Taipei Game Show 2012レポート

【Taipei Game Show 2012特別編】台湾3大サブカルイベントの残り2つを大紹介!
鉄拳原田氏も乱入した同人即売会「Fancy Frontier」と漫画の祭典「アニメテーマ館」


【Fancy Frontier】
2月4日~5日開催
会場:国立台湾大学総合体育館
入場料:200元(カタログ代込み)

【Taipei International Book Exhibition 2012】
2月1日~6日開催
会場:台北世界貿易中心
入場料:180元(1日券100元)


 旧正月休暇明けの台北では、例年3つの大きなエンターテイメント系イベントが開催される。1つは連日レポートをお伝えしてきた「Taipei Game Show」、もう1つは台湾最大の同人誌即売会「Fancy Frontier」、そして最後が「Taipei International Book Exhibition 2012」の一部として開催される「アニメテーマ館」だ。

 これは日本で言うと、東京ゲームショウとコミックマーケットと、東京国際アニメフェアが同時期に開催されているようなもの。台湾のオタクたちにとっては1年の中でも最も“本気を出す季節”というわけだ。

 この3つのイベントに共通しているのが、日本のコンテンツが主役ということだ。台湾の人たちが日本の文化を心から楽しんでいるのを、どのイベントでも感じることができる。だがそのは反面、あまりにも日本の文化が強すぎることで、台湾独自のエンターテイメント分が生まれにくいという状況を生み出していた。しかし、今年はその傾向に少し変化がみられるようになってきた。




■ 「Fancy Frontier 19」では初音ミク関連のコンテンツが大ブーム

台湾人にとってのオタクの聖地、国立台湾大学総合体育館

 「Fancy Frontier 19」は月刊FRONTIERと台湾動漫画推進協会が主催する台湾最大の同人誌即売会。例年、国立台湾大学の総合体育館を会場にしており、今年は2月4日、5日に開催された。台湾では「FF」と言えば、このイベントを意味する。参加者は両日で約6万人。Taipei Game Show 2012は現地のメディアが初日の入場者数を約3万人と報じていたので、ゲームショウに引けを取らない規模のイベントだといえる。

 同人誌即売会という名前だが、日本の声優や漫画家を招いてのステージイベントやコスプレ、痛車の展示、企業のグッズ販売とサブカルチャーが一挙に終結する場所になっている。今年は声優の桑島法子さんや藤原啓治さんらがゲストに招かれ、ステージを盛り上げた。

 同人誌即売会に参加しているサークルは約1,000サークル。開場するとすぐに場内は人でいっぱいになり、動くことすらままならなくなる。同人誌は平均的な価格帯が200台湾ドル程度で、これは日本円だと600円弱と日本よりも少し割高だ。コピー誌はほとんど見かけず、フルカラーや上製本、箱入りや特殊な判型など高価だが、かなり凝ったものもある。

 人気のジャンルは男性向けが初音ミクから生まれた「ブラック★ロックシューター」やライトノベルが原作の「僕は友達が少ない」、日本でも依然人気が高い「東方プロジェクト」、台北にカフェが登場した「魔法少女まどか☆マギカ」など、ほとんどが日本初のコンテンツだ。

 これが女性向けになると少し情勢が変わる。もちろん「ヘタリア」や「NARUTO -ナルト-」など日本のコンテンツも大人気だが、台湾の伝統的な人形劇から進化した「-PILI- 霹靂布袋劇」や台湾産のライトノベルなどのサークルがかなり目につく。オリジナル作品やアクセサリー系のグッズを販売しているサークルも多かった。

 いまは日本産のFacebookアプリ「アンライト~Unlight~」が大人気なのだそうだ。このゲームは日本ではYahoo! Mobageとハンゲームから日本語版がサービスされている。台湾ではブックフェアでも巨大なポスターが貼りだされ、大々的にグッズが売られているほどの人気だが、日本ではそこまでのムーブメントは起こっていない。これまでの日本の流行をそのままなぞるという形ではなく、自分たちで面白いものを見つけて盛り上がるという機運が育ってきていると感じた。


サークルスペースは、開会すると同時に人でいっぱいになるグッズを売るサークルも多い。台湾ではアルパカが流行っているのか、街でも即売会でもよく見かけるバンプレストの企業ブースでは、「魔法少女まどか☆マギカ」のくじ引きを行なっていた
月刊コミックガムに連載中の「Battleship Girl」。原作者、作画とも台湾人で、台湾のゲームメーカーがFacebookアプリ版を製作することが決まっている日本のオンラインゲーム開発会社テックウェイが開発した「アンライト~Unlight~」。Facebookでは英語版、中国語版がサービスされている「テイルズ」シリーズのオンリーイベントのチラシ。他にも映画や小説などさまざまなオンリーイベントの告知チラシが置いてあった
会場には台湾や日本のアミューズメント系専門学校もブースを出して、学生を募っていた台湾のゲーム専門学校「巨匠電脳」は初音ミクを前面に押し出して、通行人の興味を引いていた日本の美少女系ゲームメーカーOVERDRIVEのブースには、その場で描いた色紙が飾られていた
体育館の観覧席は、参加者の休憩所として使われている「THE IDOLM@STER」の痛車。今年は、車の出展がやや少なめだった天気が良かったため、会場前の広場はコスプレイヤーとカメラマンで埋め尽くされた

 コスプレでは、ニコニコ動画に発表された初音ミクのPVに登場するキャラクターが非常に多かった。また「戦国BASARA」や「無双」系のコスプレも多く、このジャンルの台湾での人気の高さを感じられた。

 しかしここでも「アリス マッドネス リターンズ」や「World of Warcraft」、「Minecraft」といった洋ゲー、「Lineage」をはじめとしたオンラインゲームのコスプレもかなり気合の入ったものを見かけた。今回一番驚かされたのは、ラジコンで動くR2D2を連れた「スター・ウォーズ」のコスプレだろう。子どもが大喜びでR2D2の周りを走り回っていた。

【コスプレ】
舞台衣装のように豪華な「-Pili- 霹靂布袋劇」「アリス マッドネス リターンズ」は2人見かけたクールな雰囲気が人気の「アンライト~Unlight~」
和風のPVが美しい初音ミクのオリジナルソング「千本桜」初音ミクとGUMIが歌う「マトリョシカ」は世界中で人気がある「ブラック★ロックシューター」は人気があり過ぎて撮影もひと苦労
武器まで細かく作られた「Lineage」「東方プロジェクト」の集合写真自宅警備員の姿も……
セガのアーケードゲーム「BORDER BREAK」「Minecraft」のモンスター「クリーパー」自走する「スター・ウォーズ」のR2D2


鉄拳番長氏(左)と「鉄拳」シリーズプロデューサーの原田勝弘氏(右)

 会期2日目の2月5日には、「鉄拳」シリーズのプロデューサー原田勝弘氏が、台湾で1月に稼働が始まったばかりのアーケードゲーム「鉄拳TAG Tournament 2」(バンダイナムコゲームス)のプロモーションに飛び入り参加。会場で行なわれていたニコニコ生放送とステージイベントにゲスト出演した。

 「鉄拳TAG Tournament 2」は台湾の総代理店を務める高雄のパブリッシャー美嘉網路技科(Mega Biotech & Electronics)のブースに出展されていた。ブースには対戦用の筐体が2台設置され、ネット番組などで「鉄拳」シリーズのプロモーションをしている鉄拳番長氏が挑戦者と対戦をしたり、初心者講座を行なったりした。鉄拳番長氏に対戦で勝つと、バトルを記録するためのICカードにゲーム内の限定アイテムがプレゼントされた。

 2月3日には高雄のゲームセンターでも同じイベントが行なわれたそうだ。台北はゲームセンターの出店規制が厳しく、「鉄拳TAG Tournament 2」が稼働しているゲームセンターでイベントを開催するほどのスペースが確保できないことから、「Fancy Frontier」での開催となったそうだ。

 原田氏はニコニコ生放送とステージイベントに出演。ニコニコ生放送では、仲のいいカプコン小野氏がデジカメをなくした裏話や、誘われていった台湾のメイド喫茶でファンに目撃されてメイド喫茶にいったことを「たぶんツイートされました」とぶっちゃけ話で盛り上がった。

 ステージでは、40キャラ以上が使えることや、台湾では初めてオンラインに対応した「鉄拳」で全世界の人と対戦成績を競えることなどをアピール。ステージ上から用意したステッカーなどを投げてプレゼントした。また、東日本大震災の時に台湾から多額の義捐金が届いたことに対する感謝を伝え、「これからも日本と仲良くしてください」と挨拶した。


【「鉄拳TAG Tournament 2」イベント】
会場からずっと放送されていた「ニコニコ生放送」に飛び入りゲストとして登場。日台の視聴者のコメントは会場でも見ることができた
ブースで行なわれた鉄拳番長氏の初心者講座。コンボの入れ方や、キャラクターチェンジのコツなどをわかりやすく解説した
ステージイベントでは、地震の義捐金に感謝のメッセージを返し、会場からは拍手が起こった。ステージ後にはサイン会に大勢のファンが並んでいた




■ 「アニメテーマ館」では日本の漫画と台湾のライトノベルが人気

「アニメテーマ館」の様子。初日は歩くスペースもないほどに人がいて、ブースに近づくことすら難しかった
歩いて5分ほどの場所で行なわれている一般書の見本市。同じイベントとは思えないほどに落ち着いている

 もう1つのビッグイベントは台湾ブックフェア財団が主催する「Taipei International Book Exhibition 2012」だ。今回で20回目を迎える大規模な本の見本市で、会場は去年までゲームショウの会場だった台北世界貿易中心を全館使用している。2月1日から6日まで開催され、世界60カ国から約700の出版社が参加する。開幕式には台湾の馬英九総統らも出席し、初日には約66,000人が来場した。

 上記のように、一見サブカルチャーには関係のなさそうな堅めの見本市なのだが、他の会場から少し離れた場所にある、2号館「アニメテーマ館」だけは趣が違う。ここには日本のアニメやライトノベル、漫画など43のブースが出展して、整然とした他の展示館とは全く趣が違う濃厚な空間を作っているのだ。

 ゲームやグッズも販売されているが、メインとなるのは漫画とライトノベル。日本の出版社は、台湾に現地法人を持っている台湾国際角川書店と台湾東販など一部だけで、ほとんどは代理店契約を結んで日本の書籍を販売している台湾の出版社だ。漫画はほぼ99%日本産といってもいいくらいだが、対照的にライトノベルは台湾作家の作品が大量に並んでいる。

 台湾では“軽小説”と呼ばれるライトノベルは台湾産のサブカルチャーとしてぐんぐん数を増やしている。台湾にはもともと手のひらサイズの子供用小説があったが、イラストがぐっと現代的になり、ボリュームもサイズも大きくなった。ほとんどの小説は女性向けの恋愛小説。イラストは表紙だけで、中は文字だけというものが多いが、人気作品はカラーのキャラクター設定ページがついていたりと豪華になってきている。

 このブックフェアに合わせて、各社とも限定品や新刊を出してくる。日本のライセンスを使った台湾限定のグッズを手に入れるために、徹夜で並ぶ参加者もいるのだそうだ。漫画も小説も日本円で600円前後と、台湾の物価に照らすと決して安くはないのだがそれでも飛ぶように売れていき、両手に本を抱えた人たちが会場内の宅配便受付に並んでいた。

【アニメテーマ館の様子】
台湾の名所101をはさんで離れた場所に建っている2号館ジャンプ系の代理店でもある東立出版ずっと行列が途切れない、一番人気の台湾国際角川
アニメイトはアニメグッズや日本の雑誌を販売萌え系の書籍や日本のコスプレ誌を扱う銘顕文化(Min-Hsien Cultural Enterprise)イカ娘や「HobbyJAPAN」、「ファミ通」を発行している青文出版
ずらりと並ぶ日本の作品。かなりマニアックなものまで揃っている代理店契約の関係で、日本では違う出版社のものも一緒に並んでいる耽美系の作品を扱う威向文化にも「アンライト~Unlight~」のポスターが貼ってあった
ライトノベルの中でも最も人気がある作品の1つ「特殊伝説」イベント用のグッズも大量に販売されている。新刊とグッズが入ったセット袋も人気だったライトノベルは本当に驚くほどの種類がある

 会場内に2つあるステージでは、連日、日台の人気作家をゲストにしたステージイベントが行なわれた。日本からは、「キャンディ・キャンディ」の作画、いがらしゆみこさんや、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の作者、伏見つかささん、TVアニメ「NARUTO -ナルト-」で「うちはサスケ」を演じる声優の杉山紀彰さんらが訪台して、サイン会を行なった。また、会場外で痛車大会が、4日にはステージでコスプレ大会も行なわれた。

 ブックフェアは6日間の長丁場だが、3日と4日は晴れていれば夜の22時まで、最終日は20時までの開催と日本では考えられないほど遅くまで開場している。そのため夜の7時~8時ごろでもまだ外にブースに入るための行列が伸びており、イベントにかける台湾の人たちの熱気を感じた。

【即売コーナー】
買い物を終えた人は、たいていこんな姿になっている5日に開催されたコスプレ大会。パフォーマンスとポーズで競った出番を待つ人たち。日本のアニソンを日本語で熱唱する人も
東立出版の台湾人作家コーナー。日本人作家のコーナーに比べると非常に小さいグッズ入りの福袋は、早い者勝ちの激戦商品台湾の作家育成事業の一環として原画展が行なわれていた
台湾国産漫画を集めたアンソロジーも定期的に発行されている会場の入り口横で行なわれていた痛車大会。自慢の痛バイクがずらりと並んでいた初音ミクバイク。ここでもミクは大人気だった
国際館のタイブースに展示してあった、タイの少年漫画雑誌タイの女性向けライトノベル。白髪好きは共通項らしい香港ブースにあった漫画。かなり素朴な雰囲気

(2012年 2月 7日)

[Reported by 石井聡]