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Chinese Gamer、iOS用恋愛RPG「落桜散華抄(仮)」開発者インタビュー

平和な学園の裏で繰り広げられる、現代まで続く“源義経と源頼朝の戦い”

1月31日~2月4日

会場:南港展覧館

 台湾Chinese Gamerは、ネクソンの「聖剣オンライン」や、崑崙日本の「ほのぼのモグウ日記」などを開発する台湾を代表的するゲームデベロッパーだ。台湾のみならず、様々なタイトルを積極的に展開している。今回はChinese Gamerが2013年にサービスを予定しているiOS向け恋愛RPG「落桜散華抄(仮称)」を紹介したい。

 「落桜散華抄」は学園を舞台とした恋愛ゲームをベースに、“源義経と源頼朝の争いが現代まで続いている”という伝奇ロマンの物語が展開するというユニークな作品だ。本作を取り上げるきっかけは、これまでChinese Gamerの日本向けローカライズを担当していたChinese Gamerの劉哲魁氏が、筆者に「実は日本向けローカライズから部署が変わり、これまで学んだことを活かして、日本向けオリジナルコンテンツを作っているんです」と語ってくれたことが取材のきっかけとなった。

 今まで日本向けにコンテンツをローカライズしていた劉氏は、どのようなコンテンツを、どのような想いを込めて作っているのか? 「落桜散華抄」は現在開発度は50%以下であり、まだまだゲームの具体的な仕様を固めているところとの事だが、ゲームの基本的なコンセプトや、劉氏を始めとした開発スタッフの作品に込めた想いを聞くことができた。

楽しく明るい学園恋愛RPGと、濃密な伝奇ストーリー。源平時代の因縁が現代によみがえる

基本となるメニュー画面。ここから様々な場所へアクセスする。今回の素材はすべて開発中のもので、製品版では変更される可能性がある
女の子は3Dグラフィックスで描かれる。仕草などはこだわりを持って作られるという。ちなみに、女性主人公で男性キャラクターと恋愛することもできる
カード画面。仲間と共に学園の怪異に立ち向かう。敵となる妖怪を仲間にすることもできる

 「落桜散華抄」は学園を舞台とした恋愛RPGとなる。男女それぞれ5人、計10人の攻略可能なキャラクターが登場し、プレーヤーは男性か女性のキャラクターを作り、彼らとの交流を行なっていく。キャラクターは3Dグラフィックスで描画されており、状況によって様々な表情を見せてくれる。

 ゲームの基本画面はクォータービューで描かれた学園のマップとなる。学園の建物にタッチすると様々な“勉強”ができるようになっている。またマップを切り替えることで「公園」や「駅」、「商店街」といった場所にも移動できる。プレーヤーは「行動力」を使って学校で勉強したり、街でバイトをしていく。

 プレーヤーキャラクターには「芸術」、「体育」、「魅力」、「雑学」といったパラメーターがあり、勉強することで上昇させることができる。またバイトを行なえば、ゲーム内資金が入手できる。攻略するキャラクターにはそれぞれ好みがあり、彼女たちに気に入られるためにプレーヤーキャラクターを強化していくのだ。勉強やバイトをすることで経験値を入手でき、これが一定量貯まるとレベルが上がり、能力値や行動力の上限がアップする。

 「落桜散華抄」の面白いところは、この恋愛RPGに濃密な“伝奇ロマン”を盛り込んでいるところだ。ゲームでは「メインクエスト」が用意されており、このストーリーを進めると多くの経験値が得ることができる。メインストーリーはアドベンチャー形式となっており、クエストが提示する場所を「探索」することで物語が展開していく。

 このメインクエストのストーリーは平凡に見える学園に潜む“悠久の時の中で繰り広げられていた闇の戦い”を暴き立て、プレーヤー達を巻き込んでいく。キーワードは“源義経と源頼朝の争い”である。平氏を倒し鎌倉幕府を興した源頼朝。戦争での功労者でありながら、兄に追われ非業の死を遂げた源義経。彼らの戦いは、数百年後の現在も続いていたのである。源頼朝は“利法人”と呼ばれる蛇の一族であり、源義経は“夜鴉”と呼ばれる鴉天狗の一族だった。

 彼らは人間世界に隠れ住む“妖怪”であり、プレーヤーは怪事件をきっかけに彼らの対立を知る。さらに幕末から明治期にかけて設立された対妖怪機関“聖血会”や、夜鴉と利法人を監視する謎の組織“霊揀会”なども物語に関わってくる。メインストーリーの展開により、「落桜散華抄」はプレーヤーとヒロインを巻き込んだ、学園伝奇物語へと展開していくのだ。そしてゲームとしては「カードバトル」の要素が盛りこまれていく。

 探索では敵とのバトルが発生することもある。バトルはカードバトル形式で行なわれ、プレーヤーは主人公の持つ武器や、ヒロインのカード、妖怪のカードを駆使して戦う。カードは探索や、ガチャ、ヒロインとの交流など様々な機会で得られ、それらを合成して強化していく。ベースとなるカードに様々なカードを「強化」させることでカードのレベルが上がって強くなり、ヒロインカード同士などカテゴリーの同じカードを合わせることでレベルの上限値を上げる「進化」ができることとなる。

 ヒロインとの恋愛イベントで得られるカードはヒロインとの親密度が上がることでより強力なものとなる。親密度によって様々な恋愛イベントも起こる。ハードなメインストーリーと、カードを強化していくバトル、そしてヒロインとの甘いひとときと学園生活……。様々な要素を盛りこんだ作品となりそうだ。

 この他、ソーシャル要素も盛りこまれる予定で、強大な敵と戦うために協力者を募り戦いを挑むイベント的な「大規模バトル」や、鍛え上げたデッキで戦うPvPといった要素も予定している。「期末テスト」のようなプレーヤーランキングシステムも用意するとのことだ。ビジネスモデルはアイテム課金を予定しており、課金アイテムは行動力の回復や、カードが入手できるガチャなどを予定しているとのことだ。

【スクリーンショット】
iPad版「落桜散華抄(仮称)」。特にキャラクターの表現に力が入れられる

日本のゲームのような作品を、日本ユーザー向けに作りたい! 劉氏の想いを結実した作品

プロデューサーを務めるChinese Gamer劉哲魁氏。これまでは日本向けローカライズを担当していたが、経験を活かしたコンテンツを作るために社内で働きかけ、想いを実現したという
メインシナリオを手掛ける邱仲偉氏
プログラマーリーダーの潘正賢氏
ゲームのメインイラスト。社内のイラストレーターがキャラクターデザインを担当している

 劉氏はこれまでローカライズチームを担当していたが、コンテンツ制作のプロデューサーとなった。こういった人事異動はChinese Gamerでは前例がなかった。また、恋愛にフォーカスしたゲーム、凝ったゲーム性を持つモバイルゲームというジャンルそのものもChinese Gamerではこれまで挑戦したことがない。「落桜散華抄」はChinese Gamerにとって初めてづくしのゲームとなったという。

 劉氏は日本のプレーヤーに向けてローカライズを行ないながら、日本のコンシューマーゲームのような面白さを持つ作品をずっと作りたいという想いを持っていた。劉氏は「サクラ大戦」シリーズや、「ペルソナ」シリーズ、「ラングリッサー」シリーズなど“恋愛と戦闘要素”を持つゲームが大好きで、こういったポイントを日本で人気の高いソーシャルゲームに盛り込み、そしてゲーム性にこだわる形で企画を練り上げていった。

 会社側にとっても得意とするMMORPGが、大きな市場であった中国市場で飽和状態であり、ソーシャルゲーム市場・日本市場への突破口を模索していた。この社内での需要を捉えた形で劉氏は社内に働きかけを行なっていった。開発するチーム編成に関しても、劉氏が社内でスタッフに直接声を掛けていったという。「落桜散華抄」は劉氏の強い思いと、社内への働きかけによって開発をスタートすることができたのだ。

 ゲームを作っていく中で、劉氏が特にこだわったのが「ストーリー」だ。一見平凡な学園生活が、歴史の闇で繰り広げられてきた戦いにより姿を変えていく。ここに何処まで濃密なストーリーを盛り込むかということで起用したのが本作でメインシナリオを手掛ける邱仲偉氏である。邱仲偉氏は敬虔なクリスチャンであり、聖書の物語に関して深い知識を持っている。邱仲偉氏は聖書でのストーリーに、「源義経と源頼朝の争い」という要素を加えて練り上げ、「現在まで戦いが続いていることの意味」を描き出そうと挑戦していくという。

 ストーリーに関しては、劉氏と邱氏の綿密な打ち合わせで人物を配置し、そして展開を行なっている。「ツンデレの女の子」、「秘密を持った敵」といったキーワードを劉氏が提示し、ここに実際の物語のキャラクターとして邱氏が人間関係を設定していく。物語が進んでいくことで変化していく人間関係や、キャラクターの反応なども注目して欲しいポイントだという。

 ヒロイン達とのデートイベントなどは他のシナリオライターが担当しているが、こちらに関しては劉氏ができるだけプレーヤー達が楽しくなってもらえるような、明るさを意識して要素を提示しストーリーを作っている。

 一方、プログラマーリーダーの潘正賢氏が注意した点は“ゲームの安定性”だという。ソーシャルゲームとして、大多数のプレーヤーデータをどう管理し、大規模戦闘や、PvPでのユーザー間のデータをどう処理し、みんなが繋がっていくゲームを作るか、現在の課題として取り組んでいる。また、キャラクターの性格を感じさせる、かわいらしい仕草をどう3Dグラフィックスでなめらかに表現するかも現在力を入れて取り組んでいる点だ。

 ゲーム性、ストーリー性に強い思い入れを持つ劉氏だが、それと共に気を使っているのが「間口の広さ」だ。プレイはできるだけ気軽に、雰囲気はライトに、女の子(男の子)と手軽に楽しく交流が楽しめる作品作りを目指している。学校での勉強やバイト、女の子の触れあいやデートなどは画面を直感的にタッチするだけでできるし、メインストーリーも画面をタッチしているだけで進む。

 そしてこの簡略化した基本部分に、コアゲーマーが楽しめるキャラクターカスタマイズやカードバトル要素を盛りこんでいく。間口の広さを常に意識するのは、劉氏がローカライズチームで様々な作品を手掛けた経験から学んだことだという。

 「落桜散華抄」はまだまだこれから開発を行なっていく作品である。Chinese Gamerとしてはまずゲームの仕様を固め完成させた後、日本のパートナーを募り、彼らと意見を交わしていきながら、日本のユーザーに楽しんでもらえる形に完成させる方針だ。

 日本のユーザーへのメッセージとして劉氏は「私達は、できるだけ日本のユーザーに好きになってもらえるゲームを作っていきたいと思っています。私は本作が最初の作品となります。本当に日本の皆さんに気に入ってもらいたいと思って作っています」と語った。

 潘氏は「Chinese Gamerとして、日本をメインターゲットとした初のソーシャルゲームです。是非楽しんでください」。邱氏は「現在まで続く、義経と頼朝の確執とは何なのか? 期待してください」と語った。

 今回、話を聞いてみてイラストを多用したシンプルなカードゲームではなく、しっかりしたゲームを作っているというところで、Chinese Gamerらしさを感じた。3Dのキャラクター達による恋愛ドラマにも期待したいが、何よりも驚かされたのが、「義経と頼朝の戦いは終わっていない」というアイデアを元に、台湾のスタッフが日本市場へ挑戦しようとしているところだ。日本の“歴史の裏で続いていた闇の戦い”をどう描き、恋愛ゲームにどう盛り込むか、とても興味が惹かれる。

 台湾大手デベロッパーが、本気で日本市場攻略のために、コンテンツを投入しようとしている。武侠ものなど既存のコンテンツのローカライズではなく、完全に日本市場を意識し、これまで日本のユーザー向けにローカライズを担当し、日本のゲームに強い思い入れを持つ劉氏が生み出す作品はどんな影響をもたらすのか。台湾の開発者は変わりつつあると感じた。今後に注目したい。

【カードイラスト】

(勝田哲也)