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「LoL」の日本リーグ「LJL CS」で大規模な不正が発覚

3チームを参戦停止等の処分。「LJL CS」本戦開始を1週間延期へ

2月15日発表

 「League of Legends」の日本リーグ「League of Legends Japan League(LJL)」は2月16日、「LJL」の下部リーグ「LJL Challenger Series」において、複数のチームで不正行為が行なわれていたことを明らかにした。「LJL」運営事務局では、対象の3チームを参戦停止を含む処分を行ない、2月18日より開幕を予定していた「LJL CS」本戦について、開幕を1週間遅らせ、2月25日開始とすることを発表した。

「LJL」による公式発表
KINGDOMは、今回の参戦停止処分を受けて、無期限の活動中止を発表している

 今回発覚した不正行為は、海外からのアクセスと選手の替え玉行為。「LJL」では、まだ日本サーバーが正式稼働しておらず、北米サーバーに接続して対戦しなければならないという制約から、公平な対戦を維持するため、海外からのアクセスによる参戦を禁じている。

 今回、DragonflyGaming(DFG)とScarZの2チームで北米からアクセスしていた選手がいたほか、DFGはさらに登録外の別の選手にプレイさせるという替え玉疑惑も持ち上がった。これを受けて「LJL」運営事務局では、「LJL CS」に参戦する全チームを対象に調査したところ、2チーム以外のチームでも海外IPアドレスからの参戦が認められ、かつVPNを介して日本からのアクセスを偽装している疑いもあることを発表した。

 「LJL」運営事務局では、リーグルールの不備を認め、今後ルールに「VPN接続の禁止」等の条項を追加する一方で、現時点では替え玉を断定できる証拠がないため、厳重注意処分という比較的軽い処分とした。なお、実際に海外から参戦した該当選手2名は、チームの処分とは別に2試合の出場停止処分が下された。

 今回の件では、「LJL」の正式発表に先駆けて「LJL CS」で不正行為が行なわれていることを公式サイトで暴露したKINGDOMに対して、「LJL CS」への参戦停止処分という今回最も重いペナルティが与えられた。理由について「LJL」運営事務局では、「機密情報を漏洩し、運営側からの削除勧告に対して建設的な態度が見受けられなかったため」としている。

 今回の問題の根本にあるのは、あいまいなルール表記と、日本でのリーグ専用サーバーの未稼働だ。「LJL 2016公式ルール」には、今回の問題の大前提となる「選手は日本在住で、日本からプレイしなければならない」とは実はどこにも書かれていない。「居住地域の要件を満たさなければならない」とあるだけである。ここに根本的な不備があるのではないだろうか。

 また、「LoL」はまだ日本で正式サービスが開始されていないこともあり、まだ日本国内にタイムラグ無しで対戦できるリーグ専用サーバーが稼働していない。このため「LJL」では北米のリーグサーバーに接続しており、「LJL」出場選手たちは高いPingで戦わざるを得ない状況を強いられている。

 しかし、北米からプレイする事で、Pingを200msから20ms程度まで一気に下げることができる。ビギナーならいざ知らず、「LJL」に参戦するトッププレーヤーならこのPingの違いは決定的な差になる。この事実は「LoL」プレーヤーなら誰でも知っていることであり、勝ちにこだわるあまり「北米接続やVPN偽装が黙認されるのであれば、北米から参戦させれば勝てるのではないか」と考えてしまったチームマネージャーがいてもおかしくないと思う。

 「LJL CS」は、「LJL」出場を目指してしのぎを削る下部リーグで、「LJL」と異なり、すべてオンラインで試合が行なわれることから、海外アクセスや替え玉行為が行ないやすい環境にある。また、予選リーグを含めると、「LJL」より遙かに多いチームが参加するため、参加選手に関する調査が不十分になっていた側面もあるだろう。それだけにチームマネージャーが“悪魔のささやき”に応じないようにするための明確なルール作り、公平な競技としてのモラル教育は、健全なe-Sports発展のために必要不可欠だ。「LJL」を主催するライアットゲームズや運営を担当するSANKOは、これを機に運営体制を巻き直し、e-Sports普及に向けて誰もが納得できるルール作り、大会運営を行なってくれることを期待したいところだ。

(中村聖司)