DeNA、「第3回モバゲーオープンプラットフォームForum」開催

スマートフォン向け「モバゲー」開始。2011年2月にはアプリも登場


12月15日 開催

会場:ベルサール汐留



DeNA代表取締役社長兼CEOの南場智子氏
ngmoco CEOのNiel Young氏

 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)は12月15日、「第3回モバゲーオープンプラットフォームForum」をベルサール汐留にて開催した。このフォーラムは、ソーシャルゲームデベロッパーに向けて開かれたもので、DeNAのスマートフォン展開や海外展開について語られた。

 発表に先立ち、同社代表取締役社長兼CEOの南場智子氏は、10月に子会社化を発表した米ngmocoについて、「海外で推進しようとする要素をすべて有している。ngmocoが持つ『plus+』というコミュニティに、『モバゲータウン』のノウハウを投入し、海外にも豊かなソーシャルゲームを持つバーチャルプラットフォームを展開したい」と述べ、ngmocoを中核に据えた海外展開を行なうことを明らかにした。

 ヤフー株式会社と共同で取り組んでいる「Yahoo!モバゲー」について、会員数が155万人に達したことなどに触れ、「携帯のモバゲーに負けないような大きなプラットフォームに育てたい」とコメント。また公正取引委員会の立ち入り調査を受けた件については、「法令に違反する事実があったとは思っていないが、捜査に全面的に協力し、公正取引委員会の判断を仰ぎたい。しかし、既にご心配、ご迷惑をおかけしたことを反省し、このような疑義が2度とかからないような運営をしていくことをお約束する」と述べた。

 続いて、ngmocoのCEOを務めるNiel Young氏が登壇。同社は2008年6月に設立されたベンチャー企業だが、iPhoneゲーム「Rolando」で一躍トップアプリメーカーとして知られることになる。しかし2009年にはApp Storeのアプリが飽和し、平均単価が1.68ドルまで下落。このままでは先がないと判断し、基本プレイ無料のゲーム内課金に移行したところ、思っていた以上に売り上げが伸びたという。現在はその動きを推し進め、1,750万人以上のユーザー数を誇るゲームコミュニティプラットフォーム「plus+ Network」を運営する企業となっている。

 Young氏は「DeNAが日本でソーシャルプラットフォームの青写真を作ってくれた。今後は世界最大のソーシャルプラットフォームに成長させていきたい」と語った。また会場に集まったデベロッパーに向けては、「日本でのみなさんの成功は、スタート地点に過ぎない。みなさんが開発したゲームを、グローバルなユーザーに届くようにする」と、プラットフォーマーとしての決意も述べた。


Young氏は基本プレイ無料のゲームに移行したことで、有料アプリ販売を続けた場合の想定を上回る結果を挙げたことを紹介。「plus+」という大きなコミュニティを生み出すことに成功した2008年の世界モバイルゲーム市場は、2000年の日本市場に似ているというYoung氏。ただし世界ではそれ以上の勢いで変化が進んでいるとも語った



■ スマートフォンブラウザ向け「モバゲータウン for Smartphone」提供開始

DeNA取締役ソーシャルメディア事業本部長兼COOの守安功氏

 DeNAの今後の取り組みについては、同社取締役ソーシャルメディア事業本部長兼COOの守安功氏が説明した。

 まず最初に、「モバゲータウン」をスマートフォンのブラウザに対応させた「モバゲータウン for Smartphone」の提供を12月15日より開始したことが発表された。コミュニティ機能については、既存のフィーチャーフォン版「モバゲータウン」と共有する。ゲームは現状では「怪盗ロワイヤル」のみ移植されているが、フィーチャーフォン版とデータの共有もできている。

 各デベロッパーから提供されているゲームについても、「フィーチャーフォン版のゲームをそのままスマートフォン版で利用できるようにしたい」としている。その場合、デベロッパーにはインターフェイスの改修とFlashの修正が必要になる。機種やOS、画面サイズの違いはプラットフォーム側で自動調整されるので、とりあえず動かすだけならすぐにできるという。ただ解像度やインターフェイスが変わるため、ユーザビリティの調整は必要になる。またFlashコンテンツはAndroidではTouchイベントの対応のみでできるが、iOSはFlashが動作しないため、JavaScriptでの書き直しが必要になる。


「モバゲータウン for Smartphone」では、フィーチャーフォン向けに提供されていたゲームを、少ない手間で移植できるという。現在唯一提供されている「怪盗ロワイヤル」の実例も紹介された



■ 1ソースでiOSとAndroidに対応できる「ngCore」を提供

「ngCore」の特徴。スマートフォン向けソーシャルゲームの開発に特化したエンジンになっている

 今回のフォーラムの柱となったのは、海外展開のための3つの開発手法について。1つはiOSやAndroidに向けたアプリを、それぞれのネイティブSDKで開発するもの。2つ目は、1ソースでiOSとAndroidの両プラットフォームに対応できるゲームエンジン「ngCore」を使ったもの。3つ目は前述の「モバゲータウン」で提供されているフィーチャーフォン向けゲームをスマートフォン向けブラウザゲームとしてコンバートするもので、国内向けの提供を前提とした施策となる。

 「ngCore」は、JavaScriptでコーディングされる。アプリマーケットを通さずアプリを改修できたり、一部のユーザーに向けてテストを行なうことが容易になるといったメリットがあり、守安氏は「ソーシャルゲームに合った開発スタイルといえるのでは」と述べている。ただしiOSについてはApp Storeで審査が必要になるため、「Androidでどんどん改修した上、ある程度まとまったところでApp Storeに出すのがいいのではないか」という。パフォーマンス面では、各OSのネイティブ機能に直結することで、ネイティブ言語で書いたものと同レベルのパフォーマンスが得られるとしている。

 会場では「ngCore」のデモとして、ngmocoの農場ゲームが紹介された。iPhoneとAndroidの双方で同じゲームが動作しているところを紹介した上、Androidではタブレット端末の「GALAXY Tab」でのデモも行なった。

 「ngCore」の今後のロードマップとしては、バージョン1.0で基本的なソーシャルゲームに必要なものは揃うという。次期バージョンとなる1.5では、3Dゲームに対応するとしている。

 決済方法については、Androidではフィーチャーフォン版と同様にモバコインを購入する。iOSはアプリケーションをまたいで通貨を共有できないため、各ゲームごとの通貨をin app purchaseで購入するか、モバコインを各ゲームの通貨に両替するかになるという。開発においては自動的に対応するためデベロッパーは意識する必要はないとしているが、ユーザーには違いが出る部分となる。

 開発サポートについては、日本国内の企業については、海外展開を含めて全てDeNAが窓口になる。海外展開のローカライズやインフラについてのサポートは現在検討中としている。ゲーム内容については、日本と海外でヒットの傾向が違うが、「DeNAの内製タイトルやngmocoのノウハウをシェアしたい」という。言語対応は、海外はWEBでは5言語対応するが、ゲームは英語のみの対応で問題なく、その他の言語対応は任意で構わないとしている。

 「ngCore」に参画するデベロッパーは、1次パートナーとして50社あり、2011年2月下旬からゲームの提供を開始できるとしている。続く2次パートナーは数十社程度になる予定で、12月15日より「SDKデベロッパーサイト」にて登録の受付を開始している。一般パートナー(オープン化)は4月の予定。


iPhoneとAndroid端末、さらにはタブレット端末でも同じゲームが動作しているデモを実施。開発環境のデモも公開され、ソースを書き換えてすぐ、シミュレーター上で結果を確認できていた
「ngCore」1次パートナーとなる企業の一覧。国内では大手ゲームメーカーも多数参画している



■ YS.NETの鈴木裕氏、コーエーテクモの襟川陽一氏がプレゼン

 1次パートナーの発表に合わせて、開発パートナー2社のプレゼンテーションが行なわれた。1社目は、株式会社YS NET 代表取締役社長の鈴木裕氏。YS NETは「モバゲータウン」で「シェンムー街」を提供している。鈴木氏は「表示面積が大きく、タッチパネルで操作できるスマートフォンは、ゲームでも優位性がある。『シェンムー』もタッチパネルでやったら面白いだろうと思い、いま計画している」と、「シェンムー」でのスマートフォン進出を考えていることを明かした。

 DeNAと組む理由については、「SNSで成功しているゲームはまだあまりなく、ブルーオーシャンかなと思う。スマートフォンはこれからパフォーマンスがアップし、我々の持つハイエンドゲーム制作のノウハウが活かせる端末になる。『シェンムー街』も、『シェンムー』がワールドワイドに展開した経緯があり、ワールドワイドで通用するIPじゃないかと考えている。我々の展開にもDeNAさんの方針がぴったり合った」と語った。

 サービスを開始したばかりの「シェンムー街」については、「パッケージゲームとは全く違って、ちょっとしたこともすぐゲームに反映できて面白い。ユニークユーザーやARPUは予想よりもちょっと高い数値が出ている。この調子でユーザー数が伸びて行ってくれればうれしい」と好調をアピールしていた。

 続いて、株式会社コーエーテクモホールディングス代表取締役社長の襟川陽一氏が登壇。「国内外で3タイトルを展開していく」として、タイトルを紹介した。1つは既に「モバゲータウン」で提供中の「100万人の信長の野望」のスマートフォン対応。

 2つ目は、CDを使ってモンスターを生み出す「モンスターファーム」シリーズの最新作「100万人のモンスターファーム」で、2011年1月よりサービス開始予定。そして3つ目は、同社の看板タイトルである「信長の野望」のキャラクターをネコにした「のぶニャがの野望」。襟川氏は「『コーエーテクモもとうとうここまでやるか』と言われそうだが、社内の女性社員には評判がいい。シンプルだが奥の深い歴史シミュレーションゲームに仕上がってきている」と語った。こちらは2011年春よりサービス開始予定としている。

 襟川氏は「ソーシャルゲームは新しい部署を作って開発を進めている。今年度は4~5タイトル、来年度は10タイトルを出そうと考えている」と、ソーシャルゲームへの本格的な参入を表明。開発者に向けて「日本発の新しいソーシャルゲームを世界に向けて作れる。我々の手で新しいソーシャルゲームを作っていきましょう」と呼びかけた。





■ ngmocoの「plus+」を「mobage」に改名。「モバゲー」ブランドで世界へ

 一通りの発表の後、再び南場氏が登壇し、この日の総括とともに、新たに2点の発表を行なった。まずngcomoが提供する「plus+」を、「mobage」に統一することを明らかにした。南場氏は「世界に誇らしいモバゲーになるようがんばっていく」と語った。もう1つはサムスンとの提携。同社が今後発売するAndroid端末に、可能な限り「モバゲータウン」のゲームをプリインストールするという(日本市場を除く)。

 南場氏は最後に来場したデベロッパーに向けて、「スマートフォンの普及は、『ガラケー』という高い壁で守られてきた国境が取り除かれ、守りに転じなければいけないという分かれ目の時ではないかと思っている。しかしここで守りに入るのではなく、国境が取り除かれたのだから、我々が世界に攻め出そうという、大きな機会が提供されたと考えている。みなさんと力を合わせて、世界で日本の大衆向けのモバイルソーシャルゲームの力を見せ付けていきたい」と語った。


【スクリーンショット】
「plus+」を「mobage」に改名し海外展開を行なうサムスン電子との提携も発表。副社長兼メディアソリューションセンター長のHosoo Lee氏がビデオメッセージで登場し、デベロッパーにエールを送った

(2010年 12月 16日)

[Reported by 石田賀津男]