E3 2011レポート

PS3/Xbox 360「HITMAN ABSOLUTION」プレビュー&インタビュー
禿頭の暗殺者復活! ストーリー性と自由度を高いレベルで実現


6月7日~9日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center



 ステルス重視と自由度の高いゲーム性で人気を博し、映画化もされた「HITMAN(ヒットマン)」シリーズの最新作「HITMAN ABSOLUTION」がE3で初公開された。欧米ではPS3およびXbox 360向けに2012年の発売を予定し、合わせて時期未定ながら日本での発売も決定した。

 今回のE3ではSQUARE ENIXで、「HITMAN ABSOLUTION」のゲームデザイナーを務めるIO INTERACTIVEのTore Blystad氏によるデモプレイが行なわれ、インタビューをすることができた。世界観とストーリー性を見る人に印象づけるため、デモプレイではBlystad氏は説明を極力抑え、インタビューで解説を行なうというユニークな形となった。



■ 追い立てられる暗殺者。緊張感あふれる逃亡劇

廃棄された図書館からの脱出。周りは警官だらけだ
ヘリに追われる。ヘリのローターの風や攻撃で物が崩れる

 「HITMAN ABSOLUTION」はこれまでのシリーズと同じ「エージェント47(フォーティーセブン)」と呼ばれる伝説の殺し屋が主人公だ。今回のデモの舞台は夜のシカゴ。Blystad氏は最初に、「暗殺者であり、獲物を狩る立場の47が、今回のシチュエーションでは追われる立場になります」と語り、デモプレイをスタートさせた。

 ゲームをスタートさせると、突然窓を破って47が現われる。場所は廃棄された図書館で、時刻は深夜だ。47はすでに警官隊に包囲されているという危険な状況に立たされている。警官隊は闇の中をライトを片手に47の姿を探している。47はライトの光をさけ、障害物に身を隠しながら進んで行かなくてはならない。

 47の方へ、警官が向かってくる。ここで画面が切り替わる。周りの障害物が半透明になり、障害物の向こうにいる警官の姿が赤い輪郭となって浮かび上がる。そしてこちらに向かってくる警官の歩く線が炎の線となって走っているのが見える。この視点は今作で登場する47の特殊能力「直感」だ。

 特殊な力を持つ47は、周りの人間を目に見えずとも正確に察知し、他人の行動を先読みできるのだ。この能力で、どの位置まで警官が歩き停止するかがわかり、その停止位置から見えない場所に素早く隠れることで警官をやり過ごす。

 47が部屋を進んでいくと、隣の広間が明るくなる。警官隊が図書館の照明を復旧させたのだ、しかし、ブレーカーの不調で、すぐに再び電気が切れてしまう。文句を言いながら、ブレーカーを直す1人の警官。このやりとりでブレーカーの位置を知った47は、ブレーカーを破壊し広間を暗いままにすることに成功する。これにより、広間を進めるようになった。

 ここから47は、他の人たちから離れた警官を1人1人倒していく。拾った電気コードで首を絞めたり、後ろからしがみつき首を折ったり、様々な方法で警官を暗殺していく。そして出口付近1人の警官を人質に取り、図書館からの脱出に成功する。

 しかし警官はしつこかった。警官はヘリで47を追う。47は建物の屋根づたいに逃げるが、ヘリは執拗に追いかけてくる。途中、ヘリのローターの風で物が崩れたりする。とうとう1カ所に追いつめられるが、様子を見に来た警官を倒し、制服を奪い、警官に変装してヘリをまく。

 ヘリはまいたものの、47を追いつめるために警官隊は付近の建物をしらみつぶしに探している。47は警官姿で彼らとすれ違うが、距離が離れていれば気づかれない。しかしうっかり血かずいてしまうと露骨に怪しまれる。47は帽子を直すふりをして、顔を背けてやり過ごす。

 さらに1人の警官が雑談しようと話しかけてきたとき、47は警官隊への差し入れであるドーナツを食べるふりをして切り抜けた。そしてそのまま何気なく歩きながら、大量に人がいる雑踏に消えていったのだった……。

 最後に「ごらんになっていただいた部分はほんの1部であり、1つのやり方にすぎません。本作は選択が大きな意味を持つゲームです。この作品は2012年に発売予定です」とBlystad氏は語った。


47は伝説的な暗殺者だ。躊躇なく、静かに相手を倒す



■ 生の人間に近い反応を目指したAIと、ストーリー・演出を盛り込んだレベルデザイン

ゲームデザイナーを務めるIO INTERACTIVEのTore Blystad氏
警官隊から逃げるために乗ったエレベーターで同乗した男。イベント的に何があるわけでもないのだが、強く印象に残る

 インタビューでは最初にBlystad氏の経歴を聞いた。Blystad氏は2004年からIO INTERACTIVEで「HITMAN BLOOD MONEY」、「HITMN: CONTRACTS」を手掛けた。その前はMMORPGの「Anarchy Online」を開発していた。スーパーファミコンや、メガドライブのゲーム開発の経験もあるという。

 「HITMAN BLOOD MONEY」、が発売されたのは2006年で、シリーズとしてはかなり時間が空いた印象がある。Blystad氏は「技術的なところで開発に難航した。シリーズが求めるようになっていった自由度、ゲーム性、レベルデザインを実現させるための基礎技術を固めていた」と答えた。

 一方で、「変えないためにどうするか」というところも難しかったという。「HITMAN」はファンの多い作品であり、大胆な変化は歓迎されない。そのプレッシャーは大きい。しかし「間口を広げよう」という想いは持っていた。幅広いユーザーに楽しめ、自由度のより高い、その選択の大きさに気づかせるゲーム性を目指したという。

 ストーリーにも力を入れている。これまでのシリーズではストーリー性は高くなかった。今作では、様々な細かいシーンを連続させストーリー性に深みを与え、レベルデザインと展開するシーン、ストーリーを緊密にしている。またこれまでの「HITMAN」は力任せに暗殺を成し遂げる部分もあったが、もっとプロの暗殺者として、スマートに振る舞えるようにしたとのことだ。

 「演出が強化されている一方で、広い空間を自由に動き回れるレベルデザインでなくなった」のではないか、という質問をしたところ、Blystad氏はにやりと笑い、「それは違います」と答えた。今回のデモプレイでは、あえて隠密行動を多くしたが、敵を倒しまって進むこともできる。

 そうすると彼らに関連したイベントが起きない事になる。例えば、プレーヤーにブレーカーを知らせる停電のイベントは、先に関連した人物を倒してしまうヒントが提示されなくなってしまう。こうなるとゲームの展開そのものが変わってくる。今回のデモプレイはすんなりとストーリーが進んでいるように見えるが、それはプレイの結果にすぎず、実際は様々なルートが用意されており、自由度は健在だという。

 直感システムは難易度で使用回数が異なるとのこと。敵の動きを察知するだけでなく、進める場所を見つけたり、人混みに紛れ込むのにも使える。今回の使いかたは、ほんの1例だという。また、昔の作品では1人が敵を感知すると“魔法のように”他の人に情報が伝播したが、「HITMAN ABSOLUTION」では、うまく誘導すれば情報の拡散を防げる。1人1人おびき寄せることも可能だ。

 「HITMAN」シリーズはユーモアを感じさせる要素も毎回盛り込まれているが、今回は変装したときに相手をごまかすギミックに面白い要素を入れている。警官といえばドーナツということで、警官の姿をしているときは、ドーナツにかぶりつけば、ほかの人に近付かれても緊急回避できる、トラックの運転手に変装したときは、タイヤだとあちこちにあり便利すぎたため、「水着の女の子のポスター」にしたという。

 今回最も力を入れた開発がやはりキャラクターのAIだ。敵キャラクターは47の姿を見かけたり、痕跡を見つけると、様々な反応をするのだが、1人で追いかけてきたり、部下に働かせるなど、より生の人間に近い反応を目指したという。また、勝手に持ち場を離れたりとプレーヤーを誘導するような動きをイベントとして組み込んでいる。状況により様々な反応を見せるAIとイベントを組み合わせて、緊張感を持たせるバランスづくりに力を入れているという。

 自由度を持たせたレベルデザインも苦労したとBlystad氏は語った。どこでどんなことをさせるか。プレーヤーの行動を考えて、NPCやオブジェクトを配置している。「レベルデザインは、細かく考えて行なっていった。スケッチのアイデアがすぐレベルデザインに反映できる仕組みを取り入れたため、積極的にアイデアが盛り込めた。この手法の実現も私達のチャレンジだった。ファンには、是非繰り返しプレイして欲しい。繰り返しプレイすることで、より深く楽しさがわかってもらえると思える。また、シリーズをプレイしている人にも楽しい要素を入れています。こちらはぜひ見つけて欲しい」と、Blystad氏は語った。

 最後にBlystad氏は日本のユーザーへのメッセージとして、「ヨーロッパで人気が高い『HITMAN』ですが、日本の皆さんも是非遊んでみてください。ゲーマーにも初心者にも楽しんでもらえると思います」と語った。


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(2011年 6月 11日)

[Reported by 勝田哲也]