PS3/Xbox 360「CLASH OF THE TITANS:タイタンの戦い」
ゲームリパブリックの岡本吉起氏インタビュー

4月16日収録

会場:ワーナー・ブラザース試写会場

 

右がゲームリパブリックの岡本吉起氏、左が開発部ディレクターの三輪賀一氏

 この春、話題を集めている映画の1つと言えば、「タイタンの戦い」の名が挙がるだろう。4月23日より、丸の内ピカデリーなど全国ロードショーが開始され、人類と神々の戦いという壮大な世界観を迫力あるCGで描いている。また、いま話題の3D映画としても注目を集めている。

 その「タイタンの戦い」がゲーム化される。6月17日にバンダイナムコゲームスから発売が予定されているPS3/Xbox 360用アクション・アドベンチャー「CLASH OF THE TITANS:タイタンの戦い」がそれだ。制作を手がけているのはゲームリパブリック。実はゲームの制作は映画の企画段階から深く関わっているという。

 しかし、映画の情報はなかなか得ることができず、制作にはかなりの苦労があったとか。試写会のイベント後に一部媒体による共同インタビューが開催されたので、そういった話も含め、今回の映画のゲーム化について様々な話を岡本吉起氏と開発部ディレクターの三輪賀一氏に伺った。



■ 岡本氏「映画関係者が見たら腰を抜かしそうなブッ飛んだ武器もある!」

気さくに様々な質問に答えてくれた岡本氏

聞き手: ゲームリパブリックで提案したゲームの企画の一部が映画制作のプレゼンテーションに使われているそうですが?その映像がワーナーに気に入ってもらえて、映画化が決定したとはすごいですね。

岡本氏: ちょっと嬉しくないですか? 自分たちとしては凄く嬉しかったです。

聞き手: 映画をご覧になられて「ゲームは、ここをこうしたほうが良かったかな?」、「今、直したいなぁ」といったところは出てきましたか?

岡本吉起氏(以下:岡本氏): 直したいのは、、ありますね(笑)。ゲームって、やっぱり“妥協の賜物”というか。凄くやりたいこといっぱい、大風呂敷を広げておいて、それが、ちょっとずつ諸事情において小さくなっていくんですけど。できることなら、映画のエンディングに合わせておきたかったですよね。ボクらが聞いていたエンディングと違ってたから。映画は、たぶん続編があるような終わり方になってましたけど、ボクらのは完全に完結した終わり方になってますから!! 映画とは随分違う(一同笑)。

聞き手: ゲームはプレーヤーの遊び方でストーリーなど色々と変わってくるのは、アリかと。

岡本氏: ゲーム的にはそれでよかったです。ただ、映画の映像を見ないでゲームを制作したので、ドキドキはしましたよ。奇跡ですよ、雰囲気が合ってたのは。止め絵だけもらって……本当に写真なんですよ。それ見て、どんな動きをするか想像するなんて、まぁ、不可能に近い。たまたま合った。

聞き手: 映画のコンセプトの立ち上げから関わっておられたということで、映画の公開まで制作期間が決まっていたと思うのですが、それにあわせるという苦労はありましたか?先ほど出た「見せてもらえない」といったこと以外にもありましたか?

岡本氏: 日本とアメリカのあいだをデータが行き来して、承認されて返ってくる。1番はこの“タイムラグ”ですね。ほとんど大丈夫といっても“ほとんど”なので、やっぱり引っかかるやつはあるわけですよ。そういうのは、全部手戻りですよね? あとは先方の都合でデザインが変わることも当然ありますし。原因はボクたちにあるんですけど。そういう手戻りの部分を、計算に入れてなかったことですかね。なので、ちょっと後半ドタバタしましたね。あと、もうちょっと早く(資料を)見せて欲しいよね!? なんでもうちょっと早く見せられないの!? みたいな。もうちょっと早けりゃぁ……っていう。

聞き手: エンディングも?

岡本氏: いや、エンディングの件は……(苦笑)。まぁでも逆に、ゲームとまったく同じじゃないから。ちょっとアナザーストーリー的になって、ボクたちのほうがスッキリはします。

聞き手: ゲームとしては、中心のストーリーは映画と同じ。それがゲームリパブリックのサイドストーリーで厚みを増している。全体のボリューム、プレイ時間はどれくらいですか?

三輪氏: 全体だと、順当に遊んで30時間くらいですかね。ただ、やり込んだら50時間くらいある。相当ボリュームがあるんじゃないかと。

岡本氏: アクションゲームって、わりと手離れがいいというか、上手くやればウィークエンドくらいで終わるくらいが普通のボリュームなんですね。まぁ、ちょっとは(それに比べると)長いですね。それも、ずーっと詰めてですから。結構な時間、遊べるんじゃないかと思っているんですけど。

聞き手: 主人公が色々な技を使っていましたが、あれも全部想像で作った?

岡本氏: そうです。映画では、あんなことしないですよ(一同笑)。映画のなかでは半分神様、半分人間なので、彼は剣の使い方を練習するくらい。「お前、剣の使い方を知っているのか?」って。

聞き手: では、少しずつ成長していく部分は、映画と共通しているということですか?

岡本氏: そうですね。ただ、ゲームではドーン! と成長する。いいの? こんなに成長して? みたいな。ゲームではどんな武器でも扱えるようになるし。

聞き手: 見所のひとつとして、敵の能力をとって戦う。これも映画とは……。

岡本氏: 映画でもちょっとあったよね?

三輪賀一氏(以下:三輪氏): あったかな?

岡本氏: 敵のサソリを自分たちの乗り物にするとか。

三輪氏: あー、ありましたねぇ、そういう意味では(笑)。

岡本氏: ネタバレじゃねぇか!(笑)。まぁでも、映画も途中まではそんなイメージだったんですよ。サソリの尻尾を切ってブーン! と投げたりみたいなことをやっていたので、彼らのイメージと自分たちのイメージをあわせていっていますけど、それを「主目的」にはしてないんですよ。ゲームのなかでは、最初からやる気満々のキャラクターなんですよね。だって、自分でボタンを押しちゃえば、やる気でちゃいますからね。

聞き手: 武器のカスタマイズにアンバランスさを入れているという点を、具体的にうかがえますでしょうか。たとえば「威力が大きいけど、振りが遅い」とか、そういうイメージなのでしょうか?

岡本氏: 敵のソウルを吸い取って、それを使って武器の能力を発揮するんですけど、1回しか使えないんだけどメチャメチャ強い武器があったりとか、ですね。普通のゲームではやらないんですよ、そんなことは。だけど種類がたくさんあるからできた。

聞き手: だいたい何種類くらい?

三輪氏: 90種類以上はあります。

岡本氏: もう、制作の後半にメチャメチャ増えたから数えてない。たぶん、あんまり映画会社にオーケーもらってない(笑)。映画のなかに出ないから、そんな武器は。

聞き手: 映画だと、武器は剣1本くらいなんですか?

岡本氏: 元々持ってて折れちゃう剣と、最後に神様と戦うときに使う剣。それだけしかなかったような気がするんですけど、それが90種類になる。ゲームが面白いのが大事なので、かなり作りました。

聞き手: そのなかでも「コレはブッ飛んでるな!」という武器はありますか?

岡本氏: たぶん……映画関係者が見たら腰を抜かしそうなブッ飛んだことはしましたよ。楽しみにしてて欲しいですねぇ(笑)。凄いムチャしてますよ。日本刀とかもあるもんね?

三輪氏: それはダウンロード(コンテンツ)。

岡本氏: ギリシャ神話に日本刀ですから。いいのか?みたいな。

聞き手: 発売後に怒られる可能性も……。

岡本氏: そんときは謝ります、全力で。(三輪氏を向いて)俺きいてないのにオマエ勝手にやったよね?(一同爆笑)。

三輪氏: そこを記事にさせて証拠を作ったつもり? そりゃダメですよ(笑)。

岡本氏: そこが(インタビュー記事で)イキてるといいなぁと思ってね。今のイキで(笑)。

三輪氏: じゃぁ俺が全力で謝りゃいいんですか(笑)。


ゲームに登場する100体以上のクリーチャーのうち、90種類くらいはオリジナルだとか。かなり大きなモンスターが多数登場し、迫力ある戦いを繰り広げる


■ ダウンロードコンテンツでボスクラスの敵も配信予定!!

映画「タイタンの戦い」のポスターの前で。右側のポスターに見えるサインは、先日来日した主演のサム・ワーシントンのものだ

聞き手: 映画にたくさんのモンスターが出てきますが、ゲームは「90パーセントオリジナル」と聞きました。そこいらへんも、「これはだしていい」、「ダメ」みたいな話があったのですか?

岡本氏: いや、(映画に)出るものは全部出してオッケー。ただ、それだけの数じゃゲームにならないですよ。90分~2時間で観るものと、何十時間も遊ぶものとで、クリーチャーの数が一緒なんてのは、ちょっとありえない。細かいサブの設定を作っていかなきゃならないので、あとのクリーチャーはオリジナル。でも、ギリシャ神話をちゃんと勉強したうえで、世界観を合わせて作ってるので、先方も「タイタンの戦い」に対する“愛”を感じてくれて「じゃぁ、オッケー!」みたいな話になってます。

聞き手: 「タイタンの戦い」という原作を元にしつつも、設定としては王道ファンタジーといったところがあると思うんです。そうういった点で、他とは違うオリジナリティーを出していくとき、どういった取り組み方をされたんでしょうか?

三輪氏: ギリシャ神話と映画の世界観を壊さないクリーチャーデザインを意識して、でもあくまでもゲームリパブリックオリジナルのクリーチャーも意識して作った。ワーナーさんに出したときも、ほとんどNGなし。そこは結構、上手くいったかなと思うんですけど。

岡本氏: 凄い評判良かったよね? あんなにスムーズにオッケー出ると思ってなかったね。手戻りは意識してたんですけど、そういうのもなくて。「いい!」っていってもらえて。監督がゲームに対してずいぶん理解があった、という印象ですね。

聞き手: 映画に出てこないようなモンスターで、お気に入りは?

三輪氏: デザイン的にはキマイラが好きですね。骨のデカイやつも好きですけど……色々、全部好きなんです。

岡本氏: 自分たちの思い入れがあるので。ひとつ目の大男のサイクロプスがいいですよ。大きくて見ごたえあります。なかなか倒せないけどね。倒し方がわかっても、なかなか当たらないんだけど。俺のときだけ、たぶん意地悪してるんじゃないかと思うんですけどね(笑)。

三輪氏: 岡本さんのは別調整してますから(笑)。

聞き手: ゲームの難易度はいかがでしょう? 色々なアクションがあるので、操作が難しいかなと思ったんですが?

岡本氏: そんなに難しくはないですよ。基本は気持ちよく「こんな技がボタン1個で!」みたいな考えを中心に作っているので、イケるはずですけど……ね。イケるはず。初心者でも、マジメにさえやれば、エンディングまでいけます!

聞き手: ダウンロードコンテンツも予定されているそうですが、明かせる範疇で教えていただけますか?

三輪氏: ダウンロードクエストは……いくつかあるんですけど、基本的にストーリーは作れなかったんですよ。なので“クエスト”と呼ばれているシステムを使っています。そのクエストを大量に配信します。新規マップ、新規クリーチャーをセットで出そうかなぁと。

聞き手: それにはボスみたいなデカイものも控えているのですか?

三輪氏: はい、大型のボスも用意しています。

聞き手: ゲームと若干離れますが、この映画は3D上映もされていて……3Dのゲームに興味はありますか?

岡本氏: メチャありますよ! やっぱりゲームは3Dやろ! と思ってますよ。ホントに。

三輪氏: 共感できます、非常に(笑)。

聞き手: 会社として3Dモノを手がける可能性もあると受け取っていいですか?PS3とかも、今後3Dに対応予定がありますから。

岡本氏: そうですね。ゲームが3Dになったら、メチャメチャ楽しくなると思う。こう(立体的に)避けたくないスか!? 自分の顔だけ避ける! でもキャラ当たってる! みたいな(一同笑)。「あぶなっ!」って。まさに臨場感、没入感があるというか、ね。3Dだからこそ! っていうのが一杯あるような気がするんです。

聞き手: 裸眼3Dを体験されたそうですが、それを見て「ゲームが変わるなぁ」と感じられました?

岡本氏: そうですね。ゲームが変わるな、っていうか「テレビってやっぱり3Dだよ!」って思っちゃいますね。全然違いますよ、臨場感が! 没入感ありますよ、やっぱり。こう、グワーッと動くのって。凄い期待してるんですよ、ボク。

聞き手: 映画の話に戻りますが、3Dでご覧になられていかがでしたか? まだ一般には「アバター」くらいしか話がないので、ピンとこない人も多いかもしれませんし。

岡本氏: あんなに字幕も飛び出すとは思わなかった。映像に集中したいなら、たぶん字幕がない「吹き替え版」がいいですよ。字幕みたら(その)むこう見えないですもん。飛び出すと言うより“へこむ”ですよ。奥に入る感じがあって、奥行きがあるほうが、やっぱりいいと思うんですよ。手前に出るやつありますけど、やっぱり奥に入ったほうが“より立体的に見える”ような気がするので、映画の作りは正しいという気がしてます。

聞き手: そういうのがゲーム作りにも活かせる?

岡本氏: ゲームはやっぱり、ある程度こっち(手前)側に出さなきゃダメでしょうね。ワッと出るのが、大事だと思うんですよ。でも、映画はスクリーンの奥行き感を出すほうがいいのかな、という気がします。

聞き手: 先日「日本のゲームは海外のゲームに負けている」というお話をされていました。今回、本作は全世界展開されます。海外のゲームと戦うとき、どういったところを意識されましたか? 「こういうところが自信がある」とか。

岡本氏: 映画そのものをまんまゲームにしているんじゃなく、コレを骨にして“肉をつけている”というのは、なかなかないと思うんです。「タイタンの戦い」が好きなら、本当はその裏にあったことって一杯あるんじゃないのかってとみんな思うじゃないですか。そこを自分たちの解釈と、ギリシャ神話の勉強と、彼ら(映画会社とスタジオ)の理解、全部得たうえで、かなり肉付けしている。そういう意味では、随分面白いと思いますよ。「映画を観たら、もうゲームせんでええやん」、「小説読んだらゲームいらんやん」というのとは違って、別の世界がそこに広がってるので、ちょっと期待できるんじゃないかと思います。そこが、普通の映画のゲーム化とは違うところです。

聞き手: ということは、逆にいえば、グラフィックスや動きは、日本も全然負けてないということですか?

岡本氏: 勝ってる負けてるでいうと、負けてるところは一杯あると思います。「空気感」っていう言葉で表現されるものとかは、ボクはやっぱり負けてると思いますし。あと“感情移入”という意味で、西洋人の本当の動作ってボクら理解できないから。たとえば、西洋の会社が作ってるゲームのキャラクターって、主人公はみんな筋肉質じゃないですか。日本製って、華奢な兄ちゃんだったりしません? あんなんは絶対海外では理解されないそうなんですね。

 そういう意味では、ボクらは中間的な落しどころ……わりとリアリティがあるところで「どっちにも受け入れられたらいいな」くらいの感じでやってます。日本の市場のことを殺してるつもりも毛頭ないので、もちろん日本でも受け入れられて欲しいし、ヨーロッパでもアメリカでも受けられられて欲しいという想いがあって、リアリティはあるけどリアルじゃない、映画に忠実だけどまんまじゃない。そういう“ギリギリのところ”にボールを落しているつもりではあありますね。自信はあります。

聞き手: 最後に、映画を観た方、観ないでゲームに入られる方それぞれにメッセージをお願いいたします。

三輪氏: かなりこだわって作りました。映画に負けないスタンスで、ゲームだけの面白さを追求してやってきたので、個人的にもアクションゲームとして良くできていると思います。ぜひ手にとって、映画も観て、ゲームも触っていただきたいなと思います。よろしくお願いします。

岡本氏: 反省するところがあって。やっぱり、武器が……形は変わるけど剣系というか、棒を振っていく系の攻撃が多くなってしまったので、そこは、もう一歩踏み込んで、違うものが持たせられたら良かったのかもしれないなと、ちょっと反省しつつも、元の映画が2本しか使わないところからいったら、相当頑張ってる! 実際の映画からは想像もできないような、とんでもない量の武器を、いとも簡単に使いこなせていく。そこは見てほしいですね。クエストっていう形になってますけど、一般のゲームでいうステージみたいなものがあって、そこは何度もトライできるやつもある。アクションがヘタな人は、そこで武器を育てて強くすれば、もっと楽にクリアできる親切設計になってます。そういうのもエンジョイしてもらえたらな、と思います。

聞き手: 本日はお忙しいところを本当にありがとうございました。

威力は大きいが扱いづらい……といったゲームのバランスを崩しかねない、ぶっ飛んだ武器が登場するのだとか。それも「ゲームならでは」と岡本氏

(2010年 5月 10日)

[Reported by 船津稔/豊臣孝和]