DeNA、「MobageオープンプラットフォームForum」を開催

パートナー企業の新作発表、海外での成功を確信するトークセッションなどを紹介


4月25日 開催

場所:ベルサール汐留


 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)は4月25日、「MobageオープンプラットフォームForum - 国内外、成長の方程式 -」をベルサール汐留で開催した。このフォーラムは、ソーシャルゲームのデベロッパー向けに開かれたもので、Mobageの国内外の状況を知らせたり、今年度の方針や戦略が示された。

 今回のフォーラムでは、特に海外に向けての今後の見通しが報告され、海外での事業を成功させるための第一歩が力強い意気込みと共に語られるイベントとなった。

 この記事では、いくつか行なわれたセッションのうち「成功の方程式」と題された、ここ1年を振り返ったパネルディスカッションと、海外展開に向けての事業展開の様子をDeNAの韓国、中国、アメリカの事業部から直接語られたトークセッションについてお伝えする。

 またパートナー企業として登壇した各企業の新作ゲームも紹介されていたので、その模様も併せてお伝えする。



■ パートナー企業のMobage用新作タイトルを紹介

カプコンCS事業服統括の浦田樹一郎氏

 セッションの紹介に先立って、まずはパートナー企業の新作発表からお伝えする。それぞれの発表はセッションの合間の短い時間に発表されたものだが、総勢8企業が登壇し、タイトル発表の場としては充実した内容だったと言えるだろう。

 株式会社カプコンは、新作のソーシャルゲームとして3タイトルを発表した。「みんなと アカシックヒーローズ」は、有名な歴史上の人物「英雄」を集めて強力なボス「英雄神」を倒すというカードバトル。フィーチャーフォンとスマートフォン(iOS、Android)で提供され、7月3日に配信予定となっている。

 続いて紹介されたのは、戦国カードバトルRPG「戦国BASARA カードヒーローズ」とブラウザ用戦国シミュレーションRPG「ブラウザ戦国BASARA」。どちらも「戦国BASARA」シリーズの武将がカードとなって登場するゲームで、「戦国BASARA カードヒーローズ」はフィーチャーフォン、スマートフォン版(iOS、Android)に対応し、近日サービス開始予定となる。「ブラウザ戦国BASARA」は、6月に「Yahoo!モバゲー」にてサービス開始予定。

「みんなと アカシックヒーローズ」「戦国BASARA カードヒーローズ」「ブラウザ戦国BASARA」

コーエーテクモゲームス専務取締役小林伸太郎氏

 株式会社コーエーテクモゲームスは、中国のサービスとなるMobage Chinaにて「1億人のモンスターファーム」をスマートフォン向けにまもなくサービス開始であることを明らかにした。1億人という数字については、「中国は日本とは規模が違うので」だそうだ。

 また日本を含めたグローバルで展開するものには「100万人のNINJA GAIDEN」(Ninja Gaiden: Clans)が発表された。詳細は明かされなかったが、「NINJA GAIDEN」シリーズの世界観を活かしたものになるようだ。こちらは今夏サービス開始予定。

「1億人のモンスターファーム」「100万人のNINJA GAIDEN」

コナミデジタルエンタテインメント執行役員の早川英樹氏

 株式会社コナミデジタルエンタテインメントは、新作の発表はなかったものの、2012年は「戦国コレクション」を多面展開すると発表した。「戦国コレクション」はすでにゲームの枠を飛び出して、アニメ、コミックと展開しており、今年の6月にはYahoo!モバゲー用のラウザゲームとして登場する。戦国時代を舞台に、合戦や冒険をしながら施設を建設していくシミュレーションRPGになる。

2012年は「戦国コレクション」を多面的に展開するという方針が示された

マーベラスAQL取締役副社長の青木利則氏

 株式会社マーベラスAQLは、「スーパークリエイターズ企画」のタイトルを3作品発表した。1つ目は、株式会社グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏による「ノーモア★ヒーローズforモバゲー(仮)」。プレーヤー1人1人が殺し屋となり、真の殺し屋ランク1位を目指すというゲームになる。iOS/Android用のネイティブアプリとして、7月にリリース予定。

 2つ目のタイトルは、株式会社 クラフト&マイスターの船水紀孝氏による「コンボキマール」。異種格闘技頂上決戦というテーマの下、「ストリートファイター」シリーズのプロデューサーを務めてきた船水氏ならでは対戦型格闘ゲームとなる。iOS/Android用のネイティブアプリとして、8月にリリース予定。

 最後は、株式会社comceptの稲船敬二氏による「J.J.ROCKETS」。アメリカンコミック風のヒーローが活躍する2D横スクロールアクションとなる。iOS/Android用のネイティブアプリとして、8月にリリース予定。

「ノーモア★ヒーローズforモバゲー(仮)」「コンボキマール」「J.J.ROCKETS」

セガ モバイルニューメディア事業部モバイルニューメディア部部長の岩城農氏

 株式会社セガは、2タイトルを発表した。その1つはスマートフォン用「リトルポップフロンティア」。これはポップでかわいらしいキャラクターたちを操りながら、都市を発展させる箱庭シミュレーションと、対戦や協といった2つの要素を楽しむタイトルとなる。Android版は5月末の配信を予定しており、iOSはAndroid版リリース後に配信予定。

 また中国と韓国への展開として「三国志コンクエスト」がリリースされる予定。これは日本で2月に配信された同名タイトルを中国にローカライズしたもので、中韓のマーケットへの足がかりとしたい考えを示した。iPhone版は5月にリリース予定で、Android版はiPhone版配信後に順次対応予定。

「リトルポップフロンティア」「三国志CONQUEST」

スクウェア・エニックス専務執行役員の原口洋一氏
新作の発表はなく、「ロード オブ ヴァーミリオン煉」の紹介に留まった

 株式会社スクウェア・エニックスは、4月25日より配信されている「ロード オブ ヴァーミリオン煉」の紹介に留まった。「ロード オブ ヴァーミリオン煉」では、今後もオリジナルカードの投入を続けていく予定だそうだ。


BDeNA代表取締役社長の鵜之澤新氏

 最後に登壇したのは、株式会社バンダイナムコゲームス代表取締役副社長および株式会社ビー・エヌ・ディー・エヌ・エー(BDeNA)代表取締役社長の鵜之澤新氏。鵜之澤氏はまずBDeNAの改名について触れ、「長いから改名したわけではなく、海外の商標登録に引っ掛かってしまったから」だと話した。

 タイトルとしては、スマートフォン用「マクロスSPクロスデカルチャー」を発表した。会場ではプロモーションムービーが上映され、コクピット画面からタップアクションでシューティングをする様子や、兵器や装備を改造して愛機を強化できる要素、“歌姫”とデートする要素などが紹介された。iPhoneとAndroidに対応し、サービス開始は6月を予定している。

「マクロス」シリーズのソーシャルゲームが登場。3Dグラフィックスもリッチに使用し、シューティングだけでなく歌姫たちとの交流もできるタイトルになるようだ


■ 日本の成功したビジネスモデルで堂々と世界に出ていける

DeNA執行役員の柴田大介氏
DeNA取締役の小林賢司氏
Klab取締役の森田英克氏
gloops代表取締役社長の川方慎介氏

 1年を振り返ったディスカッションでは、DeNA執行役員の柴田大介氏をモデレーターに、株式会社gloops代表取締役社長の川方慎介氏、Klab株式会社取締役の森田英克氏、そしてDeNA取締役の小林賢司氏が登壇した。

 このディスカッションでは、まず柴田大介氏が「ここ1年で強化したポイントや、その成功の秘訣は?」と尋ねるところから始まった。

 これに対して小林氏は、「まずロワイヤル型と呼ばれるゲームシステムからの脱却がある」と話した。ソーシャルの機能は進化しており、同期性の高いゲームが登場するようになってきた。それはリアルタイムのチームバトルであったり、“レイドボス”では大勢に人が数分間に集中的に参加するような現象が一例となる。

 小林氏は「FINAL FANTASY BRIGADE」を例に挙げ、これまでのタイトルのほとんどは「ウィンク」が定型文のコメントで埋まっているものが多かったのに対して、リアルタイム性の高いこのタイトルではこの機能を使って作戦を練るということも見られたという。しかし、それは決してカジュアルさが失われたということではなく、1日の中の何分かに集中して遊んでいるため、新しいコミニュケーションの形を見られたという。

 小林氏は、これらの取り組みの背景には、制作ボリュームの増加に伴って初期の段階からチーム体制を柔軟に見直していたことを挙げた。以前では企画とエンジニアという簡素な体制で成立していたものを、企画、エンジニア、アートワーク、分析などとしっかり役割分担させたそうだ。

 またゲームバランスについても考慮していたそうで、ゲームのコアとなる部分はどういうバランスであるべきかをゲーム制作の初期にしっかりと作るようになったという。

 一方、最近では海外拠点を整備し、日本の地方拠点も強化したという森田氏は、この1年間で「真・戦国バスター」をはじめとするチームバトル系ゲームへとシフトしたことと、「キャプテン翼~つくろうドリームチーム~」などのIP(知的財産)を使ったタイトルの強化があったと話した。

 森田氏は、これらゲーム制作のコツとして、チームバトル系はカードゲームだけではないソーシャル要素や、シナリオなどをしっかりと作り込んでいくこと、IPを使ったタイトルは、何よりも原作への深い理解が大事だと話した。Klabでは「キャプテン翼~つくろうドリームチーム~」を作る前に関わるスタッフは全員「キャプテン翼」を読み、好きになってから制作に取り掛かったという。

 また川方氏は自社の1年を振り返り、1年で53名から375名にまで増えた組織体制、サーバー台数を約700台に増やしたWebシステム、「大召喚!!マジゲート」のプロモーションなどをはじめとする企業ブランドの強化の3点が大きな変化だったとした。
 
 川方氏は、小林氏が「リアルタイム性が衝撃だった」と話した「大連携!!オーディンバトル」についても触れ、「それまでソーシャルアプリは空いた時間に楽しむものだったのを、オンラインゲームの要素を敢えて入れたチャレンジだった。結果的にはユーザーは新しい体験ができたので、好評だった」と語った。

 こういった日本で成功したノウハウをどう活かしていくのかという質問には、森田氏は「海外のトレンドを追いかけることと、開発プロセスを分業すること」と述べた。具体的には、海外のスマートフォンゲームは現在では色々な要素を合わせた“ハイブリッドゲーム”がトレンドということで、「カード要素やチーム要素などの日本のヒットモデルをミックスさせたゲームモデルが勝利の鍵」とした。開発プロセスについては、ゲームの基本的な設計を日本で作り、コンセプトやアートワーク、カルチャライズなどは現地で開発するというものだ。

 川方氏は、テストケースとして「大争奪!!レジェンドカード」の英語圏版をFacebookで運用したところ、KPI(重要業績評価指標)からカードバトルゲームモデルは海外でも通用すると判断したそうだ。そのため、現在はベトナムとアメリカ、そして日本において急ピッチで開発を進めているそうだ。川方氏は「これまでがそうだったように、北米市場でもDeNAと一緒に勝てると確信している」と力強い言葉を残した。

 小林氏はこれらの意見に頷くと共に、「過度にシステムを改変する必要はない。イベントやキャンペーンなど、日本で成功したパターンは自信を持って展開するべき」と話した。また「WebViewベースのゲームは海外では受けない」という“神話”についても疑問を呈し、「WebViewかアプリかという原理主義的な話は意味がない。それよりも、その後改変する必要がある部分はブラウザを、成熟した機能で、UX(ユーザー・エクスペリエンス)を高めたいものはアプリを、というように使い分けてもいい。それには色々なパターンが考えられるのでは」と話した。

 また今後の展開については、業界全体の収益を考える「『エコシステム』として勝負する」と話し、「これからはこの市場を、存在感のあるエンターテイメントとして知らせていかなければならない。自信を持って堂々と世界に出ていきましょう」と会場に問いかけた。

各企業の立場から、成功のコツや海外展開に向けての方針や考え方を披露する場となった


■ 海外拠点の準備も着々。デベロッパーに熱烈アピール

DeNA社長室Head of Global Alliancesの守屋彰人氏
DeNA China Vice President Game Divisionの任宜氏
DeNA Seoul事業本部長Global Game Allianceの郭信国氏
ngmoco Director,X-Border Business Developmentの林昌伸氏
グラスホッパー・ユニバース代表取締役の須田剛一氏

 「グローバル展開、成功の方程式」と題されたトークセッションでは、DeNA社長室Head of Global Alliancesの守屋彰人氏をモデレーターに、DeNA China Vice President Game Divisionの任宜氏、DeNA Seoul事業本部長Global Game Allianceの郭信国氏、ngmoco Director,X-Border Business Developmentの林昌伸氏、そしてデベロッパー代表のゲストとして、株式会社グラスホッパー・マニファクチュア代表取締役で株式会社グラスホッパー・ユニバース代表取締役の須田剛一氏が登壇した。

 守屋氏はこのトークセッションを「海外で本当に成功できるのかという不安を解消させられるようなセッションにしたい」と切り出すと、DeNAの中国、韓国、アメリカのおける展開をそれぞれの支社の代表者に現在の状況と今後の取り組みを聞いていった。

 アメリカでの取り組みはDeNA傘下であるngmocoの林氏が説明していった。アメリカは、AndroidとiOSが展開されている市場で、主なゲームは現在51タイトルを展開しているという。林氏は、1番の魅力として「スマートフォンが12億台ある。そこにチャンスがある」と話した。またMobage Globalでの1日あたりの消費コイン数も「毎月約2倍と着実に伸びてきている」と話し、自信を覗かせた。

 今後の人数の確保については、サムソンとAT&Tとのアライアンス提携に新しくT-Mobleが加わり、4キャリアのうち3キャリアを確保したことを明かすと、これらとソーシャルメディアを活用していくとした。
 
 また人気のあるゲームについては、「幅広いユーザーに幅広く受ける市場」だと林氏は話し、カードバトル系についても「Rage of Bahamut」(神撃のバハムート)がアメリカのアンドロイドアプリランキングで1位を獲得するなど、今後にも期待が持てるという。
 
 Mobageはアメリカのデベロッパーにも興味を持たれているそうで、オンラインゲームメーカーのKABAMによる戦略MMOゲームが今夏に配信されることが決定したほか、「Tiny Tower」のNimbleBitが提供する飛行機乗客シミュレーション「Pocket Planes」をMobageの全プラットフォームに配信すると発表した。

 一方の中国では、2006年にDeNA北京が設立されており、期間をかけて着実に準備を整えてきた。2012年には、Baiduをはじめとして、本日発表となったRenRenなどとの提携を増やしている。会員数もそれに合わせて増加しており、2012年末には会員数2,000万人を見込んでいる。

 任氏は中国の市場を「Google Playがなかったり、iOSについても脱獄用のストアが出回っているなど、フリーミアムが当然というゲーム会社としてはやりにくい市場。ただし、日本のゲームもアニメもみんなが見て知っているという状況もある。今まではそれをマネタイズする力がなかったが、私たちは、日本のコンテンツを初めてマネタイズできるのではと思っている」と話した。

 ゲームはオンラインゲームが浸透しているので、カードバトルでもバトルロジックが複雑になり、パラメーターは4つ以上が必要になるという。セガからの発表にもあった通り、今後は中国版の「Kingdum Conquest」となる「三国志 CONQUEST」が配信になる。

 韓国では、DeNAソウルが2011年6月に設立されている。郭氏は「韓国市場は普及が早い。スマートフォンの普及台数も日本と比べても早いくらいなので、早く展開を始めたい」と述べた。韓国の大手ポータルサイトDaumとの提携をした後は、Daum mobageをローンチしている。特徴としては、ARPUや定着率に関しては日本と遜色がないほどの数字が出ているという。

 韓国ではAndroid版のみがリリースされているが、今後はiOS版のリリースも行なっていくという。人気のあるゲームとしては、育成シミュレーションからスポーツ、RPG・戦略シミュレーション、そしてタワーディフェンスなど幅広いジャンルが受け入れられている。郭氏はさらなる特徴として、「韓国はもともと“ガチャ”に慣れている下地がある」と語り、日本のビジネスモデルは圧倒的に優位に働く可能性を示唆した。

 ゲストとして登壇した須田氏は、これらの話を受けて「畑はできあがっていますね」と語った。今回須田氏は、DeNAと共同で設立されたグラスホッパー・ユニバースの代表として登壇し、同社を「中国、韓国、アメリカと並ぶDeNAの“宇宙支部”」と紹介。世界を股にかける方針を示した。

 須田氏は最後にグラスホッパー・ユニバースの新作を紹介した。4月19日にAndroid版が公開された「フロッグミニッツ」については、「リメイクだが、続編と言ってもいいほど作り変えた」と述べ、さらにiOS版も近日に公開予定だと話した。

 このほか、「ゾンビvs人間(仮)」、「エイリアンバスターズ(仮)」というタイトルが、AndroidとiOS版でMobage Globalに配信されることが発表された。

【スクリーンショット】
中国、韓国、アメリカの3つの支局のプラットフォームの立場としての状況が語られた。それぞれの概況を示したスライドも用意されており、それらを比べてみても面白い。最後には新作タイトルの発表も行なわれた

(2012年 4月 26日)

[Reported by 安田俊亮]