンドモデル「Deathadder」に近いが、手触りはもっとコンパクトな印象だ。また、ボディの中央左右にはラバー系素材による窪みが設けられており、手汗による不安定感をしっかりカバーしてくれるようになっている。
実際に1度触ってみればすぐにわかるが、これは非常に完成度の高い、手になじみやすい形状だ。「かぶせ持ち」、「つまみ持ち」どちらでも即座にフィットすることができる。海外製マウスは欧米水準のサイズになりがちな傾向があるが、本製品には日本人の手にもよく合うサイズとなっており、筆者も使い始めてすぐにトップパフォーマンスを発揮することができた。
ボタン数は左右メインボタン、ホイール、左サイドボタン2つ、さらに左メインボタンの脇にCPI変更ボタンが2つあり、計7個の設定可能ボタンが設けられている。また、前部左サイドの底面近くにはCPIインジケータが兼バッテリー残量計が配置されており、3つのゲージで5段階の設定を確認することができるようになっている。CPIは100~5,600の範囲で100CPI刻みの設定が可能である。
背面を見ると、いくつかのスイッチとバッテリーの格納スペースがあり、そして中央にはセンサーが顔をのぞかせている。これは「Mamba」で初めて投入された「Razer Precision 3.5G Laser Sensor」と呼ばれる最新のセンサーで、最大5,600CPI、最大トラッキング速度200インチ/秒(508cm/秒)、最大追従加速度50Gという、驚異的なスペックを誇る。技術的な詳細は明らかにされていないが、センサー部がこれまで見たことのないような形状となっており、従来のセンサーとはかなり異質なものであることは確かなようだ。
つまみ持ち、かぶせ持ちの両方にフィットする流麗な形状。背面には最新鋭の「Razer Precision 3.5G Laser Sensor」が顔をのぞかせている。バッテリーは携帯電話に使われそうな形状のリチウムイオン電池で、連続使用時間は14時間とされる。ちなみに、有線モードで使用する場合はバッテリーを装着する必要はない |
特殊形状のケーブルは、マウス先端部か、無線レシーバーに接続する |
Razerらしく、使用中は青く光る。設定で光らないようにすることも可能 |
さて、本製品「Mamba」は無線マウスとしても有線マウスとしても使うことが可能なハイブリッド機能を搭載している。有線と無線の切り替えは、付属の専用USBケーブルを、無線レシーバーにつなぐか、マウス本体につなぐかで切り替わるようになっている。ケーブルは独特の形状をしており、マウス側に接続すれば固定ノッチにより完全にロックされるため、非常に堅牢だ。
ちなみに、見た目上これに近い機能を持つマウスとして、マイクロソフトの「Sidewinder X8 Mouse」(レビュー記事)があるが、「X8」のケーブルが充電用の役割しか果たさないことに対し、「Mamba」のケーブルはマウスとPC間の通信も行なう。つまり、本製品は見た目だけでなく、本質的な意味で有線マウスとして使用することが可能なのだ。
有線モードで使用している間、無線レシーバーは完全に使われない状態になるため、これは間違いのないことだ。無線マウスに抵抗のあるゲーマーにとっては、これは重要なポイントだろう。また、有線モードで使用する場合、マウスへの電力供給はUSBケーブル経由で行なわれるため、付属のリチウムイオンバッテリーをはずして使用することができる。この場合、マウス本体の重量が20g減り、108gのマウスとして使用することが可能だ。これは有線モードの大きなメリットである。
とはいえ、無線モードで使用してデメリットがあるというわけではない。無線モードでの使用時においても、遅延は完全に体感不能であり、FPS系ゲームをいくつかプレイしてみたが、一切の違和感を感じることが無かった。遅延の絶対値についてはメーカーから公表されていないため推測するしかないが、少なくともマイクロソフトの「X8」に使われたゲーミンググレードの無線インターフェイスと同等という印象だ。有線モード時と全く差がないとは言い切れないが、差を感じることはない。
いかにスペックシートが素晴らしくても、それをユーザーが実際に享受できなければ意味のないことだが、本製品の場合、スペックから予想される良さ、メリットを強く感じることができる。それは、性能や機能面で不満を持ちようがないほどの高い水準で、全てが満たされているからだろう。使用1日目から、価格相応の価値を感じることができる。近年のゲーミングマウスで最高の手ごたえだ。
流線型の黒いボディは、日本人の手にもよくフィットする。筆者は平均的な成年男子より小さめの手を持つのだが、全く違和感なくホールドすることができた。使い始めの瞬間から最高のパフォーマンスでゲームをプレイすることができる |
ボタン数は7。サイドボタンは左側面にしかついていないので基本的に右利き用ではあるが、ほぼ左右対称の形状であるため、左手での使用も不可能ではないだろう。 |
有線モードでの使用時、マウスとPCの通信はケーブルを通して行なわれるので、完全に有線マウスのパフォーマンスとなる。さらに、バッテリーを装着していれば自動的に充電される。無線モード時に充電するときは、無線レシーバーに載せるだけでよい |
■ マクロ機能など痒い所にも手が届く機能構成。内蔵メモリによる高いポータビリティもありがたい
ドライバーはRazer公式サイトからダウンロードしてこよう |
設定画面。ボタンの設定や、CPI調節、マクロの作成、保存などが行なえる |
意外なことに本製品にはドライバーディスクが同梱されていない。そのため、CPI設定の調整やマクロ機能など、全ての機能を利用するためにはRazerの公式サイトにアクセスし、最新ドライバーをダウンロードしてくる必要がある。ドライバーCDを同梱しなかった理由は、おそらくパッケージのデザイン上の問題であるとか、ささいな事だろう。PCゲーマーなら誰しもネット環境があるだろうから、実用上の問題はないはず。
唯一の問題は、ドライバーをインストールして「Mamba」の設定パネルを開く際、マウスを無線モードで接続していないと、マウスが「Mamba」として検出されないことだ。したがって、有線モードでは各種設定を行なうことができない。この点は少々不便だが、無線モードで設定した内容はマウス本体に記録され、有線モードできちんと反映されるので致命的ではない。いずれ、ドライバーのアップデートで改善されることを期待したい。
「Mamba」の設定パネルで調整可能な項目は、大きく分けると「ボタン設定」、「パフォーマンス設定」、「プロファイル設定」、「マクロ設定」となっている。ボタン設定では、CPI変更ボタンとホイールのアップダウンを含む、全てのボタン操作について設定を変更することが可能だ。また、「パフォーマンス設定」では最大5段階のCPI設定を調整可能なほか、マウスのポーリングレートを125Hz、500Hz、1,000Hzのいずれかに設定することができる。
手の込んだゲームをプレイするプレーヤーが気になるマクロ機能については、従来のRazerハイエンドマウスと同じく、高機能なマクロ設定が備えられている。マクロはあらゆるキーストローク、マウスボタン操作、タイミング調整からなり、インターフェイスの使い易さも上々。それぞれのマクロには名前を付けて保存することができ、保存したマクロはボタン設定で好きなボタンに割り当てることができる。
また「プロファイル設定」では、アプリケーション毎に自動的に駆動されるプロファイルを好きな数だけ設定することが可能となっておりヘビーなマクロユーザーでも充分に対応可能だ。ただし、プロファイルの切り替え機能を利用するためにはドライバーアプリケーションを常駐させておく必要があるのだが、マウスが有線モードにある場合、ドライバーは勝手に終了してしまうため、使い勝手は良くない。マウス本体にプロファイル切り替えボタンが存在しないので、有線モードで利用するユーザーにとっては痛いところだ。
なお、「プロファイル設定」を除く全ての設定内容は、マウス本体に備えられたフラッシュメモリーに記録され、別のPCに接続しても同じ状態で使うことが可能だ。最近のゲーミングマウスでは当たり前とも言える機能ではあるが、ドライバレスでも即座に使うことができるというポータビリティが確保されているため、複数の環境でゲームをプレイするハードコアゲーマーにはありがたいところだろう。
ゲーミングマウスとして必要な機能は全て実現されており、機能面の不満はほぼない。唯一残念なのは、有線モードで各種設定ができないことだけだ。ドライバーのアップデートで改善されることを期待したい |
■ 期待を裏切らない、Razerの最高傑作。最強のマウスを求めるパワーゲーマーに最適
有線、無線の双方でゲームをプレイしたが、パフォーマンス上の違いを体感することはなかった。気分的に有線のほうが安心できるのは確かだが、スコアの差にはつながらなさそうだ |
最後に、本製品のセンサーおよび無線インターフェイスの性能について触れておこう。
まず、本製品に搭載されている「Razer Precision 3.5G Laser Sensor」というレーザーセンサーに関しては、詳細は不明だが従来のレーザーセンサーとは見た目も挙動も異なるものになっており、設置面の選択の幅が広がっている。たとえば、3Gセンサーでは動かない、白い机の表面でも本製品はきちんとトラッキングすることができた。また、本製品はリフトオフディスタンスが2~3mmと非常に浅い。持ち上げ操作の多くなるFPSで威力を発揮する性能となっている。
トラッキングの最大速度に関しては、Razer公称の数値で200インチ(508cm)/秒というスペックになっているが、この数値は従来のあらゆるゲーミングマウスを上回るものだ。それを確認するため、従来のレビューで使用してきた計測装置を使ってテストを行なったのだが、トラッキングを頻繁にON/OFFするという計測装置の特性と相性が悪く、うまく数値を取ることができなかった。この点に関しては、いずれ弊誌連載「PCゲーミングデバイス道場」で改良型の計測装置を用い、フォローしていきたい。
数値を計測することは今回できなかったが、「Team Fortress 2」などのFPSタイトルでじっくり使ってみた感触はすこぶる上々だ。他のゲーミングマウスと比べても、抜群のトラッキング安定性と反応性を持ち、あらゆるシチュエーションにおいて思い通りに操作することができた。マウス本体の形状が非常に扱いやすいこともあって、「Mamba」を使った瞬間、自分の腕前そのものが向上したかのような満足感を得ることができた。
また、有線モードと無線モードの違いについては、ゲームプレイ上の体感で違いを感じることはできなかった。しかし、無線使用時にある程度の性能低下が存在するのは確実ではある。マウスのレポートレートを計測するアプリケーションでの比較では、有線モード使用時におよそ1,000Hz、無線モード使用時におよそ750Hzと、若干のレポートレート低下が見られた。それでもハイグレードなゲーミングマウスとして満足できる数値であるのは評価できるところだ。
無線時のレポートレート | 有線時のレポートレート |
Razerの最新モデルにして最高傑作。パワーゲーマーならこれを選ばない手はない |
総評として、本製品「Razer Mamba」はRazerがこれまで開発してきたゲーミングマウスの中で、最高傑作に位置する製品と言える。まず、ケーブルフリーの無線モードと、無線が不安なユーザーに対しては完全な有線モードという選択肢が用意されていることが最大の美点だ。また、ゲーミングマウスに求められる各種の機能を完全に備え、洗練された形状はあらゆる持ち方にフィットする。ほぼ全てのゲーマーが満足できる内容であり、14,800円という価格にも十分納得できる。
本製品の数少ない弱点は、ドライバーの問題で、有線モード時に各種設定が行なえないことと、無線モード時に若干のレポートレート低下が見られることだが、実用上何の問題もないレベルである。むしろ利点のほうが遥かに多い。本製品は、完全無欠の最高級ゲーミングマウスと呼ぶにふさわしい。
本製品はあまりにも魅力的なゲーミングマウスである。一ユーザーとして購入を検討する場合、手を出しにくい価格であることは確かだが、あなたがパワーゲーマーで、現存する最強のマウスをひとつ、手に入れたいと欲しているならば、この「Razer Mamba」を選択するべきだ。店頭で実際に触る機会があれば、一瞬でその良さを理解できることだろう。
http://msyshopping.shop-pro.jp/
□「Razer Mamba」の製品紹介ページ
http://jp.razerzone.com/product.php?act=page&pgid=43&pid=1
(2009年 5月 28日)