米EA、ニューヨークで「Crysis 2」のワールドプレミアを開催
廃墟と化した摩天楼でエイリアンと死闘を繰り広げる次世代FPS


2010年末発売予定

価格:未定


会場のTribeca Grand Hotelはアートの発信地SOHO地区の近くにあるランドマーク
ホテルの地下には本格的なシアターがあり、ここでトレーラーの映像が公開された

 米Electronic Artsは、ドイツのCrytekの新作FPS「Crysis 2」のワールドプレミアを、4月6日の夕刻からゲームの舞台となるニューヨークにある高級ホテルTribeca Grand Hotelの地下シアターで行なった。「Crysis 2」は欧米でWindows、プレイステーション 3、Xbox 360の3プラットフォーム向けに2010年の年末の発売を予定。日本での発売は未定。

 前作の「Crysis」は南国の島を舞台に、北朝鮮軍やエイリアンと戦う米軍特殊部隊の隊員となって戦ったが、「Crysis 2」では舞台を大都市ニューヨークへと移した。「Crysis」とそのスピンアウト作品「Crysis Warhead」では、「CRY ENGINE 2」によって写真と見まがうほどリアルなジャングルの風景を作り出した。発売当時には、最高の解像度でプレイできるパソコンがないほどで、その執念を感じるほどのリアルさは当時のプレーヤーに衝撃を与えた。

 それだけに、Crytekの最新ゲームエンジン「CRY ENGINE 3」によって開発されている「Crysis 2」が、ゲームファンにどのような驚きを与えてくれるかは、ファンのみならずゲーム業界全体が期待するところだろう。会場には、アメリカだけでなく、イギリスやイタリア、ドイツ、スペインと世界中のメディアが集まり注目度の高さを感じさせた。

 会場では、Electronic ArtsのゼネラルマネージャーDavid Demarutini氏が開催を告げた後、初公開となるトレーラーが上映された。さらに、作品の制作総指揮を執るCrytek CEOのCevat Yerli氏と、シナリオを担当する小説家のRechard Morgan氏らがそれぞれ作品の魅力を語った。

 残念ながら、ミニシアターは撮影禁止だったので、上映された映像を紹介することはできないが、別途トレーラーの映像を入手したのでぜひご覧頂きたい。激しくも悲壮な都市戦の迫力を堪能して欲しい。また、シアターの外で行なわれたカクテルパーティーの様子や、パーティー会場に飾ってあったアートボードなども紹介していく。

 プレミアの翌日に行なわれたCevat Yerli氏とRechard Morgan氏のインタビューも合わせて読んでもらえると、「Crysis 2」の全貌がぼんやりではあるが見えてくるはずだ。また、4月9日22時に北米の公式ホームページもオープンするので、そちらもぜひチェックしてみて欲しい。


ミニシアター入口のタペストリーパーティー会場の一画に作られたミニギャラリー世界中のメディアが集まって盛大に催された
会場には、すでにおなじみになりつつある等身大ナノスーツの姿もあったマキシマム迫力当日の夜10時から11時まで数回にわたって、タイムズ・スクエアのオーロラビジョンでトレーラーが上映された



■ 廃墟に蠢く無数のエイリアン。同時多発テロを思わせるトレーラーを公開

 プレミアの冒頭には、これが初公開となる「Crysis 2」のイメージムービーが公開された。911の同時多発テロ事件を思わせる悲壮感あふれるムービーの中には、破壊されたニューヨークの街に蠢くエイリアンの大群や、軍隊と戦う人型のエイリアンロボ、「ナノスーツ 2」を着た主人公が描かれている。名曲「ニューヨーク・ニューヨーク」が静かに流れる中、繰り広げられる壮絶な死闘は、悲壮感に満ちている。


【「Crysis 2」トレーラー】

Crytekの創始者、Yerli3兄弟。プレミアには、Cevat Yerli氏(写真右)が参加した

 Cevant Yerli氏によると、「Crytekの高品質な作品を作るDNAは『Crysis 2』にも受け継がれている」と言う。「Crysis 2」のニューヨークには破壊可能な多数のオブジェクトが用意されていて、プレーヤーは「ナノスーツ 2」を使ってそれらの“がらくた”の中からスーツを強化するための力を得ることができる。強化の方向はプレーヤーが選択可能で、スーツを自分好みにカスタマイズしていくことができる。

 上映されたムービーは、GDCで公開された「CRY ENGINE 3」のデモ映像と、「Crysis 2」に登場する「ナノスーツ 2」の機能を紹介する映像。「ナノスーツ 2」のムービーは、ナノスーツの足元から頭部までをアップで見せるというもので、イメージ映像に近い短いもので、ゲーム内で実際に新機能がどのように作動するのかわからなかった。

 ジャングルからニューヨークへと、ゲームのロケーションが大きく変化した理由については、「どうすればゲームをよりよく楽しんでもらえるかを考えた結果」と説明。「ヒーローとエイリアンが戦うのにニューヨークほどふさわしい街はなく、美しい街だが、破壊された後の美しさもある」と、ゲーマー視点からのニューヨークの魅力も語った。


【「Crysis 2」GDCトレーラー】




■ ストーリーは英の人気SF小説家、Rechard Morgan氏が担当

シナリオライターにSF小説家Morgan氏を起用したという発表は、今回のサプライズの1つだ
処女作の「オルタード・カーボン」とシリーズ第2作「ブロークン・エンジェル」は日本でも発売されている

 Yerli氏によると「Crysis」の発売後、ファンからのフィードバックの中には、ストーリーに対する不満が少なからずあったそうだ。そこで「Crysis 2」では英国人小説家Rechard Morgan氏がリード・ライターとして参加することになった。Morgan氏はサイバーパンクと探偵小説を融合させた「オルタード・カーボン」などで知られるSF作家で、コンソールゲームの大ファンでもあるという。

 Morgan氏によると、ゲームを楽しみつつストーリーも楽しめるような形が目標。「これこそ私のストーリーだ」と自信を持って伝えることがでるように頑張っていると言う。ストーリーのポイントは2つある。1つめは、前作「Crysis」ではストーリー展開が単調で簡単に先が読めてしまったという部分を反省材料に、「Crysis 2」では簡単に先の読めないストーリーを展開させていく。

 もう1つのポイントは、ニューヨークの有名なロケーションを使うことだ。それらの建築物がプレーヤーの感情を奮い起し、それぞれの場所で戦うことで登場人物のキャラクター性を高めていくこともできるとMorgan氏。「キャラクターのエモーショナルな部分を、きちんとプレーヤーに伝えられるようなストーリーにしたい」と語った。

 また「Crysis 2」では「ナノスーツ 2」がストーリー上でも非常に重要な意味を持っていくるらしい。ゲームが進むにつれて、スーツが進化していくが、そこに謎の部分があり、スーツが物語の運命を背負うことになる。プレーヤーはスタートした時点では情報がなく「フリーフォールで落とされるような感覚」(Morgan氏)を味わうことになる。絶望しか感じない状況だが、戦いを続けていく中で少しずつ状況が判明することになる。


破壊されたニューヨーク地下鉄のコンセプトアート
ニューヨークのメインターミナル、グランドセントラル駅



■ プレイアブルムービーでは、ビルを飛び交いつつ戦う姿を確認

会場に飾ってあった、2つのスーツが向き合うイメージボード

 プレイアブルムービーでは、ウォール街を舞台に、ナノスーツ 2を着た主人公が軍隊らしい人間と戦うシーンと、謎のスーツを着た男たちに捕らわれそうになった主人公がエイリアンの急襲を受けて戦うシーンの2つが紹介された。軍隊と戦うシーンは今回のプレミアのために用意されたデモ映像だが、実際のゲーム中でも対人の戦闘はあるらしい。

 UIは一新されて、ナノスーツと体力のゲージがなくなり代わりに数字で表示されるようになった。左側にはレーダーと自分の姿勢が表示される。双眼鏡には、目標物までの距離表示がよりわかりやすくなっていた。他にも使用している武器の種類が表示されなくなるなど、UIはかなり整理された印象だ。

 ナノスーツの機能の名称も少し変っていた。前作では「クローク」という名前だった透明状態が、今作からは「マキシマム・ステルス」という名称に変わった。クロークはマントで身を隠すというニュアンスの英語なので、より現代的な単語に変更したのだろう。また「マキシマム・スピード」がなくなり、代わりに「タクティカル」という新しい機能が備わる。

 また、舞台を大都会に移したことで、建物に隠れるカバーアクションが使えるようになった。そしてビルの林が高低差のあるアクションを実現した。ムービーでは、高層ビルから飛び降りたり、大ジャンプでビルからビルへと飛び移る様が紹介された。ナノスーツ 2の能力をいかに使うかが、前作以上に重要な要素になりそうだ。


敵はエイリアンだけではない。主人公を拉致しようとした謎の集団の目的は?
2つの機能が同時に使えるようになり、さらに戦略が増す



■ カクテルパーティーには「Crysis 2」をイメージしたオリジナルカクテルも

パーティーでふるまわれた、オリジナルカクテル「クライティーニ」

 プレミアの後に行なわれたカクテルパーティー会場には、緻密に描かれたコンセプトアートが展示されていた。日本人にとってもおなじみの自由の女神や、タイムズ・スクエアの無残な壊れ具体に破壊の美学を感じてほしい。また「Crysis 2」をイメージした「クライティーニ」というカクテルもふるまわれた。ウォッカベースに、クランベリーとグレープフルーツを混ぜたほろ苦くも濃厚な味わいは、激闘の暗喩だろうか?

 なにかと期待の尽きない本作だが、まだ日本での発売は発表されていない。しかしフルボイスで完全日本語化した前作の力の入れようから察するに、十分期待はできそうだ。ハイエンドPCが必要で、もっともとんがったゲーマーたちが遊ぶゲームというイメージだった「Crysis」の続編がコンソールで発売されることで、日本のFPS界に新たな風を呼び起こしそうだ。


自由の女神タイムズ・スクエア
ダウンタウンバッテリー・パーク
ミッドタウン戒厳令
ルーズベルト島マジソン・スクエア・ガーデン

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(2010年 4月 9日)

[Reported by 石井聡]