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MSIブースでバックパックPC「VR ONE」を体験!

小型軽量でケーブルから解放される強力PC。自在なVR体験が可能に

MSIブースの模様

 エムエスアイコンピュータージャパンは東京ゲームショウ2016にブースを出展し、GeForce GTX 10シリーズを搭載する最新のゲーミングノートおよびデスクトップPCを大量展示。ブース内では14インチ「GS43VR Phantom Pro」、15インチ「GS63VR Stealth Pro」といった2kgを切る小型軽量モデルや、ハイパワーな17インチ「GT72VR 6RE Dominator Pro Tobii」、「GT83VR Titan SLI」など今世代の多彩なラインナップを展示しており、実際にそのパフォーマンスを確かめることができる。

 中でもVRファンに注目なのは、MSI初のバックパック型PCとして11月頃のリリースを予定している「VR ONE」だ。リュックサックのようなフォームをとるこのPCは、HTC Viveで実現されるような“自由に動き回るVR”に付随するかさばるケーブルの問題を解消し、最大限の自由度で楽しめるように設計されたスペシャルな1品だ。

GeForce GTX 10シリーズ搭載の最新ノートPCを、小型から大型まで幅広く展示

HTC Viveとの併用をメインに考えられた高性能バックパックPC

「VR ONE」
VRゲームで高いパフォーマンスを発揮する
デスクトップPCとしての利用も可能だ

 VR ONEではMSIの小型軽量ハイパフォーマンスゲーミングノートPCの技術が生かされており、CPUに最新のCore i7-6700HQもしくは6820HK、GPUにNVIDIA GeForce GTX 1060/1070を搭載可能。2つの大容量バッテリーを搭載しつつ、17インチノートPC程度の大きさと全備重量3.6kgという軽量さ実現している。これに作りの良いハーネスがビルトインされており、良好な装着感で身につけることができる。

 そのマシンスペックはSteam VR Performance Testで忠実度10.4という、高性能デスクトップPC並のパフォーマンスを発揮する。「実際のVRアプリにおいても安定して90fpsを叩き出します」とはエムエスアイコンピュータージャパンの中原衆望氏による解説だ。VRで使用しないときはデスク脇にひっかけるなどで、普通に高性能デスクトップPCとしての利用も可能である。

 このコンピューターが狙うのは、かさばるVRシステムを軽量化し、より自由にVR体験を可能にするという1点だ。「GS43/GS63/GT72シリーズのようなノートPCを背中に背負えばいいじゃないか?」という疑問もチラと生じるが、よく考えるとそれらのノートPCではバッテリーパワーの不足で数十分程度のプレイしかできないことがわかる。それではプレイ準備だけで終わってしまう!

 ということで、VR ONE最大の特徴と言えるのが、バッテリーパックを2つ搭載し、しかもホットスワップが可能という設計だ。バッテリー1つは容量93Whrで、2つで200WHr近いバッテリー容量と、1.5時間にのぼる連続プレイ時間を確保。バッテリーはホットスワップが可能なので、追加のバッテリーパックを充電しておき、使用中のバッテリー残量が低下してきたら随時交換する……という方法をとれば、永遠に連続稼働させることすら可能だ。

 またVR ONEは主要なVRシステムを幅広くサポートするため充分な入出力ポートを装備するが、主にHTC Viveとの併用を想定しており、本体側にHTC Viveへ電源供給をするためのDC12V出力が装備されている。また、製品にはHTC Viveで使用するための短めのケーブルセットが付属するとのことだ。これを活用することでユーザーは完全にケーブルフリーなVR体験を楽しめるようになる。

HTC Vive、Oculus Riftなどの主要VRシステムに対応する
ホットスワップ対応のバッテリーを2つ搭載。長時間の連続稼働が可能
スペックシート。入出力ポートも充分な数が用意されている

運用にクセもある。用途は業務用がメインに?

ハーネスは非常に良い作りで、しっかりと締め込める。良好な装着感で重さを感じさせない
実際に装着したところ。背面吸気、側面排気というエアフローで熱の問題もなし
ケーブルを気にしなくて良いのは新鮮な体験だった

 実際に装着してみたところ、そのつけ心地は非常に快適だ。ハーネスをしっかりと締め込めばVR ONEが自分の体と一体化してくれ、走る、ジャンプするといった激しい運動も全く抵抗なくできる。排熱機構のための吸気は背面から行なわれ、排気は側面から行なわれる設計なので、背中が熱くなるということもない。メッシュ状のマウントにより、PC本体が直接体に触れないようになっているため、PC特有の熱を感じることもない。

 今回触ることのできたデモ機で気になったのは、PCからHMDにつながるケーブルが短すぎたこと。HMDの着脱の際にケーブルが引っ張られて抜けてしまうといったトラブルが置き、HMDの装着および運用が少々窮屈になってしまっていた。中原氏によればこのあたりは現在調整中で、製品出荷時にはきちんと調整されたケーブルを提供するとのことだ。

 実際の運用上でひとつ問題になるのは、デスクトップからVRインターフェイスに移行するまでのオペレーションだ。SteamVR起動後であれば一通りの操作をHMD+Viveコントローラーを用いたVRインターフェイス上で可能になるが、そこに至るまでのデスクトップ操作は、別途通常のディスプレイに出力してマウスやキーボードで操作する必要がある。この際はディスプレイにケーブルで接続するか、各種リモートデスクトップ等の仕組みを利用して別のPCからオペレーションを行なう必要があるため、運用に事前準備が必要となるわけだ。完全ケーブルフリーで運用するには、対応ディスプレイに無線で映像を出力できるWi-Di対応のディスプレイアダプタを追加利用するという手もあるにはある。

 こういった特製から、MSIではVR ONEの主要な用途をアミューズメント施設等の業務用向けと見ている。セガの「Zero Latency VR」といった既に稼働中のVR体験施設(レポート記事)ではAlienware Alphaという小型PCをカスタマイズしたものをバックパックに封入し、プレイ時に装着するという形態を取っているが、重量やパフォーマンス上の問題もあるため、VR ONEのような専用設計のシステムが使えればサービスのレベルがさらに上がることになりそうだ。

 価格については今のところ未定とのことだが、中原氏は「GTX 1070を搭載したMSIのノートPCの価格帯から想像していただければ」と語っている。おそらく30万円~40万円程度のレンジになりそうだ。個人用のPCとしては少々値が張るが、必要なシステムがワンパッケージに収められた業務用機器としては安価と言える。さて、この個性的なPCが実際にどのような活用をされていくことか、興味深く見守っていきたい。

格好良くまとめられた本体デザイン。入出力ポート類は背面上部に集中配置されている
本体重量のおよそ半分を占める、ホットスワップ可能なバッテリーパック。どちらか片方が刺さっていれば稼働できる設計だ