「ヒットマン アブソリューション」プレビュー&インタビュー

狙撃、誘導、毒殺……自由度の高い暗殺の実現


6月5日~7日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center



 スクウェア・エニックスブースで最も人気を得ていたのが、「ヒットマン アブソリューション(HITMAN ABSOLUTION))」だろう。プレイステーション 3/Xbox 360/Windows用ステルスアクションで、日本では2012年発売予定で、価格は未定だ。

 E3では「ヒットマン アブソリューション」は1つのステージをプレイアブルで出展、「ヒットマンスナイパーチャレンジ」というミニゲームを出展していたほか、シアターで別のミッションを紹介していた。加えてクローズドブースでより詳しくプレイアブルバージョンの解説を受けることができた上に、開発元のIO-interactiveで「ヒットマン アブソリューション」のゲームディレクターを務めるTore Blystad氏にインタビューを行なうことができた。



■ いくつものアプローチができるミッション、ミニゲームなど様々な要素を出展

試遊台は常に人気だった
多くの人がいるチャイナタウンで暗殺を実行する気になる
海外では予約特典となっている「ヒットマン スナイパーチャレンジ」。日本での展開も気になる

 「ヒットマン」シリーズの面白さは、「目的に対する無数のアプローチが用意されているところ」にある。今回プレイアブルで出展されていた「キング オブ チャイナタウン」というミッションでは、「ヒットマン」シリーズの面白さをたっぷり感じることができた。

 目標はチャイナタウンの中央の広間にいる権力者を暗殺すること。チャイナタウンは人でごった返している上に、道をふさぐように屋台が設置され、極めて雑然としている。ターゲットは警察官に守られ、中央でなにやら演説を行なっている。主人公エージェント47は、人混みをかき分けながらターゲットに近付く。

 ここでいきなり権力者に襲いかかれば、倒すことはできるものの、警察官に蜂の巣にされてしまう。彼はいつも警察官と移動していて、引き離すのは困難だ。このため周りを詳しく調べていく必要がある。出展バージョンでは驚くほど「ヒント」が散りばめられていた。様々なオブジェクトに近付くと、使い方や応用の仕方が英文で表示されるそのものずばりの描き方はされていないが、この他にも試遊台には「チェックポイント」が表示され、様々なアプローチが提示されていた。

 筆者も実際にプレイしてみた。歩いて行くと、高台に警察官の詰め所がある。階段の近くに電気ボックスがあり、これを故障させると、警察官が修理のために走ってきて、すれ違うことで奥に進むことができた。階段の上には小部屋があり、そこにはスナイパーライフルが置かれていた。これでターゲットを狙撃することができたのだが、すぐ狙撃場所がばれてしまった。逃走経路もうまく確保しなくてはいけなかったのだ。

 デモプレイでは、いくつかの「成功例」を見ることができた。近くにはターゲットご自慢の車が止まっており、さらにその近くには遠隔操作型の爆弾が置かれている。近くには警備員が1人しかいないので、始末してしまえば、簡単に爆弾を設置できる。

 後はここにターゲットを呼ぶだけなのだが、わざと車の盗難装置を作動させるのだ。ターゲットは車が発するブザーに血相を変えて走ってくる。47は素早く現場から離れ、おもむろに起爆装置を動かす。大爆発に慌てふためく民衆達を背に悠然と去って行く47。

 もう1つの方法は「ドラッグディーラー」になりすますこと。実は警察官のいる階段の上の小部屋には、場違いなチンピラ風の男がいる。彼は実はターゲットがドラッグを購入しているディーラーなのだ。彼が1人でいるところを見計らい、始末して服を奪うと、周りの人間達は47をドラックディーラーとして認識する。特にターゲットは近づくと面白いほど簡単に47を歓迎し、ドラックを買うためそのまま47が進む方向についていってしまうのだ。あまり関係のないところをうろうろしていると彼は離れていってしまうそうだが、後は人気の無いところに彼を誘導し、暗殺してしまえばおしまいである。

 「ヒットマン アブソリューション」の面白さは、一見平和な日常風景の中に、47という“殺人マシーン”が潜んでいるところにある。47がその牙を剥かない限り、日常は壊れない。影から突然でて、暗殺を実行し、そしてまた闇に紛れるという、ドキドキする緊張感をたっぷり体験することができるのだ。

 シアターでは、また違った暗殺シーンを見ることができた。47がたどり着いたのは道路はボロボロで、大きな車の解体工場の前にはひなびたマーケットしかないような田舎町だ。47とすれ違ったのは時代遅れのロカビリー風の姿をした若者達。彼等5人がターゲットとなるのだ。

 このミッションでのデモプレイはターゲットを矢継ぎ早に殺していくという展開だった。マーケットの客からの視線をうまく外して従業員室にいる男を殺害、車の修理工の制服を手に入れてから工場内でターゲットを殺し、さらにガソリンタンクを引火させ、大混乱に陥る工場から脱出する。流れるように次々と目標を消していく47は淡々としているだけに恐ろしかった。

 今回、2つのデモを通じて分かったのは本作の大きな目的の1つが、「よりうまい方法への模索」であるということだ。効率よく、スタイリッシュに暗殺を行なうためには、敵の配置や行動をきちんと把握しておき、まるで未来に起こることを完全に知っているかのように行動しなくてはならない。

 今作ではステージごとに「点数評価」がされる。人に気がつかれない、派手な倒し方をした、などいくつものチェックポイントで点数が決まり、スコアが表示される。プレーヤーはより高い点数を目指して47の「殺しのアプローチ」を試行錯誤していくことができる。このスコアはさらにネットを通じて世界中のプレーヤーとランキングで競うことができる。「世界一の暗殺者」はどんなプレイをするのか、ぜひ見てみたい。

チャイナタウンでの暗殺。試遊台にもヒントを書いていたが、いきなり攻撃して蜂の巣になってしまう人も多かった
こちらはシアターのミッションのスクリーンショット。複数のターゲットを倒す




■ 暗殺の評価を世界中のプレーヤーと競争。新しく、より深い「ヒットマン」の楽しみ方

IO-interactiveで「ヒットマン アブソリューション」のゲームディレクターを務めるTore Blystad氏
「ヒットマン スナイパーチャレンジ」には多くの“小ネタ”がしこんであるという

 デモプレイの後、「ヒットマン アブソリューション」のゲームディレクターを務めるTore Blystad氏にインタビューを行なった、Blystad氏によれば現在本作は北米での発売を2012年11月20日に設定し作業を進めており、現在は順調だという。現在はバグフィックスやバランス調整で、更なるブラッシュアップを行なっているという。

 今回出展したチャイナタウンもこれまでのデモなどで出てきたシカゴの近くだ。「ヒットマン」シリーズは世界中を飛び回る作品も多いが、今作はそういった世界中を飛び回る形ではなく、シカゴ周辺で物語は展開する。今作は「世界中が舞台になる」ということよりも、各ステージに明確な個性を持たせ、何度でもステージを遊んでみたくなるような楽しさを意識してデザインされているとのことだ。

 例えば今回の「キング オブ チャイナタウン」に関しては、ユニークな殺し方も用意されている。たくさんの屋台の1つに「フグ」を売っている店があり、この毒をターゲットの食事に混ぜることができるのだ。ターゲットの行動は多彩で、演説したり、ぶらぶらと歩き回ったり、そして屋台で食事をしたり、用を足したりまでする。

 NPCの行動は厳密にタイムテーブルで決められているわけではなく、AIによって動く。時にはじっくり行動を観察することで、新たな「殺しの方法」が見えてくるという。彼等の行動は環境に左右することもあり、トリガーとなる方法を見つけるのも攻略法の1つだ。

 一方、今作は“ストーリー性”を重視しており、全てのステージの目的が「暗殺」という目的のみでステージは構成されているわけではない。これまでのデモも、図書館で警察からの脱出だったり、孤児院での情報収集など、これまでは積極的に暗殺だけでない目標があることをアピールしてきた部分もあるという。もちろん、さまざまな目標を達成するために行く手を邪魔するものたちの暗殺が必要となってくる。

 「よりスマートな暗殺」を目指すのは、本作の大きな目標だ。今回、“高評価”を目指すためにスコアを設け、さらに世界中のプレーヤーと競えるようにしたのは、「ヒットマン」シリーズのファンの多くが持つ、「自分が一番の暗殺者だ」という想いをより刺激するためのものだ。今回のランキングは友人と競うことはもちろん、国ごとに、そして世界中のプレーヤーと腕が競える。果てしない「暗殺者の道」を提示することで、やり込むプレーヤーの意識を刺激していきたいという。しかし、だからこそスコアの基準は難しく、これからの課題だ。

 スコアには「ユニーク点」といった要素も入れていくのか? という質問にBlystad氏は「まだ開発中のため、現在はアイディアを練っている」と応えた。欧米では予約特典として用意されている「ヒットマン スナイパーチャレンジ」では、実はたくさんの隠し要素があり、本編で出てくる奇妙な格好をしたキャラクターがいたり、サンドバッグを叩いてる男のサンドバックを撃ち抜いて邪魔するなど、ユニークな要素が入っているという。これらは本編のためのテストも兼ねており、ユーザーの反応が開発の方向性に影響を与えていくかもしれないとのことだ。

 今回の開発では、大きなチャレンジをいくつも行なっている。ゲームエンジンを1から作り出すというのが最大のチャレンジであり、さらに優秀なAIを作り出すのも大きな挑戦だった。「より自然な世界」を目指して世界を構築している。そして現在直面している難関が「多くの人に楽しんでもらうためのバランス」である。

 本作には大きく分けて2種、細かくは5種類もの難易度が選択できるため、それぞれの調整に時間をかけているとのこと。そしてスコアの評価もまた大きな課題だという。スコアに関しては、世界のファンが交流できる要素として、開発も大きな期待を寄せているとのことだ。

 「欧米で評価をされていた『ヒットマン』シリーズですが、日本の方にも興味を持ってもらって、とても嬉しく感じています。欧米のファン達と同じように本作の“面白さ”を楽しんでいただければ、と願っています」。最後にBlystad氏は日本のファンに向かってこう語りかけた。
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※画面は開発中のものです

(2012年 6月 10日)

[Reported by 勝田哲也]