インタビュー
マップは広く、銃は多く。「ボーダーランズ4」開発インタビュー
話題になったミニマップ廃止の真意や明かされるシリアスとユーモアのバランス感
2025年6月18日 22:00
- 【ボーダーランズ4】
- 9月12日 発売予定
- 価格:
- 通常版:9,460円
- デラックス・エディション:13,860円
- 超デラックス・エディション:16,500円
2Kより9月12日に発売が予定されているシューティングRPG「Borderlands 4(ボーダーランズ4)」。本稿では、開発を務めるGearbox Software創設者&社長のランディ・ピッチフォード氏と、Gearbox Softwareグローバル・クリエイティブ・エグゼクティブオフィサーを務めるアンドリュー・ライナー氏両名へのインタビューをお届けしていく。
「ボーダーランズ4」は、新たな惑星「カイロス」を舞台に新たなストーリーが展開する「ボーダーランズ」シリーズ最新作。対応プラットフォームはプレイステーション 5/Xbox Series X|S/PC/Nintendo Switch 2で、価格は9,460円から。Nintendo Switch 2版のみ2025年発売予定。
今回のインタビューは、同時に開催されたハンズオンプレビューに合わせて実施されたもの。マップ制作からジョークに至るまで、開発のこだわりを伺うことができた。
あらゆる面で“ボーダーランズ”のレベルアップに挑戦
――シリーズは長く続いていますが、開発チームとして今回特に新たに挑戦したかったことはありますか?
ピッチフォード氏:「ボーダーランズ4」は、シリーズ史上最も野心的な作品です。おなじみの「ボーダーランズらしさ」はそのままに、ゲームプレイとストーリーテリングの両面で新たな進化を遂げています。
本作では、過去作から続く物語の遺産をさらに深めることはもちろん、プレイヤーに愛されてきたユーモアやトーンの進化、シリーズ史上最も多様で奥深いスキルツリーの導入、ダイナミックな移動アビリティの追加、そしてシームレスかつ変化に富んだ世界での没入体験など、あらゆる面で“ボーダーランズ”のレベルアップに挑戦しました。
さらに、「ボーダーランズ4」は最初から協力プレイを前提に設計されています。各プレイヤーごとに個別にドロップされるインスタンス制ルート、レベルに応じたスケーリング、プレイヤーごとの難易度設定により、仲間と一緒に最後まで楽しくキャンペーンを進めることができます。
カイロスでの大暴れはソロでも楽しいですが、仲間と一緒ならさらに最高です。新たなロビーシステムにより、最大4人までのオンライン協力プレイが、これまで以上に手軽に楽しめるようになりました。途中参加・途中退出ももちろん可能です。
――「グラップリング」や泳ぐなど、今回の新アクション要素を実装する際に、特に難しかった点や没になったアイデアはありますか?
ライナー氏:「ボーダーランズ4」では、プレイヤーが世界を移動する際の自由度をこれまで以上に高めることを目指しました。こうしたシステムを構築していく中で、戦闘においてもプレイヤーがこれまでにない方法で武器を駆使し、暴れ回ることができるようになり、さらなる価値を提供できると気づきました。
これまで水のエリアはプレイヤーにとっての障壁として使われてきましたが、今回はシームレスな世界を実現するにあたり、泳ぎや「デジランナー」という移動アビリティの新要素を導入しました。移動性については常に「プレイヤー目線」で考え、体験を向上させる要素はすべて残しました。ダブルジャンプは現実的には意味がないかもしれませんが、楽しいんです!
マップの広さや銃の数で過去作を大幅更新
――今回、シームレスなマップを採用しているとのことですが、具体的にどの程度の広さや密度になっているのでしょうか。マップを一周したときのプレイ時間はどれくらいでしょうか?
ピッチフォード氏:前作「ボーダーランズ3」よりも広大なマップを目指しています。
ライナー氏:シームレスなマップ構成以外にも、我々が「インテリア」と呼んでいるような別の空間のコンテンツがあります。それを入れると、一周のプレイ時間は思い出せないぐらい長時間になります。
正直、広いマップ構成が狙いではなかったんです。ただ、クリエイティブの過程で次々と発想が生まれて、それが余りにも楽しかったので、どんどん付け足していったらこのサイズになったという感じです。
一方で、密度はバラバラなんです。例えば、あっちの街とこっちの街はすごく密度が高いけども、その間を繋ぐ道路はそうではないこともあります。そういった道路もカスタマイズに関するものだったり、あるいはダイナミックなイベント的なものがあったりする場合があります。
総合すると、本当に探索が楽しくなるように散りばめました。
ピッチフォード氏:彼(ライナー氏)はすごいニッチなところまで取り組んでいて、デザイナーが作らなかった空間を見つけては、そこに色々アプローチをしているので、楽しみ方は凄く深くなっています。
――シームレスなマップでの探索やゲームプレイにおいて、特に工夫されたところはありますか?
ピッチフォード氏:“工夫”は全部したので……どれでしょうね(笑)? 直接的なお答えになるかは分かりませんけども、何度も何度も見直して改良を加えたところがあります。
こだわったのは、“どんなふうに物語が始まるか?”と、“終わりに向けてサプライズ”を埋め込んだ部分があります。ただ、これを話してしまうとネタバレになるのでナイショにしておきたいです。
後はボスファイトですね。エネルギーを凄く使いましたし、そういった意味では注目していただきたいなと思います。今回、体験できるのはサイドヴォルト(「ヴォルトミッション」のこと)ですが、メインのボス戦はもっと凄いので、楽しみにしてください。
――今回の物語は前作のエンディング直後から始まっていて、シリーズ初となる「カイロス」が舞台です。過去作からどのような進化や変化を見せようとしているのでしょうか? 登場する敵やマップギミックはどのように変わっているのでしょうか?
ピッチフォード氏:ストーリーは確かに過去作から繋がっているのですが、前作についての知識がなくても新しく楽しめます。カイロスでどのような物語が展開していくのかを、本作から追っていただくだけでも、十分楽しいストーリー展開だというのが、特徴の一つだと思います。
改良点については、ゲームのあらゆる要素に取り組み、改善しようと努力しました。ストーリーそのものもそうですし、ストーリーを体験するプレイヤーの自由度も高めました。美しいディテール、グラフィックスは言うまでもありません。
ルートチェイス(武器の探索)も過去作ベストですし、ギアといった装備についてもです。ゲームバランスという意味では、「レジェンドはレジェンドらしく」というところにもこだわりました。登場する機会を減らして、貴重さをより高めています。
後はパーソナルビークルです。以前は、ステーションまで取りに行く必要性がありましたが、それが装備の中に組み込まれていて、バックパックから出し入れできるようになっています。
ライナー氏:先ほど、マップ構成で広さや密度について質問をいただきましたが、そのほかにも“生き生き”としているところをぜひ体感してもらいたいですね。小動物がいたり、鳥が飛んでいたり、本当に生き生きとした空間が特徴です。
ミニマップ廃止の狙いとは?
――発売後にDLCといった追加コンテンツのプランがあればお聞かせください
ピッチフォード氏:なるほど……(笑)。我々にも色々な野望があり、ダウンロードコンテンツを作りたいという想いはあるので、ぜひ楽しみにはしてもらいたいです。ただ、この話をするには時期尚早です。まずはゲームをしっかり作り切るというところなので。
――ミニマップの廃止が大きな話題になりました。「ECHO-4」でのナビゲーションを通じて、マップやドロップ品の探索にどのように影響しているのかについてお聞かせください
ピッチフォード氏:まず、「世界観全体を楽しんでいただきたい、ミニマップそのものだけが全てはでない」というのが、クリエイティブディレクターの意図したところです。コンパスを使った、広い世界観ならではな部分を強調して作り込みたいというのがクリエイティブディレクターの思いです。
また、本作は3Dの世界観を活かして、東京のように色々な層が上に立ち並んでいる様子を表現したいと思いました。ミニマップだと高さの表現が難しいのですが、「ECHO-4」を用いることでナビゲーションは容易にでき、さらにコンパスによって目標の位置が自分の上か下のどちらにあるかが分かります。
加えて、フルスクリーンのビッグマップはボタン1つで表示でき、それで全体図も確認して貰えます。ミニマップにかけていたリソースを他に充てることで、より美しい世界観や素早いアクションの実現などに繋げています。デザイン的にもパフォーマンス的にも結果的にプラスとなりました。私たちにとってはそれが「エレガンス」です。
古参ファンに「ハグ」。なおかつ「導入にふさわしい作品」に
――古参ファンは非常に楽しみにしていると思いますが、今作が新規プレイヤーの方々に向けて意識したところがあれば教えてください
ピッチフォード氏:まず古参のファンの皆様を、この「ボーダーランズ4」で抱きかかえるようにエンターテインしようと思いました(優しくゆっくりとハグするようなポーズ)。そして同時に、新しいプレイヤーたちにとっての“導入にふさわしい作品”にしようという思いもありました。
既存の方々にとっては、コントロール感、スタイル、テーマ、ユニバース、キャラクターなど、どれを取っても馴染みあるものです。新規の方々にとってはこの世界に入った時から、いかにしてこの世界を楽しめるかという事をイチから学べるようにしています。
――「ボーダーランズ3」の時は公式サイトや公式の動画で過去のストーリーを振り返ることができ、さらに最後のアップデートで4に繋がるDLCも出ていました。そういった施策はありますか?
ピッチフォード氏:これに関しては言いたいことがすごくあるのですが、何も言えません……(笑)。いろいろ察していただければと。
ストーリーの振り返りについては、「ボーダーランズ4」のゲームそのものにはそこまで入っていません。マーケティングでは既存ファンの期待値を高めるようなこと行なっていくとは思いますが、「ボーダーランズ4」は過去作品のことを忘れていても楽しめます。必要なことはストーリーテリングの中に入れ込んでありますので、過去作品のファンであれば「あっ」とするような懐かしい瞬間も楽しんでもらえると思います。
「スター・ウォーズ」はご存知でしょうか? 例えば「エピソード3」を見ていなくても、「エピソード4」から楽しめますよね。私たちもそんなようなことを考えながら、順番を決めて制作しました。
ライナー氏:新しい世界観に没入していただくポイントとなるのは、「タイムキーパー」(今作の敵役)だと思います。私たちはそんな風にタイムキーパーをデザインしました。このタイムキーパーがどれほどの脅威なのかということを感じることにより、スッと世界観に入っていけるように作ったつもりです。
――「ボーダーランズ」シリーズというと、ユーモアやジョークを織り交ぜているところがあると思うのですが、今作に関しては開発チーム内でどのようなバランスで扱う議論が交わされたのでしょうか?
ピッチフォード氏:「ボダラン」の魅力は、普通だったらマッチしないものを“あえてマッチング”させる、共存させるというところにあると思っています。
ファーストパーソンシューターとロールプレイングの良いとこ取り、コンビネーションが我々の作品なんです。さらに「サイエンスフィクション」と言われるジャンルと「西部劇」みたいなジャンルの間。常にこの“ボーダー”のところを意識しています。皮肉的なとものとリアリズムの間、コメディとドラマの間といったように、どっちか一つではなく、それらの全ての間に立ち、そしてそれらの両方であるところが特徴だと思います。
必ず我々が走るセンターラインがあって、そのセンターラインを走りつつも、楽しみは散りばめておきたいと制作チームは考えています。時々ジョークの方が盛りだくさんになってしまうんですが(笑)。人間ですので、ユーモアは大事だと思いますし、我々自身も作品を作りながらとても楽しんでます。
ライナー氏:ただ、タイムキーパーはジョークを言ったことがないと思いますよ(笑)。
ピッチフォード氏:そうですね(笑)、 彼は何千年も宇宙を支配しておりとてもシリアスな人物です。「ダースベイダー」ですらコメディアンに見えてしまうかもしれません。
ライナー氏:そういうタイムキーパーがいる一方で、「クラップトラップ」のようなキャラクターがいることで良いバランスを作れているのかなと思います(笑)。
ピッチフォード氏:「ボーダーランズ4」は過去作の物語を土台にしながら、シリーズの代名詞でもあるドライでダークなユーモアを継承・進化させ、プレイヤーに愛されてきたトーンを再構築しました。そして、それにふさわしい壮大で緊迫感のあるストーリーをお届けします。
物語と脚本全体は、非常に才能あるチームがリードしています。彼らの手がけたストーリーを、ゲームの発売時にぜひプレイヤーの皆さんに体験していただきたいと思っています。
――本日はありがとうございました!