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PCはDOS版が基本!? バンドンゲームショップレポート

バンドンではアーケードゲームが大人気! インドネシア語版「アイカツ!」に明日への光明を見いだす

バンドンではアーケードゲームが大人気! インドネシア語版「アイカツ!」に明日への光明を見いだす

バンドンを代表する大型ショッピングモール「Paris Van Java」。ジャワ島のパリということで名前がシャレている
バンドン中で見ることができたチェーン店「GAME MASTER」。「Paris Van Java」にも入っていた

 さて、コンソールゲームに関しては若干失望させられたものの、意外な発見もあった。バンドンのショッピングモールではゲームセンターがどこも人気だったことだ。

 意外に思われるかも知れないが、アーケードゲームは日本特有の市場だ。北米はアーケード勃興期のピンボールや「パックマン」以降は、物理流通やメンテナンスの問題、そして何よりスマッシュヒットするようなAAAタイトルがあまり生まれなかったことから日本ほどは広がらず、ヨーロッパは今も昔も伝統的にカジノが強い。一方、アジアでは、中国や台湾、韓国など“青少年の教育に良くない”という理由から積極的に閉め出す意図を明確にしている。近年は徐々に解放傾向にあるものの、その影響もあって今なお市場として立ち上がっていない。このため、アジアでゲームセンターを見られるのは実は珍しいのだ。

 バンドンでは、先述したように大学の近くに大規模なショッピングモールがあり、その中では先進国と同様の快適なサービスが受けられる。上層階にはゲームセンターがあり、若い男女や親子連れも含めて、多くの来場者がゲームを楽しんでいる。

 入荷している筐体は日本製が中心で、日本から数年遅れの型落ち品が入っている。映画館のメインロビーに子供の待合室風な雰囲気で作られた小規模なゲームセンターでは、プリペイドカードを用いる比較的新しい機材も入っており、メンテナンスも行き届いている。おそらく日本にアジア向け専門のブローカーが存在するのだろう。

 ただし、バザール・エンタテインメントのレポートでも触れたように、バンドンはネットワーク環境が劣悪ということもあり、「三国志大戦」や「麻雀格闘倶楽部」のようにネットワーク回線を使うゲームは一切置いてなかった。アーケードゲームは、日本に限らず、世界的にオンライン接続が当たり前になりつつあり、ここをどう乗り越えるかが今後課題になりそうだ。

【ゲームセンターの様子】
ゲームセンターには、ネットワーク対戦もの、プライズもの以外は日本と変わらない品揃え。ただし、数年古い

 ゲームセンターで人気を集めていたのは、AKB48の楽曲を収録した「maimai」(セガ)や、「グルーヴコースター2」(タイトー)といったいわゆる音ゲーだ。Kinectセンサーを使った体感型の音楽ゲームも人気で、集まった観衆に対して自らのスーパープレイを見せつけるのが楽しいという、かつての日本のムーブメントをトレースしているような印象だ。

【音ゲーが人気】
インドネシアに限らず、アジア地域では、直感的に楽しめるため音ゲーの人気が高い。インドネシアで人気のFunkotを本格導入すれば、大きくブレイクしそうだという手応えを感じた

 もうひとつ盛り上がっていたのが、子供向けのカードゲーム。日本ではすでに稼働を終了した「甲虫王者ムシキング」(セガ)や「オシャレ魔女 ラブandベリー」(セガ)といった古いものから、「ムシキング」のインスパイア系タイトル「機甲英雄」(IGS)、そして「アイカツ!」(バンダイ)まで多種多様な筐体が配置されており、こちらでは子供向けアーケードゲームがちょっとしたブームになっているようだ。

【子供向けカードゲームも人気】

 中でも1番人気だったのは「アイカツ!」(バンダイ)だ。人気の理由は、女児たちがしばらく遊ぶ風景を見ていてすぐ気づいた。筐体に日本語が使われているため見逃していたが、よくよく見ると、なんとこのゲーム、インドネシア語にローカライズされているのだ。

 ゲームセンターにおけるローカライズ事情は、コンソールゲームと似たり寄ったりで、それなりの市場が成立してからでないと、なかなか現地ローカライズは行なわれない。理由はコスト的な問題が大半を占めるが、このタイミングでのローカライズは相当にチャレンジングだ。しかも、筐体やゲームのインドネシア語ローカライズのみならず、ジャカルタで展開しているアイドルグループJKT48ともタイアップするなど、最初からアクセル全開で展開している。

 結果は大成功で、過半数の女児は「アイカツ!」を遊んでいる。これは特定の店舗だけの話ではなく、どの店舗でも人気で、ブルカを被った親子が熱心にゲームを楽しんでいた。インドネシアの肥沃な中間層を取る、という点においては、この「アイカツ!」が現状でもっとも成功しているコンテンツと言えるかもしれない。

 当たり前の話だが、ゲームを始めとした娯楽は誰しも現地語で遊びたいと思っている。アジアにおいて現地語で遊べないのはあくまで提供側の都合であり、日本のゲームにはジャパンプレミアムがあるから、英語版や日本語版でいいだろうというのは、提供側として若干思い上がりがあり、「ムシキング」のような先行開拓タイトルはともかく、現在はなかなかうまくいかないだろう。バンドンにおける「アイカツ!」の成功を目の当たりにして、インドネシアでも日本のゲームビジネスは十分に成立するという感触が得られたのは大きな収穫だった。また数年後、どのように成長していくのか、今後の進展が楽しみだ。

【「アイカツ!」が一番人気】
今回3店舗訪れたがどの店舗でも「アイカツ!」の人気が高かった

【「アイカツ!」はJKTとコラボ】
ジャカルタのショッピングモールfxを拠点に活動しているAKB48の姉妹ユニットJKT48。このJKT48と「アイカツ!」が現地でコラボレーションしている

【街に溢れる日本語】
バンドンは、インドネシアでももっとも日本語学習者が多い街として、街には日本語が溢れている

(中村聖司)