ニュース
臨場感に感動! VRゲームは広大な空間でこそ真価を発揮する!!
AMD内覧会でFury X GPUがVRゲームを魅せる!
(2015/6/20 00:00)
AMDの新GPU発表会「A NEW ERA OF PC GAMING」に引き続き、午後からは会場をシアター2Fに移してプレス向けの内覧会が開催された。内覧会の構成は大きく分けてふたつ。ひとつは発表会で紹介された、AMDが何らかの形で支える新作ゲームのデモンストレーションで、ディベロッパ各社が担当する。もうひとつはAMD登壇者によるFijiプロセッサのアーキテクチャとHBMの解説や製品の展示で、どちらも少人数のグループに分かれ、質疑応答を交えながら落ち着いて丁寧に行われた。
本稿では、ゲームの中でも、特に積極的にデモを行っていたVRゲーム2タイトルの現況とインプレッションに加え、本日得られたR9 300シリーズの追加情報と、16日夜に行われた「PC GAMING SHOW」の模様を紹介する。
VRゲームは臨場感抜群だった!今後の開発に期待大
AMDの関係者が発表会の緊張感から解放されたからか、内覧会は、一転してリラックスムードで緩やかに始まった。この内覧会で、最初に目を引いたのは、つい先ほど発表会で紹介されたVRゲーム「EVE:VALKYRIE」の体験プレイが可能になっていたことだ。ここでは理由を割愛するが、実のところ筆者はOculus RIFTなどのVRヘッドマウントディスプレイに対して”食わず嫌い”で敬遠していた。ところが今回、CCP Gamesのブース担当者に促されるまま「EVE:VALKYRIE」でVR初体験することになった。
「EVE:VALKYRIE」を実際にプレイして分かったことだが、舞台となる広大な宇宙空間は、VRディスプレイとの相性が非常に良い。自分の搭乗する戦闘機のコクピットを、頭上や足元方向の一部分が透明なガラスごしに外が見えるようにデザインしてあり、コックピット内のメカの奥行きと宇宙空間の奥行きに違いが出るように視差を設けている。
自機そのものの前方移動の制御はゲームシステムが行なうようになっており、プレーヤーが直接操作することはできない。プレーヤーにできる移動操作は、コントローラー左のアナログスティックによる自機の回頭で、全周囲360度任意の方向に自機を回転させることで移動操作を行なう。この自機の回頭に加え、プレーヤーが自分の頭の向きを動かして、上を見上げる、後ろを振り返るといった動作を行なっても、VRディスプレイの投影内容が、頭の動きに追従して更新される。このことにより、たとえば、自機を右方向に旋回させながら、さらに右側を見て現実同様に自然な目線の運びを行なうことができる。また頭の向きの変化は移動とは無関係なので、常に首を上下左右に振り自分の周囲に目を配れば、後方や頭上からの敵機の攻撃に備えることになる。
目標の敵機を自分の進行方向の中心に捉えてトリガーを引けば攻撃する。誰もが直感的に理解できる操作を採用していると言える。ただ方向移動の上下の入力は、人によって直感的だと感じる入力方向が肩なるため(ちなみに筆者は下方向の入力で上方に旋回するほうが直感的だと感じるタイプ)、プレーヤーが自分自身でコンフィグできるようにする必要があるだろう。
「EVE:VALKYRIE」は、2016年の第1四半期のリリース予定でありながら、すでに一定のクオリティに達していて、あとはグラフィックやミッションステージ、カットシーンなどのデータを追加して、コンテンツの厚みを持たせていく段階をひたすら突き進むだけのように感じられた。
次に気になったのはCrytekの出展だ。直前の発表会では、Crytekがこの内覧会に出展していることをうかがわせる発表は一切なく、ちょっとしたサプライズとなった。体験ブースでプレイすることができたのは、「Back to Dinosaur Island 2」とタイトルが付けられたテクノロジーデモだった。
この「Back to Dinosaur Island 2」は、世界設定の妙とCryEngineによる出力の恩恵で、ビジュアルクオリティは非常に高い。翼竜の住まう高い崖をウインチに巻き上げられ登っていく過程で見られる情景は、映画「アバター」さながらだ。ウインチを使っての移動操作は独特で、自分の頭を動かし、つかみたいハンドルバーを注視する。すると自分の手を意味する3Dモデルがハンドルに近い場所まで移動する。そこでコントローラーの裏側のトリガーを引くと自分の手がハンドルを掴み、トリガーをキープしている限りハンドルは掴んだままになる。左右のトリガーは、それぞれ自分の手の右と左に対応しており、違うウインチに乗り移る際には、それぞれの手をひとつずつ操作して、体重の預け先を確保しなければならない。両手を離してしまった場合は、数十メートルを一気に垂直落下してやり直すことになる。
上昇の過程で眼前に突然翼竜が顔を出したり、自分の背後の崖下から急上昇したり、はたまた頭上から急降下したりしてくる。時にはひどく驚かされるもこともあり、生命の躍動感が間近に感じられる。眼下を見下ろせば、谷の深さが足がすくむほどに感じられるし、最深部を流れる川の水しぶきや、風に舞う枯葉などの演出も心地よく肌に感じられる。
その一方で、この世界でできることは非常に少ない。前述したウインチに巻き上げられ、崖のぼっていくことを数回繰り返すと、崖の頂上に達することはできる。頂上では、移動することさえできず、周囲を見渡して遠方のスキャン可能なメカオブジェクトを4つほどスキャンして終わり、といった形になっている。現時点では、お世辞にもゲームだとは言えない実装状況であった。同社は、あくまでゲームエンジンをビジネスをベースにしており、こういった部分は仕方がないのかなと思わざるを得ない。
なお、改めてE3会場にあるCrytekのミーティングルーム行って初めて分かったことなのだが、この「Back to Dinosaur Island 2」は、CryEngineが問題なくVRディスプレイをサポートするということを実証する目的で製作されたもので、確かに、すでに何の問題もなくCryEngineで動作している。ただし、ゲームとしての作り込みはされていないので、たとえばプレーヤー自身とオーバーハングする岩との衝突判定が甘く、ランドスケープの裏側に自分の視界範囲が入ってしまい、視界全体が一瞬ブラックアプトしてしまうといったことが起きていた。
そして、もうひとつ分かったことは、この「Back to Dinosaur Island 2」が、6月15日付で発表された同社の新作VRゲーム「Robinson The Journey」そのものの現時点の姿だということだ。断片的だった情報をつなぎ合わせてすべてまとめると「Back to Dinosaur Island 2」改め「Robinson The Journey」は、PC版が開発されており、Oculus RIFTをサポートし、Cry Engine上で実装されるということになる。
本作は、ゲーム内のコンテンツ要素は、まったく出来上がっていないものの、CryEngineを活用していることから、ゲームを駆動させる部分はできており、あとはワールド内のアセットや、ゲーム内のコンテンツを追加していけば、比較的早い段階でリリースも可能だと思われる。本日ミーティングルームで、そのあたりを確認したところ、「Robinson The Journey」のリリース時期はまったくの未定で、1年とも2年とも言えない状況だと話してくれた。プラットフォームについても、PCに加えてXbox OneやPS4をサポートするかどうかとたずねたところ、現時点では何も計画されておらず、明確な回答は得られなかった。期待できるゲームワールドの雰囲気だっただけに、もう少しプレイできるようになるのが待ち遠しい。
その他、DirectX 12対応のSF RTS「ASHES OF THE SINGULARITY」も出展されていたのだが、ゲームを開始して、自軍のMobを選択すると、突然OSごとクラッッシュしてしまうというトラブルに見舞われてしまい、プレイすることもプレゼンテーションを受けることもできなかった。ブース担当者に何が悪いのか聞いても、ビデオカードが悪いのか、ドライバが安定しないのか、それともアルファ状態のゲームそのものが悪いのか、まったく原因がわからないといった有様だった。確かにWindos10のSteamで動作しており、多数のオブジェクトが描画されるゲームだということは分かったが、残念ながらそれ以上は何もわからなかった。
R9 300シリーズ追加情報
6月18日の記事で、すでに同等のビデオカードを所持するPCゲーマーにとって、大きく注目する要素はない、としたR9 300シリーズだが、E3期間中に追加情報を得られたので、ごく簡単にお知らせする。主要なスペックについては、昨日お伝えした通りで、すでに公式サイトにも掲載されている。比較検討をしやすい表を入手したのでご紹介したい。
ひとつ興味深いのは、競合するNVIDIA GPUとの比較で、AMDが実施したDirectX 12の3DMark APIオーバーヘッド機能テストによると、秒間のドローコール回数のテストで劇的にパフォーマンスを上げているというのだ。このベンチマークが正しいとすると、R9 380やR9 380X環境でDirect X12対応ゲームをプレイすると、NVIDIA GTX980環境より高フレームレートが期待できるということになる。
ドローコールは、3Dのオブジェクトのレンダリング計算の結果をフレームバッファに書き込む命令のことで、一般にパフォーマンスを上げるためには、できるだけ多くのオブジェクトをまとめてから、ドローコールを行ない、その回数を減らすのが有効だとされている。ただし、すべてのゲームがそういった最適化を行っているわけではないため、DirectX 12に限定されるものの、こうしたハードウェアの性能向上は、歓迎されるべきことだろう。
その他、資料から各GPU別のメジャーゲームのベンチマーク結果を抜粋した。ビデオカード購入を検討している人は、自分がよくプレイするゲームで、どれくらいのパフォーマンスのフレームレートが出るか、まずは資料を調べてみてもいいだろう。
AMDプレゼンツ「PC GAMING SHOW」
最後になってしまったが、本内覧会終了の約2時間後には、プレスのみならず業界関係者を招いて「PC GAMING SHOW」が華々しく開催された。イベントの進行役は元プロゲーマーのSean 'DAY[9]' Plott氏。アメリカのTVトークショウを思わせる展開で、各ゲストの持ち時間は約5分と短いものの、数多くのゲストが次々と迎え入れ、それぞれ軽妙なトークで大変な盛り上がりを見せていた。
「PC GAMING SHOW」には、冠スポンサーであるAMDのRichard Huddyと、登壇予定になかった同CEOのLisa Su氏も登壇する運びとなったことを付け加えておく。ここでのAMDからのアナウンスは、すでに午前中に発表済みのものばかりで、トークの内容に初めて明かされるようなシークレットはなかった。ともあれ、朝の新発表の数々から、昼のリラックスしたムードの内覧会、夜の業界関係者のための楽しいショウの提供まで、一日盛りだくさんの話題を提供したAMDに感謝の意を表したい。