スクウェア・エニックス、「2010年3月期 第1四半期決算説明会」を開催
和田洋一社長「『FFXIII』の発売日は数週間くらいで明らかに!」
スライドを表示して第1四半期の決算内容について説明する和田洋一氏 |
決算説明会に出席したのはいつも通り、和田洋一代表取締役社長と取締役を務める松田洋祐氏 |
株式会社スクウェア・エニックスは2010年3月期第1四半期決算を発表した。今期の連結経営成績は、売上高は1.2%減の293億9,900万円、営業利益が5億9,400万円で82.2%減、経常利益は15億2,900万円で66.3%減、四半期純利益は16億7,200万円の損失となっている。
部門別で見ると、ゲーム、オンラインゲームを取り扱うゲーム事業が85億1,200万円、アミューズメント施設の運営、業務用ゲーム機・関連商品を取り扱うアミューズメント事業が120億3,700万円、モバイル・コンテンツ事業が26億6,000万円など。一方、所在地別に見ると、北米が15億1,000万円で5.1%、欧州が13億4,600万円で4.6%、アジアが2億8,700万円で1%。合計で海外売上高の割合は10.7%となる。
まず何よりゲームファンにとって大きな話題は「FINAL FANTASY XIII」について。都内で行なわれた決算発表会に出席した和田洋一代表取締役社長は開発は順調だと言い、発売日については「あと数週間で明らかになる」とした。これに対して食い下がった証券アナリストとの質疑応答の中で、「ぶっちゃけ、本当は決まっている。発表は東京ゲームショウ……その前ですかね。ヨーロッパの展示会『gamescom』では言わないと思う」と語った。つまり大きな問題が発生しなければ、8月末から9月には発売日が明らかになる公算が高くなった。
この他の話題では、実は第1四半期に含まれていない「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」に関する話題が多数を占めた。同社の発表によれば、現状350万枚出荷しセルスルーで338万本と、ほぼ出荷数を消化した形となっている。和田氏は「大台の500万本はいきたいなぁ」としたが、今期中にその数値を達成できるかどうかについては慎重な姿勢を見せ、「過剰出荷になりかねない。そこは気をつけていきたい」と出荷数のコントロールを行なっていく方針を示した。
「ドラゴンクエストIX」では、「あんまり言うとネタバレになっちゃうけど、終ってから長く遊べるようにした」とコメント。ニンテンドーDS用ソフトとして発売されたことでプログラムとセーブデータが1つのROMに収まり一緒になったことから、「クリアした後に遊ぼうと思ったら手元に置いておかなければならなくなった」とし、中古として流れにくい状況を作ったと分析。すれ違い通信、Wi-Fiによる協力プレイ、Wi-Fiによるクエストの配信など、通信を使った長く遊べる工夫なども、すれ違い通信が都市圏を中心に人気を集めていることを例に挙げ「みんな使ってくれてうれしい」と感想を述べた。
これらネットワークを使った様々なゲームシステムについては、「コミュニティを如何に刺激していくか」ということにつきるようだ。これまでのゲームは、発売から2カ月で販売数の8割以上を占めるので、発売前に広告宣伝費用をほぼ全て投下していたが、長く販売を続ける「ドラゴンクエストIX」では今後も広告宣伝を続けていく予定だという。さらに広告を打つだけではなく、「コミュニティを刺激することが販売に繋がる。一方的なものではなく、双方向の販促。広告を投下するだけでなく、Wi-Fi通信でクエストを1年間配信し続けるなど、(ゲームシステムそのものが)販促に繋がる」とゲームの作り方そのものから考えていかなければならないと語った。ちなみに和田氏としてはすれ違い通信によって「ネットで『たからのちず』の1つが話題になって交換が盛り上がっている。こういう話題があれば結構いけると安心している」とコミュニティを刺激する施策が上手く回っている現状には満足しているようだ。
ネットで厳しいレビューが掲載されていることについては、「良い意見も悪い意見もあって良いと思う。ものすごく悪く書かれていたり、すごくよく書かれていたりしても、それが販売に影響するかと言えば相関していない。お客さんは冷静に判断している。バグや操作性が悪いといった批評は反映するが、好きか嫌いと言うことについては、悪く書かれてもよく書かれても販売には結びつかない。ある程度は割り切っている」とコメント。また、「ドラゴンクエストIX」の海外展開については「今期はない」ときっぱり。ネットワークを通じた遊びを数多く取り込んでいることもあって、仕様は大きく変えないでリリースする方向でいるという。出すつもりではあるが「いわゆるグローバルスタンダードなコンテンツではない(和田氏)」ことから社内で様々な検討が繰り返されている段階のようだ。
「ドラゴンクエスト」シリーズも息の長いシリーズとなっているが、ユーザー層を問われた和田氏は「1作目から3作目までで一時代を築いており、やはりそのころにプレイした人が買っている。わりと大人が買っている。それで良いかと言えばそうではないので、『ドラゴンクエストモンスターズ』やキッズカードゲームなど大人と子供をブリッジするタイトルなどを投入している」と対策を進めている段階だという。
この他の話題としては、英Eidosとの統合についても質問が出た。英Eidosとの統合については現在真っ直中で、ブランドやスタジオなどは残すが、組織的には完全に統合し、欧米については両社の良いところを残すことで、スキルアップを目指していくという。Eidosのスタジオについて和田氏は「(人材流出などで)もっと人的に痛んでいると思ったが、モチベーションが高まり良くなっている」と言い、「Eidosは開発の立ち上がりは早い。なのにいつまで経っても発売されないのはなぜかというと、試行錯誤する時間が長いから。そうやってきっちりと作るからゲームがシャープになっていく。でも、おおらかに試行錯誤しているから、そこはもう少し詰めてやってもらいたい。ゲーム開発に学ぶ点は多い」とスクウェア・エニックスとしてもカンフル剤となっているようだ。
ちなみに両社の協力関係として考えている部分として「Eidosの主軸タイトルのコンピュータグラフィックスのムービーについてスクウェア・エニックスのチームに作らせようと話を進めています」と明らかにした。和田氏は「スクエニの主力タイトルが何年に1回しか出ないという状態で、わりとコンピュータグラフィックスのチームが宝の持ち腐れのような状態。これを上手く使おうと。Eidosはリアルタイムレンダリングは得意だが、ムービーはコストも経験もない」とし両社の良いところを組み合わせていく方針だ。同社が毎年社内で1週間カンズメで行なっているというクリエイターサミットにも参加するなど交流は進められているという。
また、アミューズメント部門については、環境がひどい状態にあるということもあるが、「マーケットが何とかなれば収益も何とかなるとは考えていない」と和田氏。業界の10年間の動向をグラフで示し、施設運営が好調となった後に機器の販売が好調となり、機器の導入が進むと施設運営費を圧迫し逆に機器販売が絞られることとなると説明。この流れがずっと続いている中で、業務用ゲーム機器が供給過剰となり施設の家賃を支払うことができなくなる参入業者が出てきて淘汰されていくと和田氏は見ている。その局面に向け、同グループとしては100店舗を閉鎖し、今後も採算の合わない店舗については切っていくが、同時に条件の良い不動産については押さえていくため、現状は店舗数が減っているが、ある段階で店舗数は増えているような状況もあり得るとしている。今後も良い条件の物件を押さえていき、現状の市場規模よりも厳しい市場規模でもやりくりできるよう、数年の間は体質改善を続けていくという。
今回の決算説明会は「ドラゴンクエストIX」が好調と言うこともあり、通期で見れば比較的堅調なイメージだったが、Eidosとの統合に関する話題やアミューズメント業界における大きなうねりの中で進めている同社の変革についてなど、話題が豊富だったと感じた。おそらく次回は「FINAL FANTASY XIII」、さらには「ファイナルファンタジー XIV」などの話題に移っていくかと思われる。今後も同社から目が離せない展開となりそうだ。
□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.com/jp/
□ニュースリリース (PDF形式)
http://www.square-enix.com/jpn/pdf/news/20090807_01.pdf
http://www.square-enix.com/jpn/pdf/news/20090807_02 .pdf(スライド)
(2009年 8月 7日)