マイクロソフト、フラット形状のマウス「Arc Touch mouse」を国内初披露
BlueTrackセンサー+タッチセンサー搭載の“薄型”マウス
フルHD対応Webカメラ「LifeCam Studio」も登場


12月17日開催

会場:東京・小田急サザンタワー


紹介された「Arc Touch mouse」と「LifeCam Studio」

 12月17日、マイクロソフトは近日発売予定のハードウェア2製品についてのプレス説明会を開催した。紹介されたのはBlueTrackセンサーを搭載した変形可能なポータブルマウス「Arc Touch mouse」と、フルHDワイドスクリーン撮影に対応したWebカメラ「LifeCam Studio」。

 発売日や価格については近日発表予定となっており、今回の説明会では製品の特徴やテクノロジー面の紹介が行なわれた。特にマウス製品の「Arc Touch mouse」は、センサーにマイクロソフト独自のBlueTrackセンサーを搭載し、ホイール部をタッチセンサー化するなど、他に類を見ない新機軸がふんだんに取り入れられている。いずれもゲーミンググレードの製品ではないが、今後ゲーミングデバイスへ転用される可能性は高い。同社の取り組みを紹介したい。




■ BlueTrackセンサー+タッチセンサーを搭載する変形可能マウス「Arc Touch mouse」

ホーム&エンターテイメント事業本部リテールビジネス事業部長の五十嵐章氏
マイクロソフトハードウェアの略史。新たなデバイス開発への取り組みを「魔法の杖を生み出す」と表現

 説明会の冒頭では、マイクロソフトのホーム&エンターテイメント事業本部リテールビジネス事業部長の五十嵐章氏がスピーチ。マイクロソフトのハードウェア製品の歴史と哲学を紹介する中で、1982年に発売された初代のマイクロソフトマウスを取り出し、次いで最新製品の「Arc Touch mouse」を取り出して見せた。片や鉄球入りの無骨なボールマウス、片やBlueTrackセンサーのスタイリッシュなポータブルマウスと、そのコントラストに隔世の感がある。

 その「Arch Touch mouse」は、一般向のデスクトップ用途からモバイル用途にも対応する、新機軸のデザインが取り入れられた製品だ。基本スペックとしてセンサー部にマイクロソフト独自のBlueTrackテクノロジーを搭載。BlueTrackは2009年3月に発売されたハイエンドゲーミングマウス「SideWinder X8 Mouse」にも搭載されている高性能のセンサーで、接地面をほとんど選ばず、安定・高速なトラッキング性能が期待できる。乱暴に言えばオプティカルマウスとレーザーマウス双方の良いとこどりを実現したセンサーだ。

 センサーの読み取り速度は8,000fps、解像度は1,000dpi。最大トラッキング速度は一般向けということもあって重視されておらずカタログにも記載されていないが、ゲーミングマウス「SideWinder X8 Mouse」が読み取り速度13,000fpsで最大トラッキング速度120インチ/秒を実現していたことから単純計算すると、本製品ではおよそ70インチ/秒程度の最大トラッキング速度があると推測される。これは1世代前のオプティカルゲーミングマウスに匹敵する水準だ。


初代マイクロソフトマウスと、最新製品の「Arc Touch mouse」を相次いで取り出す五十嵐氏。ちなみに初代のほうのボールは鉄球であるためかなりの重さ。無骨なデザインである




「Arc Touch mouse」の解説を行なうマイクロソフトディベロップメントPS&L開発統括部品質管理グループの水谷裕一氏
使用中の様子
「Arch Touch mouse」デモ機

 その上で「Arc Touch mouse」最大の特徴は、何と言っても変形可能な本体形状。使用しない時には本体を伸ばすことで完全にフラット板状にすることができ、この際のサイズは約128×55×13.5mm(縦×横×高さ)。ちょうどスリムな携帯電話ほどのサイズで、胸ポケットにストンと入るほどの薄さだ。使用時には本体をぐにゃりと折り曲げることで接地面から約30mmほどの高さができ、通常のマウスと同じように手を載せて操作することができる。変形部は外側がソフトラバー、内部は何枚もの薄い板金を使った特殊な構造になっており、この折り曲げ動作を4万回繰り返しても故障することはないという。

 そして、技術的な解説を行なったマイクロソフトディベロップメント株式会社、PS&L開発統括部品質管理グループの水谷裕一氏が特にプッシュしたポイントがホイール部。本製品では従来のような機械的に回転するホイール部品ではなく、タッチセンサーを搭載してより柔軟な操作が可能になっている。指を乗せて上下にすべらせるとスクロール操作、素早くフリックすると高速スクロール、上端と下端をタップするとページアップ/ダウンというもの。さらにタッチセンサーの内部にはフォースフィードバック機能が搭載されており、それぞれの操作に応じて「コリコリ」という物理的な感触が伝わってくるという徹底ぶりだ。

 ホイール部をタッチセンサーに変更したことで、より精密な操作が可能になったというメリットもある。従来はホイールの回転に応じて3~4行単位でスクロールすることが標準的だったが、ホイール操作の解像度が高まったことで4倍の精度でスクロール操作を行なうことが可能になる。これを万全に活用するためにはソフトウェア側の対応が必要となるが、Internet Explorerなどマイクロソフトの主要製品では既に対応済み。ホイールを一種のアナログ軸と見なせば、ゲームでのユニークな活用も有り得そうだ。

 実際に試用してみたところ、本製品「Arch Touch mouse」そのものをゲームで使用する場合、その形状ゆえの不安定感と、左右両方のメインボタンの硬さ、ボタン数の少なさといった点で、FPSなど競技志向のハードな使用には耐えられそうにないものの、競技性のないカジュアルなゲームプレイや、昨今急成長しているソーシャルゲームではまったく問題なく利用できそうだ。もちろん、ちょっとしたマイナーチェンジを加えることで充分にゲーミンググレードへの転換も可能な仕様となっているので、本製品で開拓されたデザインが今後ユニークなゲーミングデバイスにつながっていくことを期待したい。


【「Arc Touch mouse」】
使用時の形状携帯時の形状
BlueTrackセンサー単4乾電池2本を使用。本体重量は電池込みで90g




【「LifeCam Studio」】
フルHD撮影にも対応したWebカメラ「LifeCam Studio」。反射防止コーティングを施したガラスレンズを2枚使用することで、レンズの明るさを示すF値=2.0を実現したという。マイクロソフトの「TrueColor テクノロジ」に対応し、アプリケーション側で露出の最適化、ノイズ除去、ブラックレベルやカラーバランス調整を行えるなど、ソフトウェアサポートの豊富さも強調されていた。
 また、興味深い取り組みとしてソフトウェアの「CDレスインストール」を実現することが紹介された。カメラをUSBポートに接続するとWindows Updateからドライバーがインストールされるが、そのドライバーに「Co-intaller」と呼ばれる2次インストーラーが入っており、そこから自動的にインターネットを経由してLifeCamアプリケーションがダウンロード・インストールされるというもの。今後は他の製品にも応用していきたいという




(2010年 12月 17日)

[Reported by 佐藤カフジ]