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「ドラゴンクエストX」、「冒険者のおでかけ超便利ツール」に物議
レーティング引き上げと「おでかけすごろく」の機能一部停止の理由にコミュニティが騒然
2019年8月26日 07:18
スクウェア・エニックスのMMORPG「ドラゴンクエストX」のスマートフォン用サポートツール「冒険者のおでかけ超便利ツール(以下、超便利ツール)」を巡ってちょっとした騒ぎが起きている。
「超便利ツール」は「ドラゴンクエストX」のキャラクターを登録することで、ゲームにログインしなくても様々なコンテンツをプレイすることができる便利なツールだ。友達に手紙を送ったり、旅人バザーを確認したり、ゲーム内で撮影した写真を観たりといった機能に加えて、ツール内通貨「ジェム」を使うことで、畑の世話や強ボス討伐、釣りなどゲーム内コンテンツをプレイすることもできる。
「ジェム」はツールのログイン報酬として毎日もらえるが、足りなければリアルマネーで購入することもできる。ジェムを使うサービスは多岐にわたっており、時には同社のソーシャルゲームを抜くほどのセールスランキングを記録する、「ドラゴンクエストX」の有力な収益源でもある。
ことの起こりは、8月21日に「超便利ツール」のレーティングが12+から17+に引き上げられるという告知があったことだ。同時に、アプリ内の機能であるおでかけすごろくの「挑戦回数をリセットする」機能が使えなくなった。ご存じの通り「ドラゴンクエストX」のゲーム本体はCERO Aの全年齢だが、端末の設定で17+未満の制限をしている場合は、ツール自体が使えなくなる。このレーティングの変更はスクウェア・エニックス側にとっても突然だったようで、事後の発表になったことを詫びている。
レーティングが変更された原因だが、App Storeでアプリのページを見ると「頻繁/極度な疑似ギャンブル」という項目に引っかかっていることが分かる。公式の発表では、「Appleのレーティング基準の変更により『ミニカジノ』が17+のコンテンツに当たると判断されたため」と説明されている。
おでかけすごろくを知らない人のために簡単に説明しよう。「ドラゴンクエストX」のゲーム内には、娯楽島ラッカランという場所にシリーズではおなじみのカジノがある。このカジノにある「すごろく」をツールで遊べるミニゲームにしたのが「おでかけすごろく」だ。バージョン4.5後期のアップデートで、ツール内のミニカジノに実装された。
すごろくという名前はついているが、おでかけすごろくはサイコロを3つ振って、出目に応じてアイテムがもらえるというミニゲームで、ゲーム内でプレイできるすごろくのようにマス目を実際に進んでいくような要素はない。短時間で遊べるぶん、ゲーム内よりも報酬は抑えめになっている。宝箱からはカジノコインやアクセサリーなどが手に入る。必要のないアイテムはジェムを使って「ふくびき券」や「福の神コイン」に交換することもできる。レアな報酬もあるため、週に遊べる回数は3回までという制限があるが、50ジェムで回数をリセットすることができた。この回数のリセット機能は現在凍結されている。
8月21日の段階では、何が起こっているのか分からなかったが、8月23日になって公式サイトに経緯が発表された。それによると、おでかけすごろくでは、出目の数が多いがほどいい宝箱が出現する。そのため、実際の宝箱の出現率は1の目が約25%、2の目が約28%、3の目が約11%、4の目が約12%、5の目が約15%、6の目が約7%とばらつきがある。だが、演出上はサイコロを振っているため、すべての報酬が6分の1の確率で出現するように見えてしまう。
そのため「開発・運営チームにて本機能の仕様や演出の再確認・検討を行った結果、現在の『挑戦回数をリセットする』機能は適切ではないと判断し、下記の対応を行うことといたしました」という発表と共に、機能が凍結されたというわけだ。機能が公開された6月26日から、一時停止対応となった8月21日までに「挑戦回数をリセットする」を利用していたユーザーに対しては、同機能で利用したジェムと同数のジェムがお詫びとして配布されることになった。
App Storeではガイドラインに「『ルートボックス』などの方法でバーチャルアイテムをランダムに購入できるAppでは、各種アイテムの入手確率を明記して、ユーザーが購入前に確認できるようにしてください。」とあり、すごろくの確率を公開したのは、この条項に引っかかったためだと思われる。ちなみに、同じツールからプレイでき、やはりジェムが絡むランダム購入の「ふくびき所」では割合が公開されている。
ランダム課金に慣れていない開発の不手際と言ってしまえばそれまでだが、7月9日の「プロデューサー夜話」では、「ドラゴンクエストX」プロデューサーの青山公士氏から、課金要素を増やしているという衝撃の発表があり、その余波がようやく収まりかけていたタイミングだっただけに、サイコロの確率が6分の1ではなかったという事実が再びコミュニティに動揺を与えている。
レーティングが17+になると、年齢制限を入れているスマートフォンからは超便利ツールにアクセスできなくなる。「ドラゴンクエストX」はCERO Aのゲームであり、未成年も遊んでいると思われるが、課金に関係のない便利ツールも一切使えなくなってしまう。収益を上げるための仕組みを入れたせいで、ユーザーの利便性が下がってしまっては本末転倒だ。現在の仕様には根本的な見直しが入るようで、修正はバージョン5以降になるということだ。難しいかじ取りが求められるだろうが、「ドラゴンクエストX」を信じて応援し続けている多くのファンのために、しっかりとした再出発を期待したい。
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