【特別企画】

人類進化の過程を追体験!? サバイバル感と種の成長を楽しむアクションゲーム「Ancestors: The Humankind Odyssey」ファーストインプレッション

8月27日 発売予定

価格:4,380円(税込、PC版)

 人類の祖先が地球上に誕生し、どのような過程を経て現在のような繁栄を築いてきたのか、ということを何となく気にかけたことはあっても、それについて深く思いを馳せることはなかなか少ないのではないだろうか。今回ご紹介するPrivate Divisionの探索アクション「Ancestors: The Humankind Odyssey(以下、Ancestors)」は、そんなテーマを極限までリアルに表現している非常にユニークなゲームとなっている。

 すでに本誌においても事前情報について何度かお伝えしてきているが、本作はまず8月27日にEpic Games専売でPC版の配信が開始され、2019年12月中にプレイステーション 4/Xbox Oneのダウンロード版が発売予定。今回は実際にこの「Ancestors」をプレイする機会を得ることができたので、早速気になるプレイフィールなどを中心にお伝えしていこう。

【Ancestors: The Humankind Odyssey - Launch Gameplay Trailer】

何もわからないままゲームが進行する手探り感がスゴい!

 「Ancestors」は、1,000万年前のアフリカを舞台に人類の祖先の足跡をたどる……という、ゲームと言うよりはむしろ知育ソフト的な趣のあるテーマを扱っている作品だ。プレーヤーは、その人類の祖先たるヒト科動物となり、種族を繁栄へと導くためにさまざまな行動をとり、ニューロンを発達させて知識を蓄積し、新たな進化をともないつつ次世代のヒト科動物へと命をつないでいく。舞台はオープンワールドで、訪れた先に存在する様々な事象に対応していくアクションゲームだ。

 簡単に言えば古代のヒト科動物をいかにして進化させていくのかをゲーム化したものなのだが、そこで扱われる内容は決してシンプルなものではない。さらに本作には懇切丁寧なチュートリアル、といったものはほとんど用意されておらず、基本はプレーヤーが自身で手探りをしながら自分で進めていくという流れになっている。筆者は5段階に分けて用意されているヘルプ(チュートリアル)を、最大限に補助してくれるレベルの「完全」を選びプレイを開始したのだが、それでも初見プレイの状況では何をしていいのか、いまいち判然としなかったものだ。

 これについては筆者の本作に対する理解度の低さもさることながら、チュートリアル内容がやや抽象的であった点も否めないだろう。最初は「なんて不親切なゲームなんだ!」などと思いもしたが、プレイを進めていくうちに、逆にこの不親切さこそが本作を楽しむための欠かせない要素であるということがわかってきた。

 そんな手探りの状況から生まれた新たな発見は、その行動ができた爽快感をプレーヤーにもたらす。また、ゲーム内のメリットとしても、ヒト科動物が何らかの新発見をしたことでそのニューロンが発達し、新たな行動ができるようにもなる。このような試行錯誤を繰り返した成果が、本作ならではの独特なプレイフィールを生み出しているのだ。

導入部分で打ち出される開発陣のメッセージ。そのほうがかえってやる気が出るというもの!
舞台は1,000万年前のアフリカ。登場するヒト科動物の行動は最新の学説をガイドラインとし、ゲームに沿う形へとアレンジされた表現になっているという
特定の物事を達成するとニューロンが発達し、その結果、ヒト科動物は新たな行動ができるようになる。本作の楽しさの1つだ

つねに危険と隣り合わせのサバイバル。現代人よ、これが自然だ!

 本作の楽しさは未知を解明するだけにとどまらない。プレーヤーには、ヒト科動物を繁栄に導くために、やらなければならないことが山ほど用意されているのだ。ここからは今回の先行プレイにおける筆者のプレイ体験をお伝えしていくが、テキストにはいわゆるネタバレ要素が多く含まれるので、本作をこれから心底楽しみたい! という方は、どうかその点ご注意いただきたい。

 最初にスタートした状態ではプレーヤーキャラクターたるヒト科動物は、原生林の真っ只中に1人きりの状態で佇んでいた。このときのヒト科動物は恐怖状態に陥っており、つねに何者かに襲われる幻覚を見続けさせられる始末。この状況は初見のプレーヤーにとっても意味不明で、筆者は迫りくる幻覚を回避しながら動いていた。今でこそこの幻覚を避ける必要がないことはわかっているのだが、初見の状態ではゲーム内のヒト科動物よろしく自分もパニックに陥っていたのだから笑える話だ。

襲いくる幻覚はさながらアクションゲームのモンスターの如し。これに触れるとダメージを受けそうに思えてしまうのは筆者だけ?
ヒト科動物は、オーバーハングしているような場所でなければほとんどの木や壁を登ることができる。この驚異的な踏破力で目的地を目指そう

 なお、本作にはいわゆる全体マップ、ミニマップといったものは用意されていない。ゲームではあるが、実際は限りなくリアルに近い体験を重ねてプレイしていくことになる。ただし、ヒト科動物には知性が備わっており、これを発揮すれば周囲の状況を把握することが可能だ。最初のプレイでも、恐怖状態のただ中で知性を活用することにより行くべき場所を発見でき、ようやく危機から逃れられた。

 そうして命からがらたどり着いた集落は、数体のヒト科動物が暮らしている場所だった。しかし、ここで何をすればどうなるのかは、やはりまったくわからない。とりあえず、周囲の一族(と思しきヒト科動物)たちとコンタクトを取ろうと試みるが、どういった行動が正解なのかも判然としない。試行錯誤の末、1人のヒト科動物を操作キャラクターとすることに成功したものの、それが何を生み出すのかはまったく不明……といった感じで、この「わからん尽くし」にへこたれそうになる。

 集落には、知性を発揮して認知できたもののなかに、四角やひし形で示されたアイコンが山ほどあった。だが、それらに対してどうすれば話が進むのかについては相変わらず不明のまま。これは操作方法を把握していなかった自分の知識不足によるものだが、とは言えボタンを押すだけでは何もできないという本作の難解な操作が、この理解不能さに拍車をかけていたことも否めない。これはあとからわかったことだが、本作のボタン操作は「長押し」が基本。そうすることで、対象に向かって初めて意味のある行動を取ることができる。しかし、このときの筆者はまだその事実を理解できていない。

知性を発揮することでランドマークを発見できる。これができればたとえマップがない本作でもそうそう迷わなくなるはず
丸や四角、ひし形で示されたアイコンすべてが何らかの意味を持つ。これは知覚や嗅覚を発揮して識別することができる場合がある

 結局、満足な操作方法すら把握していないまま集落を外れた地域の探索に出発。そこでは、別の氏族であるヒト科動物との出会いがあり、話に進展が起こりそうな気配を見せるも、直後に巨大なネコ科の大型猛獣と思しき生物に襲われてしまう。樹上に逃げることで危機は脱したが、この戦いで自分が操作していたヒト科動物は骨折し、最終的に死に至るという壮絶な結果となった。

 残った一族を操作してなんとか繁栄を目指そうと試みるも、今度は食事の方法がわからず、水の飲み方もわからず、寒さのしのぎ方もわからず、空腹のまま息絶えていくヒト科動物を目の当たりにする。このヒト科動物たちは、筆者が操作する前はどうやって生き延びてきたんだよ……と、多少の理不尽さを感じつつも、ようやく食事の方法を会得する頃にはほぼ壊滅状態に。ここに至る半ばトラウマになりそうな展開で筆者の心も折れかける。

 しかしここまでノーヒントなゲームも珍しいな、と思いながら改めてコントローラーのボタンを色々と押してみたのだが、十字キーの下を入力した時点でいきなりHUD(ゲーム内の各種情報)が出現。そこには、対象物にどのボタンを押せばどんなアクションができるのか、といったことが表示されていた。つまり、デフォルトでこの表示はオフになっていたわけである。操作方法欄にもこれについての記載はなかったのだが、これもまた手探り感を楽しんでほしい、という開発側の配慮なのだろうか?

 ともあれ、このHUDのおかげでゲーム展開に劇的な変化が訪れた。知性を発揮したあと、対象に対して何をすればいいのかがある程度わかってきたからである。もう少し早くこれが判明していれば、最初に出会ったヒト科動物たちも、もっと生き延びられたかもしれないな……と思わないではなかったが、気を取り直してリスタートを決意した筆者であった。

初めての外敵との戦闘。しかし、何の武器も持たないヒト科動物に対してネコ科の大型猛獣はあまりにも強すぎる敵だった。逃げることを選択するが……
筆者の努力(?)も虚しく、生命活動を終えてしまったヒト科動物。自然界の過酷な洗礼に呆然とする

多様な行動とともに成長していくニューロンが楽しい!

 初回プレイである程度の操作方法を把握したところで、再び最初からプレイを開始。2度目ともなれば、初見プレイでは気に留める余裕がなかったメッセージの内容も理解できるようになり、最初の集落までは難なく到達することができた。そこで改めて集落内でHUDの表示に従ってを知覚を始めてみたところ、かなりの植物、鉱物があることも判明。こうして一通りの調査を終えてみると、この集落は食料も水も寝床もある、まさに生活の拠点といった場所だった。

 定期的に食料や水を摂取し、日々適切な睡眠をとることで各個体の健康を維持できるようになり、その結果、さまざまな場所での調査も大胆に行なえるようになった。こうして積極的に調査を重ねたことで、初回プレイではその存在すら把握できていなかったニューロンが、活発に成長していることも確認できた。実は、このニューロンが種族繁栄のカギを握る要素となっていて、どうやらこれをいかに成長させていくかが本作を楽しむポイントの1つでもあるようだ。

初回のプレイでは意味のわからなかったアイコン群も、HUDがあれば比較的簡単に適切な対処ができる。まずは周囲のアイコンをすべて識別するところから始めるといいかもしれない

 ニューロンが成長すると、ヒト科動物はそれまでにない新たな能力を得る。それは例えば、能力獲得以前はただ手に持てるだけだった木の枝を加工できるようになったり、他のヒト科動物とのコミュニケーションが取りやすくなるなど、生きていく上で有利になるものだ。ただし、これらがどんな条件で発動するかは、初見プレイにおいては知る術はない。

 これらの能力はランダムで発動しているわけではなく、運動、知覚、知性、コミュニケーションの各カテゴリに関連した行動によって成長していく。そのことについては進化メニューを見ることで確認が可能だ。さらに、新たな行動を行なうだけでなく、既知の行動を繰り返すことでさらに洗練された行動ができるようになる、といった成長も見せるため、どんな行動にも成長の楽しみがあると言える。

 こうしてさまざまな能力を獲得し、その知識を次世代のヒト科動物へと受け継いでいき、世代を重ねて自然界に負けない強靭な種へと発展していく……というのが、本作の大きな流れであり、人類創世の足跡をたどるという本作のテーマともなっている。今回のプレイではそのほんの一端を垣間見ただけのプレイではあったが、そのゲーム然としていない作品の構成には心底、驚かされた。

 王道のRPGやアクションゲームを好みがちな筆者だが、今回紹介した「Ancestors」はそれらとは明らかに一線を画しており、それこそニューロンを刺激されるかのような不思議な感覚を味わうことができた。平たんなゲームライフにアクセントを加えたい方には、ぜひとも一度、プレイしてみてほしい作品だ。

新たな体験にともないニューロンが成長。それと同時にヒト科動物は新たな能力を獲得できる
ただの木の枝を加工することで武器的な棒を作ることができた。さらに石を使って加工を重ねると槍のような形状にも! こういうことができるのもニューロンが成長したおかげだ
蓄えた知識は確実に次世代へと伝え、さらなる種族繁栄を目指していこう