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「Sound BlasterX G5」、「Sound BlasterX H7」レビュー
様々なゲームでサウンドを最適化! ハイレゾ対応USBオーディオ&USBヘッドセット
(2016/3/11 12:00)
ゲーム内で体験できるシーンの雰囲気や没入感に強く影響する要素として、サウンドは非常に大きな比重を占める。特に一人称視点のゲームや、ホラーゲームはその傾向が強いだろう。
プレイ環境は人それぞれだが、製作者が意図した通りの体験を楽しむためには、それなりの投資が必要になることもある。特にPCゲームは、自作やBTOなどで自分好みのプレイ環境を構築する楽しみもあるが、ことサウンドに関しては好みの環境が人それぞれであり、こだわり始めたらきりがない。
では現実的に手を出しやすい価格で、高いクオリティのゲームサウンド体験を得られる製品は具体的に何かと考えたとき、筆者はクリエイティブメディアの「Sound BlasterX」シリーズを推したい。
オーディオファンならご存じの通り、オーディオ周りはとかくコストがかさむもの。本格的なオーディオ機器はそれこそ天井知らずであるが、Sound Blasterシリーズは伝統的に比較的手の出しやすい価格で販売されており、PCゲーマーとしては古くから馴染みのあるブランドだ。長年ゲーミングサウンドを得意分野とし、蓄積してきたノウハウから生み出されるプロダクトには、他メーカーの追随を許さない安心感がある。
今回紹介するのはUSBオーディオの「Sound BlasterX G5」と、ヘッドセットの「Sound BlasterX H5」および「Sound BlasterX H7」。いずれも1万円台後半から2万円前後の価格で、USB接続の「Sound BlasterX G5」と「Sound BlasterX H7」はハイレゾ音源再生にも対応し、Windows PC用のアプリケーションを併せて使えば音響効果も調整可能。自分好みのゲームサウンド環境を追求しやすい仕上がりとなっている。
本記事では前半で各製品の特徴と概要を紹介し、後半では複数のタイトルで実際に使ってみた際のインプレッションをお伝えしていきたい
小型筐体に多様なサウンド体験を凝縮した「Sound BlasterX G5」
USBオーディオ「Sound BlasterX G5」(SBX-G5、実勢価格19,000円前後)は、最大24bit/192kHzのハイレゾ再生(Windows PC接続時)に対応するほか、7.1chのバーチャルサラウンドが利用可能。オーディオプロセッサにはマルチコアの「SB-Axx1」を採用したハイクラスの機種だ。
Sound BlasterX G5の特徴は、Windows PC用アプリケーション「BlasterX Acoustic Engine Pro」と組み合わせて、各種音響パラメータの詳細な調整が可能な点。Sound BlasterX G5によるサウンド体験は、この数値調整がキモとなる。もちろん、あらかじめプリセットも用意されており、手軽に多彩な音響効果を楽しむことができる。
BlasterX Acoustic Engine Proで調整可能な項目は、バーチャルサラウンドエフェクト「Surround」、圧縮音声の欠落データを補間する「Crystalizer」、低音を調整する「Bass」、映画などの、極端な音量の変化を自動的に調整して聞きやすくする「Smart Volume」、人物の声を聞き取りやすくする「Dialog Plus」の5種類。設定画面では各項目の値を適用してFPS、ムービー、ミュージックのサンプルが鳴らせるようになっており、調整した項目をテストできる。また、このほかの調整機能としてはボイスチェンジャー機能「VoiceFX」とイコライザーを備えている。
このうちボイスチェンジャー機能「VoiceFX」は、友人とボイスチャット搭載のゲームや、ボイスチャットソフト(TeamSpeak3、Mumble、Skypeなど)を使って遊ぶときに使える機能だ。調整項目は「ピッチ」や「振動」、「フォルマント」(複数の周波数による音の特徴)といった8項目を変更可能で、自分なりの"変声"を作れる。ゲーム内蔵ボイスチャットやプレイ動画の実況配信などで自分の地声を出したくないときなどには重宝する機能だろう。
設定が面倒な場合は、「男声」、「女声」、「年配者」、「情緒不安定」、「エルフ」、「悪魔」など18種類の豊富なプリセットが用意されているので気に入ったものを選べる。個人的にはベタでわかりやすい「ロボット」がおすすめだ。
調整した項目はxml形式のプロファイルとして保存可能。「League of Legends」や「Call of Duty Series」など、特定のタイトルに対応させたプロファイルも複数用意されており、本体内に3つまで保存して、用途に応じて切り替えられる。
シーンによって有効/無効を切り替えられる機能としては、「敵の足音」などゲームの環境音を強調する「Scout Mode」がある。有効にした際の効果はかなりはっきりしていて、適用前と比べると薄い膜を1枚取り去ったかのようにクリアな印象を受ける。Scout Mode自体はソフトウェアによる強調効果なので音質を気にする向きもあると思うが、今回試した限りではノイズや音の歪みを感じることはなかった。なお、Scout Modeは切り替えの機会が多いことから、本体に専用のスイッチが設けられている。ちなみに、Scout modeとBlasterX Acoustic Engine Proの機能は排他仕様となる。
また、Sound BlasterX G5はWindows PCのみならず、PS4でも使用できるところも大きな特徴となる。
通常、PS4で音響効果を楽しみたい場合は別途AVアンプなどを購入して配線する必要があるのだが、Sound BlasterX G5があれば、USB端子に差し込むだけで、手軽に様々なサウンド効果を楽しめる。PS4自体には音響効果にあたる設定はないので、BlasterX Acoustic Engine Proで本体内に記録したプロファイルや、Scout Modeの設定をPS4にも適用できるのは、Sound BlasterX G5を導入するメリットの1つだ。特にScout ModeとSBX設定を好みに応じてボタンで切り替えられるのは、押さえておきたいポイントだ。
アクションゲーム「Bloodborne」で実際に試してみたところ、ヤーナム市街に荒々しく吹く風や炎上する十字架の音、遠くで聞こえる鐘の音、獣狩りの群衆が発する悪意の言葉など、陰鬱で狂気に満ちたヤーナム市街の雰囲気を引き立てる効果を実感することができた。Bloodborneは元々常時BGMが流れるようなタイトルではなく、環境音による雰囲気作りに重きを置いた作品だ。ゆえにSound BlasterX無しでも十分音の良さを楽しめるのだが、Sound BlasterX G5+H5の組み合わせで聞くと、より環境音が引き立って、作品世界へのより強い没入感が得られる。BlasterX Acoustic Engine ProでPS4向けタイトル用のプロファイルを用意してみるのも良いかもしれない。
また、24bit/192kHzまでのハイレゾ音源を楽しむ場合は、再生時にオーディオプロセッサをスルーして直接DACに出力する「ダイレクトモード」を利用するのがおすすめだ。プロセッサを迂回することにより、ソースに対して余計な処理が加わらず、音源の持つ本来の音色を存分に楽しむことができる。このように、ゲーム用途だけでなく、手軽に高音質の音楽ファイルやライブ動画を楽しみたい場合にも切り替えて実用に堪える利便性は、特筆すべきポイントと言えるだろう。
快適な装着性と癖のない音質で長時間の使用に堪える「Sound BlasterX H5」
「Sound BlasterX H5」(実勢価格17,000円前後)は、今回「Sound BlasterX G5」の検証用に使用したアナログゲーミングヘッドセットだ。
Sound BlasterX H5のヘッドホン部分はいわゆる密閉型で、ケーブルはプラグイン式。ヘッドホンとマイクの音声入力端子がそれぞれ独立しており、マイクを利用しない場合は外せる設計となっている。
約30時間ほど使ってみた使用感としては、側圧もそれほど強くなく長時間着けっぱなしでも快適に使用できた。音の出方は癖もなく、「BlasterX Acoustic Engine Pro」で設定した音を素直に反映してくれているように感じる。傾向としてはいわゆるモニター系に近い印象を受けた。
単体でPCサウンド全部を任せられるUSBヘッドセット「Sound BlasterX H7」
上述の「Sound BlasterX H5」の上位機種にあたる「Sound BlasterX H7」(実勢価格20,000円前後)は、「Sound BlasterX H5」をベースに、ヘッドホンアンプを内蔵し、ヘッドセットとアンプの機能を1台で利用できるUSBゲーミングヘッドセットだ。3.5mmピンジャックのアナログ接続に加えてUSB接続にも対応しており、PCと接続することで24bit/96kHzの音源を楽しめる。また、USBヘッドセットとして、PCのみならずPS4に挿して使えるところも見逃せないポイントと言えよう。
Windows PC接続時には「Sound BlasterX G5」と同様に「Sound BlasterX Acoustic Engine Pro」が使えることから、7.1chのバーチャルサラウンドやAcoustic Engine、プロファイル、イコライザ、Scout Mode、VoiceFXといった各種機能を利用できる。
なお「Sound BlasterX H7」にはハードウェアボタンがないため、Scout Modeの切り替えは「BlasterX Acoustic Engine Pro」上から行なうほか、1度に設定できるプロファイル数も1つまでとなる。
本機独自の機能としては、ハウジングの「X」部分に仕込んであるLEDを発光させられるイルミネーション機能が挙げられる。
サイズやヘッドセットとしての使用感は「Sound BlasterX H5」と同様だが、ヘッドセット単体でUSBオーディオとしても運用できる手軽さは非常に魅力的。ハイレゾ対応は24bit/96kHzまでであり、さすがに単体USBオーディオの「Sound BlasterX G5」にはスペック的に及ばないものの、それでも本機をPCに接続するだけで外部音声デバイスとして動作するのはとても便利だ。
また、「Sound BlasterX H5」とは異なりヘッドホンにケーブルが固定されリモコンが搭載されている。このリモコンの先にマイクロUSBケーブルをつなぐか、アナログケーブルをつなぐかによってUSB接続かアナログ接続を選択できる。手元でのマイクミュート切り換えが可能、アナログケーブルでスマートフォンに接続すれば、音声通話や応答コントロールもできる。