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「第20回FFXIVプロデューサーレターLIVE」開発トークセッションレポート

ヴィジュアルワークス生守一行氏が「FFXIV」CGムービー製作秘話を語る

 スクウェア・エニックスは4月11日、「ファイナルファンタジーXIV」初の拡張ディスク「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド」のワールドプレミアを東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズにおいて開催した。

ワールドプレミアは東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで行なわれた
シアター前には特設コーナーが設けられていた
プロデューサー/ディレクターの吉田直樹氏とコミュニティチームの室内俊夫氏

 ワールドプレミアは、「第20回FFXIVプロデューサーレターLIVE」の公開生放送の前半を使って行なわれ、ヴィジュアルワークス制作による「蒼天のイシュガルド」オープニングムービーの公開のほか、「蒼天のイシュガルド」の全容が明らかにされた。短い休憩を挟んで後半では、お馴染みとなっているゲストを招いての「開発トークセッション」が行なわれた。前半のワールドプレミアについては、別稿にて詳しくお伝えするので、本稿では、開発トークセッションの模様をお伝えしたい。

 開発トークセッションのゲストとして招かれたのは、スクウェア・エニックスのCG制作部門ヴィジュアルワークスを率いる生守一行氏。そしてプロデューサー/ディレクターの吉田直樹氏と、コミュニティチームの室内俊夫氏というお馴染みの面々。生守氏の登壇に先立ち、CGムービー「ファイナルファンタジーXIV - Flames of Truth」が上映された。

 この未知の映像は、「旧FFXIV」のフィナーレと、「新生FFXIV」のオープニングを繋ぐ「時代の終焉」トレーラーの“完全版”。「時代の終焉」トレーラーのラストで賢人ルイゾワが光に包まれて終わりとなるが、実際にはその後の物語があり、ゲーム内では「大迷宮バハムート:真成編」3層をクリア後に流されるものとなる。映像の内容は、完全にネタバレとなるため、見たくない人は顔を伏せてほしい旨の案内があり、その上で映像が公開された。

 この映像は、言わば「大迷宮バハムート」のエンディングに相当するものだが、賢人ルイゾワに関する重大な謎が明らかになる。吉田氏がゲーム内で見た人を挙手を求めると、パラパラと手が上がり、多くのコアユーザーが集まっていることが窺えた。吉田氏としてはやはりゲーム内で、その前後のいきさつも踏まえて見て欲しいということで、「蒼天のイシュガルド」のリリースに合わせて、「大迷宮バハムート」の緩和も行なわれるためチャレンジして欲しいとのことだ。

【FINAL FANTASY XIV - Flames of Truth】

【ファイナルファンタジーXIV - Flames of Truth】

ヴィジュアルワークス チーフクリエイティブディレクターの生守一行氏
登壇した生守氏
ヴィジュアルワークスの最新作となる「蒼天のイシュガルド」オープニングムービー
開発トークセッションの模様
後半からは祖堅氏も乱入し、大盛り上がり

 その後に登場した生守氏は人の良さそうな満面の笑顔で挨拶し、開発トークセッションがスタートした。ヴィジュアルワークスは「FFXIV」に限らず、基本的にあらゆるタイトルのCGムービーの制作を担当しており、「FFXIV」については「旧FFXIV」からCGムービーの制作を担当しているという。

 吉田プロデューサーとの最初の仕事となる「時代の終焉」トレーラーは、吉田氏から「全部ぶっ壊すんでよろしく」と依頼があり、ヴィジュアルワークスには“壊す”ということは好きな連中が集まっているため、高いモチベーションを持ってCG制作にあたったという。

 「FFXIV」のCGムービーの制作過程について問われると、開発チームによる“字コンテ”の提出からはじまり、それをヴィジュアルワークス側で絵コンテに起こし、次いで3Dデータとして動画のようなものを作り、各モデル、エフェクト、ライティングを作って行くという。この際の開発ツールは、基本的にゲーム制作と同じだが、違うツールやダイナミクスを使用することもあるという。

 吉田氏が言葉を継いで、「凄く簡単に言うと、ボクがA4の紙3枚ぐらいに流れを字コンテで書いて、それを生守さんにプレゼンします。ここはこういうシーンで、こういう感情で、こういう表現をして欲しいという具合に。それをヴィジュアルワークスがプレビズ(プレビジュアライゼーション)に起こし、こういう素材を使ってこんな感じでいいかなというのを貰って、そこから少し詰めて、あとはお願いしますという感じ」と解説してくれた。

 1本のムービーの制作期間について聞かれると、生守氏は、映像の長さや中身によっても違い、同時に複数のラインを動かしていることを踏まえた上で、「FFXIV」の場合は、「字コンテをもらってから1年ぐらい掛かっている」という。

 これを受けて吉田氏は、「ハッキリしているのだと『時代の終焉』トレーラーは、初稿のファイルの日付が2011年6月だったはずなので、1年2カ月ぐらい作っていた。初めてプロデューサーレターLIVEをやったときはすでに制作に入っていた」と告白。生守氏は「字をよく読むところに2カ月かけた」と語り、相当前から制作に入っていたことが明らかにされた。

 そして今回の「蒼天のイシュガルド」のオープニングムービーも制作に1年かけているという。吉田氏は裏話として、ムービーの最後で竜騎士にジョブチェンジした光の戦士がヘルムのバイザーをガチャッと降ろすシーンについて、吉田氏は「AF1にしてほしい」と希望を出したところ、ヴィジュアルワークスは「せっかく作るんだったら主役なんだから差別化したい」と言い、せっかく出すんだったら、新しい装備を見せたいから、2体作って比べてみて決めるということになったという。吉田氏としては、時系列的にはイシュガルドに行ってから手に入れる装備を最初から着るのはおかしいのではないかとためらいもあったようだが、ヴィジュアルワークスはビジュアル的な主人公感にこだわり、結果は新しい装備が採用されたようだ。

 「ムービー製作の過程で大変だったこと」について生守氏は、「ムービーといっても、ゲームに入る場合は、目的がしっかりしていて、世界観を壊さずに拡大化してあげるというところ。実作業でいうとキャラクターのような細かく動くものたちを作ることは大変で、それと最初に何を作るを決めることが大変」と語った。

 この過程は吉田氏より、カットシーンを作るチームが深く関わるという。理由はプリレンダーのCGムービーと、リアルタイムレンダリングのカットシーンとのビジュアル的な整合性をキッチリ取らないといけないためで、「蒼天のイシュガルド」でもキャラクターが落とす髪飾りについて、落とす場所や向きを揃えるために打ち合わせをしていたという。

 また、「蒼天のイシュガルド」オープニングムービーのハイライトシーンであるラウバーンの投獄シーンでは、ボロボロになったラウバーンが描かれるが、カットシーンではそこまでボロボロではないため、見た目を寄せる努力をしているという。このようにCGムービーがカットシーンに影響を与えることも少なくないようだ。

 生守氏が映像製作でこだわっているところについては、「世界観」と即答。CGムービーは短時間に多くの情報をユーザーに伝えなければならないため、ゲームプレイをしている人が受け入れられやすい構成を考えているという。生守氏は、今回のような良いスクリーンだと、長い映像を作りたくなってしまうという。また、ヴィジュアルワークスが制作するCGムービーは、自宅のテレビ画面で視聴することを前提に作っているため、大画面の場合は、手ぶれ感などを押さえたり、視点をもう少しひいたりなど作り方が変わってくるようだ。

 生守氏が携わってきたタイトルの中で思い入れのあるCGムービーについて、意外にも「旧FFXIV」のトレーラーを挙げた。「旧FFXIV」トレーラーでは、戦うモンスターにモルボルを使っていたが、実は「モルボルを使え」という指示はなかったという。そこで生守氏が好きなモンスターを採用し、好き勝手やったようだ。また、「新生FFXIV」では、「時代の終焉」トレーラーの制作に着手する際、ルイゾワの名前もまだふんわりしていたため、コードネームは“おじいちゃん”にしていたという秘話も明かした。吉田氏によればヴィジュアルワークスでは現在でもルイゾワをおじいちゃんと呼んでおり、今回公開された「ファイナルファンタジーXIV - Flames of Truth」も“おじいちゃん頑張る編”、“おじいちゃん完結編”などと呼ばれていたという。エオルゼアの英雄もヴィジュアルワークスにかかっては形無しといった感じだ。

 生守氏から見た吉田氏の印象は「基本的にはあまり無理を言う方ではない」としつつも、思い出したように「納品直前にドラゴンが違うから変えてくれ」と言われたエピソードを語ってくれた。生守氏は当時「何を言ってるんだ」と憤慨し、「なんとか色替えで対応したが、テクスチャを変えてなんとかなるものではない。ドラゴンの色を最初は白かった、白を基調に映えるようにしたのに、最後の最後に『これ違うんだよ』って言われても、資料は1年前からこれだけどっていう(笑)」と息せき切ったように語った。

 たまらず顔を伏せる吉田氏に対して、室内氏が「色違ったんですか?」と問いかけると、吉田氏は観念したように「違いました」と告白。そうなってしまった理由として、CGムービーは1年前から作り始めていて、当時開発チームから渡せるモデルが1つしかなかったため、それをベースに作り始めて貰ったところ、ストーリーに登場する七大天竜のドラゴンと被ってしまったという。

 このエピソードは昔話ではなく最近の話で、ファンフェスティバルで公開した「蒼天のイシュガルド」ティザートレーラーでは白いドラゴンが登場しているという。「これマズくない?」、「ティザーだからね」というやりとりが開発内部であった後、正式トレーラーでは正しいドラゴンに差し替えられているようだ。吉田氏は、「あれは史上最大酷いと思いました」と懺悔しつつも、「でもどうにもならないんだもん」と無理を押し通したエピソードを明かしつつ、そのときだけは温和な生守氏が動きが止まっていたという。

 続いて吉田氏は、ヴィジュアルワークスの凄さを示すエピソードとして「時代の終焉」トレーラーにおけるルイゾワがバハムートを再封印するために立体魔方陣を呼び出したシーンについて、吉田氏自身は字コンテに「再封印」の3文字しか書いていないことを明かした。

 そしたらビジュアルワークスから動く絵コンテが出てきて、あまりの凄さに吉田氏は「何してんの、凄いから良いけど」と驚いたという。吉田氏は「あれは本当に凄いと思いました。リテイクの出しようが無かった。だって『再封印』としか書いてないんだもん(笑)」と繰り返し激賞しつつ、「事細かく指定して、こういう表現はどうだろうと出してくれるのもいいが、指定しすぎないことで、いろいろやってくれるのでうまくハマった好例」だと分析。褒められまくった生守氏は若干照れ気味に「ウチのスタッフもプレーヤーが多いから」と語っていた。

 そしてCGムービーと言えばサウンド。サウンドチームとの調整について生守氏は「サウンドとは密にやって、お互い泣いてますけど(笑)」と語り、吉田氏に呼ばれてステージに登場したサウンドディレクターの祖堅氏は「生守氏はいつもタバコ部屋で会うんですが、『どうですか?』と尋ねると、『冗談じゃないですよ』、『俺もです俺もです』」という会話を繰り広げるという。

 続いて祖堅氏は「サウンドが大変なのは、製作期間がやたら短いこと。絵ができないと音がつけられない。プレビズとかどんどんくれるんですけど、エフェクトとかないから、竜がワーッとやっているから吠えているのかなと思ったら、翌週、炎吐いてる、やべえ、とそんな感じですけど」と軽妙なトークで場内を沸かせていた。

 「蒼天のイシュガルド」オープニングムービーの吉田氏のこだわりどころとして、光の戦士がドラゴンと遭遇したシーンを挙げた。字コンテは「戦う」とだけあり、プレビズでは邂逅してすれ違う感じだったが、吉田氏としては、光の戦士が劣勢となり、竜騎士になるという決意の場面となるため、戦うシーンがあるべきだと考えた。この結果、ヴィジュアルワークスとサウンドチームは大変な苦労をしたようだ。

 吉田氏に「しわ寄せが行くんだよな?」と話を向けられた祖堅氏は「納期は変わらない、発注は遅れる、イコール死ねってこと、みたいな」と絶妙な切り返しで回答し、サウンドトラックの収録についてもフルオーケストラで録った際、メンバーにスケジュールを伝えたら、100人の演者の96人ぐらいが「非常識なスケジュールですね」、「今から曲作るんですか?」と、突っ込まれまくったという。その後もまだまだ祖堅氏の苦労話が続き、室内氏は、「祖堅さんの話になってきたので、『ニコ超』で祖堅さん枠をとりあえず用意しました」と雑な感じでこの話を強制的に切り上げ、まとめに入った。

 祖堅氏は、「スケジュールを一回見直したりするのはどうですか。それはいいや」といつものように適当に話し始め、「極ウマのドロップテーブルもう一度だけ確認して貰っていいですか? でなくてでなくて」とさらに関係ない話を切り出し、意外にも同じ思いのユーザーが多いのか、観客からは大きな拍手が起こった。吉田氏は「俺はロット運が酷いの。昨日も立て続けに出たの極タコで」と半ば同意する発言をすると、祖堅氏は「じゃあ、ロットの乱数の確認と、ドロップテーブルのパーセンテージの確認をお願いして良いですかね?」とまとめ、吉田氏は「1/8だしね、ちょっと考える?」と応じ、ドロップ率の見直す以降を表明すると、場内からは大きな拍手が起こった。

 生守氏は「この機会に呼んでいただいてありがとうございます。映像部はユーザーと接することがないんで、緊張しちゃうなと思いながらも、みんな手慣れていることに感動しました。3.0よろしくお願いします」と真面目に挨拶。吉田氏は半ば茶化し気味に「生守さんとはあと数カ月もすれば『4.0どうする?』っていう話もすることになる」と語り、早くも拡張ディスク第2弾の制作がスタートすることを匂わせた。吉田氏はCGムービーについては「長尺を取りたい」と語り、早くも開発トークセッション第2弾の実施を予告。早期の実施に期待したいところだ。

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(中村聖司)