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最強は揺るがず! 「GALLERIA GLOBAL CHALLENGE 2019」Absolute優勝!
Ignis雪辱ならず、勝利を掴んだのは“折れない心”
2019年9月23日 21:58
LFS池袋で9月22日、23日に開催された「GALLERIA GLOBAL CHALLENGE 2019」。昨年と同じ、AbsoluteとIgnisが勝ち進み、日本一、そして世界大会への切符を巡っての戦いが繰り広げられた。
昨年大きな差を見せつけられ、今年はどうしても勝ちたいIgnis。しかし東京ゲームショーで行なわれた「OMEN Challenger Series」でも敗れ、今回の予想も「Absoluteが勝つのではないか?」という見方が多かった。しかしその予想を感じさせないのが会場の人気ぶりである。Ignisには若いファンが多く、その熱気がすごかった。
両チームはコーチがついているが、Ignisのコーチはファンを乗せるのがうまい。Ignisが好調なとき、勢いが欲しいとき、コーチは観客席に向かって手を振る。ファンはそれに応え大きく声を上げバルーンを打ち鳴らす。選手席は防音のためその声は届かないが、それでも熱意は届く。彼らの応援を受け、Ignisは必死でAbsoluteに食い下がった。
相手を好調なまま続かせない。後の展開も見据えたAbsoluteの作戦
第1試合、戦いの流れを掴んだのはIgnisだ。特に強く印象に残ったのは第1試合。Ignisが広げた罠に飛び込んだようにAbsoluteのメンバーは包囲され倒されていった。Absoluteの作戦、動きを計算しており、研究しているからこその動きだと感じた。この勢いを活かしIgnisは5セット連取する。「ついにIgnisの時代が来たか?」と思わせるスタートだった。
しかし、ここでもAbsoluteは手を打っていた。試合後にコーチが語ったが、Absoluteは、読まれてセットを落としても「彼らの資金を減らそう」という意思の元、できるだけ相手のメンバーを減らすように動いていたのだという。
「CS:GO」ではラウンド開始時に武器を購入し、倒されると落としてしまう。生き残ったり勝つと大きく資金を得るが、毎試合強い武器を購入できるほどのお金は入らない。このため、メンバーに強力なスナイパーライフルを渡したり、AK-47で揃えてチームとしての突破力を高めたりなど様々な作戦がある。ここぞと言うときにはいい装備で、そしてその前はあえて省エネ装備で戦い、力を蓄えると言った駆け引きが重要となる。
そしてこの駆け引きが徐々にだが、効果的に現われる。資金の少なくなったIgnisはAbsoluteとの射撃戦に勝てなくなり、突破させられる状況が多くなっていくのである。事情がわからなかった筆者は「やはり地力はAbsoluteの方が上なのかな?」と思っていたが、後になると突撃したり正面で相対するとき、強い装備で挑んでいるのが見えてくる。Ignisは6ラウンドを取った時点でAbsoluteに追いつかれてしまう。結局前半を7-8で折り返され、そのままIgnisの動きを抑え、11-16で第1試合はAbsoluteの勝利となった。
選手の表情も印象に残った。前半のノッているIgnis、そこからAbsoluteは勝利をしても噛みしめるように小さく、それは「何としても勝つ」という覚悟の大きさを物語っているように思えた。後半Absoluteは笑顔が大きくなっていく。Ignisは押さえつけられたように重くなっていく表情が印象的だった。
心を揺るがさず、相手の心を飲み込んでしまう勝利への方程式
そして第2試合は干上がった下水のある「OVERPASS」で行なわれた。Ignisが爆弾を運ぶテロリスト側、Absoluteはそれを迎え撃つカウンターストライク側だが、Ignisの突進力にAbsolute側が翻弄される結果となった。
「CS:GO」ではテロリスト側の爆弾設置ポイントが決まっており、マップにはAとBの2つがある。どちらを守るか、どちらを攻めるか? カウンターテロリスト側はどうしても2つのポイントを守っておかなくてはいけない。テロリスト側は戦力を集中することも可能だが、相手は迎撃に秀でている。このため、フェイクを入れたり、熱い読み合いが発生するのだ。
こちらも試合後アナリストのMamE氏に聞いたのだが、勝敗を分けたのはAbsoluteの“強い心”だったという。Absoluteは集団でB地点に殺到するという作戦を、読まれても、対策されても繰り返し、そして強引とも言えるポイントを重ねていった。Ignisはメンバー全員で積み重なって高さを稼ぎ、Absoluteを止める作戦にも出たが、それは“奇策”止まりで、Absoluteの心は折れなかった。わざと作戦を繰り返し、そしてポイントを重ねることで、「彼らを止められない」という気持ちを相手に刻み込んだのだ。
各選手のスキル、一瞬一瞬の連係、刻々変わる鏡面での動き、誰がカバーし、誰が前に出るか。そういった細かく、即断の動きをしながら、対策をする、読み合いをする、相手を削って次に備えるといった大局を見据えた動きをする。そして相手の心を折るように、自分達の力を誇示することで、相手を萎縮させる。それは世界を相手にしたからこそ得られた勝利への道だったのだろうか。今回もAbsoluteはIgnisの挑戦をはね除け、世界線への切符を手にしたのである。
試合後のインタビューではAbsoluteの苦しい現状も垣間見ることができた。昨年のインタビューではSCARZの支援の元、プロゲーマーとして1つ場所で練習を重ねていた環境こそ勝利のカギだったと語っていたが、現在は支援はない中で、それでも「CS:GO」1本での環境で練習を重ねているという。筆者には、凄まじい練習量でしか出せない実力を発揮することができていたと感じた。
Absoluteは上海で開催される「ZOWIE eXTREMESLAND CS:GO ASIA 2019」に出場する。世界はまだ彼らにとって高い壁であるが、彼らがどこまで戦えるか、注目したいところだ。
もう1つ、サードウェーブ榎本一郎取締役副社長により、来年も「GALLERIA GLOBAL CHALLENGE」が開催されることが宣言された。非常に複雑かつ奥深い「CS:GO」であるが、そこには注目すべき世界と、熱い選手達、この面白さをもっと広げたいというスタッフの想いが詰まっている。今後にもぜひ注目して欲しい。
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