【特別企画】

アスラテック、大阪・関西万博で「未来のロボット展 Geard by V-Sido」開催

身長4mの巨大ロボットを含む「V-Sido」対応ロボット5体を展示

【未来のロボット展 Geard by V-Sido】
期間:9月16日~9月28日
会場:大阪・関西万博会場内 ロボット&モビリティステーション

 アスラテックは、2025年9月16日~9月28日の13日間にわたって、大阪・関西万博内のロボット&モビリティステーションにおいて、「未来のロボット展 Geared by V-Sido」を開催する。

 アスラテックは、ロボット制御システム「V-Sido」(ブシドー)の企画・開発・ライセンス販売を中核にして、ロボット全般の開発支援やコンサルティングを行なっている会社だ。わかりやすい採用事例としては、横浜にあった原寸大の動くガンダム(そのボディの外装が大阪・関西万博のGUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONの前のガンダムとして使われている)や、水道橋重工の巨大ロボット「クラタス」などがその代表で、ロボットではないが、落合陽一氏のシグネチャーパビリオン「null2」も採用している。

 未来のロボット展 Geared by V-Sido(以下未来のロボット展)では、V-Sidoを利用した最新ロボット5体が展示されており、その多くが初公開となる。9月19日に現地取材の機会をいただき、V-Sidoを開発した吉崎航氏にも話を訊くことができたので、その様子をレポートする。

予約不要で入場できる「ロボット&モビリティステーション」

 未来のロボット展の会場であるロボット&モビリティステーションは、東ゲートから入って大屋根リングを超えてすぐの場所にある。ロボット&モビリティステーションでは、期間限定でロボットやスマートモビリティにさまざまな展示が行なわれている。入場予約は不要で並べば誰でも入場できるが、待機列が長くなりすぎると、通行の妨げになるので、一時的に新規で並ぶことが禁止されることもある。

【ロボット&モビリティステーション】
「ロボット&モビリティステーション」は、予約不要で並べば入場できる

メカデザイナーの天神英貴氏デザインの身長4mの巨大ロボット「HL-ZERO」

 未来のロボット展で展示されている5体のロボットのなかでも、ひときわ目を引くのが身長4mの巨大ロボット「HL-ZERO」である。このロボットは、マクロスシリーズをはじめさまざまなSF作品にかかわるメカデザイナーの天神英貴氏と「エア着ぐるみ」などを多数手がけるピアニジュウイチ、アスラテックの3者で共同開発したものである。この3者は、今までに存在しえなかった可動巨大ロボットを具現化して世の中に驚きを与えることを目指ざすプロジェクトチーム「HELIOSLIVE」を設立しており、「HL-ZERO」は、HELIOSLIVEが開発した第一弾のリファレンスモデルとなり、今回の万博で初公開となる。

 「HL-ZERO」は、ニューマティックロボットと呼ばれる、空気で膨らんだ外装を金属の骨組みで動かすという新しいコンセプトのロボットである。ニューマティックロボットは、外装デザインの自由度の高さやロボットのモーション(動き)の演出性の高さ、内部が空気で満たされることによる安全性の高さが特徴だ。今後さまざまなデザインのニューマティックロボットが、商業施設や大規模イベントなどで活躍することを見込んでいる。

 「HL-ZERO」は、身長4m、シルバーとモノトーンのフォルムで4本の長い腕を持つ、未来的なデザインだ。腕や腰など、全身をダイナミックに動かすことができ、動作時の音も静かだ。取材時には、メカデザイナーの天神英貴氏が自ら「HL-ZERO」を操っていたが、そのダイナミックな動きと美しい造形は、これまでの空気で動くオブジェとは一線を画しており、来場者からの感嘆の声が聞こえた。「HL-ZERO」は、本体が軽く、カウンターウェイトを利用することで、非常に少ないエネルギーで動作することも利点だ。

 今後、HELIOSLIVEでは、さまざまな企業が持つ版権を活用したキャラクターやモンスターなどの巨大ロボットを顧客の要望に合わせた外装で製作し、現実世界に生み出していきたいとのことであり、ゲームのキャラクターや大型モンスターがリアルな姿で現実世界に登場し、ダイナミックに動くようになることも期待できそうだ。

【身長4mの巨大ロボット「HL-ZERO」】
天神英貴氏とピアニジュウイチ、アスラテックの3者で共同開発した「HL-ZERO」
左がメカデザイナーの天神英貴氏、右がV-Sidoを開発したアスラテックの吉崎航氏。2人はHL-ZEROよりもかなり前に立っており、後ろのHL-ZEROの大きさがよくわかる
「HL-ZERO」についての説明パネル
【柔らかな巨大ロボット「HL-ZERO」】
4本の腕や腰を自由に動かすことができる
【ダイナミックな動きで目を引く「HL-ZERO」】
このように手を振ることもできる
【イベント期間中にさらに進化した「HL-ZERO」】
イベント期間中に「HL-ZERO」がアップデートされ、さらにダイナミックな動きが可能になった

世界で唯一の4人乗り巨大4脚ロボットの万博スペシャル仕様「SR-02 Ver.GOI」

 もうひとつの目玉が、三精テクノロジーズが開発した4人乗り巨大4脚ロボット「SR-02 Ver.GOI」だ。三精テクノロジーズは、舞台装置やアミューズメント施設の遊戯機構などの設計・開発を手がけている会社であり、2022年2月にベースとなる「SR-02」を開発した。SR-02は、アミューズメント施設やレジャー施設、イベント会場での展示およびデモンストレーションなどに活用できるエンターテインメント分野のロボットであり、要するにモーションライドの次世代版みたいなイメージだ。アスラテック調べでは、4人が登場して4脚で歩行できるロボットは世界で唯一である。

 今回展示とデモが行われていた「SR-02 Ver.GOI」は、ガンダムオープンイノベーション(GOI)の成果として、「SR-02」をベースに2つの大型アームを搭載した、特別仕様のロボットである。前方にはハロやミャクミャクも搭載されており、まさに万博でしか見られないスペシャルバージョンだ。ガンダムオープンイノベーションとは、バンダイナムコグループが推進するサステナブルプログラムの一環であり、人気アニメ「機動戦士ガンダム」の世界観の背景にある「宇宙世紀」を現代に捉えなおして、「社会課題」と「未来技術」の掛け合わせにより、未来の夢と希望を現実化するプログラムである。万博のGUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONも、ガンダムオープンイノベーションの文脈に沿ったものであり、GUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONでもらえる小冊子にも詳しく説明が行われているので、GUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONに行った人やガンダムの世界観に興味がある人は、是非こちらも訪れてほしい。

 「SR-02 Ver.GOI」のアームは、バイラテラル制御になっており、アームが物体に接触したときの力を、操縦者が感じられるようになっている。レーシングゲームなどでいうところのフォースフィードバックをもっと高度にしたイメージだ。取材時には、吉崎航氏が実際に「SR-02 Ver.GOI」に搭乗し、脚の屈伸やアームの動作のデモを行なっていた。本来は、4人を乗せたまま自由に歩行可能なのだが、会場の展示スペースが狭いため、歩行デモは行なっていなかった。

【4人乗り巨大4脚ロボット「SR-02 Ver.GOI」】
三精テクノロジーズが開発した4人乗り巨大4脚ロボット「SR-02 Ver.GOI」
足を畳んでしゃがんだ状態
この状態で搭乗することができる。搭乗しているのはV-Sido開発者の吉崎航氏
少し立ち上がって両アームを広げた状態
足を伸ばした状態。実際は最大4人まで人を乗せた状態で歩行できるのだが、会場が狭いため、歩行デモは行なっていなかった
「SR-02 Ver.GOI」とV-Sido開発者の吉崎航氏
ガンダムオープンイノベーション(GOI)についての説明パネル
「SR-02 Ver.GOI」についての説明パネル
【搭乗者が操縦する「SR-02 Ver.GOI」】
長いアームも自由自在に動かせる
【自律でもハロやアームが動く「SR-02 Ver.GOI」】
前面に搭載されたハロやアームは操縦者が乗ってなくても自律で動いていた

タイヤ走行と4足歩行の両方に対応した小型ロボット「BALGOI」

 「HL-ZERO」と「SR-02 Ver.GOI」の中央付近にちょこんと置かれている小型ロボット「BALGOI」は、タイヤ走行と4足歩行の両方に対応していることが特徴だ。こちらも、ガンダムオープンイノベーションの一環として、将来宇宙などで作業を行なう小型モビルスーツをイメージしたものだ。「BALGOI」は、2024年10月に科学技術館で開催された「GUNDAM NEXT FUTURE SCIENCE展」に出展され、人気を集めていたが、それ以来のお披露目となる。こちらも実際はラジコン操作で自由に走行させられるのだが、展示スペースの都合により、ハロの耳を動かす程度の半静的なデモを行なっていた。

【タイヤ走行と4足歩行の両方に対応した「BALGOI」】
ガンダムオープンイノベーションの一環として結成されたプロジェクトチーム「Team Ball」が製作した「BALGOI」。このハロは上に乗っているのではなく、実際は後ろのアームで支えられており、ハロを分離させることができる
「BALGOI」の説明パネル
【ラジコン操縦が可能な「BALGOI」】
ハロの耳などが動いていた

大型6脚ロボット「ハルモニア・コンパス」も初公開

 ハルモニウムが開発中の「ハルモニア・コンパス」は、人の旅に寄り添い、人とのインタラクションを行なう大型6脚ロボットである。旅のパートナーとしての活用や不整地での荷物搬送での活用を目指して開発されており、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の未踏アドバンスト事業において「大型六脚ロボットによる適応的行動獲得システムの開発」プロジェクトとして採択されている。最近流行のQDDモーターを採用したロボットだが、4脚ではトルク不足などによって大型化が難しいため、6脚化したという。こちらも万博で初公開となるロボットだ。

【人の旅に寄り添う大型6脚ロボット「ハルモニア・コンパス」】
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の未踏アドバンスト事業において「大型六脚ロボットによる適応的行動獲得システムの開発」プロジェクトとして採択された「ハルモニア・コンパス」
「ハルモニア・コンパス」の説明パネル
【大型6脚ロボット「ハルモニア・コンパス」】
6脚をこのように自在に動かすことができ、ランタンと傘を持ったアームも動く

愛らしい猫型ロボット「にゅーすけ」

 最後に紹介するのが、身長約1mで、重量がわずか約8kgしかない、愛らしい猫型ロボット「にゅーすけ」だ。これは、ピアニジュウイチとアスラテックの2社が製作したニューマティックロボットの試作機であり、ピアニジュウイチのエア着ぐるみの技術を外装に使うことで、柔らかくて抱きついても安全なロボットを実現している。こちらも外装のキャラクターをアレンジすることで、店舗のディスプレイやテーマパークでのキャラクターグリーティングなどの活用を目指している。

【人とロボットが安全に触れあえるロボット「にゅーすけ」】
ピアニジュウイチとアスラテックの2社が製作したニューマティックロボット試作機「にゅーすけ」
「にゅーすけ」の説明パネル

ここでしか見られないユニークなロボットを是非見に来てほしい

 アスラテックのチーフロボットクリエイター/V-Sido開発者である吉崎航氏に短時間だが、お話を訊くことができた。その要旨は以下の通りだ。

 アスラテックは、万博のさまざまなパビリオンに技術協力をしています。そうした万博プロジェクトを他社と協力して進めていく中で、万博自体に興味を持ち、アスラテックも是非この機会に出展したいと考えて、今回の企画が生まれました。アスラテックはこれまで展示会などに出展したことがないんですよ。ただ、万博は普通の展示会とは違いますので、是非、さまざまなパートナーが考えた未来のロボットを見てほしいと考えました。最近、中国製のヒューマノイドの進化が著しいですが、もちろん、あれはあれで素晴らしいですし、役にも立つと思いますが、私はリジッド(硬い)な外装のロボットだけでなく、もっと別の形のロボットもあると思いますし、ここではそうしたユニークなロボットを実際に見ることができます。まさに万博ならではのイベントですので、未来のロボットに興味がある人は是非見に来てほしいと思っています。

【V-Sidoを開発したロボットの天才「吉崎航氏」】
アスラテックのチーフロボットクリエイター/V-Sido開発者である吉崎航氏