ニュース
「ストリートファイターV」小野P&綾野APインタビュー
「カプコン、バンダイナムコ全面戦争開始」!? 小野氏が語るリリース後の構想
(2016/1/31 00:00)
イベントレポートに続いて、「ストリートファイターV」ステージイベント後に実施されたメディアインタビューの模様をお届けしたい。
登壇者は「ストリートファイターV」プロデューサーの小野善徳氏と、アシスタントプロデューサーの綾野智章氏。アジア大好きで知られる小野氏は、日本と同様、格闘ゲーム熱の高いアジアのメディアを相手に、冗談とも本気ともつかない軽妙な言い回しで笑いの絶えないインタビューとなった。
ストーリーやキャラクター。気になる今後のアップデートについて
――2016年6月の大型アップデートではストーリーモードが充実するということですが、もう少し詳しく教えて欲しい。
小野氏:初代「ストリートファイター」から「ストリートファイターIV」まで、キャラクター毎にプロローグ的な前振りがありましたが、「ストリートファイターV」を発表した際に、カジュアルゲーマーから「なぜストリートファイターに『モータルコンバット』のようなストーリーモードがないのか?」という声があって、ストーリーモードは需要があるんだということがわかって、そこに向かってトライしてみようかというのが、今回のストーリーエクスパンションです。「ストV」の立ち位置としては、時間軸は「ストIV」と「ストIII」の間を補完するストーリーになっています。「ストIV」を発表するときに、ちりぢりになったものを1つにまとめようとしたんですが、結局「ストIII」まで届かなかったので、今回はその間を補完するストーリーを入れてあります。
――新キャラのファンは、中国のゾンビ、いわゆるキョンシーのような感じだが、そこから発想を得たのか? あと「数字の2が好き」という設定について詳しく教えて欲しい。
小野/綾野氏:たまたまです。手に毒を付けて、毒手の拳法の使い手なので手を隠しているだけで、キャンシーを意識はしていません。ファンは2が大好きで、シャドルーの四天王のナンバーツーでもある。伸長も212cmなのに222にしていたり、とにかく個性的なキャラクター。バトルにおいても弱パンチ、中、強は2ヒットになるような設定になっています。
――「ストV」はシリーズ中で、もっとも多くのCBTを行なったタイトルだと思うが、これまでテストをしていなかったのに、今回はテストをたくさん行なった理由と、ユーザーからのフィードバックで活かしたものはありますか?
小野氏:「ストリートファイター」シリーズは、コンシューマー(CS)版を出す前にアーケード版を出してきました。今回はCS版からスタートするということを方針として決め、これまではアーケードでのロケテストを通じて様々なプレイデータ、チューニングを行なってきたが、CS版ではそれがないので、ではどうユーザーが求める格闘ツールを作るかというところで、CBTをロケテスト代わりにして、オンライン上で数多く徹底して行なってきました。
「ストV」の作り方は、バトルバランスのフィードバックを速やかにゲームに反映させようと、春のイベント、夏のイベント、CBT1のそれぞれで変えたり、CBTの途中で変えて出して見たりといったトライアルをしています。CBT4も集めたデータに基づいたチューニングを行なっています。この結果、だいぶアーケードのロケテストに近い反映ができています。「ストV」は、今後も引き続きオンラインでのフィードバックから、次のシーズンのバトルバランスを決めていきたいと考えています。
――「ストIV」は、トータルで5つのバージョンをリリースしたが、「ストV」はどういう計画になるのか?
小野氏:基本は、最初に出すディスクを元に、アップデートを繰り返していきます。いわゆる「2」、「α」、「スーパー」、「ダッシュ」、「ターボ」、「ウルトラ」とかいう新バージョンが今後出るかどうかというご質問なら、それはないです。無料のアップデートでバージョンアップしていきます。お金を頂く場合は、ゲーム内通貨を販売するという形でビジネスしていきます。来年この場で、「『スーパーストリートファイターV』が出ます」というようなことがないようにしたいです(笑)。
――他の格闘ゲームで実装されている団体戦や援護キャラといったシステムを、「ストV」で搭載しなかった理由は?
小野氏:「ストV」では、すべていったんリセットしようと思っています。「ストIV」を7~8年間サービスしてきたときに、プレーヤースキルが極まったり、ハードコアに偏った部分を一回リセットしましょうということです。団体戦やサポートシステムを入れると、その分だけ覚えることが増えてしまうので、もちろんアイデアは色々ありましたが、意図的に入れるのを避けました。「ストリートファイター」のDNAを持った1対1の対戦をまず実現することが「ストV」のスタートになっています。
団体戦やサポートシステムは、発売後にそういう要望が多く、格闘ゲームでそういう流れが強くなれば、技術的には実装することに問題ないので、「ストIV」でもそういうシステムはありましたから、時期が来たら入れて行くことになると思います。逆にシングルプレイに対する希望が強ければ、シングルの強化をしていく。「ストV」のコミュニティが何を望むかによって拡張する内容を変えていきます。
――「鉄拳7」では豪鬼が登場し、ストーリー的にも絡むという展開がありましたが、「ストV」に「鉄拳」のキャラクターが登場するような逆のパターンはあるか?
小野氏:そもそも今回「鉄拳7」で使われていたことを僕は知りませんでした。勝手に使われていて、そろそろ訴訟の準備をしなければならないなというのが今のステータス。カプコンは立派な上場企業。泥棒みたいなことはしない。メディアの皆さんの記事の一面に「カプコン、バンダイナムコ全面戦争開始」と書いていただければいいのではないかと思います。
カプコン側の「鉄拳」キャラは、前に3~4年前、「ストリートファイター X 鉄拳」をリリースしたので、「ストV」に関しては、「鉄拳」に限らず、ほかのタイトルを入れることは今は考えていない。まずは「ストV」のキャラクターでキチッとe-Sportsとして確立させたい。その上で違うことを考えられればいいなと。その頃には裁判も終わっているのではないかと思います。
――e-Sports展開において、カプコンプロツアー以外の話は何か決まっていますか?
小野氏:他のリーグに「ストV」が参加するかどうかという話だと思うんですが、2016年はまずは、まだカプコンプロツアーをはじめて4年5年なので、まだまだ広げなきゃ行けない地域、場所、回数ももっと増やしたいので、PSXで発表させていただいた通り、「ストV」で賞金総額50万ドルのプロツアーをやることに集中していきます。他のチャンネル、団体と組んでやることはまた決まり次第お話しさせていただくつもりです。
――「ストV」のキャラ数は初期16キャラクターに、追加で6キャラで計22人。これは「ストIV」と比べると少ないと思うんですが?
小野氏:8年前を思い出して頂きたいんですが、「ストIV」はもっと少なかったんですよ。いま「ウルトラストIV」を見ると、どのキャラを選んでいるかわからないぐらい目がちかちかするような44キャラもいます。覚えられるキャラ数があると思うので、そこはステップアップで出していこうと思っています。2016年のシーズンパスでは6キャラを出すと発表しましたが、17年、18年、19年、うまくいけば2020年の東京オリンピックの正式種目に選ばれないかなとまだ個人的に諦めていないんですが、その頃にはもっとキャラが増えていると思います。