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映画「8番出口」いよいよ公開︕異変を味わう原作ゲームの魅力を今振り返る
2025年8月28日 00:00
- 【映画「8番出口」】
- 8月29日 公開予定
地下通路を歩いていて、ふと不安や恐怖を感じたことはないだろうか。発売直後から大きな話題を呼んだゲーム「8番出口」は、その感覚を巧みに取り入れ、新たな体験を生み出した作品だ。
そんな「8番出口」を原作とした映画「8番出口」がいよいよ8月29日に公開される。本作のストーリーはゲーム版「8番出口」と同じく、駅の地下通路を舞台に「異変があったら戻る」「異変がなければ進む」という判断を繰り返し、8番出口から脱出するというものだ。映画版は主人公の「迷う男」を二宮和也さんが演じることでも話題となったと同時に、河内大和さんの「歩く男」役の“原作再現度の高さ”でも注目を集めた。
KOTAKE CREATEによって2023年11月に突如公開されたゲーム版は、そのゲームシステムのシンプルさと、そのシンプルさとは裏腹に練り込まれた仕掛けや不気味さ、そこからくる面白さによって瞬く間に話題作となり、システムを踏襲した“8番出口」フォロワー”と呼ばれる作品を多数生み出した。
明日からの映画をより楽しむため、今一度ゲーム「8番出口」について振り返っていきたい。
異変を見逃さないこと。
異変を見つけたら、すぐに引き返すこと。
異変が見つからなかったら、引き返さないこと。
8番出口から、外に出ること。
操作は「進む」と「戻る」だけ。”3D間違い探し”でゴールを目指す
本作はゲームを開始すると”0番”出口に降り立ち、駅の地下通路を進みながら「異変を見つけたら戻る」「異変がなければ進む」。その判断が正しければ1番、2番、3番……と番号が進んでいき、最終的に「8番出口から外に出る」ことができればクリアとなる。
異変はあることもあればないこともあり、ある場合でも発生は一箇所に限られる。途中で判断を誤り、異変を見過ごしたり、異変が無いのに戻ってしまえばまた0番出口からやり直し。プレーヤーがなぜここにいて、なぜこの地下通路がループしているのかについて作中では明らかにされない。ちなみに映画のストーリーとして紹介されている内容は、ゲームの開始直後に目に入る看板に記されているのと全く同じものだ。
本作のジャンルは、ストアページによれば「短編ウォーキングシミュレーター」とされており、操作は文字通り歩くだけ。アクションゲームにつきものの「ジャンプ」や「攻撃」などはなく、前後左右への移動とダッシュくらいというシンプルなものだ。それでは本作はどんな体験を提供しているか。それは“不安と緊張感に満ちた探索体験”だ。システムのミソは異変探し=間違い探しにあり、いわば本作は“連続で8問正解するとクリアの3D間違い探しゲーム“とも言える。
本作においてプレーヤーは異変と戦うのではなく、それを見つけたら即座に引き返すという割り切った行動が求められる。この「3D間違い探し」というコンセプトは、これまであまり見られなかった斬新なアイデアだ。
ゲーム内には多くの異変が散りばめられており、初見では見落としてしまいそうな小さなものから、誰もが一瞬で気づくようなものまで様々。例えば本来なら一枚しか掲示されていないはずの「禁煙」というポスターが、異変発生時は同じ場所に大量に貼ってあったりする。曲がり角を曲がってポスターがベタベタに貼ってあるのはなんとも言えないイヤな感じがする。また、通路の突き当りにさながら光学迷彩を纏ったように背景と同化した何者かが潜んでおり、近づくと真っすぐ走ってきて捕まってしまう、という異変もある。シンプルにびっくりするし、得体の知れない存在に追いかけられるという恐怖もある。
そして映画版で「歩く男」と呼ばれる、ゲーム版における通称”おじさん”。何番出口であろうとプレーヤーと向かい合うように淡々と歩いてくるおじさんは非常に印象的で、数少ない登場人物として本作を象徴するかのようなキャラクターだった。おじさん関連の異変もいくつか用意されており、特にまだ異変をコンプリートしていない段階ではその存在に段々と慣れてしまい、繰り返される同じ光景の一部と油断していると実は……ということもままある。
その一方で、明らかにわかりやすく笑いを誘うようなものや、なんとなく見落としがちだがあとでじっくり見ると気づかなかったことが悔しくなるようなものなど、異変はヒネった様々なものがあり、全体を通して絶妙なバランス感覚がある。クリアを目指す傍ら、すべての異変を見てみたくなるのも本作の魅力の1つである。
なお、ゲームに慣れてくると異変を次々と高速で捌きながらいかに早いクリアを目指すか、といったタイムアタック的な楽しみ方もできる。特定の箇所まで進まないと発生しない、あるいは判別できない異変などもあるので、タイムアタックには”どの異変が出現するか”という運の要素が絡むのも面白さの一つだ。ちなみにこの場合「異変がない」と判断するのが一番疑心暗鬼にかられ、決断に迷いが出る瞬間だったりもする。
また、「Unreal Engine 5」で描かれるグラフィックスの美しさも魅力の1つ。世界観設定も独特で、日本の地下通路や「リミナルスペース(Liminal Space)」、「バックルーム(The Backrooms)」などにインスパイアされた世界観を導入している。また、UIや各種システムをあえてそぎ落とすことで、プレーヤーを探索に集中させる工夫もポイントだろう。
さらに、ゲーム実況との相性が良いことも人気を押し上げた要素のひとつだといえる。発売当時はストリーマーやVTuberがこぞって実況プレイを行なっており、特に既プレイのユーザーが配信を見て、配信者が異変に気づくか気づかないか……というのを後方で腕組みしながら見る、というのが流行した。”間違い探し”という一見してわかりやすいゲーム性と、話題に事欠かず配信者と視聴者がコミュニケーションを取りやすい作りが、配信の一体感を生み出していたものと思う。
「8番出口」というジャンルが生まれ、フォロワー作も続々
「8番出口」のヒットを受け、本作を手掛けたKOTAKE CREATEからは「8番のりば」という続編、モバイル版の「8番出口」、そしてVR対応の「8番出口VR」などが発売された。また、”ゲーム内の出来事に対して正誤を判定し、それに応じて行動する”というシステムを軸にしたフォロワー作品も多数生まれた。
例えば病院を舞台に、マルチプレーヤーの要素が導入された「Hospital 666」や、エスカレーターを登っている最中に異変があれば非常口へ、そうでなければ先に進むという「エスカレーター」、美術館を舞台にした「ヴィクトルズ・テスト・ナイト」、ホラーゲームを数多く手がけるチラズアートによる、新幹線が舞台の「新幹線 0号」。変わったところでは狐巫女の踊りを見て、間違いがあるかないかを指摘する「狐のかえり道」という作品もある。こちらは「『8番出口』ライク」として発表されており、「Rogue」から「ローグライト」「ローグライク」、「メトロイド」と「悪魔城ドラキュラ」から「メトロイドヴァニア」といったジャンルが生まれたように、「8番出口」もまた間違い探しを洗練された仕組みのゲームとして仕立て上げたことで、新たな一ジャンルを築き上げたと言える。
また、「8番出口」が提示した「間違い探し」というゲームコンセプトは、革新的でありながらも、舞台や世界観、進む/戻る方法など開発者独自のアイデアを追加しやすい土台となっていることも見逃せない。とはいえホラー系の作品が傾向として多いのは、このシステムがジワジワと追われるような恐怖や緊張感と相性が良いからでもあるだろう。
ニノくんは脱出できるのか!どうなる映画版「8番出口」!?
よく知られた「間違い探し」を現代のゲームとして磨き上げ、シンプルでありながら革新的な体験が味わえるゲーム「8番出口」。多くのゲームファンに衝撃を与え、多くの開発者のイマジネーションを刺激して多くの派生作品を生み出したのは、ゲーム史に残る功績であったと思う。
本作をベースにした映画「8番出口」では、舞台はトレーラーを見る限りゲーム版そのもの。登場人物は「迷う男」と「歩く男」、そしてゲーム版には存在していない「ある女」等キャラクターの追加も行なわれており、ゲーム版ではほぼ語られることのなかったストーリーがどのような形で展開されるのか非常に楽しみだ。既に完結しているマンガ版との違いや共通点なども気になるところ。
既にプレイしている身からすると「歩く男」のビジュアルだけで満足してしまうほどであるが、もし未プレイであれば、この機会に是非ゲーム版「8番出口」をプレイして、映画版をより堪能してほしいと思う。













































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