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【連載第168回】 あの、おもちゃを徹底レポート




わずか1,050円で買える本格的なラジコンキット
トミー「TOMITECH エアロアールシー」

「TOMITECH エアロアールシー」
発売 トミー
価格 1,050円
電源 単3アルカリ乾電池×4(別売)
発売日 発売中



 あまりに大胆な価格設定に、思わず目を疑った。コントローラーを同梱した本格的なラジコンキットが、わずか1,050円! 同じくトミーから発売された超小型ラジコン「ビットチャーG」の3,000円台という価格設定にも驚かされたが、今回の「エアロアールシー」はそれを遥かに下回る衝撃価格になっている。

   この低価格化戦略の狙いは、ラジコンの敷居を極限まで低くし、新しい世代のファン層を獲得することにあるだろう。なにしろ1,050円なのだ。小学生でもお小遣いで手が届く範囲。親子で2台買い揃えても、2,100円で済む。

 新しい世代のファン層を取り込もうとする姿勢は、商品ラインナップにも現れている。トヨタのセルシオやクラウンといった高級車もあるが、日産のマーチやキューブのような大衆車もあり、ダイハツのムーブのような軽自動車もある。これまでのラジコンに見られたようなスーパーカーやスポーツカーのラインナップとは大きく異なり、身近な車種ばかりが並んでいる。「お父さんが乗っている車を自分も操作してみたい」という子供ならではの希望を叶えるセレクトになっているのだ。

 こうした戦略面も興味深いが、操って遊ぶラジコンなのだから、肝心の走行性能が気になるところだ。「エアロアールシー」シリーズは、組み立て式のキットになっている。まずは組み立て作業に着手してみよう。


自分の手で作る醍醐味を味わえるキット内容

 筆者が手に入れたのは、「SUZUKI WAGON R RR」。「エアロアールシー」のコンセプトに従って、身近な車種をセレクトしたのだ。

 パッケージを開けて、最初に目に付いたのがパーツの多さ。数万円もする高価なラジコンキットには及ばないが、それでもけっこうな量がある。こうした低価格ラジコンは入門編の意味合いが強く、その多くが半完成品として提供されているだけに、ひときわ目を引く。

パッケージ。組み立て式でカスタマイズ可能を謳っている パーツは種類別に小袋に分類されており、目当てのものを探しやすい


 この理由は、組み立てを始めると理解できるようになった。ラジコンの醍醐味は、操縦だけでなく、マシンの組み立てや修理、改造にもある。“自分の手でマシンを作る”楽しさを、新しい世代のファンにも体験してもらおう、という狙いがあるように感じるのだ。

 取り扱い説明書を広げて、作業の流れを確認する。作業のほとんどは、シャーシの組み立てに費やされる。

 使用するモーターは2基。それぞれのモーターを前輪と後輪に設置し、その周囲の機構を作り上げていく。取り扱い説明書は、情報がギッシリ詰め込まれていいて多少読みづらくはあるものの、内容は正確。ラジコンの組み立ては、パーツの左右を間違えると混乱を招くが、図解のイラストが丁寧に描かれているので迷うことはない。

 とはいえ、作業自体は決して簡単とはいえない。シャーシボックスの奥にある小さな穴にピンを通したり、HiギアとLowギアの間にカウンターギアをセットしたり、時にはピンセットを使う繊細な作業が求められる。「完成しても、走らなかったらどうしよう……」と不安を感じたほどだ。

 しかし、この作業が後に功を奏してくる。走行具合が悪いとき、あるいはマシンが故障したときなどでも、内部機構に精通しているので、落ち着いて対応できるようになるのだ。

 シャーシを完成させたら、次はボディを組み立てる。こちらは前後のバンパーとミラーを取り付けるだけのごく簡単な作業。シャーシに組み込んだら、最後にラベルを貼る。ラベルには、SUZUKIのロゴやフロントライト、バックライトなどがあり、貼ると雰囲気が大きく変わる。車体に表情が付いたかのように、存在感を増す。

モーターは、パワフルな「130モーター」を採用している シャーシに前輪用のモーターを設置。中央に内蔵されたIC基盤から命令が伝わる仕組み
後輪のモーターの周囲に、カウンターギアとHiギア、Lowギアの3種類のギアをセットする アンテナの余分は、シャーシに用意された溝に巻いて固定する



1,050円とは到底思えない安定した走行性能

 完成したマシンをじっくりと眺めてみると、大きなマシンという印象。計測してみると、全長は13.5センチ。全高は6センチ。ドッシリとしていて確かな手応えを感じる。これまで3センチ強の超小型ラジコンを中心に遊んできたが、やはり大きなスケールのラジコンも魅力的だ。複数のマシンとレースで競ったら、迫力のある光景を楽しめそうだ。

 ところが各車種で周波数帯が設定されており、変更することができないのだ。設定されている周波数帯は27MHzと40MHzのふたつ。つまり同じ車種はもちろんのこと周波数帯が同じ車種では一緒に操作することができないのだ。これは少し残念だ。コストダウンのためとはいえ、せっかくパーツの取り替えなどができるのに残念なところだ。

 車体に施されたディテールは、ラジコンとしては充分だろう。ドアやドアノブ、給油ハッチなどが、実車さながらに刻まれていて、雰囲気がある。サイズが大きめなので、インテリアとして卓上に飾っても映える。

 コントローラーは、車体と比べると、コンパクトなサイズ。大人が両手で持つと、すっぽりと隠れてしまうほどだ。用意されているレバーは、前進/後退、左/右の2基。レバー操作の組み合わせによって、前進、後退はもちろん、右前進、左前進、右後進、左後進への操作が可能になっている。

「SUZUKI WAGON R RR」の完成形。フロントのラベルが少しずれてしまったのが残念だ 後部からマシンを眺める。完成度の高い造形だ
全長は、13.5センチ程度。大人の手のひらとほぼ同等の大きさ コントローラーはシンプル設計。レバーを採用しているので、ゲーム機のコントローラー感覚で操作できる


 「SUZUKI WAGON R RR」は、走行スピードをHiとLowの2種類に切り替えることができるが、その操作はコントローラーではなく、シャーシの裏にあるスイッチで行なう。始めはLowで遊び、慣れたらHiにステップアップするといい。走行可能な場所は、テーブルや道路の上など、タイヤとの接触面が硬い場所に限られる。じゅうたんの上は、毛足がタイヤにからまり、故障の原因となるので走行不可になっている。筆者は、テーブルの上で走らせることにした。

 コントローラーを握って、レバーを前進の方向に倒す。動いた!

 組み立てがうまくいって、ちゃんと動いたことに安堵。走行スピードはかなり出ており、これがLowかと思えるほどのパワフルさ。

 しかし、しばらく走らせていると、異変に気が付いた。左右へ曲がることができないのだ。車体を持ち上げてシャーシをチェックすると、タイヤとシャーシを結び付けているパーツが1個外れていることがわかった。これなら直すのは難しくない。ボディーパーツを取り除き、シャーシを分解。問題のあるパーツを適切な場所にはめ込んだ。組み立てに時間を費やした分、修理は簡単に行なえたので、自分の技術レベルが1段階上がったように錯覚する。やはりラジコンは面白いなあ~。

 修理後は、いよいよ本格的にマシンの操作にチャレンジした。前進や後退、あるいはテーブルの上を旋回させて、その走行性能をチェックする。こちらの操作に即座に反応。ほんの一瞬の遅れもない。左右方向への旋回も、いたずらに膨らまず、コンパクトに回る。1,050円という価格からは、想像できないほどの安定した走りだ。

パワフルな走りを堪能すると、もっと速く、もっと繊細に操作したくなってくる。カスタマイズも併せて楽しみたい
 走行スピードをHiにして走らせると、レバーを押すだけで一気にテーブルを駆け抜けてしまう。その様子を眺めていたら、もっと広い場所でレースをしてみたいという願望が湧き上がってきた。

 「エアロアールシー」は、レースに完全対応しており、別売のパーツが豊富に揃っている。「ハイスピードギア」、「フロントサスセット」、「スポンジタイヤセット」など、自分のマシンに取り付けたら、どんな走りをみせるのだろうと期待が膨らむものばかりだ。

 1,050円という低価格。本格的な走行性能。そしてカスタマイズ可能な設計とパーツ類。これらの要素が有機的にからみあい、「ミニ四駆」に迫るムーブメントを作り出すポテンシャルを秘めている。今後の展開に注目したい。

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□トミーのホームページ
http://www.tomy.co.jp/
□「エアロアールシー」の公式ページ
http://www.tomy.co.jp/aero_rc/
□プレスリリース (PDF形式)
http://www.tomy.co.jp/press_release/press/dec15_2004.pdf
□関連情報
【2004年10月14日】トミー、クリスマス~年末年始商戦の内覧会を開催
カスタマイズもできる、本格派でも低価格なR/Cカーなど
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041014/tomy.htm
【2004年12月27日】トミー、低価格ながら本格派RC「エアロアールシー」
先行販売イベントに小倉優子さんが登場
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041227/tomy.htm


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(2005年1月13日)

[Reported by 元宮秀介]


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