東京ゲームショウ2009レポート
iPhone/iPod touchゲーム出展ブースレポート
「ACE COMBAT Xi」、「三國志TOUCH」など配信前の新作が登場
2008年の夏にiPhoneが日本で発売されてから1年以上が経って迎えた今回の東京ゲームショウ。昨年と違い、大手家庭用ゲームメーカーのブースの一角でiPhone/iPod touch用ゲームの新作を展示しているところもあり、各コンシューマーゲームメーカーにとっても目が離せない存在になっているようだ。
会場の一角には、東京ゲームショウで実際に遊べるiPhone/iPod touch用ゲームの一覧パネルが張り出されており、注目度の高さを伺える。ただ、KONAMIやセガ、カプコン、タイトーなど、すでにiPhone/iPod touch用ゲームをいくつか配信していながら、今回ブースには展示していないのが、いささか残念ではある。
iPhone/iPod touch用ゲームは、ゲームスクールコーナーやアドバンスド モバイル&PCコーナー、海外パビリオンのブースでもいくつか展示されていた。まだまだ展示してある総数は少ないものの、昨年と比べれば確実に勢力を拡大している。もしかすると来年の東京ゲームショウでは、各メーカーのブースで、家庭用ゲームソフトの展示に混じって、iPhone/iPod touch用新作ゲームを展示しているのが当たり前になっているかも知れない。
ここでは、今回iPhone/iPod touch用ゲーム関連を出展していたブースを一気にレポートする。
■ スクウェア・エニックス
iPhone/iPod touch用「クリスタル・ディフェンダーズ」や、iPod用「ソングサマナー」を出している株式会社スクウェア・エニックスからは、先日配信が開始された「スライディング・ヒーローズ」を含め、3タイトルが出展された。どれも非常にクオリティが高く、しかもボリュームもあり、遊びごたえのある内容になっている。「スライディング・ヒーローズ」を皮切りに順次配信していく予定だそうで、今後が楽しみなところだ。
その中でもついに登場したのがシミュレーションRPG「ソングサマナー 歌われぬ戦士の旋律 完全版」。機械人間に支配された音楽の国を舞台に、主人公ジギーが弟を助けるために世界中を冒険。音楽で召喚したミュージックファイターの力を借りて、機械兵を倒していく。本作は元々、2008年にiPod用ゲームとして配信されたもので、iPodに入れてある楽曲データからキャラクターを召喚してゲーム中のユニットとして戦わせるという、何千曲も収録できるiPodを上手く活かしたシステムだった。iPhoneではこれまで同様のことが仕様的に不可能だったが、iPhone OS 3.0でiPhone/iPod touch内の音楽データと連動したゲーム作りができるようになり、ついに実現可能となった。
iPhone/iPod touchに収録されている楽曲から「ミュージックファイター」と呼ばれる戦士や魔法使いを召喚して戦うシステムや、楽曲に応じてファイターの強さや職種などが変化するシステムなどは、iPod版をそのまま再現。召喚に使った音楽を聴くことで、ファイターがパワーアップする要素も搭載している。さらに、iPhone/iPod touchならではのタッチパネルを活かした操作に対応しており、フィールドを2本指で拡大・縮小するピンチ操作も可能で、より遊びやすくなっている。またゲームタイトルが完全版となっているように、iPod版からのボリュームが約2倍になり、シナリオの追加や修正、新キャラクターや新成長システムなどブラッシュアップが施されている。
9月24日より配信された「スライディング・ヒーローズ」は、パズルアクションとリアルストラテジーを融合した新感覚のゲーム。戦士や魔法使いなどのユニットを召喚して、モンスターを倒しながらゴールを目指していくのだが、操作はiPhone/iPod touchを傾けて行ない、ユニットをまるでボールのように滑らせて(転がして)敵に体当たりさせて倒す快感を味わえる。またRPGのように、敵を倒すことでユニットが成長していく要素もある。
本作はまったくタイプの異なる2つのゲームモードを収録している。1つは4種のジョブのユニットを使い、後半では囚われの姫をかばいながらクリアを目指すオリジナルモード。もう1つは、無限に続くステージを武道家が障害物を避けながら挑み続けるパズル要素が高いエンドレスモードだ。ちなみに有料版は600円で配信中だが、Lite版も用意されているので、まずはこちらで新感覚の操作を体験してみてほしい。
これまで携帯電話向けに配信されていたストラテジーゲーム「国破れて山河あり」のiPhone/iPod touch版も出展された。ライバルたちと国の存亡をかけて兵士を進めて合戦を行ないながら陣地を取り合うゲームで、リアルタイムで流れる時間の中で、素早い判断力が要求されるスリリングな展開を味わえる。ゲームシステムはシンプルながらも奥深い戦略性を備えている。操作もiPhone/iPod touch用にブラッシュアップされ、自軍や目的拠点などをタッチしたり、スライダーで兵士の数を決めたりと、直感的に操作できるようになっている。
【ソングサマナー 歌われぬ戦士の旋律 完全版】 | ||
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【スライディング・ヒーローズ】 | ||
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【国破れて山河あり】 | |
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■ バンダイナムコゲームス
株式会社バンダイナムコゲームスのブースの一角には、先日の16日に発表されたばかりで今冬発売予定のフライトシューティングゲーム「ACE COMBAT Xi Skies of Incursion(仮)」の試遊機が3台用意されている。ヘッドフォンも用意されていて、iPhone/iPod touchならではの迫力の高音質をじっくり堪能できる。「エースコンバット」シリーズの人気の高さか、ビジネスデイにも関わらず試遊を待つ行列もできていた。
試遊では数分のフライトを楽しめ、iPhone/iPod touchの加速度センサーを使った操作を体感できる。本体を前後左右に傾けて自機を操作していくのだが、最初は不慣れなこともあり上手く操縦できなくて機体がフラついてしまった。しかし慣れてくると敵機に照準を合わせてミサイルを発射し、撃墜できるようになった。iPhone/iPod touchならではの操作感で、これまでとは違ったフライト感覚を味わえた。
ちなみに本作は、2006年に発売されたPSP用「ACE COMBAT X -Skies of Deception-」の続編として制作されたもので、PSP版に登場したオーレリア国の空軍「グリフィス隊」の別働隊である「ファルコ隊」の活躍が描かれている。開発は「エースコンバット」シリーズを手がけた「Project ACES」チームが担当。当日、開発者の1人であるコンテンツ制作部本部 プロデューサーの加藤正規氏にインタビューできた。その内容に関しては後日お届けする。
【ACE COMBAT Xi Skies of Incursion(仮)】 | |
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■ コーエーテクモホールディングス
コーエーテクモホールディングス株式会社のブースでは、iPhone/iPod touchの専用ブースを設け、新作の「三國志TOUCH」を含む4タイトルを出展。各タイトルがそれぞれ試遊できるようになっていた。
「三國志TOUCH」は、コーエー初のiPhone/iPod用ゲームとなる。歴史ものを作らせたら天下一のコーエーが満を持して、「三國志」でついに参戦してきたわけだ。家庭用ゲームやPCゲームでおなじみの本格歴史シミュレーションゲーム「三國志」をベースにiPhone/iPod touch用に最適化され、いつでもどこでも将軍となって采配を振るい群雄割拠の時代で天下統一を目指していく。
操作もiPhone/iPod touchならではのものとなっており、フォーカスでガイドナレーションなどの情報を表示させたり、ピンチアウト・インでマップの拡大・縮小が行なえたりと、直感的でスムーズなプレイが楽しめる。シナリオは5種類あり、「190年 董卓打倒」や「208年 孔明出廬」などのほかに、「三國志」シリーズにおいて人気の高い仮想シナリオ「230年 英雄集結」も用意されておりボリュームもある。さらに難易度や武将の寿命の有無などの選択も可能となっている。
【三國志TOUCH】 | |
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■ その他のブースでもiPhone/iPod touch用ゲームを発見
コトブキソリューションブース |
大手ゲームメーカー以外でもiPhone/iPod touch用ゲームが出展されていた。
ウィアー・エンジニアリング株式会社は「WAE五目並べ」を出展。誰もが知っている五目並べの盤面を立体の球状に変えたもので、CPUと対戦できる。盤面を回しながら碁石の位置を把握して考える必要があり、これまでにない感覚で対局を楽しめる。今秋配信予定で、価格は115円の予定。
モバイルゲームを数多く出展していた株式会社コトブキソリューション(ケムコ)のブースでは、配信中のフル3Dフライトシミュレータ「Aerobatic Hero(エアロバティックヒーロー)」を出展していた。iPhone/iPod touchを操縦機のように持って傾けることで、飛行機を操縦していく。決められたコースを飛行したり、曲芸飛行でどれだけ観客を沸かせることができたかを競う「エアショー」や、マップ上に散らばるコインを時間内に回収していく「コインゲット」の2種類のモードで楽しめる。
さらにiPhone/iPod touchの勢いは、物販コーナーにも及んでいる。ソフトバンクの携帯販売を行なっているテレコムサービス株式会社が物販ブースで出展し、iPhone関連の周辺機器だけでなく、その場でiPhone本体の契約までも行なっていた。ビジネスデイ初日の終わり間際に取材して契約状況を伺ったところ、実際にその場で契約された人がいたという。東京ゲームショウの会場で携帯電話を売るのも、それを買う強者がいるのも、まさかの驚きである。
「WAE五目並べ」 | 「Aerobatic Hero」 | テレコムサービスブース |
■ ゲームスクールのコーナー
大阪電気通信大学ブース |
ゲームスクールコーナーでは学生が開発したゲームが出展されているが、その中にもiPhone/iPod touch用ゲームがいくつかあった。
大阪電気通信大学 デジタルゲーム学科のブースでは、ロボット同士が戦うシミュレーションRPG「IronsWar」と、味方キャラクターを弾いて侵略してくる敵を倒していくアクションゲーム「Flip Guard」を出展。どちらも現在開発中で、12月配信を予定しているという。
新潟コンピュータ専門学校のブースでは、アクションゲーム「MUSIGROW」を出展。時間内に竜の子供「ミュート」をスライドさせて動かし、画面上に散らばる音符を集めて「ミュート」を成長させていく。これはリリースの予定はないそうだ。
日本電子専門学校では、錦鯉を観察したり餌をあげたりして鯉と戯れるアプリケーション「錦鯉と私」を展示。鯉の3Dデータを作成するデモムービーを紹介していた。近々、無料での配信を予定しているという。
【大阪電気通信大学】 | ||
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【新潟コンピュータ専門学校】 | ||
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【日本電子専門学校】 | ||
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■ ミドルウェアでの出展
数々のミドルウェアを開発しているCRI・ミドルウェアは、今回はiPhone/iPod touch用ミドルウェアの特設ブースを設けて出展している。音声圧縮&ストリーミングの「CRI ADX」、テクスチャムービーを再生しながら拡縮や回転などが行なえる「CRI Sofdec」、動画再生させながらジグソーパズルが楽しめる「ジグ動」を展示し、デモンストレーションを行なっていた。ちなみに「ACE COMBAT Xi Skies of Incursion(仮)」の開発には、「CRI ADX」が使われている。
さらに、先日発表されたばかりのアプリ内広告を楽にするマーケティング支援管理ソフト「CLOUDIA」も出展。iPhone/iPod touchアプリ内で、他のアプリを告知する際に役立つソリューションで、WEB上で簡単に管理して構築できることをデモを交えながら紹介していた。
「CRI ADX」 | 「ジグ動」 | 「CLOUDIA」 |
■ 海外企業もiPhone/iPod touch用ゲームを携えて出展
海外パビリオンやアドバンスド モバイル&PCコーナーにおいて、アジアやヨーロッパなどの海外からの出展者もいたが、その中にはiPhone/iPod touch用ゲームを携えて出展しているところもあった。
台湾にある大学「Department of Multimedia and Game Science, Lunghwa University of Science & Technology」(龍華科技大学 マルチメディアゲーム発展学科)では、開発中の「24 Smile」と「Party Magic」を展示。
韓国でモバイルゲームなどを数多く開発しているINTERSAVEは、すでにiPhone/iPod touch用として配信中の花札ゲーム「GO! GO STOP 光」と数独「Sudoku: The Loop」を展示。さらに、現在開発中の2タイトルのデモも行なっていた。
【Lunghwa University of Science & Technology】 | ||
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INTERSAVEブース | 農場主となって作物を育てて農場を経営していく「FARM TYCOON」 | 強制横スクロールする中で敵や障害物を避けながらジャンプしていく開発中のアクションゲーム |
海外パビリオン・オランダブース |
Sticky Studios社のJeroen氏 |
海外パビリオンのオランダのブースでは、Sticky Studiosが配信中のアプリ「Sheep Abduction」と、先週リリースしたばかりの「Gene Pool」のデモ映像を流していた。
会場では展示していなかったが、Sticky StudiosのJeroen De Cloe氏に現在開発中のアクション・シミュレーションゲーム「Medieval Maniacs」を見せていただいた。戦士や弓使いなどの軍隊を率いて、タクティカルシミュレーションゲームのように陣取り合戦を行ない、戦闘シーンではサイドビューのアクションゲームに切り替わって敵軍とバトルを行なって倒していくものになるという。現在は25%の開発状況で、2010年初頭の発売を目指しているそうだ。
せっかくの機会なので、Jeroen氏に欧州でのiPhone事情に関して質問をしてみた。ランキングで100以内に入らないとアプリが売れないことや、アプリが低価格化していることなど、日本で起きている問題点を聞いてみると、欧州でも同様のことが起きているという。実際に「Sheep Abduction」では値下げを行ない、これまでに16,000本を販売しているそうだ。広告を出せば、その時はランキングに入ってきて売れるが、すぐにランキング圏外になり売れなくなる、とも語っていた。
またiPhoneのアプリをきっかけに、他の端末など2次展開も視野に入れていることを明かした。この点においても日本のデベロッパーと共通の考えを持っていると感じた。ちなみに、Sticky Studiosは広告代理店のような会社で、これまでは副業としてiPhoneのアプリを開発していたが、今後は本業として展開していくという。そのために日本でのパブリッシャーを探し求めて、東京ゲームショウにやってきているそうだ。
(2009年 9月 26日)