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第9回福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2016」が決定!

スクエニ・齊藤陽介氏、日野晃博氏、松山 洋氏、山倉千賀子氏トークが白熱

3月19日 開催

会場:天神イムズホール(イムズ9階)

レベルファイブの日野晃博代表取締役社長/CEO。「審査員は妥協せず真剣に見ている」と語り、これまで対象該当作品無し続いたというが、「それでもレベルを引き上げるべく真剣に審査を続けている」とコメントしかし今回は豊作だったことから「みんな喜んでいる」と顔をほころばせた
ゲストMCの菅本裕子さん。「ゲームはおじさまが作るものだと思っていた。私と同い年の人でも作れるんだ」など名言を連発!

 多くのゲーム開発会社が集まり、自治体も含め産学協同でゲームなどのエンターテイメント産業の誘致を図り、強化し盛り上げている福岡市で、毎年1月頃から3月にかけて開催されるのが「福岡ゲームコンテスト」だ。

 一般から募集したゲームソフトなどを審査し表彰するイベントで、今年で早くも9回目を迎えた。今回はゲスト審査員に、スクウェア・エニックスで「ドラゴンクエストX オンライン」や「ニーア ゲシュタルト/レプリカント」などを手がける齊藤陽介氏と、ソニー・コンピュータエンタテインメントで「SIREN」シリーズや「GRAVITY DAZE」を手がける外山圭一郎氏を迎えるなど、質実ともにかなりのレベルとなっている。

 3月19日には、審査結果が発表となる「GFF AWARD」が天神イムズホール開催された。授賞式にはゲスト審査員の齊藤陽介氏も駆けつけ、盛大に行なわれた。このイベントのすごいのは、毎年ゲスト審査員を含め、豪華ゲームクリエイター陣により生のアドバイスを聞くことができることだ。今回も最終審査に残ったゲームについて時には厳しく問題点を指摘していった。

 また、毎年ゲストを招いてのトークライブが開催される。今年はスクウェア・エニックスの齊藤陽介氏が担当しているタイトルの紹介などをはじめ、ゲーム業界をい目指す若者にエールを送った。

 さらに齊藤氏を囲む形で、レベルファイブの日野晃博代表取締役社長/CEO、サイバーコネクトツーの松山 洋代表取締役、ガンバリオンの山倉千賀子代表取締役社長、九州大学 大学院芸術工学研究院 コンテンツ クリエーティブデザイン部門准教授松隈浩之氏が登壇し、スペシャルトークショーを行なった。

 まずはこのトークライブの模様からお伝えしていく。

齊藤陽介氏「MMORPGの制作は労力がかかるが、お客さんの声を聞いて“やってやろう”というモチベーションは高い」

スクウェア・エニックスの齊藤陽介氏がゲストトークライブで登壇
自身の手がけたゲームを通じてゲーム業界の一端を来場者に語った

 齊藤氏はゲストトークライブで、ゲーム業界を目指す若者に向けた講演をおこなった。プロデューサーという仕事を担当している齊藤氏は「プロデューサーの仕事」について説明から入った。齊藤氏は「ディレクターは作品の面白さに責任を持つ人。でもいくら面白くても売れないと商品としては成り立たない。プロデューサーは商品の責任者。だからプロデューサーとディレクターに上下関係はない」と説明。

 そして、関わってきたタイトルについて、商品コンセプトと制作方法の違いについて説明。「ドラゴンクエストX オンライン」に関しては「『ドラゴンクエスト』が好きな人が集まれる場を作りたかった。これまでから『ドラゴンクエスト』のワードを使って、友達とコミュニケーションを取ってきたが、いっそのことゲームの中でそれができれば良い」と企画のスタート地点を説明。このMMORPGの魅力について「別に一緒にプレイできなくても、一緒の空間に他のプレーヤーがいるという感覚が大切。鳥肌が立つ」と表現。コアにコミュニケーションを取りながらゲームを進めるだけでなく、空間を共有する緩い繋がりが重要だと説明した。

 あとからゲームをプレイし始めた人が遊びやすいように常に改善を繰り返しているという。これがなかなか大変で、さらに最新バージョンとなる「Version.4」の開発、対応プラッフォーム「プレイステーション 4」、任天堂が開発中という新型ハード「NX」に対応バージョンを開発中で、運営も別チームとして存在することを考えると、労力が掛かると話した。

 もう1タイトルは「NieR: Automata」。「ドラゴンクエストX」が社内で制作されているのに対し、社外スタッフと制作が進められているという違いがある。ここで重要なのが、実際に顔をつきあわせてコミュニケーションを取ることだという。今の時代、電話やメールはもちろん、スカイプなど便利なツールはたくさんある。しかし問題が発生していなくても月に1回から2回は顔を合わせてコミュニケーションを取らなければ、意識が伝わらないという。齊藤氏は「顔をつきあわせて作るのが大切」と語った。

 ちなみに話はずれるが、「NieR: Automata」は4月16日にミュージックトークライブを開催し最新の情報を公開するという。

 最後に、「ゲームをたくさんプレイして欲しいのはもちろん、デジタルだけでなく全く違う趣味を持って見聞を広めるのは大切。(歳をとると)忙しいと遊べなくなる。若いうちに吸収しておいてほしい」と語りかけた。さらに、「みんながんばっているが、“がんばる”の数値化は難しい。まずは狭い範囲で他の人よりがんばって結果を出す。徐々にその輪を広げその中で1番がんばって結果を出していくことで、おのずと見えてくる」とコメント。会場のゲーム開発者予備軍にエールを贈った。

ゲストトークの後半は、日野氏、松山氏、山倉氏、松隈氏が登壇。初めは「若者へのアドバイス」的な話題のはずが、日野氏が「好きなことを話す!」と言い始め、MMORPGの話題に。一方松山氏の出番は少なくなってしまった(笑)

 ここで日野氏、松山氏、山倉氏、松隈氏が加わり、「若者へのメッセージ」をテーマにトークが繰り広げられる……はずだった。しかし話題はなぜかMMORPGについて。齊藤氏が昔からMMORPGが好きで数多くのタイトルを手がけてきたことと、日野氏がMMORPG好きであることから急遽テーマを変更。

 あちこちで語られているが、日野氏のMMORPG好きはすさまじく、「FINAL FANTASY XIV」をはじめ、「黒い砂漠」もかなりプレイしたのだとか。GeForce GTX Titan Xを4枚差したPCを作成し、会社近くのマンションにGeForce GTX Titan X3枚差しのマシンを3台装備し、どこからでもプレイできるようにしているという。0時に仕事を終え3時か4時までゲームをプレイするという強者の日野氏に、あらためて齊藤氏は驚きを隠せずにいた。

 齊藤氏は「ウルティマオンライン」、「EverQuest」など様々なタイトルにはまったが1番は「ディアブロ」だったという。制作に関しては「クロスゲート」を手がけるなど黎明期からMMORPGを支えてきた制作者の1人だ。

 一方松山氏はMMORPGが続けられないのだとか。「リネージュ」をプレイして「.hack」なども手がけたが、ストーリー性の追求など、方向性に違いがあるようだ。しかし今の時代、繋がっていないようでいて、いつの間にか他のプレーヤーと繋がっており、プレイしていることも多い。

 「今後のMMORPGはどうなるのか?」という日野氏の問いに、齊藤氏は「人と一緒に遊ぶのはそんなに求めていない。重要で大切なのはそこに人がいる空気感」とかたり、緩い繋がりの中で、“その場”を共有している感覚が大切だと説明。

 一方で開発スタッフのモチベーションは高く、「苦労の連続。毎日数十万人が来る遊園地と考えると問題は絶えず起こっている。でも、お客さんの声を聞いて『やってやろう!』と思える。これはスタッフの力になる」と語り、プレーヤーとコミュニケーションを取り、一緒にゲーム世界を作り上げていくのは、スタッフにとってもモチベーションが高まるようだ

 そして今後の展望については、やはりVRが挙がった。ここで日野氏が「『ドラゴンクエストXオンライン』でも、VRに対応するんすか?」と話を振ると「まだまだ!」と齊藤氏。それでも突っ込む日野氏に「個人的にはやりたいけど、いろいろ実験していきたい」と答えるに留まり、先は長そうだ。ちなみに齊藤氏も日野氏も「VRのハードが各社から送られてきていていて、触っている」ということで、当たり前の話だが、様々な実験や開発は両社とも行なわれているようだ。

ゲームソフト部門最終審査は、白熱のプレゼンテーション合戦!

 「福岡ゲームコンテスト」は、審査員による厳正なる審査が行なわれ、最終的に2次審査を5チームが通過。審査員が選んだ大賞の他、今年はコンテスト会場でこの5チームに加え、福岡のモデルチームを加えた計6チームによるプレゼンテーションが行なわれ、来場者の投票によるエキシビションマッチが行なわれるというライブ感あふれる部門も設置されていた。これが非常に熱く、会場一体となって面白いイベントとなっていた。

 それぞれのチームが3分間のプレゼンテーションを行ない、その後審査員による質疑応答を経て、来場者もゲームをプレイして投票を行なう。プレゼンテーションを行なったのは以下の6チームだ。

【斬】
チーム名:舞殿

 プレーヤーはキャラクターを操作してゴールを目指す。しかしステージには壁があったりギミックが仕掛けられておりゴールまで一直線に行くことはできない。このためプレーヤーはステージを大胆に“斬る”ことができる。斬ったステージを繋げたり移動させることでキャラクターをゴールに導くのだ。

 こだわりのポイントは、多種多様な32のステージ。プレーヤーによって解法が違うのはもちろん、1回斬ってクリアできる人もいれば3回斬ってもクリアできない人もいる。自分だけの解法を見つける快感がポイントになっている。

写真のようにステージを斬って繋げたりするパズル要素が大きい。答えが1つではない。自由度の高いパズルに仕上がっている

【see】
チーム名:岡 和秀

 2Dをベースに3D空間のステージが制作されており、影絵のようなグラフィックスは印象深い。「自分が変わることで世界が変わる」がテーマになっており、母親とケンカして出て行った父親を探すストーリーも興味深い。プレーヤーが大人に騙されることで、大人を信用できなくなり、登場するキャラクターがモンスター化するなど展開も個性的だ。

 「see」は1人で3カ月で作ったという力作。グラフィックスと音声はフリー素材を使用したとは言え、センスとやる気があればゲームを作れる現在のツール事情を反映した1作となった。

独特な作品世界が目を引く作品。作り込んで消化していくと、作家性の強い1作となり、人気を集めそう

【風船と少年とイソギンチャク、空へ昇る】
チーム名:AMG GAMES

 風船を持ってステージの上を目指していくアクションゲーム。風船は慣性の法則で初めは思ったように動かないが、操作に慣れることで上手く動かせるようになりポンポンと上を目指していける。

 操作性と「Unreal Engine」を使用した美麗でリッチなグラフィックスの融合が素晴らしいタイトル。松山氏は「画面の豪華さと3Dアクションのバランスをもう少し絞った方が良いかもしれない。強制スクロールなので、自分の位置を把握しづらい。場面によっては3次元ではなく2次元でプレーヤーが位置を把握しやすくした方が良かったのでは?」とアドバイス。ステージ上で全て細かく松山氏のアドバイスをメモで取って吸収しようとするチームメンバーが素晴らしかった。

こちらも個性的な1作。風船というなかなか自分の思い通りに動かないものを使い、移動するというアイディアは面白い

【スマホで鍛冶屋タップスミス】
チーム名:JGZ

 鍛冶屋シミュレーション。鉱石をタップして延ばしてオリジナルの剣を作っていく。その剣を使ってダンジョンを探索。新たなる鉱石をゲットして様々な武器を作っていく。鉱石をミックスするといった武器作成の課程で様々な要素も用意されているほか、ダンジョンには様々なモンスターがおり、作成した武器で敵の攻撃を無効化できるといったゲーム要素もある。

 ゲーム的な要素がちりばめられており、練りに練った作品というイメージ。

計算されたゲームシステムと、連打して剣を作り上げていくという爽快感が同居している。やりこみ要素が詰まった作品に仕上がっている

【TAKTRHTHM】
チーム名:Project TAKT

 画面奥から流れてくるパネルをタッチしていくリズムゲーム。面白いのはLeapMotionというデバイスを使っている点。楽器「テルミン」のようにセンサーに手をかざして指揮者のように操作して遊ぶ。

 さらに簡単にパネルを配置していくことができるステージ作成ツールも同時に作成これも高い評価に繋がっていた。

基本的には、オーソドックスなリズムゲームだが、LeapMotionというデバイスを使ってプレイさせるところが爽快感あふれるゲーム性に繋がっている
同時に、簡単に面を作ることができるツールも好評価を得ていた
これがLeapMotion。手をかざして操作する

【にゃんこ・ストレート】
チーム名:Third Ground's

 4人対戦アクション。他のプレーヤーキャラクターを攻撃することで点数を稼いでいく。ステージにいるねずみを取ることで必殺技を出して敵を一網打尽にできるほか、1番点数が高いプレーヤーを攻撃すると高得点を得られるなど、ゲーム終盤に逆転できるような工夫がされていて、対戦ツールとしてなかなか面白い作りとなっていた。

 制作チームは、福岡の専門学校から選抜されたチームで現役のゲームクリエイターのアドバイスなどを受けながら制作したため、エキシビションマッチのみのエントリーとなる。

アクションゲームらしい作品。プレイしてみたが、もうなにがなにやらわからないくらいエフェクトが掛かっていて、逆に爽快感しかないという出来になっていた

プレゼンテーションでは、日野氏、松山氏、山倉氏、齊藤氏という豪華すぎるゲームクリエイター4人に対戦プレイしてもらっていた。山倉氏がトップで負けた日野氏はショックを受けていた。ちなみにビリは唯一事前にプレイしていた齊藤氏。

展示会場では来場者にプレイしてもらい、投票してもらっていた。来場者も学生と言うこともアリ熱量が半端なく、「どんなツールで、何人で、どれくらいの期間で作りましたか?」といったまじめな質問が飛び交っていた。非常に熱いものを感じた

大賞は新デバイスを使ったリズムゲーム「TAKTRHTHM」! スポンサーのTSUKUMO賞は「風船と少年とイソギンチャク、空へ昇る」

大賞はリズムゲーム「TAKTRHTHM」!

 「福岡ゲームコンテスト」の結果を先に書いてしまえば新入力デバイスLeapMotionを使用したリズムゲーム「TAKTRHTHM」だ。日野氏をして「アドバイスするべき点が見当たらない」というほどに絶賛された出来が受賞の理由だ。

 日野氏は選考の経緯を振り返り「これまで、厳し過ぎるんじゃ無いかと言われるほど厳しく選考してきて、タイトルが選出されないときもあった。しかし今回はまれに見る優秀な作品が多く、選出は難航した」のだという。その理由について審査員が口を揃えたのが「ツールが充実してきたから、誰でもゲームが作れるようになり、センスのある質の高いタイトルが数多く登場した」という点。そしてさらにプロの制作者の視点として「」その先にお客さんが求めるものとは?」という問いかけだ。誰もが作れる時代に、誰に向けてどんな内容のものをどのようなシステムで制作するのか? 制作ハードルが下がったからこそ、レベルは一段階あがったと言えるかもしれない。

 そんなハイレベルな中、選出されたのが「TAKTRHTHM」。次回作にも注目したい。

 そしてエキシビションマッチを制したのは「にゃんこ・ストレート」だ。インフレしまくるスコアが気持ちいい、非常にゲームらしいアクションゲームに仕上がっていた。プレゼンテーション時に、日野氏、松山氏、山倉氏、齊藤氏という豪華すぎるゲームクリエイターに4人対戦をしてもらって盛り上がったのも勝因の1つかもしれない。

 松山氏は「数多くのメンバーをまとめるのは大変?」という質問にリーダーは「みんなに支えられて……」と答えると松山氏は「実際の制作現場はトラブルだらけ。人間関係も大変。それはオレらみんな知っている。でも教育の現場ではなかなか体験できない。だから上手くいかない現場を体験できた君たちには非常に力になったと思う」とズバリとコメント。こういった現場に根ざしたアドバイスは、学生にとって非常にためになることだろう。真剣にゲーム制作者を育てようとしているGFFの元、福岡のエンターテイメント産業はさらに大きくなっていく予感がした。

優秀賞を受賞した「斬」を作成したチーム「舞殿」
優秀賞を受賞した「see」を手がけた岡 和秀さん
こちらも優秀賞。「風船と少年とイソギンチャク、空へ昇る」。制作はAMG GAMES
チーム・JGZによる「スマホで鍛冶屋タップスミス」
TSUKUMO賞をゲットしたのはAMG GAMESの「風船と少年とイソギンチャク、空へ昇る」
イベントには出席しなかったが、審査員賞を発表した外山圭一郎氏
エキシビションマッチを制したのは「にゃんこ・ストレート」を制作したチーム「Third Ground's」

ゲームキャラクター部門の優秀賞は李炯坤氏。キャラクターを活かすべく、様々なグラフィックスが描き込まれていたところが評価に繋がった

会場に設置されていたTSUKUMOブース。ここではOculus Riftを体験できるとあって、来場した学生は興味津々。この体験が新しいコンテンツ制作の刺激となれば良い

(船津稔)