先行レビュー

敵の次の一手は、最初から全部見えている。『アストラエ・オラティオ』の読み合いが気持ちいい件

'89年の東京、魔法使いの紛争を裁くのは魔法を使えない公務員「主任」

【アストラエ・オラティオ】
配信日未定
『アストラエ・オラティオ』キービジュアル

 NCは、Dynamis Oneが開発中の新作『アストラエ・オラティオ』(Astrae Oratio)を、9月17日から幕張メッセで開催される「東京ゲームショウ2026」(TGS2026)にプレイアブル出展する。対応プラットフォームはiOS、Android。リリース時期は未定で、公式サイトでコンテンツが随時公開されている段階だ。

 本作を開発するDynamis Oneは、『ブルーアーカイブ -Blue Archive-』の開発陣が設立したサブカルチャー専門のデベロッパー。NCがパブリッシングを担当する。4月30日に『プロジェクトAT』の仮称から正式タイトルが発表され、以降はキャラクターや世界観の情報が小出しにされてきたが、実際のプレイ内容についてはほとんど明かされてこなかった。

 そんな本作のメディア向け先行体験会が開催され、TGS2026で世界初公開となる試遊ビルドを一足先に触る機会を得た。遊べたのは、メインとなるシナリオパートとバトル、そして練習用と思われるバトルコンテンツだ。

 結論から書いてしまうと、本作の戦闘は「敵が次に何をしてくるか」が常に見えている、1対1のラウンドアクションだ。そして、その周りを固めるシナリオと演出の作り込みがとにかく厚い。

 システムを理解するまでは少し戸惑うかもしれない。が、飲み込んだ瞬間から一気に面白くなる。本稿では、その辺りを中心にお伝えしていきたい。

【ティザーPV 「主任。『特区庁』で働いてくれないか?」 | アストラエ・オラティオ】
9月21日12時までクローズドβテスト参加者募集中

魔法使いたちの紛争を裁く、東京の公務員「主任」

まずは本作の世界観を整理しておこう。

舞台となる東京。トップ画面では、よく見ると東京タワーが見える

 舞台は'89年の東京。技術も文化も文明も複雑に絡み合い、私たちが知る当時より100年ほど加速しているかもしれない世界だ。ライバルの京都を退けてパリの次の万博開催地が東京に決まり、お台場の埋め立てが急ピッチで進められている。東京タワーの竣工も今年に控えている――という、見慣れているようで見慣れていない東京である。

 この世界の魔法使いたちは、自分たちと縁の深い土地の行政的な概念をシステム化することで「領地」を築いてきた。港区、新宿区、渋谷区、品川区、墨田区。現代の東京では特別区23区を含む行政区域ごとに魔法使いの領地が区分されており、彼女たちの衝突もまた行政的な対立として扱われる。揉め事の決着は「決闘裁判」、つまり決闘でつけるというわけだ。

 プレイヤーが演じるのは、「裏令指定特例区域管理庁」の主任。魔法使いではない、普通の東京の公務員である。東京の魔法世界の実権を握る裏内閣が指定した特例区域を管理する行政庁舎で、魔法使いにとっての東京都庁のような場所……とされているが、現在の所属公務員は主任ただ1人だ。

 つまり本作でヒロインたちから呼ばれるのは「主任」。先生でも提督でも指揮官でもプロデューサーでもマスターでもトレーナーでもなく、主任である。

 なお、今回の試遊でこうした設定が逐一説明されるわけではなかった。あくまでゲームとして世界観を感じさせる作りになっており、文字と言葉で説明しきってしまわない見せ方に好感を持った。

京都からの刺客と、まほ活の3人

 試遊のメインとなるのは、「港区少女たちのまほ活」に所属する田中えりん、アンナ・M・バッテンベルク、藤晴璃々愛の3人が、主任の命を狙う京都「見廻組」の魔法使い、九条由理亜と対峙するシークエンス。バトルだけでなく、それに伴うシナリオも合わせて楽しめる構成だった。

 「まほ活」は、アイルランド系の母を持つ庶民の中学生・えりん、ウィーン出身の貴族令嬢・アンナ、古代の巫女の魔法を扱う名家の令嬢・璃々愛という3人組。対する九条由理亜は、京都から主任を狙ってやってきた魔法使いで、詳細はほとんど明かされていない人物だ。万博の誘致で東京が京都を退けた、という世界設定が下敷きになっているのかどうか。その辺りは今回は分からずじまいだったが、想像を膨らませたくなる構図ではある。

 まず驚かされたのが、シナリオパートの画作りだ。CGではあるのだが、ほぼアニメである。カメラワークがよく動き、魔法をぶつけ合う場面は見ているだけでも楽しい。しかもずっと戦っているわけではなく、キャラクター同士の会話でもきちんと芝居が入り、表情も豊かに変わる。美少女キャラクターが登場するスマートフォン向けRPGとして、現時点でかなり上のところを狙っているのは間違いない。

シナリオの途中で「提供」画面が出現。見せ方が本当にアニメだ

 そして、その硬軟のつけ方がうまい。戦闘シーンはガチなのに、間に挟まる少女たちの抜けた会話で思わず口元が緩む。敵を派手に吹き飛ばしたあとに「倒したか!?」「それ(言ったら)だめなやつ!」といったお約束が飛んでくるあたり、分かってやっている。

 会話シーンそのものは見慣れたビジュアルノベル形式なのだが、こちらもテンポがよく、読んでいて手が止まらない。試遊が終わったあと、続きが気になって仕方がなかった。

敵の行動は常に見えている。「アクションフェーズ」と「判定フェーズ」

 さて、本作の見どころである戦闘だ。

 バトルは1対1で、短く密度の高いラウンドを積み重ねていく形式。1ラウンドは「アクションフェーズ」と「判定フェーズ」で構成されている。

 アクションフェーズでは、敵が次に行なう行動が画面上部に常時表示される。そのアイコンが右端まで達すると、敵はその攻撃を実行してくる。プレイヤーはそれまでの間に、AP(アクションポイント)を消費する「通常スキル」「戦闘スキル」、タイミングを合わせて特定の攻撃を受け流す「カウンタースキル」、戦闘中に貯まるUS(アルティメットスキル)ポイントが満タンになると撃てる「アルティメットスキル」などから、任意の手を選択する。

 選択後は判定フェーズへ移行。敵の行動に対して勝利・敗北が決まり、勝てばこちらの攻撃が通り、さらにAPを使った追撃で連続攻撃まで繋げられる。負ければこちらの攻撃は失敗し、敵の攻撃を食らうことになる。

攻撃し続けると敵を「BREAK」状態にできる。大ダメージを与えるチャンスだ
「カウンタースキル」発動時、画面上にメーターが出現。タイミング良くボタンを押すことでスキルが発動する

 あれこれ書いたが、要するに敵の行動は常に見えているのだから、それに勝てる手を選べば攻撃を続けられる、ということだ。理屈そのものは難しくない。慣れてくるとこのテンポがやみつきになってくる。

 ただ、初見でこれを飲み込むのは、チュートリアルを挟みながらでもやや骨が折れる。ここは正直に書いておきたい。もっとも、シナリオと演出を楽しませながら手順を教えてくれる作りになっているので、置いていかれる感じはなかった。

「防御」はない。代わりに交代がある

 もちろん、一方的に殴り続けられるほど甘くはない。敵の行動のなかには、判定で絶対に勝てないものが存在する。「阻止不能行動」だ。

 これが来たらダメージは覚悟することになるのだが、手がないわけでもない。本作には「防御」という概念がない代わりに、戦闘中はいつでも味方と交代できる。そこですかさず防御に秀でたキャラクターを前に出して凌ぐ、という選択肢が生まれるわけだ。

キャラ交代時にも敵にダメージを与えられる

 逆に、攻めるときに次々と交代して一気に畳み掛けるのもアリ。切り替えるたびに派手で可愛いアクションが差し込まれるので、眺めているだけでも楽しい。

 今回の試遊ではチームが固定されていたが、リリース時には多くのキャラクターが実装されるだろう。どんな戦略でどうチームを組むかは、当然重要になってくるだろう。もっとも、可愛い推しだけで固めるのもそれはそれで素晴らしい行ないである。

一発逆転の快感、「領地宣言システム」

そして注目したいのが「領地宣言システム」だ。

「領地宣言」発動時のカットイン。演出の力の入れようが分かる

 発動条件は今回の試遊では分からなかったが、戦闘の主導権を握るためのシステムで、バフがかかったり判定が有利に動いたりと、大ダメージを狙える大技という位置付けに見えた。発動時のカットインと演出がとにかくカッコいいので、TGS2026で試遊する方はぜひ注目してほしい。

 この「領地宣言」、物語のなかでも重要なキーワードとして扱われている。行政区域が魔法使いの領地と重なるこの世界で、領地を宣言するという行為がバトルシステムとして立ち上がってくる。システムと物語が地続きになっている作りは、素直に熱い。

「放課後まほトレ!」は後半になるほど手強い

 メインのシナリオとバトルのあとには、「璃々愛ちゃん&アンナちゃんの放課後まほトレ!」というバトルコンテンツもプレイできた。名前のとおり、おそらくは練習用のコンテンツだ。

基礎学習として本作の戦闘要素を楽しめるコンテンツ

 いくつかのステージが用意されているのだが、後半になるにつれて力押しでは通らなくなっていく。敵の行動を読み、交代と手札の切り方を組み立てる。先ほどのシステムをきちんと理解しているかが、そのまま突きつけられる作りだ。

「港区少女たちのまほ活」以外の魔法使いたちも多数登場

 TGS2026の試遊で全部クリアできた方は、ちょっと誇ってもいいかもしれない。

TGS2026ではホール7-C03でプレイアブル出展

 短い試遊ではあったが、シナリオ、演出、そして戦闘という本作の骨格はしっかりと掴めた。敵の行動が見えているからこその読み合いと、アニメーションの密度。この2点が、本作を語るうえでの軸になっていきそうだ。

 TGS2026では、ホール7-C03の会場で『アストラエ・オラティオ』の世界初となるプレイアブル出展が実施される。試遊は「シナリオ」と「戦闘」のどちらか1つを選ぶ形式とのこと。今回筆者が体験したのは、その両方にあたる内容だったことになる。

 ブースステージではゲーム序盤の物語を収めた「シナリオ上映会:プロローグプレビュー」を実施するほか、会場限定ノベルティの配布も予定されている。さらに、TGS2026開幕日となる9月17日には、プロローグシナリオの主要な内容を含む新規映像「プロローグダイジェストPV」の公開も予定されている。

 クローズドβテストの参加者募集も9月21日まで実施中だ。気になった方は、そちらも合わせてチェックしておきたい。