スパイク、Xbox 360「Battlestations: Pacific」先行体験会レポート
敵の部隊構成の読み合いが楽しい“太平洋戦争ストラテジーシューティング”
株式会社スパイクは5月20日、渋谷にあるスパイク本社会議室にて、来週5月28日に発売を予定しているXbox 360用ストラテジーシューティング「Battlestations: Pacific」のメディア向け体験会を開催した。
同作品にはアメリカ軍と日本軍の2本のシングルプレイキャンペーンがあって、日本軍キャンペーンでは戦争に勝利するという歴史のIFにチャレンジできるといった特徴を備えるのみならず、Xbox Liveを介して世界中のプレーヤーと対戦できるのが大きなセールスポイントとなっている。体験会では本作の魅力であるマルチプレイモードを、スパイクのスタッフを交えて行なった。そこから見えてきた同作品の魅力を、多彩な展開で先の読めないマルチプレーヤーストラテジーゲームとしての楽しさを中心にお伝えしよう。
■ 世界で1番、日本軍がカッコ良く描かれているミリタリーゲーム?
体験会は株式会社スパイクの一室で、ムービーの上映と実際のプレイを交えて行なわれた |
今回ゲームコンセプトの説明と、体験プレイのレクチャー役を務めてくれた、株式会社スパイク プロデュース部 海外グループ アソシエイトプロデューサー 赤石沢 賢氏 |
グラフィックスはまさに美麗の一言。よく見ると甲板にはきちんと水兵さんがいて、歩き回っていたりするという芸の細かさである |
ストラテジーシューティングと銘打つ同作品は、太平洋戦争の特徴ともいえる陸海空の立体作戦のうち、海と空の兵器と戦いに的を絞って再現している。プレーヤーは味方全体の指揮をとりつつも、自身の立場を個々の味方ユニットに随時切り替えて、アクション戦闘も楽しめるという、たいへん欲張ったコンセプトのゲームだ。
結果として、ゲームに用意された機能と操作をすべてマスターして使いこなすのは、正直なかなかたいへんである。だが実はこの作品、あえて個々のユニットを操作せずともプレイは進む。そして実際、アクション戦闘で直接介入しなくても、独特の得がたいストラテジー要素と美しいグラフィックスを十分に楽しめることが、製品として重要なポイントなのである。
プロデューサーである赤石沢氏の説明によると「バトルステーション・パシフィック」は、前作「バトルステーション・ミッドウェイ」に続いてEidos Hungaryが開発を手がけている。シングルプレイキャンペーンはアメリカ軍と日本軍それぞれ1本ずつ用意され、どちらも14ステージで構成されているという。日本軍の兵器としては「桜花」などの特攻兵器も取り上げられている半面、日本軍側キャンペーンにはシナリオ分岐があって、戦争に勝利する展開も用意されているという。赤石沢氏いわく「日本軍の兵器がここまでカッコよく描かれた作品は、世界でも珍しい」そうである。ハンガリーはトルコ、ポーランドなどと並んで親日家の多い国として知られているわけだが、そうしたお国柄のなせる業だろうか?
日本語版については、前作の発売が英語版のリリースから1年ほどかかったのに対して、今回は開発段階から日本語ローカライズを前提にしていたため、わずか2週間のタイムラグでの発売に漕ぎ着けたとのこと。もともと日本軍、米軍ともにボイスは英語で収録されていたが、日本語版では日本軍の台詞はすべて日本語音声に吹き替えられている。ちなみに日本語ローカライズのクオリティについて、今回は幸運なことに「元自衛官の翻訳家」の方を起用できたそうで、何かと専門用語の多いミリタリー作品の翻訳としては自信の持てる出来映えであるようだ。
シングルプレイキャンペーンでは、戦績に応じて新しい兵器がアンロックされるという仕組みが用意されていて、赤石沢氏が示した画面では、日本軍のエンテ型(主翼とエンジンを後方に配した、推進配置の機体デザイン。牽引配置が普通の第二次世界大戦機のなかでは、かなり目立つ存在である)試作戦闘機「震電」の姿も見られた。シングルプレイキャンペーンでアンロックされた機体は、以降マルチプレイでも使用可能になるため、まずはシングルプレイで好成績を収めることが重要となる。
前述のとおり14本用意されたシングルプレイキャンペーンのシナリオは、緩やかなラーニングカーブで無理なく操作を憶えていけるよう、序盤はシンプルなものになっているそうで、最初のほうのシナリオはクリアまでの時間が約10分、それが後半になるにつれて30分から1時間程度かかるようになる、とのことだった。
上段がミッドウェイ海戦、下段がソロモン海戦のシナリオから。個々のユニットにフォーカスして、アクション戦闘を楽しめるのも本作の魅力のひとつだ |
空母機動部隊を主力とする大規模な水上航空戦が楽しめるのは、太平洋戦争モチーフならではの魅力。ちなみに水上艦同士の戦闘シナリオでは、半分くらいが夜戦なのだとか |
■ アクションが苦手でも楽しめるバトル。シューティングとストラテジーの絶妙なバランス
さて、今回の体験会では、スパイク側の開発スタッフを交えたマルチプレイに参加できた。試してみたのは戦闘機同士の「空中戦」と、水上艦同士の「艦隊戦」、そして互いに水上艦/潜水艦/航空機を繰り出しての「拠点争奪戦」だ。
まずは「空中戦」は、レシプロ機同士の戦闘であり、またプレイバランス上の配慮もあるのか、戦闘機の動作は、機体ごとのエンジン出力差こそ感じられるものの、割と鈍重な印象であった。エルロン(機体を左右に傾ける)とラダー(機首を左右に振る)は操作としてきちんと区別され、垂直反転が可能、スロットル制御や上昇角と失速との関係も再現されているが、ライト系フライトアクションによくあるように、ゲームルール上の高度制限がかなりきつく感じられた。上昇しすぎると自動的に失速するようになっているため、高度と急降下速度、垂直旋回を活かした格闘戦などは難しいという印象だ。
純然たるフライトシューティングゲームと比較すると、本作がフライトスティック系入力機器には対応していない点も含めて、若干の物足りなさを感じる。ただ、そもそもこのゲームにおけるアクション戦闘は、戦局全体を見渡して必要な場面で戦闘に介入し、局地戦を片付けたら速やかにまた別のユニットの操作に移るという操作を前提にして設計されているため、迫力やリアリティよりは、プレイのしやすさを重視している様子で、これはこれで致し方ないところだ。
次に「艦隊戦」では、プレーヤーは水上艦を操り、互いに相手の艦型がはっきり見分けられるほどの近距離で砲撃戦を展開することになる。この点について赤石沢氏に聞いてみたところ、このゲームでの砲戦距離は大和級/アイオワ級といった最大クラスの戦艦でも3kmくらいで撃ち合うことになる。現実における大和級の最大砲戦距離は40kmにも達し、そうなると地球の丸みで相手はマストの先端くらいしか見えないはずであるから、これはある程度やむを得ないアレンジといえよう。
航空機と艦艇が近距離で入り乱れる水上戦闘は、そうした定量性を気にしなければ割と楽しい。駆逐艦クラスだと、航空爆弾であれ砲弾であれ魚雷であれ、なにがしかの攻撃が本格的に命中したらほぼアウトという緊張感は、それはそれでリアルなものだ。砲撃に雷撃、はたまた対空射撃に、浸水修理とてんやわんやなのも、ある種の説得力がある。ただ、いかんせんアクション戦闘としては割とあっけない感じで、そのあたりは空中戦で感じた物足りなさと同種のものだ。
航空機操縦時の視界には、もちろんコックピットビューも用意されている(左)。攻撃機の対艦攻撃も魚雷を落とすタイミングまでしっかり操作できる |
重巡洋艦 vs. 駆逐艦の撃ちあいでも、砲撃戦時の距離感はこんな感じ。FPSにおける小銃射撃距離などと同様で、さすがにこれは、ゲームとして面白く成り立たせるためのアレンジ |
■ 「拠点争奪戦」はお互いの敵の出方が読めないストラテジー性が最大の魅力
オンライン対戦では、画面左上に両軍の現在までの獲得ポイントと占有拠点数が表示される |
左下の「支援マネージャー」で、出撃させる兵器と武装を指定する。現在使えるCPと兵器の“在庫”しだいで、どんな兵器を出撃させるのも自由だ |
そして3つ目の「拠点争奪戦」は、陸海空の三軍を駆使して、最大4対4による大規模な戦闘が楽しめる。スケール感と操作性の問題が気にならず、ゲームとしてかなりよく練られていると感じられた。航空機、水上艦、潜水艦が、割とバランスのとれた三すくみの構図に整理されている。いわば“ゆっくりと進むRTS”であるため、ユニットの配置と移動には計画性が必要とされるうえ、突発事態への対応力も問われる。
典型的なのが艦艇と航空機のタイムスケール差だ。拠点の占有には艦船が必須であるものの、こちらはせいぜい30ノット(時速約50km)であるのに対して、航空機は10倍くらいの速度で動く。さらに潜水艦は水上航行時で水上艦の半分、潜航時は4分の1から8分の1くらいしか速度が出ない。結果として航空機は即効性のある扱いやすい兵器なのに対し、潜水艦は戦闘終盤に敵の裏をかく形で戦果を挙げる戦略性の高い兵器といえる。スパイクのスタッフいわく「潜水艦は、戦局を一変させかねない強力な兵器」だそうである。
それぞれの兵器にはCP(コマンドポイント)が設定されていて、マルチプレイで出撃させられるユニットの陣容は、このCPの合計値で制限されている。ただし、出撃させた兵器が撃破されると、CPは100%戻ってくるというのがミソだ。CPは指揮統制上の制約であって、消費資源ではないのである。
もちろん強力な兵器ほどCP設定が高いものの、自分のCPでどんなユニットを動員するかはまったくの自由だし、さらに言えば部隊が損害を受けたことで返ってきたCPを使い、そこまでの方針とはまるで違うユニットを出撃させてもいいのだ。そうした、どこまでも状況に合わせた対応が可能なことで、マルチプレイはかなり興味深いものとなっている。いざフタを開けてみるまで相手の陣容が大水上砲撃部隊なのか機動部隊なのか水雷戦隊なのかさっぱりわからないし、いったんわかったところで、その傾向が続くと決まっているわけでもない。これは水上/航空/地上(拠点)の戦闘が一体となった太平洋戦争を、抽象レベルでうまく表現したものともいえよう。
そうしたわけで、マルチプレイのストラテジー戦闘が、侮りがたい面白さを備えているというのが、テストプレイからわかった「バトルステーション・パシフィック」の魅力である。個別戦闘から前線部隊指揮から部隊編成からなんでもできてしまうために、なかなかその魅力を一口で説明できない本作ではあるのだが、その、まさに融通無碍なところを融通無碍なままに楽しむめるのが、マルチプレイにおけるストラテジー主体のプレイで発揮される、本作独特の魅力といえそうだ。
重巡洋艦 vs. 駆逐艦の撃ちあいでも、砲撃戦時の距離感はこんな感じ。FPSにおける小銃射撃距離などと同様で、さすがにこれは、ゲームとして面白く成り立たせるためのアレンジ |
失ったユニットのぶんCPは返ってくる(開放される)ので、刻々と変わる戦況に応じて、繰り出すユニットを選べる |
拠点を押さえるためには兵員輸送船を派遣するのがもっとも有効だが、戦闘艦船にも拠点占領能力が備わっている。いっぽう空挺降下などという、派手な作戦も可能。パレンバンもかくや? |
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□スパイクのホームページ
http://www.spike.co.jp/
□「Battlestations: Pacific」のホームページ
http://www.spike.co.jp/bsp/
(2009年 5月 21日)