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「落桜散華抄」プロデューサー劉哲魁氏インタビュー
スタッフの反対を押し切り実現したヤンデレ少女が一番人気に!?
(2014/1/27 15:01)
台湾Chinese GamerがiOS/Android向けに開発し、パブリッシャーは未公開だが日本展開が予定されている恋愛RPG「落桜散華抄(らくおうさんげしょう)」。弊誌では昨年取材しており、台湾デベロッパーでありながら、本格恋愛シミュレーション、本格伝奇ロマンを実現しようというスタッフにエールを送った。
本作は台湾と香港で2013年9月よりサービスされて好評を得ており、今回日本でのサービスが決定した。今回内容とアップデート計画は別項で紹介しているが、本稿ではプロデューサーを務めるChinese Gamer劉哲魁氏に話を聞き、さらに制作者の思いに踏み込んでいきたい。
劉氏は開発の中でスタッフの交代などの理由により、メインシナリオとヒロインのシナリオを1人で手掛けることになったという。その中で、時にはスタッフの反対を押し切って思いを通し、こだわりのシナリオを書き上げ、成功させたという。劉氏の作品への想いを感じて欲しい。
ヒロインには意外な一面を! 強い想いでメインとヒロインのシナリオを執筆
――「落桜散華抄」が発売となって数カ月となりましたが、手応えを教えてください。
劉哲魁氏: 手応えはあります。台湾では本作のようなストーリーを重視するゲームは少なく、社内でも出すまで不安視する声もありましたが、先月の売り上げも社内トップクラスになりました。
劉盈秀氏: 私は実は台湾・香港版の女の子の日本語音声を担当しましたが、「落桜散華抄」はやっぱりストーリーが良いです。特に義経と頼朝の争いが現代まで続いているというところがとても好きですね。キャラクターも魅力的で、とくにヒロインの1人に惚れている男の子の空回りしている感じが大好きですね。1ファンとして楽しんでいます。
――現在、女の子の中で一番人気の子は誰でしょうか?
劉哲魁氏: 「平澤佳奈」です。彼女は小動物のようにかわいらしく、けなげで、恋愛関係を発展させやすいキャラクターです。しかし実は、主人公への依頼心が強く、独占欲も強い。主人公がいなければ不安になる様な「ヤンデレ」となります。
ヤンデレとなった平澤佳奈はファンの間で“黒化”と呼ばれています(笑)。専用のグラフィックスも用意されています。「何でこの子はこうなるんだ」という声もありましたが、「黒化した平澤が好き」という声もありますね。
実は開発スタッフでもヤンデレが理解されず、社内の反対を押し切った部分があります。女の子は必ず“意外性”を持たせるようにしています。ヒロイン達は見た目から「こういう言動で、こういうシナリオだろう」とファンから予想される。それを良い意味で裏切っていくようにしました。
こういった要素は私1人で設定しました。前回のインタビューでシナリオ担当のスタッフがいましたが、彼は基本設定をした時点でスタッフから外れています。当時のストーリーではゲームとしてコンセプトと異なる要素もあった。発売まで数カ月という段階で、ゲームとして完成させるため、色々なところに手を入れました。
5人のヒロインの内、3人の恋愛シナリオは、私が全て設定しメインストーリーも全て手掛けています。正直とても大変でしたが、好評でうれしさを感じています。今回同席している鄭巧宜は、5人のヒロインの内「西園寺綾乃」を手掛けました。
実は5人のヒロインは全員シナリオスタッフがいたのですが、他の3人のテキストはほぼ全て書き直しました。しかしサブシナリオなどはシナリオスタッフが手掛けています。意外性やエピソードなどは提示しますが、実際のテキストは他のスタッフが手掛けている部分もあります。
――なるほど、西園寺綾乃はどんなキャラクターなんでしょう。
鄭氏: 私は彼女を主人公と同じように“西園寺先輩”と呼んでいます。主人公より1つ上で、最初は主人公にきつく当たるんです。彼女は大人びていて、冷静ですが、あるきっかけから主人公を包み込んでくれるような母性を感じさせるキャラクターとなります。
劉哲魁氏: お母さんと言うより、「アネゴ」という感じですね。
鄭氏: 彼女とは初めて水族館でデートすることになるのですが、いつもは責任感が強く、何事にも冷静に取り組んでいる彼女が初めて少しだけ、弱音を吐き、主人公に弱い自分を見せるのです。このシーンが特に好きです。ぜひ見てもらいたいです。
――様々なシーンが用意されているだけに、メインストーリーに加え、3人のヒロインを担当した劉さんの作業量はものすごかったのではなかったないでしょうか?
劉哲魁氏: 本当はプロデューサーはテキストを書くべきではなかったかも知れなかったですが、ゲームとして完成させ、面白くまとめ上げるスタッフがいなかったという部分があります。またその後にきちんと繋げていくストーリーにしていきました。
――劉さんは1人でかなりのテキストを書いたとのことですが、以前ゲームのシナリオなどを手掛けていたのでしょうか?
劉哲魁氏: 実は中学くらいから小説を書いています。投稿小説サイトでは台北がゾンビのパンデミックに見舞われ、その混乱のまっただ中に取り残される4人の兵士のドラマを描き好評でした。この小説はさらの街で取り残されている人々や、パンデミックを引き起こした張本人達のストーリーも描きました。こういった小説を書いた経験からゲームのテキストを書きました。
――小説を書いていると、ある場面が書けたとき、小説の方向性が決まったり、書き手として特に印象的なシーンが生まれたりします。劉さんにとって「落桜散華抄」でこのシーンが書けて良かった、と特に思っているシーンはありますか?
劉哲魁氏: あります。お嬢様の千櫻院麗子のシーンで、主人公を連れてパーティに行くのですが、主人公は身分の違いを指摘され、他の大人達からバカにされ悪口を言われてしまいます。その時麗子が主人公のために他の大人達をしかるというシーンを書くことができたことで、私自身、麗子の意外な一面に気付かされました。
麗子が主人公のために他の大人達に逆らうというシーンはそれまで1度もありません。ユーザー達もこのシーンは強く印象に残ったようで、評価が高いエピソードです。他にも椎名悠理という女の子はスポーツマンなのですが、彼女は1つの試合をきっかけに性格が全く変わってしまう。ここも書きごたえがありました。
悠里は真面目で明るい女の子だったのですが、以降は消極的でネガティブになってしまう。プレーヤーは最初、何故彼女が変わってしまったかがわかりません。彼女はどうしてそうなってしまったかを解き明かすために、シナリオを進めていくのです。どうして彼女はスポーツ少女になったかのようなエピソードも描かれます。
――女の子の意外性は後から劉さんが考えて加えていった部分ですよね。過去の因縁なども劉さんが取り組むまで設定されてなかった。これはやはりものすごい作業量ですね。
劉哲魁氏: 一番の問題は時間でした。9月までに完成させなくてはいけない状況の中、他の作業を見ながらシナリオを執筆しなくてはいけない。休日も返上しひたすらテキストを書いていました。
――「落桜散華抄」はシナリオはもちろん、インターフェイスやガチャのアイディアなども完成度が高い印象を受けました。こういった部分まで見ていくのは本当に大変ですよね。
劉哲魁氏: ……実はシナリオにかかり切りになっていた部分がありまして、他のスタッフにかなり助けられています。「落桜散華抄」は本当にスタッフ一同が頑張ってクオリティの高いものを作り上げたという実感があります。
――今後も劉さんは「落桜散華抄」のメインシナリオを執筆するのでしょうか?
劉哲魁氏: いえ、今後はスタッフ達に引き継ぎます。コンセプトやストーリーラインは提示していきますが、実際のテキストはスタッフにまかせることになりました。実は、私自身は次のタイトルを考えています。今は社内に提案中なので秘密です。
――日本でのパブリッシャーはまだ未公開ですが、デベロッパーとして、日本のユーザーへのメッセージを。
劉哲魁氏: このゲームは「ギャルゲー」です。台湾人が作ったギャルゲーである、というところに注目して欲しいです。台湾人でもここまでできるんだ、ということを見て欲しいですし、ぜひ感想を下さい。とても楽しみにしています。
――ありがとうございました。
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※画面は台湾・香港版のものです