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【おもちゃショー2018】この細かさ、このリアリティがミニチュアの魅力!
「シルバニアファミリー」、「リカちゃん」の開発者が突き詰める方向性
2018年6月8日 17:30
たくさんの魅力的な商品が出展されているおもちゃショー。本稿ではミニチュアアイテムを出展していたリーメント(Re-MeNT)を皮切りに、エポック社の「シルバニアファミリー」、タカラトミーの「リカちゃん」を“ミニチュア”という視点から取り上げたい。
ミニチュアの楽しさは“細かさ”にある。小さなサイズなのに、モチーフをきちんと再現しているところに驚きを感じる。数ミリサイズのティーカップの持ち手がちゃんと穴が開いていて指が入るところが再現されていたり、ピザの具材がちゃんと確認できたり、瓶詰めの食べ物のラベルがちゃんと判別できたり……その労力は本当に必要なのか? と思わずにはいられない。しかし、そのこだわりが感動を生むのだ。
リーメントはコンビニなどでブリスターパッケージ形式でミニチュアを販売するメーカーである。様々なテーマのミニチュアをセットにした「ぷちサンプルシリーズ」は、その細かさに関心させられる。「ポケモン」や「カービィ」などのミニフィギュアでもファンを得ているという。
会場ではミニチュアの使用例の様々なジオラマを見ることができる。やはり現実にあるものを縮小した「ぷちサンプルシリーズ」のジオラマがとても楽しい。食べ物や縁日のアイテムの他、とてもリアルなスーパーのビニール袋や、生肉や野菜、皮をむいたみかんなどがあって、本当に楽しい。開発者はもともと合羽橋の食品サンプルが大好きで、あのテイストをもっと低価格でユーザーに提供できないか、というのが企画のスタートだという。この“小ささ”は食品サンプルを超えたとても大きい魅力がある。
ジオラマで筆者がお気に入りなのが、とてもだらしない感じで乱雑にアイテムが置かれたもの。「独身のだらしない女子の部屋をイメージした」とのこと。1つ1つのアイテムは新品で綺麗なのに、良い感じで乱雑で、「だらしなさ」をとても見事に表現しており、とても、とても共感できる。カオスというのは小さな怠け心から生まれると言うことをとてもうまく表現している。Re-MeNTは一般日も出展し、ブースでの商品販売も行なわれるとのこと。かなり人気を得そうなメーカーである。
その作りの細かさ、精密さからドール系玩具として高い評価を得ているエポック社の「シルバニアファミリー」。今回も圧巻のジオラマで来場者を迎えていた。その魅力は男性までも感心させられずにはいられない。特に昨今はスマホという極めて気軽な撮影機器があるため、その細かさを共有できる。盛んに写真を撮っている男性の姿も印象的だった。
少し前のアメリカを感じさせる「架空の外国の懐かしい生活風景」をモチーフに、「田舎の家族の生活」、「車に乗っての旅行」、「親戚のいる都会の町の訪問」といったようなテーマを展開し、アイテムや新しい家族を追加してきたシリーズだが、新展開として「子供の生活」を盛り込み、園児服を着た子供達が楽器などを持つ商品を追加、幼稚園での事業風景なども再現できるようになった。赤ちゃんのフィギュアも増え、より細かく住人達の生活風景を再現できるようになったという。
「シルバニアファミリー」は、小さな手足と、大きな頭のかわいらしい擬人化した動物フィギュアが、小物とほんのちょっとの動きで驚くほど豊かな表情を見ているものに感じさせるのがスゴイ。作り手もその活用を様々に考えていて、焼きたてのピザの小物は、1ピースだけ上に持ち上がり、チーズが糸を引いている。ここに手を添えたフィギュアを置くだけで、人形がピザの1片を持ちあげているように見えるのだ。
細かく模様の入ったカーテンや、遊具の単品販売、手に持つ花束や、色々なデザインの帽子など、カスタマイズパーツや、拡張性の高い小物も多く、ユーザーは実際の家具以上に手軽に、「自分の理想の生活」を追求できる。ゲームだとEAの「シムズ」や、MMORPGのハウジングの感覚に近いだろう。シリーズのこだわりと、多くの人が共感できる「夢の生活の追求」を実現しているからこそ、このシリーズは人気があるのではないだろうか。
そしてタカラトミーの「リカちゃん」である。単純なおままごとではなく、キャラクターを置き、彼女たちの生活空間を追求するからこそ独特の“夢”が生まれる。「リカちゃん」は、3つの異なるベクトルで、女の子の夢を追求し続けている。
1つ目が「お姫様」。まるで宝塚の舞台衣装のようなキラキラの、ゴージャスな方向性。新製品のベッドはヨーロッパのお城にありそうな豪華さで、独特の説得力がある。リアリティよりも豪華さ重視で、キラキラ輝くバッグなどのアクセサリーもあって、「小さな女の子ってこういうの大好きだろうな」と思わせる。2つ目の方向性が「生活感」である、日常生活を切り取ったようなリアルさを感じさせる風景。ちょっと豪華なシステムキッチンや、全自動洗濯機もあって、“理想”を感じさせるところも楽しい。
3つ目が「職業」である。ペットの毛並みなどを整える「ペット美容室」と、「31アイスクリーム」の店舗を再現したジオラマセットで、背伸びした女の子の夢を叶えるアイテムだ。綺麗な職場で元気に働く未来の自分を想像しながら人形で遊ぶ、子供が遊びたい“動機”を見事に拾い、表現する、そういう大人の目線で見ると、改めてコンセプトや、ギミックの面白さに感心させられてしまうところがある。「玩具ってスゴイ表現媒体だな」と感じさせられるところがある。
ミニチュアは「人間世界の描写」に魅力がある。小物を広げるだけで、そこには世界が生まれ、現実とは異なる生活が生まれる。小物を増やすほど、テーマを突き詰めるほどその架空の世界はリアルになって、より具体的に、魅力的になる。今回ミニチュアをテーマに玩具を取材してみて、改めてミニチュアの持つ意味合いや、魅力がわかった気がした。