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タミヤ、「RCサッカー 新橋カップ WORLDCUP2013 予選大会」を開催
ラジコンカーでボールを押してゴールを目指す、激しく楽しい戦い
(2013/3/4 13:21)
タミヤは3月3日、タミヤ プラモデルファクトリー 新橋店にて「RCサッカー 新橋カップ WORLDCUP2013 予選大会」を開催した。「RCサッカー」とはラジコンカーを使ったサッカーゲームで、選手達は2人1組でチームを組み、対戦を行なう。
これまでもラジコンカーでボールを転がすという遊びは行なわれていたが、タミヤのラジオコントロールモデル広報担当の満園紀尚氏がルールを制定し、2012年末からタミヤのイベントで開催するようになった。「RCサッカー」単独でのイベントは今回が初となるとのことだ。
RCサッカーは車高の高いバギータイプのラジコンで、ボールを押してゴールを目指す。2人のコンビネーションを活かして、相手からボールを奪い、防御をかいくぐってゴールを決める。しかし実際には正確な操作は難しく、ボールに触れられず周りで衝突が繰り返されるのもしばしば。だからこそ鋭いシュートを決めた時は大きな歓声が上がった。必死にボールを追うラジコンカーの動きは面白く、イベントは大きく盛り上がった。
新橋カップでは公式ページや店舗で募った一般参加選手と、ラジコン専門誌などのメディアによる12チームで行なわれた。筆者も「CAR Watch & GAME Watch」チームとして出場した。
コミカルで間口が広い、新しいラジコンカーの楽しみ方「RCサッカー」
RCサッカーは5.4×4.5mの木枠に囲まれたフィールドに0.9×0.275m(幅×高さ)のゴールを設置し、ラジコンカーでサッカーボール(4号球:直径約20.5cm)を押してゴールを目指す。使用ラジコンはタミヤの「WR-02シャーシ」か、「CW-01シャーシ」で、試合時間は2分ハーフとなっている。
試合では最初にじゃんけんで、前半開始時にキックオフするチームを決定し、チームの1台がボールに触ってスタートとなる。最初にボールを触った車がそのままゴールにボールを押し込むのは禁止されている。キックオフ時、相手チームは車体後部をゴールラインに接触して待たなくてはいけないなど、独特のルールが設定されている。
試合はレフリーによって判定され、ボールを押し合って膠着状態になったり、ボールがフィールドの外に出た場合などはレフリーの笛によって、中断やリスタートが行なわれる。サイドラインの膠着の時にはレフリーがボールをフィールドに投げ入れる「ドロップイン」、ゴールライン付近ではキックオフルールと同じ形でゴール付近からリスタートする「ゴールキック」で再開する。
ボールを所持していないラジコンカーにタックルを行なった場合、相手チームが「PK(ペナルティキック)」の権利を得る。PKは守備側はゴールの前に1台ラジコンカーを置き動いてはならない。センターラインから攻撃側はファーストタッチのみでPKを行ない、入らなければ守備側のゴールキックで再開となる。
RCサッカーはこのようにシンプルなルールで行なわれ、ボールを押してゴールを目指していく。使用されたWR-02シャーシとCW-01シャーシは、巨大な車輪と短めのホイールベースが特徴で、コミカルな印象の走りが楽しめる。このシャーシの最大の特徴は、急発進すると前輪を上げるウイリー状態になること。ボディ後部にはウイリー用の補助輪も取り付けられている。
きびきびと小回りは利くが、ボールを押そうしても焦ってウイリーしてしまいボールに前輪を乗せてしまったり、重心が高いため、敵車とぶつかって転がってしまったりもする。RCサッカーはこのずんぐりとしたバギーが押し合いへし合いしながらボールを転がしていくという風景が楽しい。
ラジコンはトリガー型のアクセルと、ハンドルタイプのステアリング操作ができるプロポ(送信機)で操作する。実際にやってみると、ラジコンを走らせることそのものは簡単にできるのだが、ボールに車体をぶつけようとするととたんに難しくなる。ほんのちょっとの差でボールに触れられないことも多く、やきもきしてしまう。
選手全員が何とかボールに触れ、少しでもボールに近づこうとするため、敵車はもちろん、味方すらガンガンとぶつかってきて、思うようなルートを進めない。特にゴール近くにボールが転がっていった時の焦りは大きい。必死にボールにラジコンを近づけようとするとスピードを上げたりすると、さらに正確に操作できなくなってしまう。
今回の参加者は筆者と似たような腕前の人も多く、ボールの周辺で車が団子状態になってしまうことも多く、司会の満園氏から「誰もボールに触ってない!」などと突っ込みを入れられながらも、必死でボールを転がしていった。
一般参加者はこのRCサッカーに関してかなり練習を重ねている人もいて、片方が攻撃、もう片方が防御に徹して、相手の隙が生まれた瞬間にボールを一気に押し込むという見事なコンビネーションを見せてくれた。
しかし、面白いのは筆者達初心者でも見よう見まねでうまい人の戦術を真似して、会場で練習することで徐々に形になっていったところだ。ゴールに向かってくるボールを車体側面でがっちりブロックしたり、1人がボールを追ってる時にはむやみに近づかず、こぼれたボールをゴールに向かって押すなど有効な戦法が見えてきた。「CAR Watch & GAME Watch」チームは1回戦で敗れ、敗者復活戦でも敗れてしまったが、それでも敗者復活戦では、1ゴールすることができた。もっと練習し、次はもっと思い通りにボールを操ってみたいと強く思った。
上級者同士の白熱の戦い、練習と研究の熱意がもたらした優勝
今回最も見応えがあったのは、一般参加者の「T-UNIT」チームと「打倒○○」チームの戦い。決勝では無く、準々決勝の試合だが、どちらも力がぬきんでており、優勝候補と言われていたチームだ。彼らはWR-02シャーシでのレースでの常連であり、他にもこれまで行なわれたRCサッカーにも参加していたという。
彼らは他の参加者とは明らかに動きが違う。ボールをどう押せばどう転がるかを研究しており、特に壁際のボールを車体をこすらせて転がしていくのが巧みだった。そしてゴール前でフリーになったボールに対しては、一気に加速してゴールに押し込むのだ。T-UNITは2人が積極的に前に出てボールを回す戦法で、打倒○○は1人が攻撃、そしてもう1人が防御を固めるという方式だった。
打倒○○の防御はチャンスの時の突進力がすごい。敵側でボールが浮いた瞬間のみ、自軍ゴールから飛び出してゴールを狙うのだ。このコンビネーションで打倒○○は勝ち進んできた。T-UNITは積極的に攻撃しながらも、防御もうまく、これまでの試合で唯一失点0のチームだった。この2つのチームの戦いはとても白熱した展開となった。
5.4×4.5mというフィールドでは、ほんのちょっとボールが転がるだけでピンチとチャンスが入れ替わる。このときいかに素早くボールに近づけるか、車と車の間に飛び込みボールを押せるかが鍵となる。一瞬で急加速してスピンターンを決めてボールを正面にとらえる動き、相手の進路に対して側面でぶつかるブロックなど、ラジコン熟練者ならではのテクニックが存分に発揮された試合だった。
試合は2台でのコンビネーションを見せるT-UNITが終始押し気味だったが、打倒○○の防御は非常に巧みで、T-UNITのアタックを何度もはじき返した。それでもほんのちょっとの隙を突き、T-UNITがボールをゴールにねじ込んだ。敗れてしまった打倒○○は3位決定戦で勝利した。
決勝戦T-UNITの前に現われたのはメディア枠の「Think IT」チーム。エンジニア向けの情報サイトで、筆者達と同じインプレスグループだ。ミニ四駆をCPU制御で動かそうと言う連載記事を執筆している関係で、今回の大会に参加したという。
「Think IT」は今回の大会で最も“成長”したと感じさせられたチームだ。2台でとにかく防御に徹し、そして隙が生まれた時に点を取る戦法を得意としていた。1回戦で敗退したが、敗者復活戦で筆者達「CAR Watch & GAME Watch」や他チームを破り決勝戦まで勝ち上がってきた。参加メディアにはラジコン専門誌なども多かったがそれらのチームと戦い勝ち進んできた。カウンターを重視した戦術も、チームの連携も徐々に戦いの中で組み上げてきたものだった。
最初の頃とは全く違う動きを見せるほど成長したThink ITだが、やはりT-UNITは強かった。必死に防御するものの、T-UNITの連携に抜かれ、「5-0」のスコアで敗れてしまった。優勝はT-UNITとなった。
T-UNITのうち1台は今大会で唯一「ファームキング ウイリー」で出場していた。この車はWR-02Gシャーシを使ったラジコンの最新作で、2月23日に発売されたばかり。前輪が小さいため、ボール押しやすい。T-UNITはWR-02Gシャーシを使ったラジコンを調べ、2人それぞれの役割を決めて1台をこの新しい車にした。さらにボールを転がす練習もひたすら重ねたという。彼らの気合いと情熱、そして研究が優勝をもたらしたと感じた。
今回優勝のT-UNITとThink ITは11月に行なわれる予定の「RCサッカー WORLDCUP2013」に進出する。「RCサッカー WORLDCUP2013」ではフィリピン、シンガポール、マレーシア、韓国といった東アジアとヨーロッパの選手が参加予定だ。こちらの詳細は後日発表される。また、RCサッカーの大会は今後のタミヤのイベントでも開催される。3月16~17日に静岡の「タミヤ掛川サーキット」、3月30~31日に「横浜赤レンガ倉庫」といった様々なイベントを準備しているとのことだ。
RCサッカーはうまい人の試合が面白いだけでなく、初心者でもちょっと練習するだけで、そこそこ試合ができる「間口の広さ」が最大の魅力だと感じた。ハイスピードでコースを駆け抜け、ミスを許さない「レース」とはまた違った、ほのぼのとした楽しさがある。車種がずんぐりとしたバギーなの競技の楽しさを増してくれる。新しいラジコンカーの楽しみとして、RCサッカーは今後も発展して欲しい。