FANTAGE CEO David Hwang氏に「おしゃらんどファンテージ」の日本戦略を聞く
米国で女の子に人気のオンラインコミュニティがついに日本上陸!

2月10日収録

ネクソン本社



FANTEGE CEOのDavid Hwang氏

 米国ニュージャージー州に拠点を置くFANTAGEが開発したWindows用オンラインコミュニティサービス「おしゃらんどファンテージ」が2月10日から正式サービスを開始した。日本では株式会社ネクソンが運営を担当している。ビジネスモデルは、基本プレイ無料のアイテム課金制となっている。

 「おしゃらんどファンテージ」は5歳から12歳の女の子を対象にしたカジュアルなオンラインのコミュニティ空間で、クライアントのインストールなしにWEBブラウザを使って遊ぶことができる。コミュニティの中では、アバターの着せ替えやミニゲームがあり、友達とコミュニケーションを取ったり、ゲームで遊ぶのが主なプレイとなる。アメリカでは2008年に開始して以来現在までに500万人以上の会員を集めている。

 今回、正式サービスに合わせて来日したFANTAGE CEOのDavid Hwang氏に話を聞くことができた。日本ではまだあまりなじみのない子供向けのオンラインゲームだが、アメリカでは「CLUB PENGUIN」や「Wizard101」など多くの低年齢向けオンラインゲームサイトが生まれている。インタビューではアメリカでの「FANTAGE」の状況や、市場のない日本への戦略について語ってもらった。



■ アメリカでの子供向けゲームに対する認識はこの数年で変化

アメリカでディズニーが運営する子供向けコミュニティ「CLUB PENGUIN」
「おしゃらんどファンテージ」のゲーム画面

――アメリカで「FANTAGE」を作ることになったきっかけを教えてください。

David Hwang氏: 私はアメリカに住んでいて、子供を育てています。アメリカでは家と家が離れていますから、友達と遊ぼうにも毎日友達の家に行ったり、友達を家に招いたりすることができません。かといって、1人でテレビを見ているのは、あまり良くないと思いました。そこで、子供同士がパソコンの中でつながる世界があれば、もっと友達と楽しく遊べるのではないかと思ったのが、このゲームを作ったきっかけです。ですから、子供のためと言えるかもしれません。

――子供が楽しめる場所をというアイデアが詰まっているのですね

Hwang氏: そうです。例えば、移動方法がそうです。「FANTAGE」の世界は大昔でも、遠い未来でもないので、実際の生活と似ている所が多いのです。でも、ただ似ているだけでは面白くありません。ただ歩くよりも何かに乗って動いた方が楽しいのではないかということで作りました。

――アメリカでは、近年子供用のオンラインゲームが増えているように思えますが、アメリカ市場での「FANTAGE」のポジションはどの辺りですか?

Hwang氏: アメリカでいま小学生が利用できるWEBサイトで1番大きいのは、ディズニーが運営している「CLUB PENGUIN」という動物をテーマにしたものです。そのほかにはカナダのGanzが運営している「Webkinz」がありますが、「Webkinz」はぬいぐるみを買った子供が使えるようになっているので、「FANTAGE」とは仕組みが異なります。ですから、この仕組みの中では「FANTAGE」が第2位といえます。いまは1位の「CLUB PENGUIN」とはかなり差があるのですが、「CLUB PENGUIN」の成長がある程度足踏み状態であるのに比べて「FANTAGE」は現在の登録者数が500万人くらいで、月40万人くらい増えている状況です。これからもっと成長が早まるのではないかと思います。

――アメリカでのビジネスモデルを教えてください。

Hwang氏: 基本料は無料ですが、プレミアム会員というものがあります。料金は1カ月で6ドル、6カ月で30ドル、1年だと55ドルです。プレミアム会員になると、専用の「VIPルーム」に入れるようになります。プレミアム会員だけが使えるアイテムもありますし、一般のユーザーが500からスタートする「スター」というゲーム内で使えるコインを、最初に2,000もらえます。

――サーバーの数はいくつですか?

Hwang氏: 機械は20台ですが、その中を区切っているので40になります。1つのサーバーで300人程度入れますから、最大で12,000人が接続できます。

――アメリカでの、プレーヤーの平均年齢はいくつくらいですか?

Hwang氏: 10歳から11歳です。

――課金はどのような方法で行なうのですか?

Hwang氏: クレジットカードの場合は親が支払いをするのですが、「ゲームカード」というプリペイドカードがあって、これは子供でも買うことができます。セブンイレブンでも売っていますし、スーパーマーケットで親がショッピングをする時についでに買ってもらうこともあります。親としては、誕生日や卒業のプレゼントにすることもあるようです。

アメリカで人気のミニゲーム「ファッションショー」
2番目に人気があるという「ロケットボード」

――アメリカではどういった要素が人気ですか?

Hwang氏: ユーザーからの反応でよく耳にするのは、「FANTAGE」の世界が綺麗だとか、出会った人たちとおしゃべりをするのが楽しいといった話です。また、ゲーム内に「パーティー」というイベントがあるのですが、そのイベントが楽しいという話もあります。ミニゲームで1番人気があるのは「ファッションショー」で、2位は「ロケットボード」です。「ファッションショー」は10人くらいで集まってみんなで楽しむゲームで、「ロケットボード」は1人で何回もチャレンジして点数を上げるゲームです。つまり、色々な性格の違うゲームを、色々な人が楽しんでいるということになります。

――滞在時間はどのくらいですか?

Hwang氏: 日曜や祝日は1時間くらいで、平日はもう少し短いです。これは子供が、というより、親がプレイしていいと考える時間がその程度だということです。アメリカでは、ただゲームを1時間遊んでいいということではなく、宿題を終わらせたらゲームで遊んでも良いという形で、ある程度子供をコントロールする方法として利用していることになります。「FANTAGE」の方でも、親にこういう方法を使って下さいと推薦したりしています。例えば携帯ゲームだと、子供が隠れて遊べますが、パソコンのゲームだと親の見える場所で遊ぶので、その分管理しやすいことになります。現在は、アメリカにはプレイ時間制限のような仕組みはないのですが、日本で導入した後様子を見てアメリカにも入れる予定はあります。

――子供は親のパソコンで遊んでいるのですか?

「アメリカでは子供のインターネット使用に対する認識は変わりつつある」とHwang氏

Hwang氏: アメリカでは小学生までは部屋にテレビやパソコンを入れないで欲しいと学校から言われますから、リビングでパソコンを使うことが多いと思います。

――アメリカでは子供がパソコンでゲームをすることに肯定的なのですか?

Hwang氏: 「FANTAGE」を立ち上げた4年前には、パソコン自体のイメージがあまり良くなく、子供がインターネットを使うこともあまり愉快なことではないという雰囲気がありました。オンラインゲームにも悪いイメージがあったのですが、現在ではずいぶん考え方が変わってきています。インターネットでなくても、他に子供に良くない場所はあるし、問題はインターネットを使ってどういった所で遊ぶかということなのです。子供が楽しんでいるのに、大人が楽しくない場所なら、子供にとってはいい場所なのではないかという考え方もあります。インターネットを使って悪い場所に行かないようにするために、「FANTAGE」のような場所で時間を過ごして欲しいという考え方が出て来たということです。

――ここ数年、アメリカでは子供向けのゲームが増えて来ていますね

Hwang氏: 最近子供向けのゲームが増えて来たことには2つの理由があります。1つは認識の変化です。先ほども申し上げたように、子供が遊べる場所で遊んで欲しいという親が増えたこと。もう1つは、「CLUB PENGUIN」が大成功を収めたということです。大人向けのゲームを作っていた会社が子供向けに目を向け始め、子供向けのゲームが増えて来たと言えると思います。

――日本市場も同じような形で変化していくと考えていますか?

Hwang氏: 方向性としては、同じような方向に向かっていくと思いますが、スピードの差はあるでしょうね。日本はアメリカに似ている部分もあるのですが、もっと保守的な所がありますから。



■ 「ファンテージ」の中で社会性をはぐくんで欲しい

ミニゲーム「ハッピーキャンディ」
ミニゲーム「ちょうちょバブル」
ミニゲーム「ミニゴルフ」

――日本でサービスをすることになった経緯を教えてください。

Hwang氏: 「FANTAGE」を作った時に、アメリカでも日本のアニメが流行っていることもあり、グラフィックスはアメリカ的というよりもむしろ日本のものを参考にして作りました。アメリカではオンラインゲームのビジネスとしてはある程度成功を収めることができました。そこで、次は日本へのサービスをしようということになったのです。

――開発段階から、日本市場も視野に入っていたということですか?

Hwang氏: インターネットは世界中どこにでもありますから、アメリカだけではなく全世界を考えました。その中でも、グラフィックスに日本的なものを参考にしたとうこともあり、海外の中でも日本に進出するということは頭にありました。そこで初めての海外進出は日本ということになったのです。

――日本では基本無料の携帯サイトで、子供がお金を使いすぎてしまうという問題が社会問題となりましたが、そういった問題への対策はあるのですか?

Hwang氏: 日本の「おしゃらんどファンテージ」では、1度に使えるお金は100円とか200円と決まった金額までしか使えないような制限を入れようと思っています。それにアイテムはユーザー間で売買を行なうことができない仕組みにしています。他にも、「メイプルストーリー」でやっているような、子供の安全のためにログインの時に保護者のパスワードがなければ入れないようにして、親がログインを管理できるようにしたり、1日あたりのプレイ時間を15分単位で区切れるような設定を、近々「おしゃらんどファンテージ」にも入れたいと思っています。

――いつごろ実装する予定ですか?

Hwang氏: まだはっきりした予定はないのですが、2カ月以内には実装できる予定です。

――日本へのローカライズに当たってどういった変更を行ないましたか?

Hwang氏: イラストなどは日本にあわせて全て変更しました。アバター自体も、すべて変えたわけではありませんが、表情に関する部分など、アンケートを取って変えた所もあります。それとミニゲームの中にタイピングのゲームがあるのですが、それはアメリカ版では母国語ということもあって、結構難しくて長い単語が入っています。そこを日本では英語の学習用に変えて、単語も「アップル」といった簡単なものに変更しています。またアメリカでは大文字と小文字を使い分けるようになっているのですが、日本ではそこまですると難しいだろうということで、その部分の制限ははずしました。

――ターゲットとなる年代の女の子は、日本では携帯電話で遊ぶことが多いと思いますが、携帯アプリではなくパソコンでサービスをすることについて勝算はあるのでしょうか?

Hwang氏: 体験感が違うというのが1番でしょうか。体験感というのは、携帯電話の小さい画面で見て感じることと、パソコンを利用して感じる体験感は違います。「FANTAGE」の友達との会話や、大人数で楽しむ「ファッションショー」は携帯ゲームでは無理ですから。

――日本人にもそういう部分を楽しんで欲しいということですか?

Hwang氏: 家族感を作っているので、その家族感を楽しんで欲しいと思います。学校の友達と一緒に楽しんだり、イベントに参加して社会性を学ぶという目的が1番大きいかなと思います。特に「ファッションショー」は1人ではできないものとして、社会的な機能が含まれています。そういう機能を楽しんで頂ければと思います。

――日本で子供向けのゲームをサービスするうえで、最も難しいと思う部分はどこですか?

Hwang氏: 直接ユーザーに会って反応を見ることができないという部分です。そこは心配な所ですが、ネクソンさんに助けてもらいたいと思っています。また、今まで市場がなかったので、どういった形で市場を攻略していくかという部分もあります。道をさがしつつ頑張っていきたいです。

――日本の市場攻略のための戦略はあるのですか?

Hwang氏: ゲームの仕組みとして、1人では面白くないので、1人が遊び始めたら他の友達を呼んで増えていくという部分には自信があります。最初の1人を呼んでくるのは、ネクソンの役割ではないかと思います。

――日本市場で成功する自信はありますか?

「日本での成功には自信を持っている」とHwang氏

Hwang氏: 1番大事なのは、マーケットが何を要求しているかを把握することだと思います。もちろん、今の段階では日本のマーケットが何を要求しているのか、よくわからない部分はあるのですが、わかったらいち早く対応する自信はあります。アメリカでも最初は、これは難しいという話を聞いたのですけれども、ユーザーの声を参考にすることでこれだけのスピードで成長することができました。状況は同じだと思いますので、日本でも成功には自信を持っています。

――日本に向けたサービスへの抱負を聞かせて下さい

Hwang氏: アメリカでも、沢山の子供たちが健全に遊んでいます。日本でも、子供たちがいい出会いと遊びを学ぶことができるような場になればいいと思っています。

――最後に、この記事を読むのはプレーヤーの親世代だと思いますので、彼らへのメッセージをお願いします

Hwang氏: 最初に作った時に私の妻が色々なアイデアを出してくれました。開発している社員の中にも、子供を持っている人がいます。元々親の立場で、子供が健全に楽しく遊べる空間を作ることを目的にやっています。試しても後悔はしないと思います。日本の親たちが望むことがあれば、いつでも反映できるように頑張っていきます。

――ありがとうございました


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(2010年 2月 18日)

[Reported by 石井聡]