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MSI、バックパックPC「VR One」メディア向け体験会を開催

ワイヤレスで歩き回れるVR環境を実現。法人向けに11月25日より出荷開始

11月25日発売予定

価格:オープンプライス(想定売価:300,000円前後)

「VR One」とHTC Vive
パッケージ。HTC Viveの箱とほぼ同じサイズだ

 エムエスアイコンピュータージャパンはバックパック型PC「VR One(VR-ONE 6RE-002JP)」の法人向け出荷を11月25日より開始する。価格はオープンプライスで、想定売価は300,000円前後を想定。今回は発売開始に先立ち、MSI本社にてメディア向けの体験会が開催されたので、最終バージョンの使い心地を合わせてご報告しよう。

 「VR One」はCPUにインテルCore i7-6820HK、GPUにNVIDIA GeForce GTX 1070を搭載し、最新VRコンテンツを実行するのに充分な性能を持ったバックパック型のPC。ユーザーがPC環境そのものを装着することで、ヘッドセットを含むVR環境を身に付けたまま自由に動き回れるというワイヤレスVR環境を実現するのがコンセプトだ。これにより、HTC Viveで提供されているようなルームスケールのVRコンテンツをケーブルの存在を気にすることなく存分に楽しむことが可能となる。

 本製品は11月18日より法人向けの予約をスタートしていたが、MSIの中原衆望氏によると、法人から多数の引き合いがあり、法人向けだけで初期出荷分は完了してしまったため、個人向けの販売は2017年1月以降に持ち越すことになったとのことだ。中原氏は具体的な導入企業の名称はまだ話せないとしつつも、来年には一般の人でもVRアトラクション施設等で「VR One」を使った体験ができるようになるとの展望も語っている。

VR One本体。17インチのゲーミングノートPC相当のサイズ感。専用のハーネスは装着感良好

インターフェイス部。各種ディスプレイ端子のほか、4つのUSB、オーディオ端子、HMD用の電源コネクタがある
バッテリー。片方を外してもシステムは止まらないので、入れ替えながら長時間利用も可能
付属ACアダプタからの充電。電力残量は本体背面のLEDで確認できる

 基本スペックは上述のCPU・GPUのほか、メモリはDDR4-2400 SO-DIMM 32GB、メインストレージはM.2 NVMe準拠PCIe Gen3のSSD 512GBを搭載。3系統のディスプレイインターフェイス(HDMI、MiniDP、Thunderbolt3)を搭載し、将来のHMD接続にも備える。外形寸法は409x292x54mm、重量は3.6kg。スペック的にはハイエンドゲーミングノートPCによく似ているが、フォームファクタは完全オリジナルとなっている。

 ハード的な最大の特徴はホットスワップ対応リチウムイオンバッテリーを2基搭載し、VRコンテンツを1.5時間連続で利用できるところだ。なお本体の熱設計的にはGTX 1080の運用も可能とのことだが、その場合はバッテリー容量の限界から充分な連続使用時間を確保できないため、本製品での搭載はあえて見送ったという。

 バッテリーがホットスワップに対応しているということで、「VR One」ではシステムをシャットダウンすることなく予備のバッテリーに入れ替えることが可能だ。年内発売予定とされる予備のバッテリー2個およびバッテリーチャージャーを用いることで、理論上はバッテリーを逐次入れ替えながら1日中稼働させることもできる。なお、片方のバッテリーを外した状態ではシステム全体が省電力モードに入り充分なVR性能を出せなくなるため、ホットスワップを活用する場合、実際にはVR体験を小休止したタイミングで入れ替える、という運用になりそうだ。

 満充電にかかる時間は急速充電で2.5時間、通常充電で4時間。「VR One」本体への電源供給時は急速充電のみとなり、別途販売される専用のチャージャーではバッテリー寿命を延ばすために通常充電を選択可能になるとのことである。なお、本体に電源ケーブルを接続したままでの運用も可能だ(その場合、ワイヤレスVRのメリットは薄れてしまうが)。

装着し、VRコンテンツをプレイ

足元にケーブルが這わないため、気兼ねなく動き回れる
製品に付属する頭部ケーブル
ケーブル長は装着時に少し余る程度に調整されており、首を動かしても抵抗を有無ことはない
会場では有線でディスプレイ接続をしていたが、無線接続での制御も可能

 さて、東京ゲームショウ2016でも開発途中バージョンが出展されていた「VR One」だが(関連記事)、今回は出荷直前の最終バージョンに触れることができた。

 最終バージョンではTGS出展版で課題となっていたPC←→HMD間の頭部ケーブル長の問題が改善されており、HMDの装着や、装着しながら様々な姿勢をとることがストレスなくできるようになっていた。本ケーブルはHTC Vive用で、全長60cmほど。このケーブルは「VR One」のパッケージに同梱され、ユーザー自身でHTC Viveに装着する形となる。

 実際に背負って動き回ってみたところ、頭部ケーブルの問題が解決されたこともあってTGS出展版よりも自由に動き回ることができた。ハーネスをしっかりと締め込むことで「VR One」が背中に密着し、3.6kgという重量も気にならない快適さで動き回れる。2つのViveコントローラーを使って体全体で遊ぶようなVRコンテンツに最適だ。また、本体の熱が体に直接伝わらない設計となっているため、背中に熱を感じたり、汗ばむようなこともなかった。それでいてコンテンツのほうはGTX 1070の性能通り、常時90fpsの快適さで動作する。

 VRコンテンツを立ち上げるまでのオペレーションについては、基本的に2つの方法が用意されている。まず、有線でディスプレイに接続する方法。HTC Viveの場合HDMIはHMD接続に必要なので、miniDPかThunderboltで物理的にディスプレイに接続し、そこでSteamVRを起動するという形になる。デスクトップ作業に必要なマウス・キーボードはUSBによる有線接続もしくはBluetoothによる無線接続が使える。

 もうひとつの方法は無線でディスプレイを接続する方法。「VR One」では標準でリモートデスクトップ接続をサポートするため、OSにWindows 10 Proを採用している。これは、Windows 10のリモートデスクトップ機能でホスト(操作される側)になれるのがWindows 10 Proのみであるためだ。また、標準的な無線ディスプレイ接続機能であるMiracastにて対応ディスプレイ/テレビに映像を出力することも可能。もちろん、その他のサードパーティ製リモートデスクトップアプリを使ってもいい。

 VRインターフェイスを起動するところまでいけば、あとは「VR One」を装着した状態でアプリの起動・終了などのオペレーションが可能になる。本製品ではSteamVRの使用を前提としてHTC Viveの使用に最適化された構成となっているものの、Oculus Rift+Oculus Homeあるいは3Glasses等の各社VRシステムでも動作確認済みだという。

 「VR One」は高品位なVR体験を提供するプロユースにおいて高い利便性をもたらすマシンスペックとなっており、実際に多数の法人から注文が入っているとのこと。製造数の問題から個人向けの販売が来春に持ち越されることになったというのは少々残念ではあるが、「VR One」を用いた先進的な各種VR体験が登場してくることにまずは期待をしておきたい。