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ニコニコ超会議2016で出た2つの「FFXIV」製作裏話

ドラヴァニア雲海のレベルデザインフローを紹介

ドラヴァニア雲海のレベルデザインフローを紹介

 会期2日目の30日には「FFXIV 第10回コミュニティ放送」が開催された。今回は、コミュニティチームの望月氏が、リードデザイナーの鈴木健夫氏と、レベルデザインセクションリードプランナーの高橋新(あらた)氏が、「FFXIV」のマップがどのように作られていくのかについて、資料を交えながら解説した。

 レベルデザインとは、フィールドやダンジョンにモンスターや天候、BGMの設定など、冒険に必要な要素を配置していく仕事で、鈴木氏いわく「冒険の舞台を作り上げる仕事」だ。今回は「3.0」で追加された「ドラヴァニア雲海」を例にとって、マップ製作のフローを解説した。

コミュニティチームの望月氏(左)、レベルデザインセクションリードプランナーの高橋新氏(中央)、リードデザイナーの鈴木健夫氏(右)
鈴木氏のかかわってきた作品
高橋氏のかかわってきた作品
レベルデザイナーの主な仕事
ドラヴァニア雲海を例に「3.0」の制作フローを紹介

 最初にプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏から「蒼天のイシュガルド」のコンセプトが3つ提示される。1つ目は、冒険しながらストーリーを進めたいので、旅を見せることに注力して欲しいというもの。2つ目は、新要素としてフライングを入れるということ。そして3つ目はダークファンタジー路線だ。

 そのコンセプトを基に、シナリオライターの前廣和豊氏がより詳細な設定を煮詰めていく。結果、6つのマップと1つのタウンを作ることが決定した。つぎにその6つのエリアをどう移動していくのか、ストーリー展開の部分を、こちらも前廣氏が考える。「3.0」ではレベルキャップが上がったので、どのフィールドでどういったレベリングをしてもらうのかといった大枠も決める。

 エリアごとの大枠が決まったら、それを詳細なプロットに落とし込んでいく。このとき、そのエリアの歴史や設定なども細かく決められ、それを基に、エリアを担当するBG(バックウラウンド)デザイナーがまずは2Dのプロトタイプを起こしていく。

吉田氏からのコンセプトを前廣氏が具体的な形にしていく
エリアの設定を決めている実際の資料
中央あたりの黒っぽい逆三角形がイシュガルドで、何度か往復しながら各エリアを旅していく様子が動線になっている。
そのエリアの設定や歴史など、細かい設定を前廣氏がプロットにまとめる。これを基に、BGデザイナーがマップのプロトタイプを作る

 最初はソーム・アルの山頂がマップ中央にあり、左上にフレースヴェルグの宮殿、右下にレベリングエリアが作られていた。当時はドラゴン空港というものが考えられており、そこを通って行き来し、ドラゴンズ・エアリーに乗り込むというコンセプトだった。

 同時に、雰囲気をつかむためにアート班が拠点ごとに数点のラフスケッチを作成する。高低差がわかるような横からのアートも使いつつ、地図をブラッシュアップしていく。当初は、レベル54では雲に近いエリアで戦い、55になるとさらに天空の高い場所に移動してレベル上げをするという形だった。

 この段階で、拠点同士の距離や、徒歩やフライングマウントでの移動にどのくらいの時間がかかるのかを計算して、どこに集落を置くかといったことを決めていく。初期のマップから約1カ月でこの段階に到達する。

左がゲーム内に実装されているマップ、右はBGデザイナーが設定を基に作った最初期のマップ
アート班によるラフスケッチ
ラフスケッチを基に地図をブラッシュアップしていく
完成した2Dの地図を基に、3Dのモックアップを作る

 2Dのマップでできることがある程度に詰まってくると、今度は荒いポリゴンで3Dのモックアップを作って、フィールドを実際に移動して、プレーヤーの視点でどう見えるかを調整していく。

 フライングマウントで飛んだらどう見えるのか、大きな門を作りたいがサイズは大丈夫かといったこと検証する。公開されたモックアップの動画には、サイズの違う4体のフレースヴェルグが並んでいた。この当時はまだフレースヴェルグのサイズが決まっておらず、検証のために置かれていたのだそうだ。

 当初は山頂に上がったときにモーグリの集落が見えるように作っていた。しかし3Dのモックアップで検証した結果、それでは雲海に来た感じがしないということで、登り切ったときに最初に雲海が見えるように変更、その後エーテライトが見えて、集落があることに気づくという流れになった。

 また空中を飛んでいるとき、空に何もないと飛んでいる感じがしないという意見によって、空中に小石を浮かべてそれとの対比でスピード感を演出したりと、浮遊物を作った。

 ある程度エリアを区切ったほうが遊んでもらいやすいという理由から細い通路と広いスペースを作ったり、土地に隙間がないと雲海にいる感じがしないので、隙間を足したりしてだんだんとマップが完成形に近づいていく。

 ここで特に苦労したのは、全体の色味だそうだ。ともすれば灰色一色になりがちな地形に、どんな風に色味をつけるかを最期まで苦労したそうだ。こうしてマップが確定すると、いよいよ詳細なモデリングやテクスチャの貼り込みなどマップの本製作が始まっていく。

素人目には非常に作りこまれているように見えるモックアップ
サイズ違いのフレースヴェルグが4体比較用に並べられている
青色は味方の集落、赤は敵がいる場所、黄色は未定の場所だ。左のマップが初期で、それが中盤を過ぎて右のマップに進化した

 レベルデザイナーの方は、今度はマップに乗せるモンスターの配置を行なう。「3.0」全体でどのモンスターがどこに出るかという俯瞰図があり、それを基に分布を決めていく。このとき、初めて登場させる製作コストのかかったモンスターはなるべく最初はボスに使うといったやりくりをする。

 この企画段階では、まだ実際にはモデルが完成していないモンスターも多くいて、想像力を働かせて作ったり、デザイナーが描いたイラストを3Dマップ上において雰囲気をみたりするのだそうだ。

 ドラヴァニア雲海に出てくるモンスターの種類が決まると、次はそれをマップに配置していく。ドラヴァニア雲海にはレベル54と55のレベリングエリアと、フライングを開放してからでなければ行くことができないレベル56のエリアがある。それに合わせてモンスターを配置していく。

 ドラヴァニア雲海はドラゴンの本拠地なので、ドラゴンだらけだが、それだけでは飽きるので、ドラゴンと一緒にいてもおかしくなさそうな敵を配置する。枯れ木のトレントも試しにおいてみたら結構よかったということで、配置された。また、ドラゴンでも同じようなものが続かないように工夫されている。こういったテンポを作っていくのも、レベルデザイナーの仕事だ。

 マップ上で、ここには地名があったほうがいいだろうという場所については、シナリオ班などに設定を作ってもらうための発注を行なう。ここまでの作業が完成すると、マップを大きな紙に出力して開発部の壁に貼り、そこにクエストやF.A.T.E.、ギャザリングのポイントなどを書き込んでいく。

 「2.0」ではエリアが狭かったこともあり、クエストを置く位置に苦心したり調整が大変だった。その反省を踏まえて、今回はあらかじめふせんで場所取りしてもらい、競合しそうなら話し合ってもらうという態勢をとったところ、調整項目が減ったそうだ。とはいえ、メインクエストを優先するためにオクラ入りになってしまったF.A.T.E.もあるそうだ。

 こうしてすべてのエリアが調整し終わると晴れて完成ということになる。最初のモックアップが完成したのがおととしの6月で、完成までにそこから約10カ月かかっている。終盤にはフライングのための負荷処理など地味な作業も多かったそうだ。

 だが、実はこれで終わりではなく、この場所には次回のアップデート3.3でモーグリ族の蛮族デイリークエスト用の拠点が新たに追加される。現在はその作業中で、モーグリの広場を入れるために、山が1つ削られたそうだ。

 高橋氏は最後に、そんなレベルデザイン部は現在開発スタッフを絶賛募集中だと宣伝していた。レベルデザインに興味がある人は、挑戦してみてはどうだろう。

ゲーム全体にどんなモンスターが出るかをマス目に落とした表、別名「モンスター俯瞰図」
確定したマップをエリア分けして、モンスターを配置していく
薄いピンクがレベル54、青がレベル55のレベリング用エリア。緑はフライングでしか行けない場所
モンスターを配置した様子は、さながら動物園の案内図
2Dマップに重ね合わせ、地名を決めていく
完成したマップにクエストやNPCなどを配置していく
開発に貼られた実際のマップ図
こうして約1年かけてマップが作られていく
レベルデザイナーを絶賛募集中!

(石井聡)