IGDA日本、SIG-Indie第4回研究会「Xbox 360向けゲーム開発環境XNAにまつわるインディーズゲームシーン」を開催
XNAのゲーム開発上の問題点や、「ピアレビュー」などの課題について発表

10月10日開催

UDXマルチスペース(東京フードシアター5+1)



 国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)は、10月10日、秋葉原UDXオープンカレッジで、同人・インディーズゲーム部会(SIG-Indie)の第4回研究会「Xbox 360向けゲーム開発環境XNAにまつわるインディーズゲームシーン」を開催した。会場には長健太氏らゲーム開発者の他、マイクロソフトから徳留和人氏、鶴淵忠成氏が参加して、環境を提供している立場からゲストや来場者の質問に答えた。

 参加者は20代から40代の男性が多く、自身もインディーズゲームを制作しているという人や、プロのゲーム開発者、学生などが参加していた。会場はUDX内にあるレストランで、定員の120名はほぼ満席の状態だった。このレポートでは、発表会の詳細とその後行なわれたパネルディスカッションで話し合われた内容について紹介する。



■ XNAの開発者や、開発を志す人が現状や問題点を話し合う交流の場

 「XNA」はマイクロソフトがXbox 360で動くゲームを開発するために、インディーズ開発者向けに提供している開発環境とゲーム配信までのシステムを総称したもの。この環境はXbox 360とPC、そして日本未発売のPDA「Zune」上で動くゲームを作る事ができる。さらに作ったゲームを「Xbox Liveインディーズゲーム(XBLIG)」によって世界中に配信する事ができる。日本でも今年8月にサービスが始まった。アマチュアが自作のゲームを家庭用ゲーム機で、しかも世界中に発表できるという試みは今までにないもので、まだまだ発展途上ながら開発者たちの注目を集めている。

 研究会では、「XNA」を使ったゲーム開発に関する問題や、開発したゲームを配信をする上での問題点、実際に配信している作品の紹介など、「XNA」に関わる様々な取り組みや課題について発表が行なわれた。特に、配信をする前に開発者同士でお互いの作品を批評する「ピアレビュー」については、沢山の問題点が指摘されていた。研究会は2部構成で、前半が発表会、後半はゲストを交えてのパネルディスカッションというプログラムだった。どちらも堅苦しさはなく、終始笑いを交えた和やかな雰囲気で進められていた。研究会の終了後には、ゲストが参加者たちと交流をはかる懇親会が同じ会場で開かれた。

 第1部の発表会では「XNAの実情」と題して5つの発表が行なわれた。発表の題名と発表者は以下の通り。

    ・「XNAとはなにか? XNAうれしいところ、うれしくないところ」 (長健太)
    ・「マイクロソフトがXNAご説明します」 (徳留和人)
    ・「Xbox Live インディーズゲーム『ピアレビュー』攻略のためのXNAにおける開発のコツと特有の課題」 (XELF)
    ・「同人サークルから見たXbox Live インディーズゲームの実情」 (佐川直樹)
    ・「ゲームジャーナリストから見たXBLIG/注目作品ピックアップ」 (罰帝)

 以下に各発表の内容について簡単に紹介していく。



■ 「XNAとはなにか? XNAうれしいところ、うれしくないところ」について

発表者の長健太氏
プログラマーの立場から、XNAの利点と問題点を解説

 発表者の長健太氏はABA Gamesというインディーズレーベルで、自主制作のPCゲームを発表している。作っているのは主にポリゴンを駆使したシューティングゲーム。 中でも、倒した敵を自機にくっつけていくことで、最終的に敵ボスキャラより大きくなるシューティングゲーム「TUMIKI Fighters」は欧米でも評価が高い。長氏はプログラマーの立場から、「XNA」で開発をする際に留意している事などを発表した。

 長氏によると、「XNA」でXbox上で動くゲームを開発できるようになったことで盛り上がるかと思ったのだが、意外にも周囲は淡泊だったらしい。というのも日本では同人ゲーム、インディーズゲームと言えばPC上で動くものという認識がユーザーにも開発者にもあり、SDLやDirextXといった環境で充分満足しているという傾向があるからだ。とはいえ変化の兆しもある。今年のTGSでは、専門学校や大学が出していたブースに「XNA」で制作されたゲームが多数展示されていた。インディーズゲームを作っている人が、大挙して「XNA」という環境に飛びついている状況ではないけれど、少しずつ認知はされているというのが現状だと分析した。

 「XNA」では、「XNA Game Studio(XNA GS)」を使って、Visual StudioとC#でXbox 360向けのゲームを作る事ができる。開発したゲームは「Xbox Liveインディーズゲーム」というカテゴリの製品として世界に向けて配信する事ができる。Xbox 360という高性能なコンシューマーゲーム機とWindows PCのマルチプラットフォームで開発・展開ができること、世界を相手に評価を得られる事が何よりの利点だ。しかし、敷居の高さや、扱いづらいアーキテクチャ、マルチプラットフォームならではのコードの扱い方の煩わしさ、開発者同士でゲームを批評しあう「ピアレビュー」通過の困難さなど、少なくない問題点も存在している。

 ハード的な問題点としては、Xboxの特徴としてGPUに比べてCPUが非力なので、なるべくシェーダーを働かせる必要があるが、そのためにPCとXbox 360ではパフォーマンスを向上させるためシェーダーモデル周りのコードを共有化させることが困難になり、コードが煩雑になるという点を指摘。例として、同じプログラムで動くパーティクルのPCとXbox 360との表現方法の差を映像で紹介した。また、コンテンツパイプラインなど、多くの技術情報が英語で書かれているという語学上の困難さ、サンプルコードの少なさなど制作の壁となる点がある。

 さらに現状もっとも大きな問題は、開発者同士で作品を批評し、ここでOKが出なければ商品として配信する事ができない「ピアレビュー」というシステムが、大きな障壁になっているという話にも軽く触れた。総括としては、自分のライブラリを構築するなどしていけば、短時間でゲームを開発する事も可能で、開発環境としての「XNA」は悪くないが、それを商品として配信するまでのシステムに、より大きな課題があると話していた。



■ 「マイクロソフトがXNAご説明します」について

マイクロソフトの徳留和人氏
マイクロソフトの鶴淵忠成氏

 次は、「XNA」を提供しているマイクロソフト側からの発表が行なわれた。説明をしたのは、マイクロソフトホーム&エンターテイメント事業本部XNA Groupの徳留和人氏。徳留氏はマイクロソフトの窓口として、積極的にユーザーの前に顔を出し、「XNA」の普及に奔走している人物だ。徳留氏からは「Xbox Live インディーズゲーム」が「XNA」のために日本で行なってきた取り組みの歴史と、現在進んでいる新たな取り組みについてひもといた。

 もともと「XNA」は、2004年のGDCで初めて構想が発表された。2005年にはXbox 360が発売され、2006年には前身となる「XNA Game Studio Express 1.0」がリリースされた。この時には、プロフェッショナル用とアマチュア用という枠があったが、2007年にネットワークゲームにも対応した最新版「XNA Game Studio 2.0」がリリースされて、両者の区別はなくなった。2008年には先行して海外でのインディーズゲーム配信を開始。当初はコミュニティゲームと呼ばれていた作品は、全体で100万ダウンロードを越える盛況ぶりだった。呼び名がインディーズゲームに代わり、2009年にいよいよ日本でのサービスが開始された。現在は「XNA Game Studio 3.1」がサービスされている。

 上記のような経緯をたどって日本でも始まった「XNA」だが、現在は全世界で527本のゲームが配信され、うち402本(共に10月10日現在)を日本のXbox 360からダウンロードして遊ぶ事ができる。日本語でのサービスは開始から2カ月程度だが、既に32本が配信されている。この数は、予想よりもずっと多い数だったそうだ。対象プラットフォームは、Xbox 360、PCだが、マイクロソフトが出している携帯音楽端末Zune上でもプレイできる。クロスプラットフォームへのフィーチャーを強化していくのが今後の課題なのだそうだ。

 現在進行形で進んでいる取り組みとしては、北海道情報大学が英語の学習教材を「XNA」で制作した事例や、東京工業大学で進められている「XNA」での開発を教える授業など、主に教育現場で教材として「XNA」が使われている例を紹介した。大学だけでなく、専門学校でも小学生を対象とした知育用ゲームの作成に「XNA」を用いるなどの試みが行なわれている。

 徳留氏は、セッションの終盤で、現在「XNA」でインディーズゲームを開発している人へアドバイスを行なった。「ゲームの配信が決まった後は、出しっ放しにするのではなくオススメ度を上げる努力をしたりと、もっと自分のゲームを売り込んでいくべき。500本以上の中で、選んでもらうにはそういった努力をするのが1番の近道だ」と語った。

 さらに徳留氏はプロの作ったゲームと共に「Xbox Live Arcade」で販売したいと思うなら、マイクロソフトが行なっている「XNA Game Studio」の世界的なゲーム開発コンテスト「Dream-Build-Play (ドリームビルドプレイ)」に応募するといい。もしくは作ったゲームと英語の企画書を送って欲しいとの事だ。見所のあるゲームならば、ミーティングの時間を設けてアメリカに売り込んでくれるそうだ。ただし、少なくとも今年の「Dream-Build-Play」受賞作よりは面白い者を送ってくださいね、という条件つきだが。

 マイクロソフトでは、定期的に開発者が集まる「ラウンドテーブル」というイベントも開催している。徳留氏は今回の研究会や「ラウンドテーブル」のような場を通じて、日本の開発者コミュニティを活性化させていきたいと締めくくった。



■ 「Xbox Love インディーズゲーム『ピアレビュー』攻略のためのXNAにおける開発のコツと特有の課題」について

発表者のXELF氏

 今回、多くの発表者が異口同音に「ピアレビュー」を通過する事の大変さを語っていた。 XNAを使ってゲームを開発したゲームを「Xbox Liveインディーズゲーム」で配信するためには、配信する地域の「ピアレビュー」で承認を得る必要がある。「ピアレビュー」は開発者が他人のゲームを評価する場で、ここを通過できれば48時間以内に配信が始まる。だが、通らなかったゲームは差し戻され、その後1週間は再提出できない。審査の基準は、「XNA」の開発者フォーラムで常に話し合われていて、かなり細かい部分まで決まっている。この話し合いで決まった条件を満たさなければ、何度提出しても通過はおぼつかない。しかも話し合いは常時行なわれているので、最近は動画を再生するだけのものはNGになるなど、基準は常に変化する。

 XELF氏の発表では、インディーズゲームを開発している立場から、この「ピアレビュー」の問題点と、通過するために気をつけなければならない注意点を紹介した。

 「ピアレビュー」にはいくつか問題点があるが、その多くは「ピアレビュー」が同じ立場の開発者同士で行なう者であるからこそ生まれている弊害だ。例えば、レビューの基準は英語のフォーラムで話し合われるが、個人の基準にはばらつきがあるので、その時レビューをした人によって評価の基準が変わったりと曖昧な点がある。またまとめサイトのようなものがなく、最新の情報を見つけにくい事。日本人のレビュア―が不足している事。など、レビューの基準、人員の確保、情報の一覧性にそれぞれ課題がある。


XNAの特徴をスライドで紹介

「ピアレビュー」攻略のための注意点

●ガベージコレクション: ガベージが大量発生するコードを書くと、ゲームが遅くなってしまう事がある。必要なオブジェクトを生成しておいて使い回すオブジェクトプールが重要。

●マルチプラットフォーム: Windowsで開発を行なう場合にも、常にXbox 360実機での動作確認を怠らない。

●インターフェイス: 必ずXbox 360のゲームパッドに対応させる。パッドは4つまでつなげられるので、そのどれでも動くようにする。キーボード専用にはしない。

●セーフエリア: PCのモニターと家庭用のテレビでは画面を表示する方法が違うので、PCモニター上では見えていたものが、テレビ画面では見切れてしまう事がある。例えば格闘ゲームの体力表示など、見えなくなると不都合のある情報は、この範囲に収めておけば絶対に大丈夫という「セーフエリア」内に、納めなくてはならない。

●通信機能: 「XNA」ではサーバーストレージがないので、MMOを作ることはできないが、MOなら作成可能だ。オンライン機能を使ったランキング表示などは、工夫が必要。

●翻訳: 海外ユーザーが多いので、英語でも遊べるような環境を用意しておく。その際、フォーラムでの英語のやりとりが必要になったり、Xbox 360の言語設定に応じた、自動的な言語選択の処理なども考慮に入れておいた方がいい。

●表現: 各地域に同じタイトルを配信するなら、すべての地域でレビュアーがOKを出すような表現にとどめなくてはならない。一般的には欧米は性的な表現に、日本は残酷表現に対するチェックが厳しめ。

 以上のような部分に設計段階から留意する事で、通過率を高めることができるという。さら好ましいのは「プレイテスト」という「ピアレビュー」より一段階前に設定されたテストの場にゲームを出して、未知の問題点を発見してもらう事だ。「ピアレビュー」は1度差し戻されると1週間再提出ができないが、「プレイテスト」にはそういったペナルティはないので、「プレイテスト」の段階で十分なチェックを行なって、満を持して「ピアレビュー」に望むような計画性があったほうがいい。

 しかし、最大の難関「ピアレビュー」さえ通過できれば、販売時期の都合に左右されずに制作を進める事ができ、ネットを通じて全世界に自作のゲームを配信する事ができる「Xbox Liveインディーズゲーム」の魅力は大きい。オンライン機能を通じて、手軽にバグフィックスが可能だったり、Xbox 360のアバター描画機能をゲーム内で使えたりもする。現在ある課題を改善していくことで、優れたゲームが多く登場して来ることを期待したい、とXELF氏は語っていた。

問題点を残したままでは「ピアレビュー」突破は難しい
魅力は大きいが、課題も多い


■ 「同人サークルから見たXbox Live インディーズゲームの実情」について

発表者の佐川直樹氏

 コミックマーケットなどの同人誌即売会で自作のゲームを販売すると共に、同じゲームを「Xbox Live インディーズゲーム」でも配信している同人サークル「こびとスタジオ」の主宰、佐川直樹氏は、同人サークルという立場から見た「XNA」について多角的に発表を行なった。

 最初にアメリカとビジネスを行なう上で必要な税務上の手続きについて、実体験を交えながら、アメリカの納税者番号を取得する方法を説明。英語がしゃべれないならば、専門の税理士に任せるのが1番確実という結論だった。

 次に、日本と西欧の表現に関する基準の問題について、こちらも実体験を元に発表をした。佐川氏はノベルゲームなど4作品を世界に向けて配信しているが、その中の1作品に物言いがついた。「ピアレビュー」では問題なしとされたのに、ゲームが配信された後ヨーロッパのユーザーサポートに問い合わせが入り、結果、1度は配信されていたゲームだったにも関わらず画像を差し替える事になった。

 どこまでの表現が可能なのかという点について、各国の基準にはばらつきがあるが、インディーズのゲームはどこか1つの地域でNGが出るとその表現はダメだという事になり、結果的に表現の幅を狭めていってしまうのではないかと佐川氏は懸念している。文化の違いを埋めるのは事実上不可能に近いのだから、国別のローカルルールが必要。日本でも、現在はアマチュアが独自の基準で判断しているが、CEROの基準を公開してそれを指針にすべきではと提言した。

Xboxでの配信を考えるなら、税金問題は避けて通れない
左が修正前、右が指摘を受けて修正した画像


■ 「ゲームジャーナリストから見たXBLIG/注目作品ピックアップ」について

発表者の罰帝氏

 発表会の最後は、ゲームジャーナリストの罰帝氏が、日本未配信のゲームや、日本での注目作品などを挙げた。日本でダウンロードが可能な注目作品としては、画面と連動するBGMが心地よいパズルゲーム「PENTOMINON-ペントミノン-」や、間取り図とトイレ、キッチンを組み合わせるパズルゲーム「MADRISM」、某ゲームのスタッフが作ったレトロなテイストの2Dドッジボールゲーム「ダウンタウン 激凸ドッジボール」などを挙げた。

 配信方法の課題としては、「最新」の時期を越えると作品を探し辛くなる事から、配信日時などでソートできる機能が欲しい。PC上から「XNA CREATORS CLUB ONLINE」にアクセスすれば確認できるが、このサイト自体が一般のプレーヤーには知られておらず、Xbox 360上からはアクセスできないなどの問題もある。

 また、国ごとに「ジャンル」の受け取り方が違うので、その分類も明確にして欲しいと語った。例えば「シューティング」と言えば、海外ではFPSを想像するため「シューテュング」のくくりの中にジャンプアクションが入っていたりする。

 他にも、Xbox 360の実績システムに対応して欲しい、オリジナルのアイコンやテーマを配布できればファンサービスになるのでは、無料で配信したいクリエイターのために本体を無料にしてスキンや追加BGMを有料にするようなサービスがあるといいかもしれない、現行の「お試し版」8分制限ではその中でクリアできてしまう作品があるので、作者が自由に設定できるようにした方がいいのでは、と遊ぶ側の視点から見た問題点を指摘した。


「PENTOMINON-ペントミノン-」「MADRISM」「ダウンタウン 激凸ドッジボール」


■ パネルディスカッションも「ピアレビュー」の話で紛糾

ディスカッションに勢揃いした参加者

 マイクロソフトの鶴淵忠成氏、「麻雀三六荘」を「Xbox Liveインディーズゲーム」で配信しているzio氏と、罰帝氏と共に同人誌でXbox Liveの作品紹介をしているk-two氏、情報サイト「XNA Today」を運営している与野氏らが参加した。

 発表会でも何度も話題に上った「ピアレビュー」がディスカッションでも話題の中心となった。お題はいくつか用意されていたが、「ピアレビュー」にはかなり多くの時間が割かれて、結果まったく触れられなかったお題もあった。

 一般の参加者からも、差し戻されると1週間も再提出ができないのは、モチベーションの低下につながるという意見が出た。現状ではゲームのプログラムをいじらない、画像やヘルプなどの部分でも1週間のペナルティがつくので、そういった箇所での修正で何度も差し戻されるとそれだけで開発への意欲をそがれてしまうのだと言う。これに対し、マイクロソフトの徳留氏は、1週間縛りは以前にはなかったが、短時間に何度も繰り返される修正につきあっているとレビュアー側の負担が大きすぎるので、話し合いの結果現在の形になったのだと説明した。ただし今後の話し合いでコンセンサスが得られれば、変更は難しくはないとも付け加えた。

 またレビュー基準の不安定さについても多くの意見が出た。WEB上にある英語のFAQは1つのページにすべての情報がごちゃ交ぜに詰まっていて、その中に混じっている、これを守らなければ絶対に通らないという事項を見つけ出すのが大変になっている。レビューをしようと思った人が見てもゲンナリするようなものになっているので、早急に改善して欲しいという意見が出た。この指摘についても徳留氏、鶴淵氏は、時期は明言できないが、見やすい日本語のFAQを作成することを約束した。また国内の開発者の間に、こういった問題を話し合うコミュニティが少ない事について、検討していく場所を作っていきたいとも語った。

 インディーズゲームの価格は、マイクロソフトポイントで80、240、400の3段階が設定できる。この数字の中途半端さはドルベースで換算したことに起因する。多国籍に展開しているため、どこの通過に合わせても、どこかで半端が生まれてしまう事から、ドルに統一してあるのだそうだ。以前、800が最高値だった時には400を付ける人が多かったが、先行してサービスインした欧米で話し合われた結果、あまり需要のない800という価格設定はなくなってしまった。すると今度は最高値である400を付けづらくなり、現状ではほとんどのゲームが240という価格設定にしている。しかしこれでは開発者側が受け取る利益が減ってしまうので、ぜひ800を復活させて欲しいという意見もあった。

 また、現在のような円高では、レート換算すると還元率が2割ほど落ちている事になるという意見については、徳留氏が、基準レートを変えるのは全体に影響を及ぼすために難しいことから、ロイヤリティーの還元率などで現状に即した形に変えていきたいと回答した。そして、英語が開発の主体になっているため、どうしても日本人の声は通りにくい。機械翻訳でもいいので、どんどん意見を出していって欲しい、と語った。



■ 「XNA」の魅力は大きい。これから必要なのは、多くの人がゲームを作りたいと思える環境作り

 「XNA」が日本でもサービスを初めてまだようやく3カ月めに入った所だ。これまでは、英語圏に乗り込んでいける一部の人たちが知るだけだった情報が、日本語になって徐々に広がり始めている。いまはまだ日本のインディーズゲーム開発はPCが中心だが、今回の研究会で報告を聞く限り、チャレンジの芽は順調に育っているという印象を受けた。

 確かに多くの問題点も指摘されたし、FAQのように早急に改善しなければ参加者を減らしかねないような要素もあるが、それでもゲームを作りたいと思う人にとって、世界中で自分のゲームを遊んでもらえるチャンスのある「Xbox Live インディーズゲーム」は非常に魅力的な作品発表の場だろう。オフレコだったので詳細は言えないが、発表会の中で報告されたあるゲームのダウンロード数は、目を見張るような数だった。クリエイターなら、1人でも多くの人間に自分の作品をプレイしてもらいたいと思うだろうから、その可能性のドアが日本にも開かれたのは有意義な事だ。

 こういったコミュニケーションの場を通じて、1人でも多くのクリエイターが育ち、面白いゲームが遊べるようになるのであれば、ユーザーとしてもこれほど嬉しいことはない。もし見られる環境を持っているなら、さっそく「お試し版」で遊んでみてはどうだろうか。


(c)2009 Microsoft Corporation. All rights reserved.

(2009年 10月 13日)

[Reported by 石井聡]