ネクソン、厚木市立南毛利小学校にて「ネチケットの普及活動授業」を実施
子供達はオンラインゲームより「アメーバピグ」が大好き!


5月31日開催

場所:神奈川県厚木市立南毛利小学校



 株式会社ネクソンは5月31日、神奈川県厚木市立南毛利小学校にて「ネチケットの普及活動授業」を行なった。この授業は昨年からネクソンが行なっているネチケット啓蒙活動の一環で、学校の体育館に生徒を集めての実施となった。

 南毛利小学校は、厚木市で1番大きな小学校で、全校生徒は1,016人。そのうち、5年生、6年生の361人に対して授業が行なわれた。本稿では授業の模様や、生徒達から聞けたネットゲームへの関心、担当教員、および校長先生の感想などを紹介していきたい。



■ IDとパスワードの重要性に対しての授業。小学校での流行は「アメーバピグ」

授業を行なうネクソン広報担当の大井香苗氏
パスワードが盗用されるというストーリーの寸劇が行なわれた

 授業はネクソン広報担当の大井香苗氏によって行なわれた。体育館では子供達が床に座り、大井氏はプロジェクターにスライドを表示させ、インターネットの基礎から、IDとパスワードの注意点などを説明していった。

 最初に大井氏が、「ネットゲームを知っていますか」と質問をすると、多くの生徒が手を上げ、すでにそのほとんどが個人的なIDやパスワードを持っているという。大井氏は、オンラインゲームは、インターネットの特性を活かし、ゲーム内でコミュニケーションを楽しむゲームだと説明した。

 授業で特にフォーカスしたのはIDとパスワードの重要性。ゲーム内で親切にしてもらった人にうっかりIDとパスワードを教えてしまったために、ゲーム内の財産を全て取られてしまった、というストーリーのコミックを用意。紙芝居風に見せるのではなく、小学生から希望者を募り、コミックのセリフを演じさせてドラマを展開した。

 大井氏はIDやパスワードが盗まれてしまうと、自分になりすまして他の人へ悪口を書かれてしまったり、知らない会社やサイトから請求が届くといった、様々な被害に結びついてしまうことを紹介。新聞のコピーから、IDとパスワードの盗用によって実際にさまざまな事件が起きていることも説明した。

 また、パスワード設定の際には、英字のみ、数字のみのパスワードではダメで、混ぜたものを使う。生年月日や名前などの安易な物は避けるべきで、使うなら組み合わせを工夫するといった、IDとパスワードの設定のコツを語り、1つのサービスには1つのIDとパスワードの組み合わせを使い、他のサービスと共用しないようにと語った。

 授業を終えた後、子供達に話を聞くべく希望者を募ったところ、記者という存在が珍しいようで、わいわいと取り囲まれてしまった。「攻略情報を教えてください」、「モンハンやってますか」、「カメラで写してください」、「どんなゲームやってるんですか」などなど口々にしゃべってきて、子供達のパワーに圧倒された。

 いろいろな話から抽出してみると、ネクソンの「メイプルストーリー」などのPC向けのオンラインゲームをやっている子供はあまりいないようだ。コンシューマーゲームでは、ちょっぴりゲームマニアな子がいて、「Xbox 360で『モンハン』はもちろんだけど、僕が好きなのは『Halo』シリーズ。知らない人ともガンガンやっちゃう」とのこと。お兄さんとお父さんがゲームが大好きで、オンラインコンテンツを楽しんでいるため、それに混ざって一緒に楽しんでいるようだ。「知らない人と対戦したことがあるよ」と自慢げに話す子もいた。

 インターネットを介してゲーム以外に何をしているのかというと、南毛利小学校ではコミュニケーションサービスの「アメーバピグ」が流行っているとのこと。「アメーバピグ」は自分のアバターが作成でき、公園や広場、他の人の家に行ってコミュニケーションが楽しめるというソーシャルサービスだ。

 話を聞けた生徒の中に、この「アメーバピグ」が大好きな女の子がいた。学校の友達はもちろん、顔を知らないネット上の友達もいるという。課金アイテムは手を出さず、無料のアイテムばかりを集めて、友達と交換などもしているということ。男の子の友達もいるという。一方で、男の子でも「アメーバピグ」をやってると答えた子に、「女の子の友達はいるの?」と聞いてみたところ、「いないよ、(現実の男の子の)友達だけ」ということで、何となく男女の差も感じた。

 ちなみに南毛利小学校では、子供達は学校のお知らせなどは、メールで受け取っているとのこと。厚木市のイントラネットのような教育用の独自ネットワークが構築されており、これを利用している。このほかPCを使った授業などもあり、子供達は日常的にPCを使っているが、今のところPCではWEBサイトの閲覧がメインだという。

 ほとんどの子が、ゲームといえばDS、PSPで、PCは「お父さんとお母さんのもの」という認識で、PCのオンラインゲームはほとんどやっていないとのことだった。今回ネクソンがネチケット啓蒙活動をやるということで、それなりの割合の小学生がオンラインゲームを遊んでいるものと思っていたが、まだまだ小学生にはPC向けオンラインゲームは縁遠い存在のようだ。


IDとパスワードの重要性、設定での注意点などを説明



■ 求められる子供立ちへの取り組み。まず必要なのは携帯電話向けのリテラシー

今回の「ネチケットの普及活動授業」の窓口となった、松本和也教諭
校長の上原和也氏

 授業の後、今回の「ネチケットの普及活動授業」の窓口となった、松本和也教諭と、校長の上原和也氏に話を聞いた。今回の授業実現の経緯はネクソンからの案内に、「情報モラルの授業の必要性」を感じていた松本氏がネクソンに連絡を取ったという。

 PCを使った授業は、1年生から行ない、高学年ではインターネットに対する授業も行なっているという。ただ、その一方で松本氏自身は、オンラインゲームはおろか、Twitter、Facebook、mixiといったソーシャルサービスもまったくやっていないという。友達や先生の間でもそれらは一切話題には上がらないとのことだ。

 ネットでのコミュニケーションに関しては、厚木市の教育用の独自ネットワークには学校用の掲示板もあるので、匿名性などに注意を払うリテラシーの教育も行なっているという。“掲示板”は教員が注意して監視しているとのこと。この他、教員用の情報交換を行なう場もあるようだ。

 子供達の携帯電話の学校での使用・所持は基本的に禁止で、「下校時は連絡する」といった事情で、親と学校から許可が出た場合のみ使用できる。学校が終わってからゲームをする子供達を見かけるが、携帯電話で遊ぶ子供はあまり見ない。

 松本氏は、今回の授業に関しては、IDやパスワードに対して注意を喚起する内容は必要だと感じた。この授業を受け継ぐ形で、松本氏が子供達に教えたいのはまず「携帯電話」に対して注意を払うようにしたいという。「携帯電話での掲示板を含めたネットコミュニティのより安全な使い方を教えていきたい。PCの前に、携帯電話が子供達の目の前にある」というのが松本氏の考え方だ。

 ネットゲーム、顔の知らない人達と繋がりを持つことに関しては、「自分がやってないので感想もない、無の状態だ」と松本氏は正直に語った。学校等の現実ではない、仮想世界での繋がりに関しては、「正直、小学生にはまだ早いと思う」とのことだ。

 今回の授業の改善点として松本氏は、「子供達は視覚的な興味を求めている。もっと動いたり、目を引く工夫が必要だ」と感じたとのこと。実際の授業で松本氏達も工夫しており、特に算数はFlashなどを利用した教材を活用しているという。

 一方、上原和也校長は、今回の授業については、「インターネットは便利である1面、裏サイト事件など、危険な面もある。フェイストゥフェイスの関係が築けない子達が、ネットの世界に陥ると言うことも聞いているので、子供達も我々も勉強しなくてはいけないなと思っています」と語った。

 

 話を聞いてみた限りでは、オンラインゲームはおろか、オンラインサービス全般、そしてネットコミュニティに対する理解や関心が薄く、ネクソンのオンラインゲームや「アメーバピグ」がどのようなオンラインサービスなのか、中で何が行なわれているのか、ほとんどキャッチアップできてないと感じた。また、この教員サイドのオンラインサービスに対する無知や不理解が、今後子供達のトラブルに繋がる危険性をはらんでいるとも感じた。

 インターネットは距離や立場を越えた交流を可能にしている。今後ネットコミュニティはさらに浸透していくだろうし、オンラインゲームを含むエンターテインメント性の高いオンラインサービスは、子供達にとっても魅力的なものだ。しかし、子供達が何の心構えもなく、大人達も遊んでいる場に入っていくということは筆者でも心配な面もある。特に教師のような子供を守るという立場の人達にとっては、注意しなくてはいけない点だろう。

 「隣のキャラクターは大人の人かもしれない」という想像は、子供にはしにくい。大人も子供も同じような立場で“場”を共有しているというのは、小学生にはすぐには理解が難しいだろう。だからこそ教師の人達にまずネットコミュニティを理解して欲しいし、オンラインゲームを含む各種オンラインサービスをもっともっと触って欲しい。今回の授業は、IDとパスワードという入口に対しての注意に喚起だったが、そこを越えた子供達は大人もいる世界に入っていく。入口から先への心構え、というところまで踏み込んで欲しいと思った。



(2011年 6月 1日)

[Reported by 勝田哲也]