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映画「バイオハザード」試写で味わった“全力の恐怖演出”見どころや原作再現度レポ

過去実写シリーズとの決定的な違いは?

【映画「バイオハザード」】
10月9日(金) 全国劇場にて公開

 国内外で愛されるホラーゲームの金字塔を原作とした実写映画「バイオハザード」が、10月9日(金)に公開される。

 今までにも「バイオハザード」シリーズの実写映画は何度も制作されてきた。そうした中、本作は完全新作として、「原作ゲームの本質である“恐怖の体験”をそのまま映像へと昇華させる」というこれまでにない画期的な挑戦を成し遂げている。

 本稿では試写会で味わった本作の魅力について、原作ゲームの内容や過去の実写版と比較しながら紹介していきたい。

【映画「バイオハザード」予告映像】

映画「バイオハザード」の内容は? ホラー映画界の鬼才が放つ完全新作ストーリー

 できるだけネタバレを避けつつ、本作の内容を紹介しておこう。まず主人公となるのは、医療搬送の配達人として働くブライアンという男性。口が悪く、多少適当な性格ではあるものの、“一般人”の典型のような人物像だ。

 物語はブライアンが、とある医療品をラクーンシティの総合病院に届けるという仕事を引き受けることから始まる。彼は目的地に向けて車を走らせている最中、道路に飛び出してきた女性をはねてしまうというトラブルに見舞われる。そして被害者の女性を病院に運ぼうとするが、そこから思わぬ展開が次々と巻き起こる……。

 公式が打ち出しているのは、「もしゲーム『バイオハザード』の世界に放り込まれたらどうなるか?」というコンセプトだ。どこにでもいる一般人が、恐怖と狂気に満ちた世界のなかで生き残りをかけて決死の冒険を繰り広げていく。

 この映画の原作となっているのは、全世界で2億1,300万本を出荷しているカプコンのサバイバルホラー「バイオハザード」シリーズ。とはいえ特定のナンバリングタイトルをもとにした作品というわけではなく、ストーリー自体はオリジナル展開となっている。

 「バイオハザード」といえば、実写化が盛んに行なわれてきたタイトルでもあり、とりわけミラ・ジョヴォヴィッチさん演じるアリスを主人公としたシリーズは全6作にわたって制作された。しかし、今回の映画化はそうした過去作とは切り離された設定となっているため、初見であっても安心して楽しめるだろう。

 監督を務めたのは、ザック・クレッガー氏。2025年公開のホラー映画「WEAPONS/ウェポンズ」によって世界中のホラーファンに衝撃を与えた“ホラー映画界の鬼才”だ。

 なお、本作は日本に先駆けて海外で公開が始まっており、全世界オープニング興収が約1億830万ドル(約170億円)に達したことも報じられていた。今のところ原作ファンからも好意的な感想が目立っている印象で、大手レビューサイト「Rotten Tomatoes」の批評家スコアでも高評価を獲得している。

根源的な恐怖とスリルを追体験……アクションではなくホラーに全力を注ぐ演出方針

 本作の見どころは、何よりも“恐怖”の表現を徹底的に突き詰めていることにある。たとえば演出面で言えば、豪快すぎるほどのジャンプスケアの多用が大きな特徴だ。

 暗闇のなかから突如飛び出してくるゾンビや静寂を突き破る爆音など、心臓破りのホラー演出がてんこ盛りだ。定番といえば定番の演出なのだが、近年ではジャンプスケアを抑制するホラー映画も増えているため、ここまで多用されるといっそ新鮮さすら感じられる。ちなみに試写会の会場では、ビクッとした観客の動きで座席が揺れ動く場面が幾度もあった。

 その一方、ゾンビ映画らしい“スリル”も本作の魅力。とくにゾンビに対して無力な一般人を主人公に据えるという設定の妙が、それを際立たせている。

 過去の実写版で主役だったアリスは元アンブレラ社の特殊工作員であり、超人的な身体能力の持ち主だった。たとえば映画第1作目、ゾンビ犬の群れに追い詰められたアリスが壁を使った“三角飛び”を披露するシーンはあまりにも有名だ。

 さらにアリスは銃器の扱いにも長けており、シリーズを通してさまざまな銃を使用していた。華麗な二丁撃ちをする場面も印象深い。すなわち過去のシリーズは、どちらかといえばアクション映画としての快感を追求した作品だったと言えるだろう。

 それに対して本作の主人公であるブライアンは、平凡な身体能力しか持っていない。銃の取り扱いに関しても、安全装置の外し方すらままならないほどだ。あまり賢くもなさそうで、どうしようもなく“マヌケ”な判断ミスをする場面もある。

 そのためブライアンはゾンビに対して基本的に無力で、ささやかに抵抗しつつ逃げ回ることしかできない。結果として、本作はどこまでも純粋なホラー映画として成立しているように思われた。

 また、恐怖の演出は、ザック・クレッガー監督の手腕が光る部分でもある。代表作の「WEAPONS/ウェポンズ」では観客を劇中の視点人物と一体化させ、恐ろしいシチュエーションを追体験させることにこだわり抜いていた。本作も同じような演出方針で、ブライアンの味わう恐怖と不安がダイレクトに観客へと共有されるような撮り方となっている。

原作ゲームへのリスペクト全開! “バイオハザードらしさ”の原点を思わせる恐怖体験

 本作のホラー演出は、ある意味で原作ゲームの本質をとらえているようにも感じられた。

 振り返れば初代ゲームの「バイオハザード」は画期的なホラー描写によって、多くのゲーマーに恐怖の原体験を植え付けた作品だった。その後アクション要素が強くなる時期もあったものの、「バイオハザード7 レジデント イービル」では“原点回帰”を成し遂げ、現代ホラーゲームの到達点として高い評価を獲得した。

 凶悪なクリーチャーに襲われる本能的な恐怖。絶望的なシチュエーションに放り込まれ、予想もつかない展開が次々と巻き起こる緊迫感。視界の自由が利かず、死角から何が飛び出してくるか分からない恐ろしさ……。今回の映画版では、こうした原作ゲームの要素が映画体験に落とし込まれていたように思われる。

 おそらくそれは単なる偶然ではない。というのもザック・クレッガー監督は原作ゲームの大ファンであることを公言しており、ソニー・ピクチャーズの公式動画では「“バイオ”マニアの私が全プレイ経験を詰め込んだ」、「ゲームの精神と雰囲気を忠実に再現した」とすら豪語しているからだ。

【【完全再現⁈】ハーブやタイプライターも登場。“バイオ”マニアの監督が語る映画『バイオハザード』の裏側】

 原作ゲームの視点を再現するため、カメラはブライアンの肩の後ろあたりを基本的なポジションに。これによって観客は、あたかもプレイヤーのような視点で彼の置かれた状況を追体験させられる。

 また場面転換についても、ゲーム的な作りになっていた。物語の進展に応じて、1つずつ“ステージ”が切り替わっていき、そのたびに、強敵との戦いが繰り広げられるのだ。力技ではどうにもならないピンチを、その場にあるさまざまなギミックやアイテムをいかして切り抜けていく……というワクワク感が本作にはつまっている。

 もちろん原作ゲームを直接的に引用した要素もあった。ラクーンシティやアンブレラ社といった固有名詞が登場したり、鍵のかかった場所が次々現れたり、回復アイテムの救急スプレーやハーブがさりげなく出てきたりと、原作ファンが気づくとうれしくなるポイントが仕込まれている。ブライアンの武器がピストルからショットガン、マシンガンへと切り替わっていくのも、“あるあるネタ”の一種だろう。

 まとめると、本作の注目ポイントは原作ゲームの“恐怖体験”自体を映像化しようとしていることにある。原作の登場人物が出てくるわけではなく、ストーリー的なつながりもないのだが、恐怖の演出という面においては限りなく“バイオハザードらしさ”を感じられるはずだ。その意味で原作ファンにも積極的にオススメできる作品となっている。

 近年になってさまざまな人気ゲームの映画化が進められているが、そのなかでも本作は画期的な試みと言えるのではないだろうか。ぜひスクリーンまで足を運び、未曽有の恐怖を五感で味わってみてほしい。