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オートデスク主催の3DCGセミナーで、最新ゲーム2作のクリエイターが講演

先端CG技術のイベントに「龍が如く 維新!」と「Knack」が登場!

12月3日 開催

会場:ラフォーレミュージアム六本木

開催の挨拶をするオートデスクの西松和朗氏

 3DCG制作ソフト「Maya」などを販売するオートデスクが主催するイベント「Autodesk 3Decenber 2013」が、12月3日にラフォーレミュージアム六本木で開催された。

 このイベントは3DCGユーザーの「交流」をコンセプトに毎年開催され、第一線の現場で活躍するクリエイターのトークセッションなどによって、現在の3DCG技術を取り巻く情報を知ることができる。会場には一般の観客のほかに、CG技術を専攻する学生なども多数おとずれ、クリエイターたちの生の声に聞き入っていた。

 このトークセッションのプログラムのなかで、オートデスクの3DCGソフトを使用したタイトルとしてセガのPS4/PS3用タイトル「龍が如く 維新!」と、ソニー・コンピュータエンタテインメントのPS4「Knack」が取り上げられ、それぞれの制作者がメイキングなどに関するトークを行なった。

時代劇ならではの苦労が垣間見えた、「龍が如く 維新!」のグラフィックス

解説をするセガの工藤裕一氏

 「龍が如く」シリーズの最新作「龍が如く 維新!」のトークセッションは、セガの開発チームリーダー・工藤裕一氏によるイベントシーンなどのメイキングを中心に展開していった。

 工藤氏は作中の映像とスライドによる解説を会場のスクリーンに映し出し、「龍が如く 維新!」のグラフィックス面の注目すべき点や、制作時の苦労などを語っていった。

 本作は2008年に発売された「龍が如く 見参!」以来の時代劇スピンオフ作品ということで、登場人物が身に着ける羽織りや着物の袖といった「揺れもの」の表現には特にこだわったという。揺れる布の制御は3DCGのなかでも難しい表現とされ、これにまつわる作業に開発チームは苦心したという。この課題を乗り越えるため、チームは独自の「Clothシミュレーター」を開発し、CGデザイナーの作業を従来よりも軽減させることに尽力した。この試みは成功し、それまでならば2年はかかるとされていた作業期間を6か月にまで短縮し、制作の大きな効率化につながったという。

工藤氏による制作作業の解説

 ここでスクリーンには工藤氏が用意した今作の主人公・坂本龍馬のレンダリングモデルが映し出され、刀による殺陣を披露した。このモデルは、人の手による細かな補正をかける前の、コンピューターが演算した「生」の状態のものだったが、複雑な動きをしても羽織の裾や袴などの揺れに大きな問題点はなく、チーム独自の「Clothシミュレーター」の優秀さが伺えるものだった。

 他にも作品映像の中では「バトルダンジョン」や「アナザ―ライフ」といったゲームシステムも紹介され、発売への期待が高まるプレゼンテーションとなった。「龍が如く 維新!」は2014年2月22日にPS3とPS4のマルチプラットフォームで発売予定。

工藤氏は揺れる布の表現を実演して見せた

PS4の注目ローンチタイトル「Knack」。その映像表現技術が語られる

 休憩時間をはさんだあと、ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイドスタジオの新作「Knack」のトークセッションが開始された。本作はマーク・サーニー氏が手掛ける新作アクションゲームで、プレーヤーの操る「ナック」が、ステージ中のパーツを集めて成長するシステムが注目されている。

 会場のスクリーンにはゲームのプロモーション映像が上映され、開発チームからアートディレクターの山口由晃氏、アーティスト・土屋武人氏、テクニカルアーティスト・飯田裕介氏が登壇。それぞれの立場からメイキングにまつわる話が語られた。

 トークの内容は、「限られたスケジュールの中でいかに次世代機用のグラフィックスを作ったのか」という点を中心に展開。土屋氏によるグラフィックス制作の解説は、主人公ナックの「ボディを構成するパーツ数が60個から5,000個まで変化し、シームレスに成長する」というシステムを表現するための工夫など、専門的な技術を図解を交えてわかりやすくした内容だった。

 話題がゲーム全体のデザインに移ると、山口氏が本作の背景制作の過程やグラフィックスデザインにおけるアウトソーシングの現状などを語った。山口氏はアウトソーシングの話題で、海外のスタッフとのコミュニケーションや綿密なディレクションについて振り返り、本作の制作におけるアウトソーシングの重要性を説明した。

 続いてマイクを受け取った飯田氏は、グラフィックスの制御技術などかなり専門的な分野について説明していった。本作で導入したツールや技法などが実際にスクリーンに映し出され、飯田氏はひとつひとつ丁寧に解説していた。また、飯田氏は制作全体の進行に関係するツールも話題にあげ、ここでもゲーム制作における連携や効率化の大切さが語られることとなった。

 最後に山口氏が、来年2月に国内で発売となるプレイステーション 4本体には、海外版と同じく「Knack」の無料ダウンロードコードが同梱されることを説明し、「多くの人に遊んでもらいたい」という言葉でセッションをしめくくった。

アートディレクター 山口由晃氏
アーティスト 土屋武人氏
テクニカルアーティスト 飯田裕介氏

土屋氏によるキャラクター造形の解説

山口氏は、背景制作とアウトソーシングについて語った

飯田氏は技術解説を行うとともに、無料ダウンロードの告知も行なった

(市川太一(クリエンタ))