ネクソン、小学校で「“ネチケット”を学ぶ公開授業」を実施
小学生の間でもオンラインゲームは人気、求められる理解と安全対策


10月24日実施

会場:墨田区立緑小学校


 株式会社ネクソンは10月24日、東京都墨田区立緑小学校で「“ネチケット”を学ぶ公開授業」を実施した。この授業では小学校の6年生49人に、オンラインゲームを遊ぶ際のIDとパスワードの設定・管理に対する注意が呼びかけられた。

 ネクソンが小学校で授業を行なうのは今回が始めて。ネクソンは「メイプルストーリー」という低年齢層向けのタイトルが人気を博している。他にも「ハンゲーム」や、携帯電話を使うモバゲー、GREEなども低年齢層ユーザーが増加しているといわれている。低年齢ユーザーに対する活動は、今後ゲーム業界が求められている。



■ 小学生を前に、教諭と一緒にネットの危険性、守るための方法を提示

ネクソン広報担当の大井香苗氏
墨田区立緑小学校教諭の池田満氏
オンラインゲームを知っていたのは49人中10人ほど。ハンゲームの「チョコットランド」を積極的にプレイしているという数人の子供達は、自分達だけのパスワードを設定して専用のルームを作り、友達同士で遊んでいるという

 今回、公開授業が行なわれるきっかけになったのは、ネクソンはオンラインゲームパブリッシャーとして、いくつもの小学校、中学校などから「社会科見学」の要望を受けたことだという。

 近年は特に社会科見学への希望が増加しており、高まっているオンラインゲームへの関心に応える形で、ネクソンはオンラインゲームの理解を深め、安全性を高めてもらうため、小学生を対象にしたカリキュラムを作り、特別授業という形で実施できないかを近隣の小学校に打診していた。その提案に応えたのが、墨田区立緑小学校だった。

 墨田区立緑小学校は年に数回、「学校公開」を行なっている。この公開日は日曜日に1時限目から5時限目までカリキュラム通りの授業が行なわれ、給食も出る。父兄は自由な時間に学校を訪問し、小学校の“日常”を見学できる。今回は10月22日金曜日を代休とし、この日の授業を日曜日に行なうという形で行なわれた。墨田区は、「公立学校選択制」を採用しており、この学校公開は父兄参観という目的だけでなく、これから小学校に入る子供のいる親の見学も兼ねており、学校説明会も行なわれるという。

 今回の授業は、ネクソン側の提案から墨田区立緑小学校の6年生担当の池田満教諭が応え、公開授業の1つとして実現することになった。どんな授業をしていくか打ち合わせを重ね、加えて池田教諭は代休となった金曜日にネクソンで改めてネットゲームの基礎や、IDパスワードの管理の注意点などを“勉強”したとのことだ。

 授業は池田教諭と、ネクソン広報担当の大井香苗氏によって行なわれた。現在、墨田区立緑小学校の6年生は1クラス25人前後で、今回は2クラス分49人の生徒が1つの教室で授業を受けた。最初は池田教諭が生徒達に呼びかけ、オンラインゲームという言葉を知っているか、プレイしている人は、どんなゲームをやっているか、といった質問をした。10人前後の生徒がオンラインゲームを触ったことがあるといい、数人は週に数回、毎日プレイしている生徒もいるようだ。

 具体的に出た名前はハンゲームのMOタイプのオンラインRPG「チョコットランド」。電話で待ち合わせ場所を決め、自宅のPCからハンゲームら接続、ルームを作成してプレイしているという。仲間内で決めたパスワードを設定し、「もし知らない人が入ってきたら攻撃する!」という感じで、友達とだけプレイしているようだった。他に、Yahoo!の無料ゲームなどを楽しんでいる子供もいるという。

 大井氏はゲームのログインに必要なIDやパスワードの概要を説明した上で、公式ページ内の1コンテンツである「ネクソン事件簿」を引き合いに出して、うっかり他の人にIDやパスワードを教えてしまい被害に遭ったケースを紹介した。個人情報の大事なこと、教えてしまうと被害に遭ってしまうことを語り、IDとパスワードの管理の重要性を語った。

 池田教諭は、何人かの生徒を前に出し、そのときの状況に合わせた補足を行ない、生徒達にわかりやすく説明していった。1人の生徒の家の鍵を借りて、「鍵を盗られてしまったら勝手に家に入られてしまう」という状況を話した。さらに「他の人の家で悪いことをしてその人の家にこの鍵を置いていったら、鍵の所有者が犯罪者として疑われる」という、なりすましの犯罪を説明したりした。

 大井氏は「英字のみ、数字のみのパスワードは設定しない」、「6文字以上使う」、「自分の名前や生年月日、ニックネームなどわかりやすい単語を含めない」、「他のサイトと同じにしない」といった安全性の高いパスワード設定のコツを説明した。大井氏は以前は、歴史の年号とその事柄に関する登場人物を合わせて設定していたという。最後に大井氏は、新聞記事から実際の事件となったケースを挙げ、生徒達へ安全性の高いパスワードの設定を呼びかけた。

 授業の後、池田教諭に話を聞いてみたところ、墨田区立緑小学校では3年生から学校のPC教室を使った授業を行なっている。5年生、6年生には、安全な使い方、ネットマナー、さらには携帯電話の使い方なども説明し、事件に巻き込まれないための注意喚起も行なっている。

 池田教諭の実感としては、ここ数年でオンラインゲームに触れる小学生が爆発的に増えたという。オンラインゲームは顔の見えない相手と接することも多い。このため、気をつける点や、マナー、そして「オンラインゲームとはどんなものか」ということを説明している。池田教諭自身が生徒の前でアカウントを作ったり、ゲームを説明したり、アバターを見せたりして、オンラインゲームというものがあること、気をつけることなどを説明しているという。

 一方、授業参観に来ていた父兄は「自分で責任が持てる様になるまで子供にはオンラインゲームはやって欲しくない」と語っていた。ゲームへの理解、というよりも「子供を守りたい」という気持ちが伝わってきた。今回授業を見て改めて、一部の小学生はネットゲームをプレイしていること、友達との遊びのツールに使っている事がわかった。この現状に対してどう対処していくか、それは大人達の課題だろう。今回のように理解を求め、安全性を提示する活動は急務なのではないかと感じた。

 今回のネクソンの資料は初めてということもあって、使っている言葉が堅く、小学生には伝わりにくいのではないかと感じた。池田教諭の生徒の立場に置き換えた説明はわかりやすく、今回、実際授業を進めることで、今後もっとわかりやすい授業の仕方、情報提示の方法が作れるようになったのではないだろうか。内容も、IDとパスワードだけでなく、多くのことを教える必要があると思う。小学校への働きかけという実際の行動を開始したネクソンの姿勢は大きく評価したい。そして、今後の取り組みに期待する一方、業界全体の動きのきっかけになって欲しい。


(2010年 10月 25日)

[Reported by 勝田哲也]