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PCはDOS版が基本!? バンドンゲームショップレポート

PCはDOSで買って海賊版を入れる。唯一の正規品はアンチウィルスソフト

PCはDOSで買って海賊版を入れる。唯一の正規品はアンチウィルスソフト

PCショップ
ソフトウェアショップ。扱っているのはすべて海賊版
ゲームショップ。写真のお店は正規品も扱う優良店だが、海賊版も扱っている
万引きを予防する張り紙の下に、海賊版のコピーが可能な旨のお知らせ。この国は色々是正すべき点がある

 モールの上階にはPC系のショップが軒を連ねている。新興市場の特徴として、ここバンドンでも品揃えの中心はノートPCだった。理由はコストパフォーマンスでも価格でもなく、“停電”の存在だ。停電が頻発するため、必然的にバッテリーのあるノートPCにせざるを得ないわけだ。その影響として、もはや商売にならないためかPC用モニターを販売する店もほとんど見当たらなかった。現在はデスクトップPCとノートPCの性能差が縮まっていることもあり、ミャンマーの首都ヤンゴンやマンダレーがそうだったように、停電が避けられない新興市場では永遠にデスクトップPCの市場は立ち上がらないように思える。

 PCに関して特異な点は、“DOS売り”だ。DOS売りと言われても何のことかわからないと思うが、バンドンで販売されているノートPCにプリインストールされているOSはDOSなのだ。もちろん、Windows 8.1や7がインストールされているPCも販売されているが、主流はあくまでDOSで、価格差は3,000円。何を意味しているかというと、海賊版のWindowsをインストールして使うというわけだ。こういう現状を見てしまうとWindows 10が無料アップグレードを行なうのも頷けるところがある。

 その海賊版はというと、PCショップと同じフロアに、ソフトウェアショップとして正々堂々と売られている。Windowsから、PhotoshopやOffice、そしてPCゲームまで、ありとあらゆるPCソフトがビニールで綺麗にシュリンクされた状態で大量に販売されている。価格は100円から300円程度で、ディスク枚数が多いものはその分だけ高くなる。ソフトウェアの価格と言うより、単純にDVDのライティングコストといった感じで、かなり最悪の状況だ。

 皮肉なことに、その中で唯一正規品のみが売られているのがアンチウィルスソフトだ。カスペルスキーやノートンなどがどの店でも壁広告やポスターなどを使って大々的に展開されている。その他のソフトウェアが海賊版で数百円で売られているのに対し、アンチウィルスソフトは1万円弱と正規価格で販売されている。

 この背景には、ソフトはコピーを利用したいが、セキュリティが不安なので、アンチウィルスソフトだけにはお金を払ってPCを守りたいという身勝手な発想が透けて見える。海賊版によるPCソフトウェア市場の汚染は、日本も含め、中国、台湾、韓国、シンガポールなどあらゆるアジア諸国が通ってきた道だが、インドネシアだけはまったく改善の兆しが見られない。

【PCはDOS売りが基本】
価格の上に書かれているのがOSで、Windows 8.1とDOSから選ぶことができる

【ソフトウェアショップ】
扱っているソフトウェアは、独自のシュリンクパッケージに封入された海賊版ばかり。ほとんどはWindowsをはじめとしたPCソフトだが、PS3/Xbox 360用や、モバイル用のソフトも扱っている。右下の「ストリートファイター X 鉄拳」は約50円

 PCショップの周囲には、コンソールゲームを扱うゲームショップもいくつかあった。しかし、どの店も元気がなかった。理由は単純で、価格が高すぎるのだ。店側もかなり努力して、関税込みの値段の高い正規流通品はほとんど入れず(ただし、付き合い上、最小限は入れて飾っておく)、香港、シンガポール経由の並行輸入品をメインの商材にして販売価格を抑える。そしてPS3やXbox 360についてはHDDに海賊版ソフトをたっぷり入れた状態で販売する。

 しかし、そこまでやっても高いものは高いのだ。いくら海賊版でゲームが安く手に入るとしても、肝心のハードは安くならず、海賊版を動かそうと思えばMODチップによる改造が必要になるためかえって値段が張ってしまう。もちろん、ゲームを入れるための別途HDDも必要になる。結局、初期投資で最低でも3万円程度が必要になり、2万円前後と言われるインドネシアの平均月収を大きく上回ってしまう。

 今回バンドンで10店舗以上のゲームショップ、海賊版を扱うソフトウェアショップを回ったが、バンドンのコンソールゲームマーケットは、ちょうどミャンマーのヤンゴンやマンダレーと同様に、まだごくごく一部の好事家が趣味でお店を構えているレベルで、ビジネスとしては立ち上がっていない。

 インドネシアは所得の低さや著作権に対する意識の低さ、関税の高さなど、克服すべき様々な課題があるため、台湾や中国のように海賊版の撲滅、関税の撤廃、現地ローカライズとひとつずつ手順を踏んでコンソールゲームを本格参入するということはまだ当分なく、場合によってはメインのゲームプラットフォームがスマートフォンに移っていることもあり、永遠に立ち上がらない恐れもあると感じた。

 ただ、ゲームファンにコンソールゲームが興味がないわけではないのだなということが実感できたのが、PSカフェだ。1時間100円程度で、PS3やPS4を利用できるカフェスペースで、バンドンではネットが繋がりにくいためか、ネットカフェ以上の存在感でバンドン中に点在していた。ゆったりとしたソファ、フルHD TV、ドリンクサービスなど快適な環境でコンソールゲームが楽しめる。

 遊んでいるのは若者の男子ばかりで、人気タイトルは「FIFA」シリーズ、「ウイニングイレブン」シリーズ、「NBA」シリーズなどスポーツ系ばかり。ただ、これは必ずしも彼らがスポーツ系だけが好きというわけではなく、言語の問題とプロモーション不足で、直感的に理解できるゲームが好まれているだけだ。コンソールゲームはここが突破口になるのではないかという気がした。

【清濁併せ持つバンドンのゲームショップ】
バンドンのゲームショップは、正規品を扱っている優良ショップが多かった。ただし、正規品は関税が上乗せされて、PS4で6万円を超える価格となる。PS3/Xbox 360については海賊版とセットで販売されている

【PS4カフェ】
今回は実際に2店舗のPS4カフェに行くことができた。1点目の「Hanzo」は、バスターミナル近くにある店舗で、満席で順番待ちが発生する人気振りだった。2店舗目NIRVANAは閉店直後に訪れたため無人だったが、独自のゲーム大会なども企画され、賑わっているようだ。共通点はどちらもサッカーゲームが人気という点

【ネットカフェ】
バンドンにもいくつかPC専用のネットカフェがあった。利用料は1時間あたり30円程度。席はほぼ満席で、「League of Legends」をプレイしている人が多かった

(中村聖司)