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「ミニ四駆ジャパンカップ2015」、チャンピオン決定戦を開催
大人達に衝撃を与えたのは、ジュニアコースのぶっちぎりの優勝マシン
(2015/10/19 00:00)
タミヤは10月18日、お台場のメガウェブにて、ミニ四駆全日本選手権「ミニ四駆ジャパンカップ2015」のチャンピオン決定戦を開催した。この大会は6月21日の東京大会を皮切りに、全国15の会場で開催された。チャンピオン決定戦は15の大会でそれぞれ勝ち進んだ猛者達が集い、その頂点が決定された。
“ジャパンカップ”という全国大会は1999年に一端休止し、2012年に復活を果たした。それからの人気はうなぎ登りで、2015年の大会もこれまで以上の盛り上がりを見せたという。例年チャンピオン決定戦は東京の予選大会と一緒に行なわれるが、今年は決勝大会とファミリー大会のみに絞って開催された。またUstreamでの配信も行なったため、来場者は昨年の決勝戦よりは少なく、会場の規模そのものも小さかったが、白熱した戦いが繰り広げられた。
「ミニ四駆ジャパンカップ2015」のコースは、「ハイパーダッシュサーキット2015」と呼ばれるもので、かなりのテクニカルコースとなっている。最大の難関は「プラウドマウンテン」という山形の部分。その前がストレートになっており、加速した状態でこの山に突っ込むこととなる。そこからバンクのついた急カーブ「グラインドバンク45」に繋がっているのが難易度を上げている。ミニ四駆はプラウドマウンテンで空中に放り出された状態で、グラインドバンク45の斜面に激突し、そのまま走っていくのである。
攻略の仕方としてはプラウドマウンテンで減速し、山で飛び出さずコース通りに行く方法と、車の空中での安定度を重視することであえてジャンプさせる方法が考えられる。これまでの大会から勝ち進んだ猛者達は例外なく“飛び越す”方式を選んでいた。安全策よりスピードを重視しなければ、ライバル達には勝てないのだ。
「ハイパーダッシュサーキット2015」の難関はこれだけではない。長い下りから複雑に曲がる立体交差のあるカーブは安定した走りをしていない場合車が左右に激しく振られあっという間にコースアウトさせられてしまう。また、ダウンフォースで路面に接地するように計算されたブレーキを“利用”する「モヒカンストレート」という意地悪な仕掛もある。路面に敷かれたレールがブレーキをこすりマシンを減速させてしまうのだ。今回のコースはブレーキにも工夫が求められた。
レースを面白くする仕掛としては「メビウスチェンジャー」がある。8の字を描くコースチェンジャーで、かなり長い距離を走ることになる。レース中どのレーンを走っていても必ず1度は通らなくてはいけず、通るとタイムロスとなる。
ぶっちぎりで走っているように見えてもこれが最後にあって逆転されてしまうとか、後続の距離がグッと縮まるなど今回も様々なドラマを見せてくれた。全体的にこれまでのコース以上にテクニカルで、だからこそ挑戦しがいのあるコースとなっていた。
選手達の“風景”も興味深い。観客席の最前列にはストップウォッチを持った人達が陣取り、走っている車のタイムを記録している。彼らは“チーム”のメンバーであり、決勝戦まで勝ち抜いた仲間のために練習走行をしているメンバーの記録を行なっていたのだ。その記録対象はライバルにも及ぶ。
ミニ四駆ではスピードと安定性は天秤にかけられる要素だ。ライバル達が遅めのタイムならば安定性を重視できるし、早めならばさらなる“賭け”に出なくてはならない。記録する人達の視線は真剣で、チームとしての結束を感じさせられた。ミニ四駆の競技はこういったチームのバックアップも見逃せない要素となっている。
会場の人達、チームの参加者や選手達に話を聞いてみたのだが、今年は「正解が見えない」展開だったという。地方大会での優勝者のアプローチが全く違うというのだ。安定重視、スピード重視、シャーシ、モーター、ギアの選択、ダンパーなどのセッティング……昨年までの大会はある程度“攻略法”が確立されていたが、今年は正解と思えるアプローチが様々だったという。また、シャーシの上のボディが蝶番で動くマシンが多かったのが印象に残った。マシンが跳ね上がったときに車体を路面に押しつける効果を期待しての仕掛で、今年の“流行”だという。
決勝戦は3部門で行なわれた。これまでの大会での優秀な成績によって選出された「チャンピオンズクラス」、年齢制限なしの「オープンクラス」そして、中学3年生までの「ジュニアクラス」である。ミニ四駆の大会は複数の地方大会に出る人達も多く、上位者は顔を合わす機会も多い。またチームでの交流もあるため、独特のコミュニティが形成されており、親しげに言葉を交わす人も多かった。ジュニアクラスでは「兄弟対決」なども見られ、深く濃い繋がりも確認できた。
決勝戦は皆がさすがの走りだった。あえてぎりぎりを攻めコースアウトする人も少なくはなかったが、スピードと安定性の高い次元でのバランスを実現している。そこからさらに速い人がほんの半歩だけ先に出るという感じだ。その半歩のリードのためにバランスは常に危うく、祈るような緊張感をにじませてマシンの走行を見守っている人も多かった。
そんな中、今回の最大の“台風の目”となったのが、ジュニアコースの優勝者、仙台大会代表の永田選手だ。彼のマシンは他のどのマシンよりも速く、そのタイムはチャンピオンコース、オープンコースの大人達も大きく動揺させた。
使っているモーターは「アトミックモーター」という最高速を求めるタイプのモーターではないところが特に衝撃だったという。永田選手はセッティングでそのスピードをたたき出しているというのだ。「ひょっとしてブレーキを全く使ってないんじゃないのか?」などなど、本当に驚いた表情で議論している上級者達の様子は興味深かった。テクニックと経験のある大人達は考えや攻略法が固まりがちとのことで、永田選手のアプローチが来年はどんな変化をもたらすのか、注目したい。
ミニ四駆は選手の層が厚いのが良い。子供から大人まで、本格的なチームから、個人での参加もあるし、女性も多い。走らせた後は手が出せないのは、逆に反射神経などの年齢や才能で絶対的な差が出てしまうスポーツと異なるところだ。お気に入りのマシンを飾り立てるプラモデル的な楽しみ方もできる。ミニ四駆は来年もさらに盛り上がっていくと実感させられた大会だった。