【特別企画】

「龍が如く3」は発売16周年! 桐生一馬と子どもたちの生活を描く安らぎと戦いの物語

「極3」の発表に期待!

【龍が如く3】

2009年2月26日 発売

 SEGAより2009年2月26日に発売されたプレイステーション 3用アクションアドベンチャーゲーム「龍が如く3」が本日で16周年を迎える。

 前作「龍が如く2」の数日後から始まる「龍が如く3」。本作では、関西の近江連合との抗争後、主人公の桐生一馬が澤村遥を連れて児童養護施設を営むために沖縄へと移住する。完全に極道の世界から離れた桐生が児童養護施設「アサガオ」の子どもたちと平和に暮らしているところに、施設の土地を巡ってリゾート開発や基地拡大に関する立ち退き問題が発生する。

 沖縄の極道「琉道一家」との出会いやトラブルに見舞われているさなか、琉道一家の親分と東城会の六代目が襲撃される。しかし、襲撃した男は死んだはずの桐生の育ての親である風間組組長の「風間新太郎」だった。そこから桐生は再び神室町を訪れるといった物語だ。

 発売から16年が経ち、シリーズ最新作「龍が如く8」では桐生一馬の人生のほぼ終盤まで見ることができた。そんな中で、当時を思い返しながら本作を振り返ってみたい。

【「龍が如く3」ダイジェスト映像】

桐生一馬と子どもたちの幸せな時間

 本作では主人公の桐生一馬が極道の世界を離れ、遥を含む9人の子どもたちとともに児童養護施設で平和な暮らしをしており、「龍が如く」や「龍が如く2」とは印象が大きく異なる。どことなく桐生一馬に尖りがなく、とても穏やかで人格に丸みのある雰囲気を感じられるのが特徴だ。筆者は当時、桐生本人が変わったというよりは、空気を張り詰める必要がなくなったというほうが大きいと感じていた。

主人公の桐生一馬
澤村遥

 桐生本人も元々養護施設出身であり、その養護施設を営んでいたのが東城会系風間組の組長である風間新太郎であり、風間は桐生の“育ての親”でもあった。その背中を追うように、桐生が児童養護施設を営んでいる姿は、「龍が如く」や「龍が如く2」をプレイしていた筆者からしたら違和感があったのが当時の印象だ。

当時は子どもたちと暮らす桐生一馬に違和感が強かった

 ただ、筆者的には本作によって、桐生一馬に親近感が生まれた瞬間だったと思う。今までは極道という日常生活とはかけ離れた世界の話で、プレイしながら「こんな世界もあるんだなぁ」というフィクションの物語を見ているような感覚に近かった。しかし、本作では児童養護施設で暮らす子どもたちとの交流やそこに絡む立ち退き問題など、現実で見聞きしたことがあるものだったり、実際に経験したことがあるものもあり、少しだけ今いる自分の世界とリンクしたような気がした。

 正直、桐生が子どもたちと遊ぶ、子どもたちの悩みを解決するなど想像もつかないと思ったが、ちゃんと相手になっているし、とても親身に向き合っている。元々部下たちの面倒見がいいというより、一匹狼感がとても強かった印象の桐生が、子どもたちと話し合いちゃんと解決策を見出したりしているのが、養護施設のおじさんとして、親代わりとしてとてもいいなと感じた。

子どもたちのために一生懸命苦手な料理をして、子どもたちに対して真摯に向かい続ける
子どもたちと一緒に野球だってする

 また、桐生が遥と街中を歩く機会も多く、遥との時間を大切にしているのがよくわかる。桐生と遥が一緒に出掛けて遥のおねだりを桐生が聞いている。初めてプレイしたときは遥のおねだりの多さに戸惑ったのもいい思い出だ。今プレイしてもおねだりの量が多いなとは思うものの、割と許容できるようになったのは、それだけ筆者も年を重ねたせいだと思いたい。

小学5、6年生の遥は手をつないで街を散策してくれる

 そんな子どもたちと一緒に過ごす時間は今までの金と暴力という世界で生きてきた桐生にとっても、プレーヤーにとっても少し異質な時間にも感じられた。「龍が如く」シリーズは「龍が如く7」から主人公が変わるも、最新作「龍が如く8」まで物語に登場し続けた桐生の唯一の安らぎの時間でもあったと今は感じる。

子どもたちとの時間は桐生にとってかけがえのない時間に感じた

本作から登場した新要素・本作で終わりを迎えた要素

 本作ではさまざまな新要素、そして本作以降で変わった要素が多いのも印象的だった。まず印象的なのが「天啓」だ。桐生が町中で起こったことをブログに書き起こすことで、バトルで使える新たな技を思いつくというものだが、正直あの東城会の四代目がブログを書くというのも予想外のことだった。

 桐生の対応力と発想の柔軟さが垣間見える瞬間でもあり、ちょっと想像の斜め上の行動すぎて呆気にとられる瞬間でもあったと覚えている。極道の世界から離れて1年以上、堅気として過ごしてきた桐生だからこその新しい視点での発送に至るのだろう。ただ、プレイした当時は「あの桐生さんがブログ?マジで?」という驚きでいっぱいだった。

本作から登場した「天啓」はガラケーで写真を撮ってブログを書くことで、技を習得できた

 また本作では、ゲスト声優として芸能人がオリジナルキャラクターに声を当てている。本作以降のシリーズでは登場する俳優さんや芸人さんがそのまま登場することも多くなってくるが、本作では声だけで本人の姿は登場していない。

 よくよく耳を澄ませて聞くと聞き覚えのある話し方が出ていたりもするが、登場するキャラクターとしての印象が強く、改めてプレイしたときに「そういえばこのキャラクターの声、この俳優さんだったか」と思い返すこともあり感慨深い。ちなみに本作で登場する沖縄の極道で桐生とともに戦う「琉道一家」の3人は全てゲスト声優となっている。

 ちなみに筆者は琉道一家の若衆である幹夫が面倒見がよく、それでいて可愛げもあり好きだったが、声優を宮川大輔さんが担当していると知ったのは結構あとのことだった。

琉道一家の組長名嘉原茂(なかはらしげる)
右:頭の島袋力也(しまぶくろりきや)左:若衆の新垣幹夫(あらがきみきお)

 そして、本作からバトルもシームレスになり、よりストーリーに没入しやすく、街の散策もしやすくなっているのが本作の魅力となっている。街なかでローディングもなく突然バトルが始まることは当時は驚いたが、今では当たり前になっているのも思い返せば少し不思議な感覚だ。

本作からシームレスバトル化したことでより物語に没入しやすくなった。

本作でしか見れない桐生一馬の姿がある

 「龍が如く」シリーズで桐生一馬の本質は変わらないと感じながらも、本作は極道のピリピリとした世界が少し苦手だった筆者にとってはプレイしやすい作品だった。もちろん、桐生一馬の動く理由は常に人や組織のためであることが多く、それは東城会にいた時もアサガオにいるときも同じだ。

 ただ、筆者が本作をほかの「龍が如く」シリーズ作品と違うと感じていたのは物語の緩急だ。子どもたちとの交流があるためか、ゲーム内では和やかな雰囲気でゆっくりとした時間が流れている。児童養護施設「アサガオ」はその後の作品の中でも名前が出ることもあり、桐生一馬にとって大事な場所の1つであることは間違いない。

 極道でなくなった後も、戦いの中に身を投じることが多く、本作の中でも戦うことは避けられない桐生和馬。死んだはずの自身の育ての親が人を狙撃したかもしれないというにわかには信じがたい事件を抱えながらも、子どもたちのために奔走する姿は本作でしか見られない姿だ。

 「龍が如く3」は2018年にリマスター版が発売され、現在はプレイステーション 4またはプレイステーション 5でプレイすることができるが、シリーズ初作「龍が如く」、そして「龍が如く2」はリメイク版である「極」が登場。また、2024年の新作出演者オーディションでは、龍が如くスタジオの代表である横山昌義氏が「どこかのタイミングでやると思いますよ、極3は」と発言した。

 筆者はより綺麗なグラフィックで再現された沖縄や「極」ならではの追加エピソードとコンテンツを心待ちにしている。発売から16年、そろそろ「龍が如く3」の世界を「龍が如く 極3」として味わってみたい。