東京ゲームショウ2009レポート

トークイベント“iPhoneから見るゲームの未来”

メーカー5社がiPhone/iPod touch用最新タイトルをプレゼン


9月24日~27日 開催(24日、25日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料



アプリヤの新城健一氏
ジャーナリストの林信行氏

 東京ゲームショウ2009の2日目となる9月25日、イベントステージで“iPhoneから見るゲームの未来”と題したトークショーが行なわれた。まず最初にiPhoneアプリパブリッシャーのアプリヤ株式会社の新城健一氏が登場し、本ステージでさまざまなiPhone用アプリの発表があると宣言した。

 続いてジャーナリストの林信行氏が登壇し、iPhoneの現状について語った。iPhoneは海外では大きな話題になっており、パリでは広告媒体の端末、ニューヨークではタクシー内のテレビとして使われていることなどを紹介し、そういう状況を日本でも広げていきたいと述べた。

 iPhoneのゲームタイトル総数は、先月アップルが発表したデータによると21,178本で、他のゲームプラットフォームと比較しても圧倒的に多いことを紹介。その中の大半はカジュアルゲームだが、ラグビーやカーリングゲーム、鉛筆を転がして遊ぶ昔懐かしい野球ゲームなどといったものもあれば、PCやモバイル、コンシューマーゲームなどから移植されているケースもあり、幅広いバリエーションが揃っている。

 世界でのiPhoneの出荷台数は、先日3,000万台と発表され、iPod touchの2,000万台と合わせると、世界で5,000万台のプラットフォームになっていることを強調。さらにiPhoneは中国ではこれから販売予定にも関わらず、すでに100万台が使われていることや、日本でも約200万台が販売されていることも語った。

 ゲームの販売本数については、アクションゲーム「iShoot」がアメリカで当時大ヒットし、1日1~3万(2.99ドル)ダウンロードされて、1カ月で5,000万円を売り上げたことや、日本の株式会社パンカクが開発した「LightBike」の有料版が1日に15,000本ダウンロードされ、無料版も含めて合計150万ダウンロードを達成した事例を紹介。

 ほかにも成功した事例として、株式会社セガの「スーパーモンキーボール」が発売開始から最初の20日間で30万本売れたことも紹介された。これについてはニンテンドーDS用(Amazonで19.79ドル)とiPhone用(9.99ドル)の価格差についても触れ、物流やパッケージのコストの関係で、iPhone用はDS用と比べて約1/2の価格になるとしている。さらにPSP版、DS版、iPhone版のゲーム画面を比較し、iPhone版は他のものと比べても遜色のないレベルだということを示した。

 また、PSP goやDSiのようにゲーム業界でもダウンロード販売が主流になりつつあるが、それを真っ先に成功させたのがiPhoneだと言うことも述べている。林氏は終始、iPhoneがこれまでの携帯電話と全く次元の違う端末で、立派にゲーム機になることを強くアピールしていた。


ゲームタイトルの本数を他のプラットフォームと比較したグラフ全世界では5,000万台のプラットフォーム
80カ国で販売されている。日本では約200万台?「スーパーモンキーボール」は20日間で30万本を販売



■ バンダイナムコゲームスはiPhone用に最適化された「エースコンバット」を披露

バンダイナムコゲームスの加藤正規氏

 続いては、メーカー各社が最新のアプリを順番に紹介していった。最初に登場したのは、もの凄いグラフィックスのゲームを開発したメーカーということで、フライトシューティングゲーム「ACE COMBAT Xi Skies of Incursion(仮)」を制作している株式会社バンダイナムコゲームスの加藤正規氏。加藤氏はこれまでに「エースコンバット」シリーズや、Wii用「スカイ・クロラ」を手がけてきた人物だ。

 加藤氏はゲームを実機でプレイしながら解説していった。今作はiPhoneで遊ぶのに最も適した「エースコンバット」になることを目標として作られているそうで、生活シーンの中でいつも身につけているiPhoneを使い、ちょっとした合間でも空中戦の興奮が味わえる工夫がほどこされているという。短時間で次々に敵機を打ち落とせるように、敵の配置やAIなどを全て作り直してあったり、マップを狭くしつつも見せ場を絞って狭さを感じずに楽しめるようにしているという。

 操作はiPhone本体を傾けて操縦するのだが、実際に体を動かしながら操作をしていくので没入感があるという。最後に、iPhoneが全世界で5,000万台出ていることについて、魅力的なマーケットだと思っていると語った。


「ACE COMBAT Xi Skies of Incursion(仮)」のオープニング映像とデモプレイの様子



■ 操作性の秘密から半額セールの延期、サプライズな新作発表を行なったカプコン

カプコンの手塚武氏

 次に登壇したのは、株式会社カプコンでモバイルゲームを手がけてきた手塚武氏だ。現在配信中のiPhone版「バイオハザード ディジェネレーション」や「バイオハザード4」を開発しており、今回のセッションではiPhoneの特長のひとつでもある多彩なUIを実現するマルチタッチについて語られた。iPhoneは十字キーのようなハードウェアキーがほとんどないため、それでどうやってゲームを遊ばせるかというところでいろいろ考えたようだ。

 iPhoneのゲームの場合、単にスクリーンに十字キーを描画して遊ばせるゲームが多い。一般にバーチャルパッドと呼ばれている仕組みだが、これだけでは操作がしづらいことも多い。カプコンでは操作性に関して研究を行ない、独自の操作システム“ビジュアルパッド”にしたという。人間は操作の際に、相対的にどちらに動かしたかは簡単に認識できるが、絶対値としてどこを押しているかを認識するのは難しいとし、快適にアナログ操作ができるように内部で細かい調整をしているという。

 さらにハードウェアキーがないことを活かし、ゲーム画面全体をパッドとみなして、シチュエーションに合わせてボタンのアイコン表示を変えるシステムにしたという。そのおかげで、ボタンがインフォメーションの役割にもなり、マニュアルいらずで誰でも遊べるようになっていると説明。

 最後に「バイオハザード4」のデモ映像を流し、洗練されたビジュアルパッドやiPhone史上最高品質の3Dグラフィックスを披露した。また、シルバーウィーク中に半額セールを行なって「バイオハザード4」を450円で販売していたことについて、コンシューマーゲームと違って価格をいつでも変更できることもひとつの魅力だと語り、その場で東京ゲームショウ期間中の半額延長を宣言した。

 さらに手塚氏は、現在開発中のタイトルのプレイ映像を公開した。手塚氏の口からタイトル名は明かされなかったが、映し出されたゲーム画面は明らかに「魔界村」で、おなじみのBGMとともに、主人公がゾンビを倒しながら進んで行くシーンが見られた。こちらもビジュアルパッドを使ってストレスなく遊べるようになっているそうで、映像を見る限りでは場面や所持している武器に応じて右側のボタンが変化するようだ。

 ゲームはサイドビューの2Dアクションだが、描画自体は3Dポリゴンで表現したものになっているという。ゲーム開始時に主人公を「アーサー」と「ランスロット」の2人から選べるようにもなっており、製品版ではiPhone用にどのように最適化されてくるのか楽しみなところだ。気になる配信日や価格については、手塚氏から一切語られなかったが、近いうちに遊べるようになるのは間違いないだろう。


「バイオハザード4」のインターフェイスを「ビジュアルパッド」と呼称
タイトルは明かされていないが、「魔界村」らしき新作アプリ



■ コーエーは「三國志TOUCH」で全世界制覇を狙う

コーエーの松枝正樹氏

 歴史シミュレーションで長年の実績を持つ株式会社コーエーからは、「三國志TOUCH」のプロデューサーを務める松枝正樹氏がプレゼンターとして登場。東京ゲームショウで発表となったコーエー参入タイトル第1弾の「三國志TOUCH」について、実機でデモンストレーションを行ないながらゲーム内容について紹介していった。ちなみに今秋発売予定で、価格は未定。

 本作は三国志に登場する武将となって、群雄割拠の時代で天下統一を目指していく歴史シミュレーション「三國志」シリーズ中の、初代「三國志」をベースに開発しているという。日本語版はもちろんのこと、英語版も用意しており、欧米主要国も含めて世界同時配信を目指しているという。さらに世界で販売するにあたって、チュートリアルや用語集、ヒント集なども充実させ、三国志を知らない世界中の人たちがすんなり楽しめるような配慮をしているという。

 歴史シミュレーションはやや敷居が高いイメージもあるが、パラメーターやコマンドなどを簡略化し、携帯端末ならではのお手軽な戦略シミュレーションゲームにするという。またiPhoneならではのスタイリッシュなデザインをコンセプトに、UIや画面周りを一新。操作もフリック(指ではらう)で画面下のコマンドをスライドさせたり、ピンチイン・アウト(2本指を閉じる・開く)でマップ画面の拡大縮小をしたりと、iPhoneならではの操作感で快適に遊べることも紹介した。シナリオは全部で5本用意し、オリジナルのシナリオに加えて、「230年 英雄集結」という三国志の中から人気の高い仮想シナリオも追加してあるそうで、歴史シミュレーションゲーム好きにも満足のいくボリュームになっているようだ。

 最後に松枝氏は、コーエーは今作でiPhoneに参入したが、世界の反応を見た上で、今後も移植作や新作を問わずに次回のタイトルも検討していきたいといい、中国などのアジア市場にも期待をしていると語った。


iPhoneのイメージでUIを一新した「三國志TOUCH」をデモプレイ



■ iPhoneに手応えを感じるスクウェア・エニックスは新作3本を公開

スクウェア・エニックスの安藤武博氏

 これまでに「クリスタル・ディフェンダーズ」と「ヴァンガード・ストーム」を配信してきた株式会社スクウェア・エニックスからは、両タイトルのプロデューサー安藤武博氏が登壇した。

 まずiPhone市場について、冒頭に一言で「かなり手応えがある!」と力強く語った。去年の12月に国内の携帯電話向けに配信していたタワーディフェンスタイプのゲーム「クリスタル・ディフェンダーズ」(モバイル版は「クリスタル ガーディアンズ」)をiPhone向けに販売。このタイトルは、想定できるハード全てに移植してみて様子を見たという。結果的には全部のプラットフォームを合わせ、体験版も含めると、200万ダウンロードを越えたという。今年の5月に配信した「ヴァンガード・ストーム」はiPod touchならではのゲームインターフェースを目指して開発してきたタイトルのようで、こちらでもなかなかの手応えがあったそうだ。

 そして東京ゲームショウの自社ブースで発表した新作3タイトルについて、トレーラーの映像とともに順番に紹介していった。「スライディング・ヒーローズ」は、東京ゲームショウで発表と同時に配信された、パズルアクションとリアルタイムストラテジーを融合した新感覚のゲームで、iPhone本体を傾けて自軍ユニットを転がすように滑らせて敵に体当たりをしながら敵を倒し、ゴールを目指していくゲームだ。傾き操作+リアルタイムシミュレーションということで、誰でも簡単に触れるカジュアルなものになっているという。価格は600円。

 次にもう少しやりごたえのあるリアルタイムストラテジーとして「国破れて山河あり」を紹介。こちらはiモード/EZwebからの移植で、iPhoneを携帯電話として面白いアプローチができないかと考えて開発していったという。

 最後はiPod用シミュレーションRPGと配信していた「ソングサマナー」の完全版として作られた「ソングサマナー 歌われぬ戦士の旋律 完全版」。安藤氏がコンシューマータイトルを開発してきたこともあって、このタイトルはDSやPSPレベル並のボリュームやクオリティになるようなレベルのものを目指して開発されており、制作も大詰めで近日発売できそうだという。このほかスクウェア・エニックスは、今後は同社が得意としている分野のものも用意しており、さらにいろいろなタイプのゲームにも挑戦していく予定だそうだ。

 紹介に続いてあん動詞は、あまりにもアプリの価格を下げて販売するいる会社が多いことに対して、「今は我々がマーケットを作っていく大事な時で、価格を下げてダウンロード数を稼ぐよりも、長期的な視野で適正な価格のものを適正に販売して欲しい。コンシューマークオリティのものを適正な価格で販売できるようになれば、コンシューマー用のタイトルでみんなが知っているものもiPhoneで展開していけると思う」とゲーム開発者に向けて提案した。


「スライディング・ヒーローズ」「国破れて山河あり」「ソングサマナー 歌われぬ戦士の旋律 完全版」



■ 全世界で600万本を販売してきたゲームロフトの次なる新作

ゲームロフト中村玲生氏

 フランスでモバイルゲームを開発しているゲームロフトは、最新作「リアルサッカー2010」の紹介映像とともに、日本法人のPRマネージャー中村玲生氏が登場。「リアルサッカー2010」は、リバプールFCのスター選手であるスティーブン・ジェラードをイメージキャラクターに起用し、オンラインマルチプレイが可能となっている。

 ゲームロフトでは、iPhoneがローンチされてからワールドワイドに展開し、サッカーやレースゲーム、RPG、アクションゲームなど本格的なものから、クイズやパズルと言ったカジュアルなものに至るまで、現在まで37タイトルを配信。そのうちの20タイトルはApp Store有料アプリランキングでTOP10入りしたことがあるという。日本市場においても、「レッツゴルフ」や、現在iPhoneのテレビCMで放映されている「UNO」などは、特にヒットをしているタイトルになっているそうだ。全世界での累計販売本数は、9月3日時点で600万本を突破していることも明かした。

 今後は2009年末までに15~30本のゲームを配信する予定で、その中から秋に配信予定のレースゲーム「アスファルト5」のデモ映像を公開した。フェラーリやランボルギーニといった33車種のライセンスカーが登場し、さらにiPhone OS 3.0の機能を活かして、ボイスチャットやWi-Fi、Bluetoothでの対戦、新コースや新車の追加課金ダウンロードも搭載されるという。

 さらに、先日米Appleが行なったカンファレンス「Apple Special Event September 2009」で紹介された新作のSF-FPS「Near Orbit Vanguard Alliance(NOVA)」のゲーム画像も披露。宇宙船に乗って地球外生命体の攻撃から人類を守るという話になっており、さまざまなエイリアンが登場する中を5種類の武器を使い分けて戦い、12のステージを進んで行く内容になるそうだ。こちらもiPhone OS 3.0の機能を使いボイスチャットやマルチプレイも搭載されるという。配信は2009年末の予定。3Dグラフィックスもハイクオリティで、非常に期待が持てる。


「アスファルト5」「Near Orbit Vanguard Alliance」



■ iPhoneならではのゲームの未来像

 5社のプレゼンが終わった後、林氏はiPhoneが東京ゲームショウの隠れた目玉だと思っていると述べ、今回プレゼンを行なったメーカー以外にも多くのゲームが出展されていることを紹介。そして今回のセッションのタイトルであるゲームの未来についての話として、「iPhoneは電話でもあるのでインターネットに常時接続でき、これまでのゲーム機にはなかったiPhoneならではの新しいタイプのゲームが誕生してくることを期待している」と語った。

 続いてアプリヤの新城健一氏が再度登壇。未来のゲームを予感させるものとして、アプリヤが開発したm-floの音楽が流れているアプリを紹介した。音楽を再生をしている画面をタッチすることでインタラクティブなエフェクトが出てくる仕掛けになっており、さらにGPSデータと連動して、地図上にどの程度このアプリを使っている人がいるのかがわかる機能があることも紹介した。

 また林氏はiPhoneに内蔵されているGPSとコンパス機能を使ったゲームが出てくる可能性もあると語り、現実の世界とリアルに連動したものがでてくるとも語った。そのひとつの事例として、Googleマップの地図を使って陣取りゲームができる「Parallel Kingdom」を紹介。また、仙台の三井アウトレットパークで展開しているショッピングモールの中でクイズが楽しめるiPhone用アプリも披露した。


iPhoneが東京ゲームショウの隠れた目玉m-floのアプリ三井アウトレットパーク仙台港のアプリ

頓智ドットの井口尊仁氏

 そしてスペシャルゲストとして、頓智(とんち)ドット株式会社の井口尊仁氏が登場。9月24日に配信されたばかりの話題のアプリ「セカイカメラ」を実演した。これは、iPhoneのカメラを通して見た映像空間に、一言メッセージを書いた付箋や写真などのエアタグを自由に貼り付けられるというもの。貼り付けたメッセージや写真は、セカイカメラのアプリを通じて他のユーザーも見ることができ、その場の情報を共有できる。現実世界を使った全く新しいアプリで、iPhoneならこういった新しい可能性を秘めたものができるというデモだ。

 最後に、林氏がAppleのスティーブ・ジョブス氏が基調講演で話したワンフレーズ「iPhoneは未来永劫、電話というものを変えてしまった電話」を紹介し、「実はiPhoneは電話だけではなくゲームというものも変えてしまった」と締めくくった。


「セカイカメラ」ジョブス氏の講演から「iPhoneはゲームも変えた」

(2009年 9月 27日)

[Reported by 川村和弘]