NHN Japan、「ハンゲーム」をオープンプラットフォーム化

位置・時間・天候と連動する「リアゲー」サービス開始


7月26日 開催

会場:丸ビルホール



NHN Japan代表取締役の森川亮氏

 NHN Japan株式会社は7月26日、戦略発表会「Hangame ex 2010」を開催した。この発表会では、代表取締役の森川亮氏が登壇し、同社が提供するゲームポータルサイト「ハンゲーム」における今後の展開が説明された。

 トピックは大きく分けて3つあり、現実情報を絡めたゲーム「リアゲー」の提供、「ハンゲーム」のスマートフォン版の提供、「ハンゲーム」のオープンプラットフォーム化となっている。

 まず森川氏は、ゲームのリアルタイム要素について触れ、「PCではリアルタイムでコミュニケーションするオンラインゲームを提供してきたが、携帯電話向けには大変悩んできた。その答えを今日お見せする」とし、新サービス「リアゲー」を発表した。


位置に加え、時間や現象もゲームに取り込み、「今」を楽しくする

 「リアゲー」とは「リアルタイムゲーム」の略で、“今を楽しむ”という点に注目したサービス。GPSを用いた位置情報のほかに、時間、天候などの現象もデータとして取り込む。導入例として、同社が提供中の粘土ペット育成ゲーム「ねんどん」では、晴れている時に見ると乾くのを嫌がるキャラクターの動きが鈍くなる。雨天の時に見るとゲーム内でも雨が降っており、水をもらって喜ぶキャラクターが描かれ、さらに成長度も増す。「雨が降ると人間なら嫌な顔をするところだが、『ねんどん』は喜ぶ」と、心理的な要素も考慮した遊びが加わっている。


【ねんどん】
晴れている時はあまり元気がなさそうに見える雨が降ると大喜びし、成長度も増す。雨が楽しみになる要素だ

 また9月には、「トライフルストーリー」というRPGが提供される。携帯電話とPCのマルチプラットフォームで展開されるが、PCの利用者は勇者軍、携帯電話の利用者は魔王軍に分かれて争う。時間の要素も連動し、昼間は勇者軍が強くなり、夜間は魔王軍が強くなる。さらに地域限定のモンスターが現われるなど位置情報を利用した遊びも盛り込まれる。


【トライフルストーリー】
PCと携帯電話のユーザーが対決するクロスプラットフォーム作品。時間によって強さが変化する位置情報にも対応し、地域限定のモンスターが登場するこのほかにも多数の「リアゲー」タイトルを展開予定

 この「リアゲー」を用いた新たなプラットフォームとして、場所、天気、時間との連動機能を持つコンテンツ「イマコレ」が提供される。「イマコレ」では、利用する時間や場所、天気に応じたミッションが指示される。ミッションは「あるゲームをプレイする」といった内容で、達成するとカードを入手できる。カードはゲームと連動したキャラクターカードなど、コレクションする楽しみのほかに、裏面にはショップ等で利用できるクーポンがついている。このシステムを用いた企画として、「PIZZA-LA」を展開する株式会社フォーシーズとタイアップし、ピザ注文時に割引券を獲得できるキャンペーンが実施される。

 森川氏はこれらのサービスを総括し、「ソーシャルゲームを展開するが、単なるソーシャルゲームではない。また単なる位置ゲームでもない。それらを包含した今を楽しむゲームを提供する。次世代の新しい潮流になると確信している」と述べた。


【リアゲー】
場所や時間、天気に応じて提示されるミッションをクリアすると、カードを入手できる。コレクション要素として楽しめるだけでなく、割引券としても利用できる
「PIZZA-LA」を始め、既に数社が参入を表明している
ゲームをプレイしてカードを入手。手に入れたクーポンを使って「PIZZA-LA」をデリバリーする。届いたナゲットを森川氏が食べ、「暖かくて美味しいね」というところまで実演



スマートフォン版「ハンゲーム」はAndroid版を本日提供

 2点目のスマートフォン版「ハンゲーム」の提供については、Android版が本日13時30分よりスタート。iPhone版も近日オープン予定としている。会場に実機が置かれていたAndroid版は、PCや携帯電話向けの「ハンゲーム」とは入っているコンテンツが異なり、現在は「リバーシ」などいくつかのカジュアルなゲームをプレイできた。ただ前述の「イマコレ」は既に実装されており、GPSで取得した位置情報などから得たミッションの指示も確認できた。

 なおスマートフォン版の発表に合わせて、携帯電話向けに提供されている「ハンゲ.jp」のサービスの名称が「ハンゲーム」に変更され、全サービスが共通の「ハンゲーム」ブランドに統合された。

【Android版「ハンゲーム」】
画面のデザインやコンテンツは独自のものだが、既に「イマコレ」が実装されており、カードのコレクションも見られる



 3点目の「ハンゲーム」のオープンプラットフォーム化については、既に他のSNSでオープン化がなされていることを踏まえた「ハンゲーム」の長所が3つ挙げられた。まず第1に、PC、携帯電話、スマートフォンという3つのプラットフォームにおいて、1つのID、1つのアバター、1つの決済方法で提供するサービスであること。この仕組みは世界初だとしている。

 2つ目は集客力。「ハンゲーム」単体では月間ユニークビジターが720万人という数字だが、月間ユニークビジター3,000万人という大きな数字を持つライブドアからも年内に同様のサービスを提供することで、他のポータルサイトやSNSにも劣らない大きな集客力を生むとしている。

 3つ目は開発環境の支援。ライブドアとの協業により、月間1万円からという低価格でインフラサービスを提供する。またハンゲームIDやアバター、コミュニティなど従来からあるサービスと、「リアゲー」に関するAPIを提供するとともに、開発ツール「GameOVEN」を来年早々にも提供するとした。さらにマネタイズにおいては、「ハンゲーム」独占の場合は売り上げの80%をシェアするとしている。他社では70%に設定されていることが多く、比較的割のいいシェア率といえる。このほか「ハンゲーム」を10年間運営してきたノウハウと豊富な決済手段を提供するとしている。

 森川氏はオープンプラットフォーム化について、「さまざまなプラットフォームがオープン化されているが、利用者の数を集めることが優先され、開発会社との共存共栄ができていないと感じている。プラットフォームだけが生き残るのではなく、開発会社と共存共栄していきたい。また利用者には本当に面白い、違う意味のあるゲームをきちんとお届けしたい。それによって皆さんと一緒に市場を拡大したいと考えている」と同社の方針を述べた。


【ハンゲームのオープン化】
PC、携帯電話、スマートフォンが一貫したプラットフォームであること、ライブドアを含む集客力、スピーディーで充実した開発環境の支援が「ハンゲーム」の長所だという

参入パートナーは70社。よく知られるゲーム会社の名前が並ぶ
スクウェア・エニックス エグゼクティブプロデューサーの三宅有氏
スクウェア・エニックス プロデューサーの渡辺範明氏

 参入パートナーは70社が発表された。リストを見ると大半がゲーム関連の企業で、特にPCオンラインゲームのパブリッシャーが数多く並んでいる。ここでも長年、多くのオンラインゲームを提供してきた「ハンゲーム」ならではの色が見える。パートナー登録の詳細については、「NHN Partners Center」のページが本日よりオープンしている。

 パートナーを代表して、株式会社スクウェア・エニックスのエグゼクティブプロデューサーの三宅有氏と、プロデューサーの渡辺範明氏が登壇し、開発中のブラウザゲーム「地球オークション」を紹介した。このゲームは30世紀、陸地の99%が水没した地球で、遺物をサルベージして生きている人々の世界を描いた作品。

 プレーヤーはまずオークションに出ている宝の地図を競り落とし、その情報をもとに潜水艇を使って財宝を引き上げる。潜水艇を派遣した後は、距離に応じて数時間待った後、手に入れた財宝を確認できる。財宝そのものには金銭価値はなくコレクションするだけのものだが、本作の肝は最初のオークション部分にあるという。他のプレーヤーと競り合うというオークションの楽しさをゲームにし、競り勝って手に入れたからこそ宝に価値を感じる、というロジックでゲームの面白さを作り出している。今後は「ハンゲーム」のアバターへの対応なども行ない、近日中にオープンβテストを開始したいとしている。


【地球オークション】
未来世界を題材にしたSFだが、テーマはあくまでオークション。熱い競り合いをゲームとして体験させようという内容


 発表会にはゲストとして、タレントの加藤夏希さんが来場。発表された「イマコレ」を体験し、「新しい世界が広がりそう。ゲームの世界は現実の自分ではないけれど、現実と通じるものがあると、より自分に近づいて距離感が縮まる。地方に行く仕事が多いので、たどり着いたらまずカードを集めたい」と語った。


加藤夏希さんが「イマコレ」を体験。また加藤さんが誕生日を迎えたということで、「ハンゲーム」のロゴがデザインされたケーキが登場するサプライズもあった

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(2010年 7月 26日)

[Reported by 石田賀津男]