G-Star 2009現地レポート

Blizzard Entertainment Koreaブースレポート
「SC2」韓国語版の試遊台を展開!! 最新バージョンの出来具合をチェック


11月26日~29日開催

会場:釜山国際展示場(BEXCO)

入場料:大人4,000ウォン(前売り2,000ウォン) 学生2,000ウォン(前売り1,000ウォン)


 「G-Star」において、初めて出展するBlizzard Entertainment Korea(以下、Blizzard)ブースでは「Starcraft II」(以下、SC2)の試遊台を中心として展開されていた。ブースの形は「Terran」の主人公が率いる宇宙戦艦「Hyperion」をモチーフに作られたもの。ブース内には112台の「SC2」試遊台が設置、ステージでは「SC2」のイベントマッチが行なわれていた。

 「SC2」は1998年に発売されたBlizzardのリアルタイムストラテジー「Starcraft」(以下、SC)の続編だ。宇宙を舞台に「Terran」、「Zerg」、「Protoss」といった種族同士の戦いを描いている。2Dから3Dになった綺麗なグラフィックスと、様々な新ユニットたちと、その戦略性が注目の作品になっている。

 また、「SC2」は「Terran」のキャンペーンを盛り込んだ「Starcraft II:Wings of Liberty」、「Zerg」のキャンペーンを盛り込んだ「Starcraft II:Heart of the Swarm」、「Protoss」のキャンペーンを盛り込んだ「Starcraft II:Legacy of the Void」と別々のパッケージになって発売される。

 最初の発売となる「SC2:WoL」は、全世界で2010年第2四半期に発売される予定で、他の2タイトルのスケジュールは未定のままだ。本稿ではブースの様子に加え、最新「SC2」の模様をお伝えする。なお、「G-Star 2009」の前日、11月25日には「Battle Report #4」という1対1の対戦映像の韓国語版が公開された。韓国語の解説になっているがゲームの内容は最新バージョンである。まず、映像をご覧いただきたい。


【「Starcraft II」Battle Report #4】




■ 「SC2」の試遊台だけで112台!! 「SC2」韓国語版がプレイでき、ローカライズの問題が再び話題に……

 Blizzardのブースでは「SC2」の試遊台が112台設置されていた。「Blizzcon」や「WWI」といったBlizzardのイベントではいつも数百台の試遊台が置かれるなど、試遊台の大規模展開はBlizzardの基本スタイルでもある。試遊台への入り口は2つで、30~40人以上のユーザーたちが常に並んでいた様子だった。

 ブースの前面にはステージが設置され、「SC2」の韓国人開発者Blizzard Entertainment 「SC2」 Associate Game Balance DesignerのDavid Kim氏とAssociate Cinematic ArtistのYeon Ho Lee氏のイベントマッチが行なわれた。彼らはBlizzard社内でも1、2位を争う実力者だという。彼らの対戦を「SC」専門のキャスターと解説が付き、観客たちに「SC」と「SC2」の違い点や新しい戦略などを説明した。

 今回、出展された「SC2」のバージョンは韓国語版だった。「SC2」韓国語版は7月に開催されたソウル市主催のeスポーツイベント「e-stars Seoul 2009」で初めてユーザー向けに試遊できるバージョンが公開され、今回が2度目の展開になる。ただ、当時はマルチプレイのみの試遊だったが、「G-Star 2009」の試遊台ではキャンペーンモードもプレイできた。また、完全にローカライズされたわけではなく、テキストがところどころ英語が残っており、キャンペーンでは音声は英語で、韓国の字幕になっていた。

 試遊台には起動ファイルがキャンペーンとマルチプレイと2つ用意されていた。キャンペーンとマルチプレイ、どちらも自由的にプレイできるが、1回20分のプレイ制限がされている。プレーヤーたちはキャンペーンとマルチプレイを最低でも1回ずつ、プレイしようとしてたようで、1つ目のプレイが終わったら、またすぐ行列に並ぶ姿が見られた。

 余談だが、現在韓国では「SC2」のローカライズがホットな話題となっている。現在の韓国後バージョンでは、「SCV」を「エス・シー・ヴイ」ではなく「建設ロボット」にするなど、ユニットの名前や建物の名前、全てが完全韓国語化されているからだ。韓国において、前作「SC」は英語版のまま発売されて、10年以上、プレーヤーたちの間では「建設ロボット」ではなく、「エス・シー・ヴイ」という英語の発音で使われて、そのニュアンスに馴染んでいた。プレーヤーたちだけではなく、テレビ放送のeスポーツの試合でも、英語の発音のままされていたのである。

 完全韓国語かというローカライズ仕様は10年以上使われた単語がいきなり変わることを意味し、ユーザーたちの間では話題になっている。筆者がプレイしたところ、そして、イベントマッチの解説を聞いた感じだと、最初は用語の違いで慣れないが、違和感は大きくなかった。しかし、今回の試遊台を通じて直接プレイしてみたユーザーたちの反応はそれぞれで賛否両論が激しくなっている。今後、どう展開されるのか気になるところだ。

【Blizzard Entertainmentブース】
112台の試遊台以外にはBlizzardのグッズショップが展開していた。Blizzardイベントに欠かせない存在になっている



■ 「SC2:WoL」のキャンペーンを試遊プレイ。「Hyperion」を率いるJim Raynorの戦いのストーリー

「Zerg」の攻撃から惑星「Mar Sara」を脱出する「Hyperion」

 「SC2」は種族によって別々のパッケージが発売される。「Terran」のキャンペーンを盛り込んだ「Starcraft II:Wings of Liberty」(以下、『SC2:WoL』)、「Zerg」のキャンペーンを盛り込んだ「Starcraft II:Heart of the Swarm」(以下、SC2:HotS)、「Protoss」のキャンペーンを盛り込んだ「Starcraft II:Legacy of the Void」(以下、SC2:LotV)の3種類となる。

 各パッケージごとに各種族固有のキャンペーンシナリオが盛り込まれる仕組みで、3種族のキャンペーンをプレイするためには、3つのパッケージを購入する必要がある。なお、マルチプレイに関してはどのパッケージを購入しても3種族いずれの陣営でもプレイできるようになっている。「SC2:WoL」、「SC2:HotS」、「SC2:LotV」の順に発売される予定で、「SC2:WoL」の発売時期は2010年の第2四半期の予定だ。そのほかは未定となっている。

 筆者はBlizzardブースの試遊台で「SC2:WoL」のキャンペーンをプレイしてみた。難易度は4つのうち選んでプレイできた。なお、試遊台の画面の撮影は禁止だったため、最新の英語版スクリーンショットを使って「Terran」のキャンペーンを紹介したい。

 ゲームをスタートすると「Terran」の主人公Jim Raynorが率いる宇宙戦艦「Hyperion」が「Zerg」の攻撃を受けて、ワープで惑星「Mar Sara」から脱出する内容となっている。「SC2」は「Starcraft:Brood War」から5年後の舞台で、侵略活動を止めていた「Zerg」が再び侵略活動を開始するところからスタートした。シネマティックはゲームのレンダリングだけで処理されており、キャラクターたちのテクスチャが細かく、実写風のグラフィックスになっていた。

 ムービーが終わると「Hyperion」の内部が登場する。ここでは、ロビーのような機能で、テレビをクリックしてニュースを視聴したり、キャラクターたちをクリックして会話することができる。

 本格的なミッションはテーブルをクリックして始めることができる。最初は2つのミッションが用意されて、1つを選んでプレイすることができる。惑星「アグリア」に行き、ZergのDNAを採集してくるか、惑星「モンリス」に行き、「Protoss」のArtifactを奪ってくるの選択だった。

 筆者は惑星「モンリス」行きのミッションを選択すると、「Hyperion」でキャラクターたちが“どう『Protoss』の兵力に対抗して、Artifactを奪ってくるか”について、Briefingを始めていた。様子を見ているうちに狙ったポイントに「Zerg」の侵略が始まり、その隙を狙ってArtifactを奪って来ようという内容になっていた。

 実際にゲームが始まるとベース「Command Center」、資源採集ユニット「SCV」が4機、地上生体ユニット生産建物「Barrack」、「Marine」と「Viking」で構成された攻撃用ユニット数機が用意されていた。最初は資源を採集してユニットを確保し、目標のArtifactのところに到達する簡単な内容になっていた。

 ちなみに「SC2」のマルチプレイでは登場しない「SC」の治癒ユニット「Medic」が、キャンペーンでは「Barrack」で生産できた。「SC2」のマルチプレイではバランス調整のため「Medic」が登場しないが、輸送機能と治癒能力を一緒に持つ空中ユニット「Medivac Dropship」が存在している。

「Medic」の乗せるスペースを「Medivac Dropship」を入れることができるなどのメリットはあるが、「Medic」で敵のユニットが攻撃してくる道を塞いだりする戦法は使えなくなっている。同じ能力を持つユニットがいても、戦略的な面では全然違うものである。ただ、「Medic」がいなくなったわけではなく、キャンペーンで登場することは「Terran」のファンたちにとって嬉しいことであるだろう。

 順調にArtifactまで到達すると、Artifactを守る「Zealot」の石像が4つ出てきて防御する。レーザーの攻撃をしており、30機以上のユニットを用意しないと倒すことが難しかった。「Zealot」の石像を倒すとArtifactを手にしてミッションが終了する。ここまでのプレイ時間はきっちり20分だった。1つのミッションプレイしかできなかったが、映像を含めて1つのミッションプレイにかなりの時間が掛かった感じだった。

 また、今回ひとつ気づいたのは、前に筆者がプレイしていた「SC2」と比べるとユニットのモーションが、より細かくスムーズになり見えやすくなっていたことだ。さらに、クリックしてからユニットのレスポンスもより早くなっている。「SC」のプロ選手は物凄い速さで、ユニットコントロールをしており、色んなところをクリックして移動命令を繰り返す。「SC2」ではそのレスポンスが早くなり、ユニットの動きもより見易くなっていた。他にも、マウスクリックのエフェクトが追加されたり、攻撃エフェクトが変わったりするなどの変更点も見られた。

「Hyperion」の内部。ミッションの進行以外にも、ユニットや建物の特別なアップグレードなどもここでできるという

Artifactに近づくと「Zealot」の石像が動き、攻撃してくる。かなり強力で、沢山の攻撃ユニットが必要だった

動きがスムーズになったところと、エフェクトがより豊富になったのが目立った



■ 「SC2」のイベントマッチを通じて、変更点をチェック。「Terran」はコストの面で、「Zerg」は物量の面でさらに進化

Blizzard Entertainment 「SC2」 Associate Game Balance DesignerのDavid Kim氏
Blizzard Entertainment 「SC2」 Associate Cinematic ArtistのYeon Ho Lee氏
「Queen」が「Larva」を追加すると「Hatchery」に「Larva」の卵がくっ付く。時間が立つと「Larva」4匹が生産される

 Blizzardブースのステージでは、「SC2」の開発者たちによるイベントマッチが行なわれた。その様子をゲームキャスターと解説者が説明し、本格的なeスポーツのような雰囲気だった。

 イベントマッチで対戦するのはBlizzard Entertainment 「SC2」Associate Game Balance DesignerのDavid Kim氏とAssociate Cinematic ArtistのYeon Ho Lee氏だ。Blizzard本社のなかでも1、2位を争う実力者だという。2人の1対1対戦を見ながら、解説では「SC」から変わったところを中心に説明していた。今回の取材ではKim氏は「Terran」で、Lee氏「Zerg」だったので「Terran」と「Zerg」に関する内容をお届けする。

 まず「Terran」に関して1番の印象に残ったのは、生産できる人数制限を増やす建物「Supply Depot」が地下に潜ることができ、その上をユニットが移動できるようになったところだ。

 前作の「Terran」はゲームの中でも一1番の攻撃距離と攻撃力を持つ「Siege Tank」と建物を空中へ浮かばせることができる特徴を活かし、狭い入り口を建物で塞いで防御する戦術を主に使っていた。ユニットを外に出す必要があるときは建物を空中へ浮かばせて移動するという手法だ。ただ、飛行できる建物が限られていて、「Barracks」や「Factory」といったユニット生産建物を建設する必要があった。

 「SC2」では「Supply Depot」を地下に潜らせることによって、「Supply Depot」だけで道を塞いでもユニットの移動に問題がない。「Supply Depot」は他の建物より価格が安く、地下に潜る速度も速い。また、「Barracks」、「Factory」といった建物を空中に飛ばしているうち、その建物からユニットを生産できないという不利益もないわけだ。

 そのほかにも防御建物「Bunker」に撤収の機能が追加され、必要なときに「Bunker」を建設して防御し、要らなくなったら撤収の機能を使用して資源に回収することが可能である。資源が100%回収できるわけではないが、ある程度の資源が回収できた。

 また、「Command Center」を空中へ浮かばせるとき、資源採集ユニット「SCV」を5機まで乗せることができるようになった。このため、ベースに2つ目の「Command Center」を建設し、追加の資源採集の確保のために空を移動するとき、早い段階で有効な資源採集ができるようになったわけだ。「Terran」はコストの面を様々で工夫が盛り込まれたようだ。

 対する「Zerg」は、1機のみ生産できる「Queen」が、「Hatchery」の「Larva」を4匹作る機能を持っていた。「Larva」は「Zerg」のユニットに変態できる基礎ユニットで、「Zerg」がユニット生産するとき欠かせないユニットである。その「Larva」が増やされることによって、より大量のユニットを一気に生産できるわけだ。「Zerg」はほかの種族より、物量で勝負をかける種族で、その特徴がもっとはっきり出た工夫であった。

 ほかには、生産できる人数制限を増やすユニット「Overlord」に「Changeling」というユニットを生産する機能が追加されたところだ。「Changeling」は近くの敵のユニットの姿にをコピーする能力を持つ、攻撃こそできないが、敵には自分のユニットにしか見えない偵察用ユニットである。

 「SC2」の新バージョンはまた様々な工夫が盛り込まれて、戦略性がより豊富になった様子だった。リアルタイムストラテジーとして非常に深みがあり、新しいeスポーツの種目として注目したいところである。会場では試遊以外にも、イベントマッチの観戦を楽しんだユーザーも多かった。また、韓国においては、注目作なだけにローカライズの仕様にも、話題が大きかった。前作「SC」が最もヒットした韓国の動向も含めて「SC2」の展開に注目したいところだ。


「SC2」の「Terran」は「Supply Depot」だけで道を塞いだり、開けたりすることができる
「Zerg」は今まで「Overlord」による偵察が主に使われ、「Overlord」が危なくなることが多かった。「Changeling」の追加で偵察の幅が広がった

(c)2009 Blizzard Entertainment. All rights reserved.

(2009年 11月 30日)

[Reported by DongSoo“Luie”Han ]