インタビュー

宮本茂氏 発売記念インタビュー、自信の仕上がり!! Wii U「ピクミン3」

キャラクターを投げることで広がるゲームの幅

キャラクターを投げることで広がるゲームの幅。期間制限があるようでなく、色々な方法でスコアが磨ける

「ピクミン3」では「3人のキャラクターが出てきて、順番に出会っていくのが大事だった」という

―― 「ピクミン」では1人旅での事故、「ピクミン 2」では会社の借金返済ときて、「ピクミン3」では星の食料危機を救うお話になっています。これまでと比べると、世界観やストーリーの規模がかなり大きなりましたが、シリーズを重ねていくことで話を大きくするよう意識されたのでしょうか?

宮本氏: ゲームが面白い方が大事なので、お話は優先しないのですが、今回は3人のキャラクターが出てきて、順番に出会っていくのが大事だったんです。この3人はお互いをピクミンのように投げることができて、「ゼルダ」シリーズの謎解きのように、本来なら行けない場所に投げることで辿り着けます。さらにそれぞれが適当にAIで作業するんです。タイムアタックをすると、ピクミンを引っこ抜くのに結構時間がかかるのですが、そういう所を勝手にやってくれるんです(※3)。また、GamePadで指示を出すと、指定した場所まで移動してくれます(※4)。移動、ピクミンを抜く時間などを平行で進めるとタイムは全く違ってきます。そういう意味で3人のお話が重要だったんです。

※3: キャラクターをオニヨンの側に置いておくと、ピクミンが生まれた際に自動で引っこ抜く。

※4: 「ここまで移動」と呼ばれるシステムで、マップ上の行きたい場所を選び、「ここまで移動」をタッチすると、リーダーと隊列にいるピクミンが指定場所まで移動する。

―― ピクミンだけでなく、人を投げて、さらに投げた人に操作を切り替えてとなると、できることがすごく多いですね。

宮本氏: そこがアクションゲームというところですね。切り替えを駆使して遊ぶとボタンが複雑なんですが、慣れればテンポ良くできます。アクションゲームは冷静さを欠いて、できるはずのことができないのが大きな要素なんです。そのかわりピクミンやキャラクターを素早く切り替えてプレイできると、技が出せた時のような快感があります。その辺りは頭より、体で覚えてもらうように仕上げています。

 ストーリーの話題に戻りますが、1作目の「ピクミン」はロケットの部品を回収し、ロケットで脱出するのが目的で、30日間しかいられない。映画なら必ず無事に脱出してしまいますが、ゲームでは自分ががんばらないと脱出できるかどうかわからない。マルチエンディングのようにしたかったんです。ただこれには少し隠しネタがあって、揃わなくても脱出できる部品もあるんですけどね。

 「ピクミン」は、そんなに時間がかかるゲームではないですし、バッドエンディングになってももう1回遊んでくれると思っていたのですが、意外とゲームは越したら(クリアしたら)終わりという人が多かったんです。僕はゲームを楽しみたい訳で、最後までいくのが目的ではない。もちろん最終的にいけたらいいですけど。ピクミンというのは、その間楽しみをいかに見つけるかというゲームで、30日プレイしてから本当の面白さがわかってくるようにしたつもりでしたし、ストーリーもそのように作りました。そういうことがあって「ピクミン 2」では、がんばれば無限にスコアを伸ばせるようにしたんです。

 そして「ピクミン3」は、何度も遊んで面白さを味わう意味で「ピクミン」に近いのですが、30日経ってまた最初からやるのではなく、期間中、色々な方法でスコアを磨けるようにしてあります(※5)。フルーツを集めるとプレイできる期間が増えるし、フルーツを集める以外にも目的があります。フルーツを集めてゆっくり進めてもいいし、集めるフルーツを最低限にして、短い日数でクリアを目指すこともできます。

※5: フルーツはジュースにすることでキャラクターたちの食料となり、滞在日数1日につき、1瓶のジュースを消費する。また、ジュース残量に関係なく、時間を戻して同じステージをプレイすることが可能。1回プレイしてステージを確認し、時間を戻して確認済みのステージを攻略するといった遊び方ができる。

―― フルーツは無限に集められるのですか?

宮本氏: だいたい100日分くらいです。1個のフルーツで2日分できることもありますし。普通に遊んでいれば、40~50日くらいで終わります。30日くらいで遊ぼうとすると面白くなってきて、10日くらいでクリアできる人が出てきたら、ちょっと燃えてきますね(笑)

―― 10日でいけるんですか!

宮本氏: ちょっと今は言えません。一応「30日くらいを目指しましょう」としているんですが、「ピクミン」では最終的に10日の記録が出ましたし、ピクミンを1匹も殺さない記録も出ました。そのあたりはどんな遊び方をしてくれるかわからないので、今の段階では無限に上があると言えます。

 また、主人公としてではありませんが、「オリマー」が何らかの形で登場します。「ピクミン」、「ピクミン 2」を遊んできた人は、「オリマー」がどう絡んでくるのか楽しみにしてもらいたいですね。

―― 「ルーイ」や「社長」も出てきたりするんでしょうか?

宮本氏: 今の所は「遊んでもらって」とだけ言っておきます(笑)。

フルーツを持ち帰るシーン。フルーツを集めていけば、だいたい100日分くらいは遊べるのだとか。もちろん、フルーツを持ち帰らずに効率化を図り最短でクリア……なんて楽しみ方も可能!
アルフと赤ピクミン。このスクリーンショットは冒頭でアルフが不時着し、初めて赤ピクミンと出会うシーン。未知との遭遇だ

深くしたいのはゲームの仕組み。遊んでいくほど、プレーヤーとピクミンの関係ができてくる

―― 「ピクミン」シリーズは命名がユニークですよね。

宮本氏: 奔放なんです(笑)。

―― 例えば「コッパイ星」(※6)の由来は、昔の社名の「任天堂骨牌」からきているのでしょうか?

宮本氏: ディレクター達が楽しんで考えてるので、僕もよく知らないのですが、「ピクミン」では、「ホコタテ星」は鉾立町(任天堂本社の所在地)からつけましたね。身近な日本語を海外に出すのは面白いじゃないですか。例えばアタリ(Atari)は囲碁用語の「アタリ」から名づけてますし、その後「センテ」という会社も作っています。そういうこともあり、割と奔放に名前をつけているんです。任天堂は花札や麻雀牌を作っていて、それらは骨牌とも呼ばれるので、そこから名づけたのかもしれません。

※6: 「コッパイ星」は、主人公アルフ、チャーリー、ブリトニーの母星。人口増加と住民たちの無計画な気質により深刻な食料危機を迎えてしまう。

―― 他にも「惑星PNF-404」(※7)は、「Page Not Found」を文字って「Pikmin Not Found」なのかなとか勝手に想像したりしていました。

宮本氏: よくそこまで考えましたね(笑)。僕がストーリーなどで関わっているのは、あらすじをチェックして、必要かどうかを判断するだけで、クリエイティブは現場でやっているので詳しくはわかりませんが、総ディレクターに聞いたら多分そうだと言うんじゃないですかね。本当に奔放にやってますから(笑)。

※7: 「惑星PNF-404」は、本作の舞台となる惑星。食料を求めて放たれた無人探査機により発見され、さらなる調査を進めるため、主人公たちが送り込まれた。

―― 必要かどうかの判断基準はどのようなものなのでしょうか?

宮本氏: ピクミンがどう見えるかがすごく大事で、プレーヤーとピクミンの関係をごちゃごちゃ乱すものはいらない。ただ、遊んでいると疲れてきますから、息抜きが欲しくなります。そこでプレーヤーを癒してくれるような気の利いた会話はところどころで欲しいんですね。

 深くしたいのはゲームの仕組みであり、遊んでいくほど、プレーヤーとピクミンの関係ができてくるように考えています。そういう関係がいいと思うんですよね。お話を書くことを専任する人が付くと、話の流れや演出に力が入りすぎるので、そっちに入り込まないように、ピクミンには余計な設定はいらない。そういう風に作っています。

有無を言わさず選ばれた岩ピクミンと羽ピクミン。その理由とは?

―― 今回、羽ピクミン、岩ピクミンが新たに登場します。この2種類にすぐに決まったのですか?

宮本氏: 色々なピクミンの提案はありましたが、この2つが有無を言わさず選ばれました。

―― どのような理由だったのでしょうか?

宮本氏: ピクミンというのはルートを見つけるゲームなんです。空を飛ぶということは他のルートを無視できる。これまでは地図上にルートを拓いていくことでルートが出来ましたが、羽ピクミンの場合、ピクミンを見つけることでルートができます。ゲーム要素として一階層深くなるんですね。

 また、これまでのシリーズではピクミンを投げる位置を細かく狙えませんでしたが、今回はポインターのカーソルが出て、対象にプロジェクションされるようになっています。コレでより正確に狙うことができるようになりました。チャッピーの目を狙えるようにしたかったんです。狙った位置に投げられるので、ぶつけるものが欲しい。そこで岩ピクミンなんです。

 ピクミンが増えると操作が難しくなりますし、今回は3人のキャラクターを使い分けるので、「ピクミン 2」で登場した白・紫ピクミンはストーリーモードでは出てきません。ただ、ミッションモードでは白・紫ピクミンは登場します。

―― ミッションモードでは、白と紫ピクミンが出てくるとのことですが、最大でも7種類切り替えることになるのですか?

宮本氏: 最大で5種類です。さすがに7種類同時に出てくることはないので、ご安心ください。

―― これまでの5種類のピクミンに加え、岩と羽が加わり、計7種類が明らかになっていますが、まだ隠されているピクミンがいたりするのでしょうか?

宮本氏: 言えないと言っておいたほうがいいかなぁ(笑)。

―― 期待しちゃうかもしれませんが(笑)。

宮本氏: プログラマーが勝手に仕込んでなければいないですね(笑)。

色々なアイディアが開発陣から出たが、羽ピクミン(左スクリーンショット)と岩ピクミン(右スクリーンショット)は、わかりやすさから即決だったという。ちなみに、今回色ではなく“羽”と“岩”となっているが、宮本氏によればわかりやすさが大切で、色に思い入れがあるわけではないという
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(木原卓)