「ブラスターマスター ゼロ」レビュー

ブラスターマスター ゼロ

Nintendo Switchの意外な伏兵。アクションゲームの雄インティ・クリエイツが手がける1本

ジャンル:
  • 探索アクション
発売元:
  • インティ・クリエイツ
開発元:
  • インティ・クリエイツ
プラットフォーム:
  • Nintendo Switch
  • 3DS
価格:
980円(税込)
発売日:
2017年3月3日

 インティ・クリエイツは2017年3月3日、Nintendo Switch/ニンテンドー3DS用アクションゲーム「ブラスターマスター ゼロ」をリリースした。価格は980円(税込)。

 本作はファミコン全盛期を彷彿させる、8-Bitスタイルのサイドビューとトップビュー混成タイプの探索2Dアクションゲームだ。1988年にサンソフトから発売された「超惑星戦記メタファイト」のデザインをベースにしつつ、新たなエリアのボスやサブウェポンの追加、アクション性の改善、シナリオ、探索要素の拡充など、あらゆる部分をリファインしている。本稿では、そんな同作の魅力に迫っていきたい。なお本稿の内容は、全てNintendo Switch版のものとなる。

【「ブラスターマスター ゼロ」紹介映像(Nintendo Switch版)】
【オープニングムービーより】
ファミコンを思わせるレトロな雰囲気のタイトル画面

 物語の舞台は近未来の地球。主人公の少年「ジェイソン・フラドニック」は、カエルのような姿をした正体不明の生物を発見し、「フレッド」と名付け調査を開始するが、時を置かずして逃げられてしまう。フレッドを見つけるため、ジェイソンは万能戦闘車両“ソフィア-III”に乗り込み、地下世界へと赴くのだが……。

 以上がストーリーを簡単にまとめたものだ。オープニングでは先述のストーリー概要をドラマ仕立てで演出しているのだが、これがファミコン世代にはたまらない作りになっており、オールドゲーマーはニヤニヤしてしまうこと請け合い。オープニングを拝見したのち、いよいよゲーム本編のスタートだ。本作はストーリーモードをシングルモードとマルチモードから選べるのだが、まずは定番のシングルモードでプレイしてみた。

【オープニングムービーより】
冒険心を掻き立てるオープニング

サイドビューとトップビューが入り交じる独特のゲームデザイン

 ゲームを始めてまず感じたのは、やはり8-Bitスタイルならではの、シンプルながらも味のあるグラフィックスや、小一時間は懐旧に浸りたくなってしまうBGMだろう。ドットやピコピコサウンドは、ある一定以上の年齢層にとってはキーワードのようなものだったが、本作から感じる匂いは、まさにファミコンゲームのそれ。今の30歳代や40歳代の方がファミっ子だったころに夢中になって遊んでいた、当時のゲームを激しく彷彿させる。

 チュートリアルらしいチュートリアルもなく、ゲームが始まった瞬間から全てはプレーヤーの腕に委ねられる。ファミコン全盛のゲームには野放図とも言える独特の自由さがあったが、その精神は本作でもしっかりと受け継がれているようだ。

 先程も少し触れたが、本作のゲームデザインは一風変わっており、サイドビューマップとトップビューマップを切り替えながらプレイしていくというスタイルを取っている。
 序盤はサイドビューで始まり、ソフィア-IIIに乗り込みつつステージを進めていく。ソフィア-IIIから降りて生身でプレイすることもできるが、序盤のジェイソンは装備が心もとないうえに、高いところから落ちるとダメージを受けてしまうため、ソフィア-IIIに乗り込んでいたほうが圧倒的に安全だったりするのだ。

サイドビューマップのステージはソフィア-IIIに乗りこんでの探索がメイン

 ステージを進めていくと、何やら怪しげな洞窟を発見。ソフィア-IIIに乗ったままではハシゴを降りられないため、生身で洞窟の中を進んでいく。そして洞窟の中に入ると、本作のもう1つのデザインであるトップビューに自動で切り替わり、ゲーム性がガラリと変化。サイドビューとは違ったプレイ感覚になり、気分も一新だ。

トップビューマップでは、360度あらゆる方向への移動が可能だ

 ある程度ゲームを進めていくとジェイソンは色々な武器を入手する。デフォルトの武器である銃の「ブラスター」に加え、長い射程の銃「ロングレンジ」、地形を貫通して攻撃できる「ペネトレーター」、射程は短いが距離が近いほど威力も高い「ディフュージョン」など、その特性は様々だ。場面に応じて武器を切り替えながらプレイするのも、本作の持つ戦略性の魅力だと言える。もちろん、ソフィア-IIIにもメインウェポンとサブウェポンが用意されており、ストーリーを進めることでどんどんパワーアップしていく。

 やはり武器を持ち替えてプレイしてみると、色々な攻略法が浮かんできて面白い。筆者が特に気に入ったのは「ディフュージョン」だ。接近しないとその効果を十分に発揮できない、やや使い勝手の悪い武器だが、使いこなせるようになった時の感覚は別格。暴れ馬を乗りこなしたような感覚とでも言えばいいのだろうか。とにかく、ちょっとした達成感を感じるのだ。

多種多様な武器が登場するのも本作の魅力

 また本作は、ダンジョンに潜んでいるボスを探し出して倒し、パワーアップアイテムを入手し、次のエリアに進んでいくという流れのゲームだ。そのため、いわゆる通常のステージクリア型タイプのアクションゲームとは異なり、マップがそれなりに広い。何も考えずにプレイしていると迷ってしまうこともしばしばだ。ただ、マップが広いことがゲーム性を豊かにしていると筆者は感じている。いわゆる、探索する楽しみというやつだ。ゲームの腕もさることながら、マップの位置やギミックなどを頭に入れてプレイする必要がある。

 こういう書き方をすると、「難しいゲームなのでは?」と思ってしまう人もいるかもしれないが、特に難易度が高いというわけではない。プレーヤーにそれなりの思考が要求される場面もあるが、基本的にはサクサクと進んでいくスムーズさがある。

「探索」する醍醐味

 ゲームを進めていくと、本作のヒロインである“イヴ”が仲間になる。男独りの孤独な戦いから一転、女性キャラクターが加わったことで、冒険はグッと華やかに。イヴはソフィア-IIIに同乗し、さらに攻略に役立つアドバイスもしてくれるので、かなり重宝する存在だ。攻略に詰まったらイヴと会話をしてみるのも1つの手だろう。

本作のヒロイン“イヴ”。ゲームやアニメのヒロインって、なぜか倒れてることが多いような。気のせい?

レトロゲームとしてのクオリティも高く、ファミコン世代は間違いなく買いの1本。問題はNintendo Switch本体の品薄だが……

 最後に、Nintendo Switch版に実装されているマルチモード(おすそわけプレイ)についても少し。マルチでは、メインプレ-ヤーとアシストプレーヤーに分かれ、2人同時にメインストーリーをプレイできる。オンライン専用ではなく、オフラインで友だちと一緒にワイワイ盛り上がれるので、そういう意味でも、感覚的にはファミコンに通じるものがあるのではないだろうか。

 ちなみにアシストプレーヤーは、専用のサブウェポン「イレイザーボム」を使い、メインプレーヤーをサポートできる。画面に現われるカーソルに敵を合わせて敵を撃破していくのだ。ちなみに、アシストプレーヤーは画面内に登場しないので、倒されることもない。メインプレーヤーの攻撃が届かない場所にいる敵にも軽々とダメージを与えられるなど、攻略に与える影響はかなり大きい。そのためメインプレーヤーほどの自由度はないが、重要な役割を担っていることは間違いないだろう。

Nintendo Switch版はマルチプレイにも対応している

 ここまで紹介してきた「ブラスターマスター ゼロ」だが、いかがだっただろうか。シンプルなゲーム性ではあるが、1発で死ぬよう難易度では無いが、とはいえ決してヌルいゲームでもない。武器の選択など戦略性は確実に存在する。980円(税込み)というプライスながら、8エリア以上から成るボリュームも嬉しい。

 「超惑星戦記メタファイト」のファンはもちろん、若いユーザーにも自信を持ってオススメしたいので、本稿を読んで気になったという方がいたら、ぜひ購入を検討してみてほしい。今回はNintendo Switch版でのインプレッションとなったが、この原稿を書いている2017年3月14日の段階では、まだまだNintendo Switch本体の品薄は解消されていない状況だ。本作は3DS版もダウンロード販売されているので、Nintendo Switchを買えなかったという人は、3DS版も選択肢に入れてみるのもいいかもしれない。