gloopsステージ講演レポート

日本から海外のソーシャルゲーム市場へ「gloopsの海外戦略」とソーシャルゲーム転換期の開発手法「gloopsのゲームの作り方」


9月20日~9月23日 開催(20日、21日はビジネスデー)

会場:幕張メッセ1~8ホール

入場料:前売り1,000円、当日1,200円、小学生以下無料



 株式会社gloopsは9月20日~23日に幕張メッセで開催中の東京ゲームショウにてソーシャルゲームのデベロッパーとしては初の大型出展を行った。

 本稿では今回が東京ゲームショウ初出展となる、株式会社gloopsブースでは「DeNAとgloopsの海外事業における包括契約の締結」や新規タイトル「大激突!!ガーディアンブレイク」の発表などが行われた。

 本稿では記者発表会「gloops『今後のビジョンと海外戦略』」とステージ公演「gloopsのゲームの作り方」のレポートをお送りする。

 なお発表があった「大激突!!ガーディアンブレイク」については、別項にてブースレポートとあわせてをお送りする。





■ gloopsの今後のビジョンと戦略、海外進出の戦略についてgloopsの代表取締役社長 川方慎介氏が熱く語る

株式会社gloops代表取締役社長 川方慎介氏

 株式会社gloops代表取締役社長の川方慎介氏はまず現在のgloopsの状況について簡単に説明を行なった。現在gloopsが提供しているソーシャルゲームの会員数は1,800万人を達成しており、「過去1年でユーザー数は3倍以上に増加しています。これは多くのユーザーに支持されている結果だと考えています。前期の売上は237億円で、これはmobageプラットフォーム内で1番の売上です」と好調さをアピールした。

 ここまで高い支持を得られた理由として、川方氏は「選択と集中」を挙げた。主に男性受けのするバトル系のコンテンツに特化しており、多くのノウハウを蓄積しているという。そしてもう1つが「データ分析の専門部署を持っていること」を挙げた。リアルタイムで大規模なデータを解析し、短期間で“PDCAサイクル”を回し、素早いコンテンツのチューニングを行なう事が可能だという。

 川方氏は今後の展望として「今後このように日本でソーシャルゲームの開発をしてきた強みを生かし、『世界で勝つ!』をスローガンに活動していきます。今後の海外展開として、株式会社ディー・エヌ・エーと海外包括契約を締結し、「ソーシャルゲーム業界の『日本代表』として海外へ展開していきたいです」と熱く語っていた。

 海外包括契約の具体的な内容は、DeNAは「gloopsが提供するコンテンツへの集客サポート」、「ソーシャルゲームの海外事業展開におけるノウハウ等の提供」を行ない、gloopsは「欧米版mobageプラットフォームである『Mobage West』向けに年内に5タイトル、2013年度中に更に5タイトルをリリース」、「中国版mobageプラットフォームの『Mobage China』、韓国版のmobageプラットフォーム『Daum Mobage』向けにそれぞれ年内に1タイトルをリリース」、「米国で人気を誇るIPパートナーと提携したコンテンツを提供」するということだ。

 現在米国のソーシャルゲーム市場は非常に成長しており、2013年度の市場規模は約1億2,000万人規模まで成長すると言われているという。川方氏は「gloopsはこの巨大な市場に、日本で培った運営力を武器に北米企業と差別化していきます。また強力IPとソーシャルゲームでユーザーをどんどん獲得していきます」と北米市場進出への戦略を語った。

 最後に川方氏は「我々はエンターテイメント集団であると自負しています。今後はソーシャルエンターテインメントプロバイダー」を目指して活動していき、「エンターテイメントの可能性を追求していきます」という言葉で講演を締めくくった。


DeNAと海外包括契約を結び日本から世界のソーシャルゲーム市場を開拓する




■ gloopsとDeNAがガッチリとタッグを組んで、日本から海外ソーシャルゲーム市場に進出ていく

株式会社ディー・エヌ・エー代表取締役社長 守安功氏
ガッチリと手を結んだ川方氏と守安氏。両者の世界進出における強い協力関係を表しているように感じた

 川方氏の講演のあと、株式会社ディー・エヌ・エー代表取締役社長 守安功氏が登場し、gloopsとDeNAのタッグを組んでの海外進出についてトークセッションが行なわれた。

 守安氏はこれまでの国内のソーシャルゲーム市場を振り返り、「DeNAがソーシャルゲームに参入したのは約3年前、内製の『怪盗ロワイヤル』をリリースしたのが2009年9月です。まだこの市場に参入してから3年くらいしか経っていませんが、今年はおそらく4,000億から5,000億円くらいの市場規模になると予想しています」と話し、海外進出について「今後国内で成功したソーシャルゲームがどこまで海外で通用するのか。そのマーケットをどう海外に広げていけるのか。大きなチャレンジです」と話した。

 そしてgloopsとDeNAが海外での包括契約の締結に至った背景について、「mobageがプラットフォームとしてサードパーティに開放されたのは2010年の初め頃です。その頃からgloopsとはパートナーとして、一緒に国内のソーシャルゲーム市場を築いてきました。そして1年前くらいに国内で大きな契約を結び、更に両者が密接になってノウハウを共有し、国内で大きな成果を残すことができたので、国内だけでなく海外でもガッチリタッグを組んでいきたいと考えました」と話した。

 川方氏は初めて海外包括契約の話を聞いた時どう思ったのだろうか。「国内で契約を結んだ時もそうだったんですが、DeNAが持っているマーケティングの力と、gloopsが持っているコンテンツを作り、運用する力を融合すれば必ず成功すると考えているのでスムーズに契約できました」と話し、「海外のマーケットは非常に大きいが、それだけ難しいということです。1社単独では攻略が難しいと思うので、国内以上に強くタッグを組んで、日本発の海外のソーシャルゲームのマーケットを作っていきます」とパートナー関係の重要さを語った。

 守安氏も「日本のコンテンツは海外でも受け入れられる、楽しんでもらえるということがわかってきたので、日本で成功しているコンテンツを海外に持っていけば大きなマーケットシェアが獲得できると考えています。gloopsは日本でも日本で様々なコンテンツを持っている。それらもどんどん海外に輸出していきたいです」と話していた。

 最後に「今後の夢は?」と聞かれ守安氏は「私も子供の頃からゲームが好きだったんですが、大人になって1、2時間とまとまった時間をとってゲームをプレイするということが難しくなってきました。しかしモバイルのゲームは、スキマ時間でもゲームを楽しめます。そのお陰でゲームに触れるきっかけを取り戻すことができたので、同じようにこれまでゲームを楽しんでいたが、離れてしまった人に新たな楽しみを提供できたと思っています。今後はそれを更に世界に広げて世界中の人に幅広く遊んでもらいたいです」と話した。

 川方氏も「gloopsはエンターテインメント集団なので、誰もが楽しんでもらえるようなサービスをどんどん提供していきたいと思っています。その中で世界の誰もが『このコンテンツってgloopsが作ったんだ』とわかってもらえるような良いサービスを作って行きたいです。今後もgloopsは皆さんに楽しんでもらえるような、人と人が繋がっていけるような、そんな良質なサービスを提供していくのでこれからも応援をお願いします」と話し、トークセッションは幕を閉じた。





■ 転換期を迎えるソーシャルゲーム。どの様な点に注力して開発を進めればよいか。gloopsの答えは

株式会社gloopsソーシャルゲーム事業本部システム基盤部 サーバーエキスパート 大和屋貴仁氏

 大和屋貴仁氏はまず具体的な開発手法の前に、現在のgloopsのモバイルソーシャルゲームのコンセプトについて説明した。「1回のプレイ時間が5分程度でも成り立ち、いつでもどこでもプレイできる」、「リリースしてからもイベントなどを行ない、終わりのないゲームデザイン」、「ユーザー間のコミュニケーションを大切にし、ユーザー同士のコミュニケーションを手助けする」という3つに意識して開発しているという。

 次に技術面からソーシャルゲームのプレイ環境について説明した。gloopsのソーシャルゲームはモバイル端末向けに提供されている。しかしモバイルと一言で言っても、ガラパゴスケータイ、iPhone、Android端末など多岐にわたる。また回線については3G回線とWiFIが使われおり、Wi-Fiも普及してきているが、まだ主流は3G回線となっているという。使用されている主な技術は「HTML」、「Javascript」、「Flash」などで、一般的なWebサイトで使われている技術とそれほど大差はない。大和屋氏は「そういう意味ではモバイルソーシャルゲームも『モバイルWebサイト』とも言いかえられると思います」と話した。

 これらを踏まえた上で大和屋氏は昨今のソーシャルゲームを取り巻く状況について「モバイルソーシャルゲームが登場してからかなりの年月が経過しています。その為ソーシャルゲームをやりこんでいるユーザーも多く、ユーザーの目が肥えてきている状態にあります」と話し、「それでは、今後のソーシャルゲームはどこに向かっていくのでしょうか」と会場に問いかけた。

 大和屋氏は「コンシューマゲームと同様、より綺麗なグラフィックを採用し、よりリッチな表現になっていくのでしょうか?」と示唆したが、「しかしその為にはいくつか制約があるのです」と続けた。

 問題とは何だろうか。まず1つが回線速度だ。先ほど「回線の主流は3G」であることを挙げた。3G回線は技術的に通信速度があまり早くなく、大容量のファイルの転送には向いていない。それではネイティブアプリと呼ばれる、あらかじめダウンロードした端末にインストールしておくアプリなら問題はないのかというと、大和屋氏は「先ほど申し上げたようにモバイルソーシャルゲームでは、ガラパゴス携帯、iPhone、Androidと端末が多岐にわたります。それぞれの機種によって性能が異なるので、全ての端末で同じ表現ができるというわけではありません」と話した。

 そこで大和屋氏は、gloopsの目指す方針として、「『リッチでライト』なソーシャルゲームを目指します」と話した。具体的に「ゲームとしてはリッチに表現豊かな方向に向かうでしょう。しかし通信に時間がかかりゲームを始めるのに時間がかかっては、いつでもどこでもできるというソーシャルゲームの利点がなくなってしまいます。今後は、『表現は豊かでリッチだが軽い』という方向に進んでいくと思います」と説明した。

 それを実現するためにgloopsでは開発チームとは別にUI(Userinterface)/UX(UserExperience)に特化した専任のチームを立ち上げ、開発チームと連携しながらゲームを開発を進めていくという。

 UI/UXチームのミッションとして、リッチユーザーインターフェースをの改善に着手しているという。リッチユーザーインターフェイスというと「開発チームからはこのボタンをここに配置して欲しいといった意見や、このボタンをもっとかっこよくして欲しいなど様々な意見が寄せられる」という。しかしUI/UXチームでは安易にその意見を取り入れる事はしない。まず「なぜUIを改修するのか」、「UIを改修することで何が改善されるのか」という様に目的を明確にしてから改修をする。その為にディスカッションするのがUI/UXチームの大きなミッションであるという。

 目的の明確化については、大和屋氏はgloops社内でも使われている「“データ様”に聞け」という標語を紹介した。ユーザーのプレイデータを元に、「どのページが使いにくいのか」、「どのページの離脱率が高いか」というのをデータから分析し、どの様な状態になれば良いのかを分析してを立て、実際に改修を行い、結果を確認するという“PDCAサイクル”を回すことがリッチユーザーインターフェイスの改善だという。

 もう1つがライトなユーザーインターフェースの開発だ。“ライト”というのはユーザーから見て待ち時間が短いというのを指す。その為にUI/UXチームが具体的に行なっているのが「リクエスト回数の削減」、「独自ライブラリの開発」、「HTML5やCSS3などの活用」という3つだ。1つ目の「リクエスト回数の削減」について大和屋氏は「良くも悪くもgloopsの開発するソーシャルゲームはデザインに執着するため、ボタンや横線に画像ファイルを使うなど、パーツが多くなっている状態」と話した。

 その結果サーバーへのリクエスト回数が多くなり、最終的にユーザーの待ち時間が伸びてしまうという現象が起きているという。そのためリッチでライトなインターフェースを目指すために、画像ファイルを1つにまとめたり、使い回しをしてパーツを減らしつつも、できるだけリッチな表現ができるように改修を行なっている。

 2つ目の「独自ライブラリの開発」は、大和屋氏は「UIインターフェースを作成するのに有効で汎用的なjQueryのようなライブラリが公開されているが、汎用的である反面データ量が多くなってしまうという特徴がある」と話した。そのためgloopsでは「必要な部分だけを実装した、独自の“軽い”ライブラリを開発することで、この問題に対処しようとしている」という。

 最後が「HTML5やCSS3の活用」だ。例えば現在画像ファイルを使って表現しているボタン部分などをCSS3で表現したり、Flashで表現している部分をJavaScript+HTML5に置き換えることでダウンロードしなければならないデータ量を抑える改善を行なっているという。

 最後に大和屋氏は「ソーシャルゲームは転換期を迎えています。今後はリッチだがユーザーにストレスを感じさせない軽いゲームを作っていくことが求められます」と講演を締めくくった。


モバイルソーシャルゲームならではの技術的制約がある。上手く解決策を見つけリッチでライトなゲームを作っていくのがgloopsの開発手法だ

(2012年 9月 20日)

[Reported by 八橋亜機]